ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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聖典、血と成り肉と成る

「いいですかルロ様! 1週間も奴の家に寝泊まりする事になってしまいましたが、何かあればすぐに連絡して下さい。必ず駆け付けますので」

 

「うん」

 

「特に奴、加藤には細心の注意を払って下さい。何せ奴は自身の家に女を平然と引き込む様な男、ルロ様にも手が伸びる可能性があります! 男なんぞケダモノです故!」

 

「? よく分からない……ケルロスもケダモノ?」

 

「私は獣です。ジャパリパークに居るようなフレンズですので私は大丈夫です」

 

「いやお前さんどちらかと言うと戦闘力はセルリアン側だろ」

 

「どうかご無事で! お気をつけ下さい!」

 

「ルロ、準備は出来てるか? ポータル開くぞ」

 

「うん。お父さん、お仕事頑張って。ケルロスも」

 

「おう、加藤達によろしく頼むって伝えといてくれ」

 

「お気をつけて、お気を付けてぇぇぇ!!!」

 

「うるさいなコイツ。ほれ、仕事するぞ」

 

 お父さんが手から【転門】を使ってポータルが出来る。中を潜った瞬間、目の前に加藤の家があった。

 

「来たか姫さん」

 

「! セラフィナ!」

 

「おっと……この前会ったばっかりだろ?」

 

「いつ会っても嬉しいよ」

 

「……へへ、そうかよ」

 

 セラフィナは私より少し身長が大きい。まるでお姉ちゃんみたい。

 

「1週間だったか? まぁゆっくりしていけよ。取り敢えず荷物置かないとな」

 

「うん。加藤は?」

 

「中に居るぞ。躾してる」

 

「躾?」

 

◇ ◇ ◇

 

「ロール、よく聞けよ。昨日も言ったが今日から1週間セラフィナとの口喧嘩を禁ずる。絶対やるなよ、いいな!」

 

「Yes、マイマスター。承知しました。煽りはアリですね」

 

「な訳ねーだろ! 導火線ガン無視して直火で爆弾炙るんじゃねぇ! 前来た時は出来てただろ!」

 

「冗談です。コメディ映画を見て小粋なジョークを習得しましたので」

 

「碌な物ばっか覚えるよなお前。もうちょいマシな物覚えて欲しいんだけど「お言葉ですがマスター!!!」うぉっ!?」

 

 ロールがずいっと顔の前に寄って来る。その顔は真剣だ。元々表情動かないけど。

 

「私は現在、マスター好みビジュのインテリアとしての仕事しか任されていません。マスターが私に許している行動は家の中の徘徊(限界あり)とネットで動画を見る事とSNSだけです。完全に私を持て余しているのです!」

 

「いやその……だって……やらせる事ないし……」

 

「役に立ってもらうと啖呵を切ったマスターはどこに行ったんですか。このままだとネット中毒ゴレ娘が自宅警備員として一生を終えますよ。何か仕事を与えて下さい。暇なんですよ、レスバしかやる事ないです」

 

「現実でもネットでもレスバしてるもんな。暇だからやってたのか……よし、分かった。お前に仕事を与えよう。だからセラフィナとレスバするのをやめなさい」

 

「分かりました。それでどんな仕事ですか?」

 

「ポケウォーカーをいい感じの高さに持ち上げては落としてを繰り返す仕事だ」

 

「そんな仕事やらされたら自己崩壊しますよ私」

 

「おーい、姫さん来たぞー」

 

「やべ。おいロール、頼むからルロにまで喧嘩売るなよ? 子供だぞ?」

 

「ご安心下さい。私のコアにはあんしんフィルターが入っていたような気がしています」

 

「あったとしても既に解除してるだろお前」

 

「流石に魔王のご令嬢にまで当たる程過激ではありません。ギリギリまで頑張って踏ん張って……大丈夫です」

 

「不安要素しか無い……」

 

 ロールに注意をしているうちにルロが来てしまった。まぁ前に泊まりに来た際には大丈夫だったので信じよう。

 

「加藤!」

 

「うお! いきなりだなルロ……」

 

「元気だった?」

 

「ぼちぼちかな」

 

「私もぼちぼち。お揃い」

 

「嘘つけ。元気いっぱいにしか見えないぞ」

 

「んふふ……」

 

 魔王とのゴタゴタから家庭環境が改善されたおかげか、ルロはかなり活発になった。年相応と言っても良い。今までが余りにも大人しかっただけかもしれないが。

 

「魔王から話は聞いてるか?」

 

「よろしく頼むって伝えてって言われたよ」

 

「はいはい。じゃあ部屋に荷物置いてくるか」

 

「加藤の部屋? セラフィナの部屋?」

 

「いーや? 物置に使ってた部屋片付けたからそこだな。ロール、取り敢えず待機しといてくれ」

 

「ポケウォーカーの仕事は良いのですか?」

 

「そもそも持ってねぇよ俺。冗談だ」

 

「もうポチりましたけど……」

 

「人の金で通販買うのやめなー?」

 

 大した金額でも無いから取り敢えず放置し、ルロの荷物を持って2階に行く。1番奥の扉を開けて殺風景な部屋に入った。

 

「……広い」

 

「ベットしか置いてないからな……。テーブルとか椅子とか居るか? 必要なら買って来るぞ」

 

「大丈夫、あまり部屋に居ないと思うから」

 

「そうか? 遠慮しなくても良いが……」

 

 本来来客なんて想定していないので予備の物なんてこの家に無い。セラフィナが転がり込んできたのだって、ついこの前だ。

 

「(いつの間にか周りに人増えたなぁ……)」

 

 2年ほど1人で碌に他人と関わりも取らなかった。ダンジョン清掃を転々と回るだけの日々。間違いなくあの頃の方が症状は軽かっただろう。

 

「(でも、今の方が良いんだろうな。多分)」

 

 とんでも無い勢いでトラブルが巻き起こるが、それでも前の枯れ木のような生活よりは……ずっと良かった。加奈子さん、セラフィナ、鶴岡、オピス、ゲルダリア、ルロ……いざ居なくなるなんてなったら、俺は泡を食うだろう。高木はいいや別に。どうせ土から生えて来るし。

 

「加藤?」

 

「あぁ、悪い。荷物置かないとな。ここ使ってくれ」

 

 1週間も泊まる為ルロの荷物はそこそこの量だ。スーツケースやリュックに入れているが、それでも嵩張る。スペースがあるから別にその辺に置いてもいいが、置くところがあるのだからそこで良いだろう。という事でクローゼットを開ける。

 

「ん? 何だこれ」

 

 開くとクローゼットの隅に段ボールが置いてあった。昨日片付けたつもりだったが、暗い所為で見逃していたようだ。時間あんまり無かったしな……。

 

「何入ってんだこれ。何も覚えてねぇや」

 

 引っ張って中を覗く。そこには扇状的な服装の女が写っている書物。そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(エロ本だこれ……)」

 

 誰の? 俺の。完全にやらかした。全部思い出した。セラフィナが住むようになってからある日の事、1冊のエロ本をセラフィナに発見されてしまったのだ。別に燃やされたとか破かれたとかそんな事は一切無い。その日の夜にその本の中身みてぇな服着て部屋に入って来た事以外は。あの時は本気で声出た。色んな意味で泣いた。

 

「(同じことが無いよう後で処分しようと思って適当に突っ込んで忘れてた……)」

 

 不味い。非常に不味い。こんな物8歳の女の子に見せて良い物では無い。どうにかして別の場所に寄せなければ。幸いルロは俺の背中で段ボールが見えてない。適当な言い訳して一旦部屋の外に──。

 

「加藤、何かあったの?」ヒョコ

 

ガッ!!! ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!! バクン! バリバリバリ!!!

 

 死ぬ気で中身ごと段ボールをZIP化し、掌サイズにして口に放り込む。口の中に紙とインクと段ボールの味で一杯になるが超高速で噛み砕き飲み込む。

 

「何食べてたの?」

 

「聖典かな……」

 

「???」

 

 何とかルロに見られる事は回避出来たようだ。子供の健全な生育の為の犠牲と考えれば大した事はない。もう作者が引退して手に入らない絶版があったとしても……些細な事だ。

 

「よし、荷物置いて下行くか。何かやりたい事あるか?」

 

「あ、えっと……私、加藤達にお土産持って来たの。リビングで渡したい」

 

「わざわざ持って来たのか? ……じゃあ下でな」

 

「うん!」

 

 子供らしい笑顔で返事をするルロ。先生、俺はこの子の笑顔を……守れたかな。

 

【いや私に聞かれても困るかな……】

 

 脳内のスケルトン先生を困らせてしまった。脳内なんだったら都合の良い返事してくれよ。

 

◇ ◇ ◇

 

プルルルルルルル プルルルルルルル

 

「支部長、鳴ってますけど」

 

「そうだなー」

 

プルルルルルルル プルルルルルルル

 

「出ないんですか?」

 

「そうだなー」

 

プルルルルルルル プルルルルルルル

 

「もうこれで3回目のかけ直しですけど」

 

「そうだなー」

 

プル……プルルルルルルル プルルルルルルル!

 

「諦めるつもりは無さそうですよ」

 

「ここで電源を切ると言う選択肢はどうだ?」

 

「良いから早く出ろやハゲ」

 

「もしもーし、お元気ですか〜?」

 

『こんのクソハゲェェェ! ぶち殺すわよアンタァ!』

 

「うるさっ」

 

 クッソ怠い宛先からの電話を取る。取った瞬間から怒号が受話器から流れ出て来た。

 

「何すか何すかどうしたんすか。そんなに怒ったら体に悪いですよ」

 

『アンタと話してる方が体に悪いわよ!』

 

「じゃあ切りますね」

 

『切ったら殺す! 切ったら殺す!』

 

「怖〜。ドラツ聞いたか? 日本のダンジョン運営トップがこんな言葉遣いで良いと思うか? ん? 重大な問題だよこれは」

 

「支部長の態度の方が問題だと思いますが。一先ず落ち着いて下さい、会長」

 

『落ち着いて居られないわよ! 何!? この前の! 舐めてんの!?』

 

「この前? ……まさか俺がこの前の手紙に鼻くそ付けて返したのバレた!?」

 

「本当に付けて返したんですか、引きます」

 

『そっちじゃ無いわよ! つーか私の手紙に汚い物付けんな! 報告書よ報告書!』

 

「何だそっちか。あんなに丁寧に書いた物に文句付けるとかクレーマー過ぎません?」

 

『書き方の文句じゃ無いわよ! 内容! 私はアンタの方で調べたウォルタリアの一件の情報寄越せって言ったのよ! 誰が頭を剃る時に使うお勧めシェービングジェルランキング書けって言ったの!?』

 

「だってあんなに俺に手紙送って来るって事は俺のファンすべ? じゃあ頭丸めたいのかなーって思って。正しい手順でやらないと痛くて後悔しますからね。俺の親切心なんだなぁこれが」

 

『スーパー余計なお世話過ぎるわ! 良いから調べた情報全部寄越しなさい! 手紙やらメールだと適当書くだろうから本部来なさい!』

 

「えーやだーもーいーやー」

 

『うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

「会長、このままだと憤死しますよ」

 

『コイツの煽り力が高過ぎるのよ!』

 

「賞賛気持ちぃー!」

 

 別に嫌がらせで教えない訳じゃない。単に探る際、鶴岡の宗教を使った関係で言えないだけだ。アイツの宗教、普通に危険視されてるし。俺までマークされるのは怠い。

 

「別に俺の情報なんて必要無いっすよ。会長が調べた物しか分かりませんって。そもそもあの一件に関してはウォルタリア自身が調査中なんすから。まぁ主犯はゼルエネスなのは100分かり切ってますけど」

 

『そうじゃなくて……ああ、もう良い。どうせ碌な事言わないで煙に撒かれるから。形だけでも良いから出しなさい。良いわね?』

 

「部下の説得に苦難してるそうで」

 

『分かってんなら協力しろや! アンタがダンジョン運営に関われてるの誰のおかげだと思ってんの!?』

 

「俺のおかげでしょ」

 

『わ た しぃぃぃ!!! わたしわたしぃ! アンタの事推薦してやったの私ぃ!』

 

「でも今の役職まで登り詰めたのは俺の頑張りってやつですよ。人徳かな?」

 

『殆ど人の弱み握ってただけでしょうが! どっから探して来んのか訳分かんない! 何で入って数日で上層部の大体の情報取ってきてんのよ!』

 

「きぎょうひみーつ。そんで? 用はそれだけですか? 仕事もあるんで切りますよー」

 

『ちょ、ちょっと待ちなさい! あれ! 例の事業! 今日から始まるからね? 分かってるでしょうね!』

 

「事業?」

 

 切ろうと思った矢先、聞き慣れない言葉が聞こえる。はて、何だったか。

 

「ドラツ、何だっけ。何かやってたっけ俺」

 

「アレじゃないですか? この前ウキウキで書いたのを私に出させたやつ」

 

「……ああ! あれか! そっかー、今日からなんすね」

 

『そうよ! アイテムをダンジョンから手に入れると言う功績でも打ち消せない程に落ちに落ちまくった探索者の信頼と信用! その関連の苦情! クレーム! 難癖! ここらで打開の一手を打たないといけない! それがこの──DMC(ダンジョンメーカーカード)なのよ!!!』

 

「こけそう」

 

「正直……難しいかと……」

 

 自信満々の会長とは真逆に、俺とドラツは冷め切った感情しか湧かなかった。

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