ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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カスの矜持

 エネロマ先生の妨害が切れる10分前に、【索敵】の反応が切れる。高速で移動しているのはリファルさん達だから……処理し切ったようだ。

 

「コイツもエルフか……。確か【ゼルエネス】ってエルフの国だったよな」

 

 【ゼルエネス】。過去にウォルタリアを侵略しようとしただけで無く、周辺国に幾度となく攻め入った生粋の侵略国家だ。エルフが人口の殆どを占めている為、魔法に非常に長けている者が多い。最も、それ以外もかなり高水準だった筈だ。──コイツらがウォルタリアに襲撃を仕掛けてきていると言う事は、とどのつまり侵略なのだろう。

 

「このご時世にクソみたいな事しでかしやがって」

 

 今日日、侵略なんぞ古過ぎだ。今のご時世、出る杭は打たれるどころか叩き潰される。自分から火種を振り撒けばどうなるか、分からないほどゼルエネスのトップは馬鹿なのだろうか。

 

「一度リファルさん達と合流するか。多分こいつらだけじゃないだろうし」

 

 コイツらはあくまで尖兵。確か録音には次の段階とか何とか言っていた。これを第一波とするなら、次がある。

 

ピピピピ

 

 リファルさん達の方向に走りながら電話を取る。かけてきたのは高木だ。

 

「高木! 着いたか!?」

 

『悪い加藤! 俺ら行けねぇ!』

 

「はぁ!? バカなこと言ってないで早くしろ! 緊急事態なんだよ! ポータル屋札束で叩き起こして送ってもらえや!」

 

『だからそれが出来ねぇんだよ! 何回やってもらっても、ウォルタリアに【転門】が繋がらねぇ!!!』

 

「な……!」

 

 まさかこの空を覆っている結界とやらの所為か? 外からの魔力的な干渉を妨害するのも出来るのか……。

 

「仕方ねぇ! 高木、近くの国に行ってそっから飛んでこい!」

 

『無茶言うな馬鹿! アンパンマンじゃねぇんだぞ!』

 

「クソ! さっきお前が言ってたゼルエネスだ! 襲撃者がどいつもコイツもエルフばっか! ウォルタリアに乗り込んでくるエルフなんてそいつらしか居ないだろ!」

 

『焦りようからしてだいぶ面倒な状況だな。簡単で良い、教えろ』

 

 今の状況を高木に伝える。数秒黙った後、電話の先で鶴岡達に何やら伝えてるようだ。

 

『加藤くん? 聞こえる?』

 

「オピスか!? どうした!」

 

『多分だけど、ウォルタリアの全域を覆ってる結界は解除方法があるよ』

 

「その方法は?」

 

『今発動している結界って、結界より外側。つまりウォルタリア国外周辺から魔力を掻き集めている状態だと思う。無理矢理魔力の密度を増やされている所為で、国民は皆んな耐えられなくて倒れるし、外側からの魔力による干渉が弾かれるんだ。要するにその魔力を集めている物を破壊すれば、結界は無くなるよ』

 

「それはどんなのだ! 襲撃者の身包み剥ぎまくったがそれらしきのは見当たらねぇ!」

 

『首謀者だろうね。流石に雑魚に持たせないでしょ。見た目は分からない。でもそれだけの現象を引き起こすレベルの物なら、近くに行けば分かると思うよ。魔力の流れがそれに引き寄せられてるだろうからね』

 

 強力な吸引機で無理矢理作られた結界だから、それをぶっ壊せば外から援軍が呼べると言う事か。そうとなれば話は早い。

 

「分かった。取り敢えずエルフをボコる。間違えたら治してごめんなさいして次のエルフをボコる」

 

『うん、落ち着いて? 頭に血昇ってるよ? ──親切にしてくれた人に手出された?』

 

「……」

 

『昔からそう言うとこあるよね。ゲルダちゃんが入った辺りでそう言うの見なくなったからさ。懐かしいかも』

 

「あっそ。切るぞ」

 

『僕は好きだけどなぁ。君のそうい』ブツッ

 

「男に好かれても嬉しくねぇよ」

 

 愚痴を吐き捨てながら走る。向こうもこちらに向かっていたのか、リファルさんとセーリスさんが見えてきた。

 

「加藤様! ご無事で! ……セラフィナ様は?」

 

「そっちも。セラフィナは野暮用で。取り敢えず起き上がれないようにボコりましたけど……指示出してた奴は見つからなかったです」

 

「何処かに潜伏しているのかもしれません。それに襲撃を仕掛けて来るにしては人数が少な過ぎます。もっと人員がどこかに……」

 

「リファル様! もしや王城の方に居るのでは……」

 

「【索敵】もそこまでは届かないっすね。行かないと分からないか……」

 

 首都アクアスはそこまで大きく無い。侵略された過去があるからか、守りやすい小さな首都として設計されている。円を描くような壁を立て、その中に城や城下町が作られている。だがいくら小さいと言っても首都。全速力で移動しても、端から端まで1時間はかかる。襲撃してる連中がある程度纏まって居たのは不幸中の幸いだった。

 

「仲間に連絡を取ったんですけど、ウォルタリア外から【転門】使って来る事が出来ないみたいです。この汚ねぇ結界の所為なんですけど……これを生み出している奴が居る筈」

 

「次何を仕掛けて来るか分かりません。エネロマに広範囲の【索敵】を頼みます」

 

「と、透明になっている襲撃者達はもう良いのですか? まだ潜んでいる可能性は……」

 

「アイツらが装備していた【隠蔽のローブ】はランクSS。いくら何でもあれ以上用意するのは難しい。であるのなら、他のメインの襲撃を警戒した方がより多くの人を救えます。セーリス、今回のような事は初めてでしょうからハッキリ言っておきます。全てを救う事はできません。故に少しでも多くを救う事を考えてください」

 

「は、はい!」

 

「じゃあ先生の所に一度戻るんですね。水源の方に行った2人は……」

 

「連絡がないと言う事はまだ着いていないか、交戦中か。いずれにせよ、あの2人が遅れを取るとは思いません。戻りましょう!」

 

 リファルさんに従ってエネロマ先生の元に戻ってる最中、何人かの騎士団員を見かける。動ける者と動けない者の2択、恐らくダンジョンアタックをメインにしていた団員が、この濃魔結界に耐えられているのだろう。

 

「にしたって……何でこのタイミングなんだ?」

 

 事を起こすタイミング、これが謎でしか無い。リファルさんは前にウォルタリア側に内通者が居ると言っていた。2年以上、国が主導となって調査していたのに原因が分からない時点で怪しくはあった。ゼルエネス側のスパイ、もしくは裏切り者が居たと考えた方が無難だろう。水源の汚染はブラフ……いや、騎士団を疲弊させる策だったのかもしれない。事実、騎士団員は無理なシフトで限界だったのだから。念には念をと言う奴だろうか。

 

「(じゃあ何でそこまで慎重だった癖に、俺らが居る時に始めた?)」

 

 間違いなく俺やセラフィナ、ゲルダリアがこの国に居る事を内通者は知っていた筈だ。ダンジョンに潜る者は濃魔結界に耐性がある、それは連中が1番把握している。俺達が動かないと思った? ……まぁ実際、昔の俺だったらワンチャンスルーしてたかもしれんが。

 

「リファル……!」

 

「すいませんエネロマ! 【隠蔽のローブ】を装備した襲撃者は全員倒しました! 伏兵がら居るかもしれないので広範囲の【索敵】を──「もう、やってる」そうでしたか! では……エネロマ?」

 

 エネロマ先生と一緒に居たゲルダリアは沈痛な表情でこちらを見る。

 

「……アクアスの外に設置されている3つのダンジョン。そこから強い魔力反応が次々と外に出てきている。多分、モンスターが外に出ているわ」

 

「……え?」

 

「ま,待ってください! モンスターはダンジョンの外では体を保てません! 精霊族や妖精族はコアがあるから存在出来ているだけで、モンスターにそれはありません! あれはどこまで言ってもアイテムになりきれなかった魔力の残骸! 魔力が満ちたダンジョンで無ければ……あ」

 

「これが本命か……。霊酒が無くなっていた理由も分かった。ダンジョンを酔わせて本来の挙動から逸脱した量のモンスターを作り出す。それを濃魔結界の中で暴れさせる……。リファルさん、多分【大暴走(スタンピード)】ってこの事っすよ」

 

「な、何と……。エネロマ! 数は!?」

 

「500。でも増え続けている。何処まで増えるか分からない。そして全てが……アクアスに向かって来ている」

 

 絶句。本来なら外に出る事のないモンスターが解き放たれて、操られている。当然だがモンスターと戦っても問題無いのはダンジョン内と言う決められた場所且つ死んでも蘇生されるからだ。外から出て暴れるモンスターに殺されれば、蘇生魔法の使い手が近くに居なければ生き返る事は無い。

 

「……リファル。時間が無いわ。移動速度も速い。あと1時間もしないうちにここまで辿り着く」

 

「リファル様……私達はどうしたら……」

 

 リファルさんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。増え続けるモンスターを止めつつ、首謀者を探す必要がある。まともに動けるのは俺達だけ。悩みもするだろう。だから──。

 

「リファルさん、指示ください」

 

「え……」

 

「加藤?」

 

「いや俺ダンジョン内でなら指示も出しますけどこう言う外の荒事なんてやった事無いので慣れてるリファルさんに従おっかなって。モンスターの方行きましょうか? 慣れてますよ嫌な事に」

 

「しかし! ここはダンジョンではありません! 死ねばそこまでです。一応セーリスは蘇生魔法が使えますが……だとしてもこの量が同時は!」

 

「でも誰かがやらないとやばいっすよね」

 

「それは……そうなのですが……」

 

「まぁ流石に1人は無理ですね。多過ぎて後ろに取り逃すんで。なんで指示お願いします。従うんで。どうしてそんな渋るんですか?」

 

「……セラフィナ様が心配かと思いまして、探しに行くのではと」

 

「いや全然。アイツ強いんで大丈夫ですよ。アナンタ探しに行っただけなんで。──どうします?」

 

 リファルさんは数秒考えた後、【念話(テレパシー)】を使う。スマホを操作していちいち電話しなくていい便利な魔法だ。俺も欲しい。

 

「ゴランド! クロム! そちらはどうですか!?」

 

『おうリファ嬢。水源の方に居た騎士団は倒れているが……気絶してるだけだな。戦闘痕はあるが』

 

『……こっちも。殴られたような痕はあるけど、生きてる』

 

「ならすぐにこちらに戻って来てください! 首都アクアスにモンスターが群れで接近して来ています! 2人にも戦って貰います!」

 

『分かった! 何で外に出て来てるかはさっぱりだが兎に角戦えばいいんだな! 一先ず戻るぞ!』

 

『……倒れてる人は適当に隠しておくね』

 

「お願いします。……私とセーリスは王城へ行きます。あちらに反応はありませんが、万が一を考えて王妃様の安否を確認しておきたい。エネロマは引き続き【索敵】しつつ、【念話】で状況報告をして下さい。余裕があれば呪いでモンスター達の足止めを」

 

「ええ。分かったわ」

 

「そして……加藤様、ゲルダリア様。お2人には向かって来るモンスター達をお任せしても良いでしょうか。遅れてゴランド達も加勢に来ますので……」

 

「了解です。王妃と首謀者の方お願いします。聞いたかゲルダリア。今からアクアスの外に出て……ゲルダリア?」

 

 先程から会話に参加していないゲルダリアに声を掛ける。その顔は困惑や疑念に満ちていた。

 

「いや、別に戦うのが嫌なわけじゃないのよ。アクアスにもショタいっぱい居るし。ショタ殺される訳にいかないし。……でも1つだけ良いかしら」

 

「何だ、手短にしろよ」

 

「加藤……アンタ本当に私が知ってる加藤なの?」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 自分と言う存在が目を覚ました時に最初に見たのは、怨念に満ちた前魔王の顔だった。

 

『手間は掛かったが……無事完成したか。これならば人族共を効率的に殺せる』

 

 何を言っているのか分からない。だが少なくとも、己と言う存在は他者を害する為に作られたのは分かった。

 

『マザースライムをベースに増殖、巨大化、吸収……魔改造し過ぎたせいで人格が安定せんな。些細な問題だが』

 

 元の私が居たのか。どんなことを思って居たのだろう。何を思って体を弄られたのだろう。今となっては何も分からないし、記憶も無い。

 

『人族の殆どが必須になる水……それを吸収して無限に増え、増殖する。奴らの命の綱が全て尖兵へと変わる……。これで漸く奴らを殲滅できる。後はタイミングか……ゲホッゲホ!』

 

 苦しそうに咳き込みながら、私を強力な魔力の鎖で縛り付ける魔王。この鎖は、吸収出来なかった。

 

『時が来るまで待て。いずれお前は人族を地獄に引き摺り込むのだ。それまで殺意を高めていろ』

 

 殺意? そんな事を言われても……。持てって言われて持てるものでも無いのに。

 

『愚息が人族の一部と手を組んでいるのは分かっている……それまでには、終わらせねばな』

 

 それが私が聞いた、前魔王の。私を作り出した者の最後の言葉だった。それから数ヶ月後、私を縛り付ける鎖が消えた。生み出した本人がこの世を去ったからだ。自由になった私は逃げ出して、この世界を彷徨った。

 

 自分のやりたい事も分からず、でも変に目を付けられるのも嫌で多くの国を転々とした。幸い新しい魔王が戦争を終わらせてくれたから、旅をするのは楽だった。人の目を気にして、ずっと隠れたままの旅だったが。

 

 旅を始めて500年。海を渡って日本と言う島国にやって来た。それなりに平和で水も豊富。住みやすい国だった。

 

「(暫くはここで過ごそうかしら。湿度も高くていい感じだし……)」

 

 その日暮らしの毎日。ただ生きるだけ。毎日動き続けて居ないと、知らない間に自分が無くなりそうだった。この国もある程度見たら、また別の国に行こう。そう思って居た時にたまたま見たのが──。

 

「お、おい! 【自我中心】! お前らいい加減にしろよ! あそこのダンジョンどんだけ占領してんだよ! 俺達にも潜らせろ!」

 

「いやいや何言ってるんだよ。ちゃーんとルールを守って潜ってるだろ? ほらサイト見ろよ、ちゃんと予約してんだろ」

 

「それお前が運営権限悪用して架空の名前で予約してるだけだろうがぁ! ふざけんな!」

 

「うるせぇなテメェ。別に良いだろ、ウチのリーダーがあそこのダンジョンの設定が良い気がするとか言ってんだから。正直あんま変わらん気がするが」

 

「絶対プラシーボ効果なんだけど、加藤くん思い込んだら止まらないからね。まぁ他にもダンジョンあるからそこ行けば?」

 

「おい! そんなしょうもねぇ奴相手してねぇでさっさと行くぞ! 今日下振れしてるから今度こそ来る! 当たる! 演出が来る! きっと来る! 取り返すぞぉぉぉ!!!」

 

「ハハハ、完全にダメな勢いですね」

 

 傍若無人に振る舞う加藤達だった。自分自身の快不快だけで動き、それで他人にどうこう言われても知るかと吐き捨てる。ずっと隠れて旅をして来た私にとって、それはとても楽しそうに見えた。

 

「(あんなに好き勝手振る舞って良いのね……。強ければ何しても良いのね!)」

 

 前魔王に改造されて作られた私は、他のスライムには出来ない圧倒的再生力に増殖や巨大化などがある。呼吸を必要とする相手なら、取り込んでそのまま窒息させる事だって出来る。だから気を遣って生きて来た。他人巻き込むのは何となく嫌だった。……でもそれで自分が生きづらくなるのは、なんか違う気がした。

 

「ねぇねぇ」

 

「ん? 何だお前、スライム? 珍しいな日本に居るなんて」

 

「私は旅する可愛いスライムなんだけど……アンタ達めちゃめちゃ人生楽しんでそうね!」

 

「おう! 世界エンジョイ勢だからな! もうイカれた毎日ウェルカムって感じだ!」

 

「私結構強いからアンタらの仲間に入れてよ! 私も好き勝手暴れたいのよ!」

 

「って言ってるけどどうすんだ加藤?」

 

「あぁ!? 好きにしろや! 俺も好きにするね! うぉぉぉぉぉ!」

 

「行っちゃったよ。仕方ないなぁ……あ、これからよろしく! 名前は……」

 

「名前? あー……無いのよね。適当に付けてくれない?」

 

「では『ゲルダリア』と言うのはどうでしょうか? ゲルはそのまま見た目でダリアは花ですよ」

 

「えーっと花言葉が確か……華麗、優雅、気品、感謝、栄華、威厳」

 

「良いわね! 神父アンタセンスあるわよ!」

 

「移り気、気まぐれ、不安定、裏切りだね」

 

「ねぇ神父。アンタ私の事裏切りそうと思ってんの?」

 

「いやゲルだし見た目不安定かなと」

 

「ネガティブな理由なのを隠しなさいよ!」

 

 加藤達のチーム、【自我中心】との出会いはそんなものだった。別に特別な出会いでも何でも無い、普通の出会い。それからはみんなと一緒に暴れて暴れて暴れまくった。流石に犯罪はダメという共通認識があったので、迷惑行為に止まっていたけど。

 

「(これが私! 好き勝手して! 誰かに何かを強制されない! 楽しい!!!)」

 

 昔から何故か種族問わずショタから目が離せなく、見ているだけで近づきたくなる欲求を抑えなくなった。アイテム売ったお金で飲食店の食べ物食い尽くして店じまいにしたこともあった。加藤達の分まで食べてぶちのめされたけど。

 

「私はあの時……仲間になった時、アンタらの好き勝手ぶりに憧れて仲間になった。私も、ああなりたいって。そうすれば生きている意味があるのかもって思って」

 

 でも、今の目の前の加藤は昔と違う。誰かを助ける為に動くなんて、そんな事した事なかった。何かしら暴れて、結果的に誰かを助けた事になったとかそう言うのはあったけど。自分から助けよう、協力しようなんて事は……無かった。

 

「会わない間に……変わってしまったの? 私が憧れたあの自分勝手さは……もう、無いの?」

 

 私の問いに、呆れずに真面目な顔をしている加藤。こんなことしてる場合じゃ無いんだろうけど、それでも聞かずにはいられなかった。

 

「……ゲルダリア」

 

「何かしら」

 

「俺らってカスじゃん?」

 

「そうね。クソのロクデナシよ」

 

「人に迷惑掛けて暴れ尽くした」

 

「ええ、そこに憧れたから私はチームに居る」

 

「どれだけ取り繕っても、俺の過去は変わらない。どれだけ今変わろうと、やらかしは俺の影を踏み抜き続ける」

 

「……」

 

「でもな、そんなカスの俺を……応援してくれる人が居る。マトモになりたいと宣う(のたま)この俺を。真っ直ぐに。お前らみたいに、こっちから縁切っても着いてきてくれる奴らが居る。俺の事を知らないとは言え、無償の優しさを、善意を向けてくれる人が居る。……なら、それに少しは返さないといけない。返したい。何かしらを。つまり何が言いたいかって言うとだな──」

 

 

 

 

「オマケの分、働くだけだよ。俺はな」

 

「……それ、良いわね」

 

「だろ?」

 

「仲間に入れてくれない?」

 

「サボんなよ?」

 

「あたぼうよ」

 

 確かに変わったかもしれない。憧れの姿から少し。でも大事な所は前のまま。【自分のやりたい事をやる】。──私だって、ドラショタがたくさん居るここを死体の山にしたくは無い。

 

「じゃあ行くか」

 

「今日は前をアンタに任せるわよ! 後ろは任せなさい! アレやるから!」

 

 早速水路に身を投げる。汚染された魔力と水が体に触れるが……私には全く意味がない。こちとら前魔王の作った殺人兵器。この程度の汚染なんて屁じゃない。吸収し続ける。

 

「やーってやろうじゃない! 首謀者の作戦台無しにして、指差して笑いものにしてやるわ!」

 

 心に覆い被さっていた疑念が晴れる。私のリーダーは少し変わったけど、憧れた信念は変わらない。なら私もそれを──やりたい事を通すだけだ。




500年前、前魔王に作られしスライムの材料は母だった。小さなオスのスライムを産んで程なくして、前魔王の改造を受けた。最早子の記憶は無く、何故か残っている『子供のオス』に対しての感情が何なのかすら、彼女は分からない。
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