ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「やっぱりですね、未来の事なんて考えてたって仕方ないわけですよ。中毒治った後の事を今やったって、結局中毒のまんまですからね。変に欲出すから失敗する訳です。展望を考えろとかよく言いますけど、目の前の岩退かさないと前に進めないんですよ。ずーっと岩に向かってドュンドュンドュンってぶつかり続けても意味無いんですよ。だから逆に良かったのかもしれません。変に上手くいったら調子乗ってやらかしそうだし。俺ってそう言うお茶目な所あるんで。だから全然気にしてないんですよ。今日も今日とてダンジョン清掃。発作を抑える為にダンジョン清掃。死体を片付けて汚れを拭いて、己に課された仕事を邁進する。確かに地味ですよ。凄く地味。別にダンジョン清掃に限った話じゃ無いですけど、人の役に立つ仕事って地味なんです。待遇もいい訳じゃ無い。心無い言葉をかけられる事もあります。それでもその仕事をがあるのは社会にとって必要だからなんですよ。この現代社会に生きる者として、同じ地味な仕事をする仲間として、そう言った人達には敬意と感謝をしていかないといけないなって思うんです。過去の俺はそれが出来てなかった。だからこそ今。変わろうと思うその心こそが、俺の中毒を治すのに必要なんだって、そう思うんです」
「500文字以上の長文垂れ流しお疲れ様です。それで結論は何ですか?」
「うんちぶり」
「めちゃくちゃ悔しいし悲しいんですね。ドンマイです」
ウォルタリアの件から早2週間。以前と変わりなくバイトをし、仲間からダル絡みをされる日々を送っていた。
「ほら、今日の仕事は終わりですよ。帰りましょう」
「そっすね……。はぁ……」
「溜息ばかりじゃないですか……元気出してくださいよ」
「そうは言いますけどね加奈子さん。今の所全然進展してない気がするんですよ。ギアススクロールだってハゲの妨害なんとかする為の物だし……未だに書いてくれるのセラフィナだけだし。加奈子さん書いてくれません?」
「それ成立しちゃったらダンジョンは入れなくなりますよね? 加藤さん達は相殺できるから問題無いけど……」
「そうなんすよね……結局そうなるんだよなぁ」
他の全然関係ない人にお願いしようとしても、怪しまれて相手にされない。やはり仲間に無理やり書かせるか、信用を築いたダンジョンに縁がない人を作るしかない。
「先は長いなぁ……」
「薬の方はどうなったんですか?」
「前に乱用したせいで弱いやつしか処方されなくなっちゃいました」
「……」(憐れむ目)
「何にも上手くいかねぇ……!」
這い上がる事を許されないと言うのか。ふざけるな、どんな目に遭おうと俺は普通に這い上がってやる。世界の修正力に負けたりしない。
「……あれ? あそこに居るのオピスさんじゃないですか?」
「え? ……ホントだ。何してんだアイツ」
「クソアイテム〜。クソアイテムいかがですか〜」
「何だ、アホやってるだけか」
ダンジョンの受付ロビーにはポーションなどが買える売店が併設されているのだが、そこの横に物広げている。当然のように誰も足を止めない。
「売れる訳ないだろ。諦めろ」
「あ、加藤くん。加奈子さんも。仕事終わったのかな? お疲れ様」
「あ、ありがとうございます……あの、何してるんですか?」
「それは勿論、僕お手製のクソアイテムを布教してるんだよ!」
「足を止めてくれた人は?」
「そこに無ければないかな」
「ダイソーの店員みたいな事言ってんじゃねぇよ」
よく見るとこの前見せられた物以外にも新しい産業廃棄物がある。この中に俺がくれてやった【光竜の宝玉】を素材にしたのがあるのだろうか。他の探索者が聞いたらブチギレそう。
「ク、クソ……? あ! あれですか? 加藤さん達の強さじゃ使っても意味無いからって言う……」
「いや、本当にどうしようもないアイテムだね。人によって役に立ったらクソの定義から外れちゃうし」
「……何でそんな物を作ったんですか?」
「ダンジョンから手に入るアイテムはどれもこれも有能な物ばかり。でもそんな中で、加工という手間は入るけど救いようの無いダメダメなアイテムがある。これって素晴らしいことじゃない? しかも高レア素材をクソに変換する……あぁ、まるで新雪を最初に踏みにじる感が堪らない……冒涜してる感が堪らない……」
「加藤さん、この人変です」
「知ってます」
そもそも横領してでもクソアイテム量産して元チーム追い出されてる時点で話にならない。
「何でこの人仲間にしちゃったんですか?」
「当時、確定申告出来るやつが誰も居なくて頭抱えてたんですけどその時にコイツが居たので……」
「仲間ってより事務員としての採用じゃないですか!」
「ゲルダちゃん以外の奴全部やらされてたよね」
「ゲルダリアは戸籍無いからな」
「密入国!?」
まぁその代わり素材アイテムは全部オピス行きだったのでイーブンだ。本人も死ぬほど食いついてたし。
「その、もっと役に立つ物作った方が手に取ってもらえるんじゃ……」
「別にお金に困ってないし。売れる売れないじゃなくて僕と同じ感性を持った人に出会えれば良いんだよね」
「一応聞きますけどちゃんとしたの作れない訳じゃ無いんですよね?」
「そりゃ普通の物も作れるけど……全然愛着湧かないんだよね、作った物粗末に扱う事はしないけど。ほら、ダメな子ほど可愛いって言うじゃん? それだよ!」
「いや全然可愛くないけど、お前は」
「もしかして僕の事ダメな子だと思ってる?」
「ダメじゃねぇ奴が俺の仲間な訳無いんだって」
「それもそっか」
「言ってて悲しくならないんですか!?」
オピスのガラクタを手に取って見ていると受付側で騒ぐ声がする。何だろう、俺達へのクレームかな。
「お願いします! 死体! 死体だけでいいんです!」
「いやもう清掃入りましたし……」
「呼んでるんです! 未知の食材が! その為に来たんですよこの国に!」
カラフルな羽を持ったハーピーが受付に詰め寄っている。見た感じ探索者では無さそうだ。丸腰過ぎる。
「あの人……死体が欲しいって言ってませんか?」
「ネクロマンサーか? 死体操作って国際法で禁じられてるだろ」
「そもそもダンジョン内の死体ってモンスターの事でしょ? 探索者はみんな蘇生されて入り口行きなんだから」
「ああ、確かに」
さっき俺と加奈子さんが掃除したからダンジョン内に死体はもう残っていない。次の探索者の予約は入っていないので、今日はもうダンジョンは閉める予定になっている。
「居ますよね、閉店ギリギリになって入店してくるお客さん……。スーパーでバイトしてた時よく遭遇してました。締め作業してるのに店内ウロウロされて困るんですよね……。あ、いや営業時間内ではあるから悪くは無いんですけど!」
「いや分かりますよ。そりゃ閉店時間と共に帰りたいですよね。だから勤務時間内に片付けも終わらせて時間バンで帰る予定だったのにお客が来て先延ばしになる。ダンジョン清掃を転々としてた時に結構喰らいました」
「要するに空気読めカスってことだね!」
「聞こえているんですけど!?」
ハーピーがこちらに向かってきてしまった。やばい、声がデカすぎたようだ。
「あ、ご、ごめんなさい! つい愚痴を……」
「ほんのちょっとで良いんですよ! いいじゃないですか! 別に戦いたい訳でも宝箱欲しい訳でも無いんですよ! モンスターの死体……いや、新たな食材が欲しいんです!」
「何コイツ。美食屋? グルメ細胞進化させる為に来たの?」
「と言うかモンスター食うとか言った?」
「そうなんです! 私はモンスターを食べてみたいんです!」
興奮し切った顔で騒ぎまくるハーピー。受付の人も頭を抱えている……仕方ない、セラフィナに遅くなるって連絡入れるか……。
◇ ◇ ◇
「申し遅れました! 私ハーピーのケルコット。料理人をやっています!」
「ホントかよ。全然料理得意そうに見えないぞ」
「そもそも腕が無いですよね……? 包丁握れます?」
「あー! やっぱりそこ気になりますよねー! でもご安心ください! 立派な両足が付いてますので!」
「足クッキングって事かな?」
「ニコニコにありそう過ぎるな」
ケルコットさんが足を見せつけてくる。鋭い鉤爪に体に似合わない大きさ。猛禽類の足みたいだなぁ……。
「で? モンスターを料理したいと?」
「はい! 私この国のお料理ギルドに入りに来たんですけど……入団試験で個性的な料理を作る必要があるんです。そこで! モンスターを材料に作れば誰も食べた事ないような料理が出来ると思いまして!」
「お料理ギルド……? そんなのあるんですか?」
「あー、なんか聞いた事あるかも。確か各国のお偉いさんにも料理作りに行ったりする連中だよ。魔王様の所にも行ってたはずだね」
「料理人集団みたいなもんか。その試験でモンスター料理をね」
「そうなんです! 名アイデアでしょう!」
「「やめとけ(やめといた方いいね)」」
「えぇ!? 何でですか!?」
即否定をした2人は決して騙そうとか意地悪とかそう言う顔では無く、心の底からの忠告に見えた。
「あの、もしかして食べた事あるんですか?」
「思い出したくない」
「考えたくないよね」
超真顔だ。あらゆる感情が久しぶりに見ようと思って開いたpixivのブックマークくらい削除されている。
「その……お2人は割と凄い探索者でして……その2人が言ってるって事は多分やばいんですけど……」
「そ、それでも! ギルドに入るには絶対必要なんです! お願いします! お礼しますから!」
「別に今日じゃ無くても良くね? 明日にでも来れば良いだろ。もう18時だぞ」
「試験が明後日なんです! 時間が無くて……ずっと夢だったんです、ギルドに入るの。料理が好きで国でも店をやってたんですけど、私の料理をもっと色んな人に食べてもらいたいんです! その為にはギルドに入るのが1番なんです!」
加藤さんと目を合わせる。死ぬ程面倒そうな顔をしている。早く帰りたいみたいだ。私もそうなんだけど……。
「ちょっとなら……良いんじゃ無いですか?」
「まぁここで粘られても怠いですからね……」
「入って1体だけ倒して入り口付近で料理すれば良いんじゃ無いかな。入り口近くならあんまりモンスター来ないし」
「そうするかぁ……受付の人達に言ってくるわ」
「本当ですか! ありがとうございます! ありがとうございます!」
パタパタと羽を羽ばたかせて喜ぶケルコットさん。正直な所、モンスターの料理と聞いて少し気になる自分も居る。加藤さん達が嫌がってる理由からして、多分美味しく無いとは思うんだけど……。
「まぁ俺らの時は炭になった奴食っただけだしな。ちゃんと料理すればイケるかもしれん」
「高木くんが魔法で焼いた奴を皆で調子乗って食べたよね。セラちゃん以外が」
「加藤さんって普通におバカですよね? どうして食べちゃうんですか?」
「そのどうしようもない子供見る目だけは勘弁してくれないですか? 今にも俺と言う歴史に終止符決めたくなるので」
受付の人に頼み、再度ダンジョンに入る私達。清掃したばかりなので当然綺麗だ。
「1体で良いんだよな?」
「はい! 種類は何でも良いです、どんなものが食材でも美味しく料理する。それが料理人です!」
「分かった。じゃあオピス、頼んだぞ」
「え? 加藤くんがやるんじゃないの?」
「いやほら、変に宝箱落ちたらヤバいから……」
「僕が倒してドロップしても変わらないよね?」
「最悪加奈子さんに頼んで頭に矢ぶっ刺して貰うから大丈夫だ。あれなら暴走しなくて済む」
「やりませんからね!? もう2度とやりませんから!」
そうこう言ってるうちにオピスさんが徐にライフルを取り出してぶっ放す。ダンジョンの壁に。弾は何度も跳ね返って通路を進んでいき──。
「ゴギャア!」
「はい当たり」
「やるじゃん」
「そりゃここのダンジョンの難易度じゃこれくらいやれないと」
モンスターの断末魔が聞こえた。もしかして跳弾させて視界に入ってないモンスターに当てた?
「え、この人達もしかして凄い人ですか?」
「まぁ……良い意味でも悪い意味でも……」
これくらい当たり前でしょ? みたいな顔でサラッとやるから温度差が激しい。別に誰かに自慢したりする訳じゃ無いからあれだけど。やっぱり高レベル探索者って人間離れしているんだなぁ……。
「ほら、これで良いか? ワイバーンだけど」
「おお……初モンスター料理がワイバーン! 腕が鳴ります! 無いけど」
加藤さんが入り口付近に持ってきたワイバーンの前で調理器具を広げていくケルコットさん。太い爪で器用に準備をしていく辺り、慣れていそうだ。
「さっき店やってるとか言ってたけど、評判良いのか?」
「はい! 常連のお客さんが付いてるくらいですよ!」
「へー、どんなの出してるの?」
「普通ですね。私の料理よく普通の味って言われるんです。何作っても普通に食べれるレベルの物。なのでレベルアップする為にもギルドに入りたいんですよ!」
「普通? 普通なのに常連付いてんのか?」
「はい! 何でも私の料理しているところを見るのが好きだそうです!」
そう言いながらワイバーンを捌いて料理をし始めるケルコットさん。低空飛行しながらクレーンゲームのように食材やら食器やらを移動させている。……ただ、ひとつ問題がある。
「……加藤くん、常連が付いた理由分かったよ僕」
「……何と無く分かったけど一応聞くわ。何?」
「めっっっちゃパンツ見えまくる。白の」
「なるほどね。常連は食欲と性欲を満たしにきていると」
「常にモロ出しって訳じゃ無いのがミソだよね。『あ、今見えた。あ、また見えた』って感じで目が離せないよ」
「すいません、2人とも真顔で最低な事言うの辞めてもらって良いですか?」
「いやでも殆ど見せつけてくるような状態ですよ? 俺ら悪くないですよね? 別に俺の好みでもないんで何も無いっすよホント」
「セラフィナさんに言いつけて良いですか?」
「おいオピス! お前目逸らせや! 目隠してるくせに見えてんじゃねぇよ! 全く恥晒しが!」
「僕だけに罪擦りつけるのやめてね。ちなみにさっきの会話は全部録音してるから後でセラちゃんに送るね」
「あ、終わったわ俺。明日ミイラだ」
そんな会話をしながら料理中の彼女から目を逸らして10分ほど。出来上がったのはシンプルなスープ。ワイバーンの肉や持ち込んで来ていた野菜などが入ってる。
「出来ました! ワイバーンのスープです!」
「見た目は悪く無いね」
「普通に美味しそうですよ? これなら大丈夫じゃ無いですか?」
「匂いも特に問題なさそうだな」
「これで美味しければ私の入団は確実! それじゃ早速味見を──いただきまーす!」
器を羽で持って勢いよく飲むケルコットさん。具材をしっかり咀嚼。そして──。
「うん! うオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェ!!!」
「えぇぇぇ!? ケ、ケルコットさぁぁぁん!!!」
「「知ってた」」
ケルコットさんの口からとんでもない量の虹色が噴き出る。比喩表現とかでは無く、本当に虹色の吐瀉物が吹き出でいる。
「ちょっとぉぉぉ!!! 何で食べた量の数十倍の量出てくるんですか! 何で虹色なんですか! 何で出てきた物がゲーミングPCみたいに点滅してるんですかぁぁぁ!!!」
「炭だろうとちゃんと料理してようとダメなんだなぁ」
「懐かしいなぁ。僕達もセラちゃん以外全員でレインボーロード作ってたよね」
「こんなゲーミング吐瀉物で出来たコースなんて走れる訳ないでしょうが! と言うか知ってたなら何で言わないんですか!!!」
「僕達は身を持ってこの地獄を味わったのに、他の人は何の対価も出さずに回避出来るなんて烏滸がましいとは思わんかね……」
「忠告はしたし、それでも食べるのは個人の自由じゃないですかね。うん、俺ら悪くない悪くない。そもそも時間外労働させられてるし」
「自分の苦労を他人にもやらせるタイプ! だとしても限度がありますよ! こんなに酷いことなるなら言わないと!」
「オエエエエエエエエエエエ!!!」
「嘘!? まだ止まらないんですけど!? しっかりしてぇ!」
「僕たちの時どのくらい出したっけ」
「30分くらい銀河製造ミルキーウェイウェイしてた記憶」
「30分!? 辺り一面レインボーになりますよ!? ちょ、何とかしないとぉぉぉ!」
リバース物に触れないようにひたすら背中を摩る。本人も止めようと頑張っているのか、途切れ途切れになってきた。
「う、うう……」
「ケルコットさん! 大丈夫ですか!?」
「この前ウォルタリアで拾ったエリクサーあるけど飲む?」
「あ、ありがとうございます……いただきます……」
「凄い! 数分で回復傾向だ! これは料理の効果だよきっと!」
「虚無の励ましなんて必要無いんですよ! この人に必要なのは水ですよ水!」
噴水のように噴き出した虹はダンジョンの入り口の方まで流れてしまっている。大惨事だ、加藤さん達は前に複数人でこれをやらかしたってことは更に酷い事になってたんだろう。終わっている。
「それで……味はどうだった?」
「口に入れた瞬間『は? 死ねよお前』と言う殺意と『生きて帰れると思うなよ』的な怨念と『その命、神に返しなさい』みたいな悪意が暴れ回ってきました……」
「どんな味!? 古今東西あらゆる毒物合わせてもそんな味になりませんよ!?」
「あーその感覚分かるなー。殺しに来るんだよねこっちを。人殺せるよあの味」
「こ、こんな事が……よくある感じなら『モンスター美味すぎる! これでダンジョンで店開くぜ!』的な流れになる筈なのに……」
「僕たちも最初はそう思ったんだよ。でも冷静になって考えてみて? ──日本人が食べてない時点で、食えたもんじゃないんだよ」
「う、迂闊でしたぁぁぁ! そうだ! あの美味ければ何でも食べる日本人が食べてないのに美味しい訳無かったんだぁぁぁ!!!」
「いや別にそんな事ないと思いますよ!?」
「でも実際美味かったら食ってる筈なんですよね。だってダンジョン出来て数百年経ってるのに1度もモンスター料理なんて出てきてないんですもん。それって料理にならないって訳で……」
横目に残っているワイバーンのスープを見てみる。さっきと同じく匂いも見た目も普通で悪くない。なのに味だけ地獄。魔力で出来てる筈なのに味があるのも不思議な話だけど……。
「こ、これどうします……?」
「いやー……捨てるしかないでしょこんなの」
「食べ物を無駄にしてはいけないって言うけど、これ食べ物じゃないからね。食べれてないからね。じゃあ捨てるしかないよね」
「……めません……」
「「「え?」」」
「諦めません!!! きっと、きっとモンスター料理は食べられるものになる筈! 私ならそれが出来る筈! 調理方法がダメなだけなんです! きっとモンスターは美味しく料理できる! ……これはもう私の、料理人としての意地!」
ケルコットさんは立ち上がって荷物を纏めてダンジョンの外に向かう。
「明日! もう1度チャンスをください! 明日までにありとあらゆる方法を準備してモンスターを食べられるものにして見せます! それこそ蒟蒻のように! それではまた明日! ウォォォォォ!」
そう叫びながら居なくなってしまった。残ったのは私達と色鮮やかなミルキー⭐️ウェイ。
「……あ、僕お先にー」
「え? あ、おう。……いや待て!? これどうすんだ!? 俺か? 俺が掃除か!? 嘘だろ!?」
「で、でも掃除しないとまずいですよ!」
「おいぃぃぃ! ゲボ放置して帰んなぁぁぁ!!! 掃除していけぇぇぇ! 何で俺がお前の天の川掃除しなきゃならねぇんだぁぁぁ!!!」
そう言って加藤さんは走り出した。ケルコットさんを捕まえる為だろう。でもそれは、床に虹が架かっている状態のこの場では、最悪の一手だった。
ズルッ
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
バランスを崩した加藤さんは凄まじい速度で床を滑り出す。速度は落ちるどころかドンドン上がっていき、あっという間に──。
「いやー掃除なんてやりたくないからね、逃げるが勝ち……え?」
虹掃除から逃げ出したオピスさんの背後まで到達した。残念ながら、この虹にブレーキは存在しない。追突する2人。そしてそのまま────。
「「「あ」」」
◇ ◇ ◇
「おっせぇなぁ……もう21時だぞ。飯冷めたじゃねぇか」
「マスター大丈夫でしょうか。こんなに長引くなんて……」
遅くなると言う連絡が来てから数時間。待てど暮らせど加藤は帰って来ない。明日だってバイトなのにこんなに遅くなるなんて初めてだ。
「クソ。今日はいい感じに作れたのによ」
「毎日主婦面お疲れ様です」
「黙れ粗大ゴミ。処理券貼って回収されてぇのか?」
「一緒に住んでる人の所有物を勝手に捨てたり売ったりするとか人格を疑います。ああマスター、こんな人に粘着されて可哀想。私が慰めてあげなければ」
「「…………(メンチの切り合い)」」
恒例行事になりつつあるコイツとの暴言も今日で5回目だ。加藤が返って来ないと基本的にコイツと2人なのでストレスがやばい。加藤で発散しないと。
「……む。マスターの気配! 出迎えしなければ」
「テメェはゴーレムらしく待機してろや。アタシが行く」
「今の私はそれこそルンバ並みに自立行動が可能ですので。そのうち猫型ロボット並みに役に立ち始めるのでお覚悟を」
「なったとてどうせ映画序中盤の役立たず状態で固定されてんだろ」
家の外から気配を感じたので玄関まで歩く。タイミングよくアタシが玄関に着く前にドアが開いた。
「マスター、おかえりなさいませ。お待ちしておりました」
「おう、おかえり。遅かったじゃねぇか──」
「……ただいま」
そこには大量の虹色ゲロに塗れた死にそうな顔をした加藤が居た。…………なるほど、そう言うことか。全く仕方ねぇ奴だ。
「お前なぁ……先に言えよ、そう言うプレイがしたいならよ。待ってろ、汚してもいい下着に変えてくっから」
「んな訳ねぇだろバァァァァァァァァカ!!!」
「お風呂貸してぇぇぇ……」
んだよ。違うのかよ。なら取り敢えず飯より前に洗濯機を回す事になりそうだ。
オエー!(オエー鳥)