ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「やはり人族共にくれてやるような物では無かったのだ! 今すぐにダンジョンの引き上げを!」
「何を愚かな事を! 魔王様が何故ダンジョンを作ったのを忘れたのか! アイテムの供給を増やす為だぞ!」
「魔族だけで独占すれば良かろう! 人族共には高値で適当に流せば──」
「そんな事をすればまた戦乱の世に逆行する! 貴様、まさか戦場に出るのが己では無いからと好き勝手言っているのか!?」
「では今回のダンジョンを悪用したテロはどうする! 人族共に管理させていたからこうなったのだぞ!」
「実行犯が行方不明、バックに居たであろう存在も不明! まだ何も分かっておらん! 今世の中のシステムにメスを入れれば死を早めるだけだ!」
「(はー……参ったのぉ……)」
まさか自分が行う会議でここまで荒れる日が来るとは思わなかった。議題が議題故、仕方ないのだが……。
「まぁ落ち着けお前達」
『しかし!』
「人族達に渡したダンジョンをどうこうするつもりは無い。あくまで管理徹底を主に警戒を高める。そう言う話だ。あまりにガチガチに縛れば綻びが出るからな」
「ですが魔王様! これでは人族共が増長します! ただでさえもっとダンジョン作れなどふざけた事を抜かしているのですよ!」
「もっと作れったって元々ダンジョンが無い国からの要請が殆どだろ。他国と一緒くたにするのはいかんぞ」
「ウォルタリアの事件は如何なさるのですか! まさかこのまま何の罪にも問わないと!?」
「罪も何もウォルタリアは完全に被害者だろう? 下手人はエルフだったらしいが、結局解決したのもエルフや人間だったらしいぞ? ちゃんと自浄作用が働いてる証拠では無いか。変に口を出せば儂達魔族で揉めた際に一々口を出されるぞ」
やたら人族に責任を取らせようとする連中は多くない。だが少なくもない。決して無視出来る人数では無いのだ。面倒だなぁ……。
「後日ウォルタリアの方に訪問するつもりだが……もしかしてお主ら反対か?」
「当然です! 王妃とやらが来るのが筋と言うものでしょう!」
「(マトモに歩けないのに来れる訳無かろうて)」
ウォルタリアの王妃は【傀儡】なる未知の魔法の影響で歩行困難になってしまった。何でも攻め込んだゼルエネスの王も同じ魔法をかけられて寝たきりらしい。死んだ父すら知らないであろう魔法。調べても全く情報が出てこない。やはり失踪した主犯のエルフを探す他無いだろう。
「さて……そろそろ時間だ。一先ず人族に対して儂らが関係を切るような真似はせん。圧をかけるつもりも無い。んな暇があるならゼルエネスから押収した暴走結晶なる物の解析しておくれ。頼んだぞ」
「王! 王よ! どうか考え直して──「1つ聞きたいのだが」──ッ!」
「いつから我の決定に否を唱えられるようになった?」
「……申し訳ございません。我らが王よ。解析、全力で進めます」
「おう、頼んだぞ〜」
会議室を出て廊下を歩く。決して悪人では無いのだが……敵対心が抑えられんのがなぁ。困った連中だ。
「王よ、失礼します」
「おーケルロス。どうした?」
「食事の時間です。既にルロ様が席に着いております」
「え? ……あ、もうこんな時間か。最近時間の進み早くないか? 気のせい?」
「それだけ多忙と言う事かと。お体の方は大丈夫ですか?」
「こんなんで弱る様な体なら当の昔に死んどるわ」
加藤達と揉めた日からルロと毎日食事を取る様にしている。毎食とは行かないが、ケルロスが合間を縫って準備してくれる。相変わらず気の利く奴だ。
「すまんな。毎日毎日」
「ルロ様との仲が改善されるのは、私にとっても喜ばしい事です。全力でサポートさせていただきます」
「そうかそうか。……さて、ケルロス。例の話だが……」
「! お心を決められましたか」
「ああ、流石にな。時が来たと言ってもいい。今決めなければもうタイミングが無いだろう」
神妙な顔をするケルロスに向き直り、告げる。
「鉄拳の新台、何とかコネで買っといてくれ」
「違 う だ ろ、違うだろォォォ!!!」
「え? 嘘、違った?」
「合ってる訳無いでしょうが! 何考えてんだこのギャンカス! どう考えても過激派を抑えて城内の意見を纏める流れでしょうが!」
「ああ! そっちか! てっきり外に出る暇が無いからせめて城に新台をって事かと……」
「アンタに都合良過ぎるだろそれ! つーかまだ買うんですか! ルロ様との時間増やす為に半分くらい処分したのに!」
「パチンコは卒業だ。これからは台数も減らしてスロット一択にする。そう言ったろ、鉄拳はスロットだから大丈夫だ、問題ない」
「アンタの理性は問題アリだよ!」
どうも違ったようだ。そっちかー。2択外したかー。ちと迷ったんだがなぁ……。
「やっぱり何とか時間作って店で打った方良いか?」
「まぁた人族の国と言うか日本に行くんですか! 前回はダンジョンの試運転だったから許可しましたが、今回は認める訳にはいきません! んな事してる暇無いでしょ!」
「儂だってストレス溜まっとるんだぞ。毎日激務に晒されて配下からあーだこーだ言われて。そりゃパチるだろ」
「ストレス溜まってんのは睡眠時間削って打ってるからでしょうが! アンタ今何徹目だよ! もう1ヶ月は寝てないでしょう!」
「ほら、魔王に睡眠は無効だろ? 寝ても寝なくても大して変わらんからヘーキヘーキ」
「んな事言ってどうするんですか、リメイク版だとゾーマもグランドラゴーンもグースカピーだったじゃ無いですか。魔王様だってリメイクされたらラリホー貫通ですよ」
「いや儂のリメイク is 何? もしかして転生か? 輪廻回っちゃう感じか?」
「兎に角! 魔王様も今の城内……魔王軍の意見が割れに割れているのは存じている筈です」
「当然だ。過激派連中がずっと燻っていたが、ウォルタリアの件で噴き出しおった。全く、どこの誰だか知らんが余計な事してくれたものだ」
「今のまま放置では独断で動く者が間違いなく出てくる! その際に起きるであろう問題! やらかした者への処断! その後の軍内の規律の引き締め! 一気にやってきますよ! 唯でさえ仕事が溢れているのにこれまで来たらパンクします!」
「しかしなぁ……でもなぁ……」
「……何にそこまで渋られているのですか。迷うような事でも無い筈ですが」
「いやルロがなぁ……変に影響受けたら困るでな」
「ルロ様が?」
全く考えてなかったと言う顔をするケルロス。まぁそりゃそうか、こんなの考えてるの儂だけだろう。
「意見を纏めて足元を固める。うむ、大事な事だ。やらねばならぬ事だ。だがこれだけ荒れている連中を縛り上げるには強引に進める必要がある」
「当然です。いざとなれば力を示す。それが魔族の原始からの決まりです」
「まぁ儂に勝てる魔族なんざこの世におらんからな」
「人族でも居ませんがね。過去の魔王と相打ちになった勇者とやらなら分かりませんが」
「だから纏めるのは可能。だがその際に問題が出てくる。儂に反対する連中がルロに近づこうとする可能性だ」
「!!! ……それは」
「心当たりあるだろう? 追い払ってくれているのだろう? ありがとうな」
最近儂に対して反対する連中は、真っ向で意見しても無理だと悟ったのか絡め手を使ってくるようになった。その1つがルロだ。ルロに関わり自分に都合のいい様に言わせたい。儂が最近ルロに対して接し方が変わったのも理由なのだろう。
「ルロは聡い子だ。だがまだ幼い。あやつの思想は真っ白なのだ。それをどんな色にするかはルロ次第。本人に決めさせたい。余計な茶々を入れられては困るのだ」
「……」
「城内を締め上げる以上、儂もお前も多忙になる。締め上げられる連中も躍起になって更にルロに関わろうとするだろう。それは避けたいのだ」
「ですが、仮に城から避難させたとて魔王様の近くがこの世で1番安全です。もしルロ様に何かあれば王妃様に申し訳が立ちません」
「そうなんだよなぁ……どうするか……」
何処かに居ないものだろうか。儂と同等までいかないまでも強くて安全で、ルロを何が何でも守ってくれそうな奴……。
『うっひょぉぉぉ! 宝箱ォォォ!』
「居たわ。普通に」
「はい?」
「そうだそうだ! 彼奴に頼もう! ルロも懐いておるし喜ぶだろ! あー良かった! 解決解決」
「懐いている……!? ま、魔王様! まさかあの、あの気狂いに頼むのですか!」
「反対か?」
「大反対です!!! どう考えてもこの世で1番教育に悪い存在ですよ! 奴の事を調べてみたら湯水の様に出てくる悪行! 四捨五入したら犯罪者ですよアレは!」
「ギリギリ犯罪犯して無いし、今はある程度大人しくなっただろう。何よりルロも嬉しいだろ、前もあんなに喜んでたし」
「前も言いましたが乱闘騒ぎ起こしまくって営業妨害やらかしまくってダンジョン荒らしまくってたんですよ! 犯罪なってないのは探索者同士だからお目溢しされたり、金で解決しているからです!」
「お前もこの前会っただろう。気の良い奴だろ? 周りの連中も。儂的にはかなり信頼できる相手なのだが」
「今すぐレーシック手術してください」
「いや裸眼でバリバリ見えるから。視力悪い訳じゃ無いから。てかこの前ルロをあの家に泊まらせただろ。何を今更」
「あれは魔王様と私が近くに居た故です! あの程度の距離であれば即座に移動出来たから許可したのです! 何かあれば駆けつけてあの人間の喉笛を掻っ切れるが故に!」
「ケルロス、多分返り討ちだぞ」
「そもそも何故ルロ様はあの男に懐いておられるのですか! 王に叱られているのを庇われた程度で!」
「あっはっは」
「笑って誤魔化すな!」
鶴岡が匿っている【道具喰い】の関係で以前の事は人族の探索者と揉めたとしか伝えていない。その際に叱ったルロを庇ってから懐いたと言った為、ケルロスの認識ではチョロくないか? となる訳だ。実際はルロを昏倒させようとした儂に立ち塞がって来た訳だが。
「さてさて、ルロと食事にするか。喜ぶぞ〜あやつの笑顔が目に浮かぶわい」
「お待ち下さい! どうか考え直してください! ルロ様に連中の気狂いが移ったらどうするのですか! 王よ! 王よぉぉぉ!!!」
◇ ◇ ◇
「って感じでな。1週間で城内の意見纏め上げるからその間頼んだぞ」
「俺まだ承諾してないんだけど?」
「あ、明日からな。じゃあ儂帰るから。明日お前の家の前にポータル開くからよろしく頼むぞ!」
「話聞けやぁぁぁ! 誰も許可してねぇんだって! しかも1週間!? そんなに預かれるか!」
「何故だ? ルロはそんなに手が掛からんと思うんだが……」
「お前8歳の娘を26のフリーター男に預けるとか正気か! そんなのが許されるのは創作の中だけなんだよ! 側から見たらやば過ぎるだろ! 犯罪の臭いプンプンだわ!」
「自分で言うか。なぁにお前なら安心だ。いやー本当に丁度良かった。これ決めたの昨日でな? 今日あたりに連絡するかーと思ってたらお前から手を貸してくれと来たではないか。じゃあ先に頼みを聞いてやってから預かって貰う事を言えば逃げられんだろ。まさか儂にタダ働きさせる訳じゃなかろう?」
「完全そっちの都合オンリーじゃねぇか! 俺の家に住んでる奴を考えろよ! 8割裸女と激毒舌ゴーレムと中毒者しか居ないんだぞ! PTA怒り通り越して発狂だろ! 唯でさえ最近セラフィナとロールが罵り合いしまくってるのに! 毎日うるせぇんだよ!」
「そもそもお前がアレを連れて来なけりゃ良かったんだ──よぉ!!!」
「イッテェ!? 足踏むなバカフィナ! 泣かすぞ!」
「たくよぉ。泊まるも何も、何の準備もしてねぇんだぞ。言うならもっと早く言えや魔王よぉ」
「すまんなセラフィナ。お前さんには言っておくべきだったか」
「俺に言えよ! 家主俺! ルロには悪いが断る! とにかく・・家に泊まるのは認めん・・俺の世間体に傷がつくからな・・」
「元からズタボロ雑巾のお前の評判に世間体なんて関係ありませぇええん!!」
「なんだとぉ・・」
「安心しろ。流石に何も無しに頼もうとは思っておらん。ちゃーんと報酬を用意してある」
「報酬? いらんて。それ貰って引き受けたらそれ目当てでルロ預かったみたいになるじゃん。嫌過ぎる。仮に預かるんだとしても何も受け取らないぞ」
「お前ほんと変な所でしっかりしてるな。もっと足元固めた方いいぞ。それで礼とはこいつだ」
要らないと言っている俺の手に無理やり魔王が乗せて来たのは見たこともないポーションだった。名状しがたい極彩色をしている。
「な、何これ……やば……色終わってんだろ……ほぼモンスター食った時のゲボだろ……」
「そいつはスーパーウルトラハイパーミラクルポーション! 今は亡き父が作り出した究極のポーション! らしい。死んでさえ無ければあらゆる症状を回復すると言うエリクサーの上位互換だ! そうだ」
「聞こえてんだよ小声がよ。碌にテストもしてねぇって事だろうが! しかも亡き父ってそれ先代魔王だろ!? 何百年も前じゃねぇか! 飲めるかぁ!」
「やべぇなこれ。飲んだら仮に治っても死にそうだぞ」
「何で沸騰してないのにボコボコしてるんですか? この泡なんですか?」
「さぁ? 試そうにもこれ1本しか無いから勿体無くてな。父の蔵を掃除してた時に出て来たんだが……どうも精神系にもちゃんと効く様だ」
「だから?」
「分からんか? おまえさんが治したがっている中毒症状も治るかも──」
「うおおおおお! ゴチになりま──って無い!?」
先程まで手にあった筈のポーションが無くなっている。チャポチャポと音が鳴る方を振り向けば魔王がしたり顔で瓶を揺らしていた。
「すまんな。1本しか無いから前払いは無しだ」
「ぐ、ぐぐぐ、うぐぐぐぐぐぅ!!!」
「加藤、お前には選ぶ自由がある。初志貫徹して断り、ルロにがっかりさせてポーションも手に入らない。考えを変えて頼みを引き受けて、ルロを笑顔にしてポーションも手に入る。どちらを選んでも儂は構わんぞぉ? うぅん」
「あああああああ!!! 分かりましたぁぁぁ! やります畜生ぉぉぉ!!!」
「その言葉が聞きたかった! まだまだケツが青いな加藤。ガハハハハ!」
「加奈子さんごめんなさい……俺は……弱い……」
「いや今のはノーカンかと……。目の前に人参置かれたら……うん……」
かくして俺は明日からルロを預かる事になった。……家掃除しないとなぁ……。
魔王が帰った後
「あ、そう言えばカルパッチョほったらかしだ。捨てるしか無いかー、勿体無い」
「あぁ、大丈夫だ。処理班呼んだから」
「加藤! カルパッチョ食べ放題って聞いたから来たわよ!」
「そこにあるの全部食っていいぞ」
「うひょぉぉぉ! う〜ん刺激的な味が癖になる〜」
「アイツ大体の物食えるから任せようぜ。壊す腹も無いからな」
「適材適所だね」