ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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なつき度爆上げ

 

「ぐわああああ───ッ!!」

 

「ゴ、ゴレットーー〜〜〜!!」

 

 持って居た手札を地面にばら撒きながら、ゴレットは大の字になって倒れ伏す。

 

「ゴレットしっかりしろ!!」

 

「し、師匠……!」

 

「せ、戦友!!! 何故だ、何故庇った! あちら側はまだ余裕があったのだぞ!」

 

「今の……状況では……加藤側の消耗が1番の負け筋だ……奴と俺の相性が最悪な以上……これ以外の方法は無い……これが勝つ為の……最善策だ……」

 

「だからと言って、自ら盾になるなど……」

 

「は、はは! 俺もヤキが回ったもんだな……お姫様よぉ……」

 

「師匠……」

 

「俺は……嬉しかったんだ……どこに行っても差別されるゴブリンの俺を、アンタは何でも無いように接してくれた……魔王の娘、次期魔王がだ……未来は明るいって、心の底から思ったよ……」

 

「そんなの、当たり前で……」

 

「はは……聞いたかよ加藤。当たり前だってよ……世の中捨てたもんじゃねぇな……」

 

「ゴレット! 気をしっかり持て!」

 

「勝てよ……頼んだ……ぜ……ガクッ」

 

「ゴレットォォォォォ!!!」

 

 意識を手放したゴレットは、俺の呼び掛けに答えない。

 

「……ライラ、ゴレットを頼む」

 

「だ、だが……相手はまだ健在なんだぞ! この状況では……」

 

「やるさ。ゴレットがここまでしたんだ。なら……やらなきゃならない。そうだろ、ルロ」

 

「……うん。やろう。必ず勝つよ。私達」

 

「魔族の姫君……分かった。どうか仇を──!」

 

 ゴレットをライラに任せてから前を睨む。そこには俺達の敵が未だ健在。不敵な笑みを浮かべた妖精が居た。本来小鳥サイズの大きさだったのが、人間の成人サイズまで巨大化して羽からは夥しい程の魔力が迸っている。

 

「フフフ……無駄よ無駄。今の私に勝てる者なんて存在しないわよ」

 

「お前が決める事じゃ無いな」

 

「今なら引いても見逃してあげるわよ? 加藤、ルロ。貴方達にはお世話になったものねぇ」

 

「なら、今すぐ辞めて! このままだとフェアリルも危ない! 過剰な魔力の所為で、フェアリルの存在が──」

 

どうでも良いのよそんなの!!! 力が無い時と比べて圧倒的万能感! そうよ、私はこれが……これが欲しかったのよ! あはははは!」

 

「完全に力に飲まれているな……ルロ、お前の声を届けるには……分かるな」

 

「うん……フェアリルを……止めたい! 加藤、頑張ろう!」

 

「任せろ。行くぞウルトラバカ妖精、叩いてタダのバカにもどしてやる!」

 

「続けるのぉ? 良いわよ! 私の力はまだまだこれからよぉぉぉ! もう誰にも! 羽虫だなんて言わせないわぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、セラフィナさん」

 

「んだよ」

 

「何でこんな事になったんでしょうか」

 

「知らねぇよ……」

 

◇ ◇ ◇

 

【時は遡り1週間前……】

 

◇ ◇ ◇

 

「土産? んなモン無理して持って来る必要ねぇんだがなぁ……困るっつーかよぉ」

 

「要らなかった?」

 

「え、いや、そんな事は言ってねぇって言うか……イテッ」

 

「素直に喜べ」

 

「……おう。ありがとな姫さん」

 

「うん! それでね、セラフィナにはこれで加藤はこれ!」

 

 鞄から取り出した小さな箱をルロから受け取る。セラフィナも俺も大きさに大した差は無い。

 

「開けても良いか?」

 

「うん、開けて良いよ」

 

「じゃあ早速。どれどれ……」

 

「ん、これブレスレットか?」

 

「お父さんと作ったの。お土産渡したいって言ったらじゃあ作るかって」

 

「そうか……最近装飾品もらう事多いな。ありがとよ姫さん」

 

「ふふ……加藤、加藤はどう?」

 

「てか急に黙ったな。おいどうした加藤」

 

「……宝箱」

 

「は?」

 

「宝箱入ってる」

 

「……ホントだな。ちっせぇけど」

 

 包装を解いた箱の中には大体ルービックキューブサイズの宝箱があった。ダンジョンで見かけるような見た目の宝箱だ。

 

「それね? お父さんに教えてもらいながら作ったんだ」

 

「魔王と?」

 

「お父さんの次は私が魔王だから、私もダンジョン作れるようにならないとダメだって。まだ私の力じゃダンジョンを生み出す事は出来ないけど、中身が入ってない宝箱なら生み出せるから」

 

「教えてもらったって言うのは……まさか……」

 

「うん。演出。よく分からないけど、宝箱って演出が必要なんだよね? ピカピカしたり音が鳴ったり。それをやってみたの!」

 

 無意識に小さな宝箱を開いてしまう。中身が入って居ないのは百も承知。だが、体が止まらない。

 

パカッ。デーデデレーデレレーデレレレー!!!

 

「にょわぁぁぁぁぁ!!! あぁ……」

 

 ダンジョンで見れる神々しいまでの輝きを感じた後に訪れる虚しさ。分かっている。中身が無いのなんて分かっている。演出が見たいのは確かだ。中身のアイテムに興味が無いのも事実だ。でも中身は入っていて欲しい。空は嫌だ。必要無くとも実利が欲しい。そんな矛盾した感情が脳裏をのたうち回る。

 

「ああ……うぉぉぉぉ! ……あぁ……うっひょぉぉぉ! ……あぁ……」パカッパカッパカッパカッパカッ

 

「おい、加藤。しっかりしろ」

 

「ハッ! お、俺は一体……?」

 

「記憶飛ぶほどかよ」

 

「だって……だって……ピカピカして……キラキラして……ピカピカしてたでチュウ」

 

「虫か? お前」

 

 我に帰り何とか宝箱を閉めると視線を感じる。キラキラした、何かを期待するようなルロの視線。

 

「どう……? 頑張って作ったんだけど……嬉しい……?」

 

「ぐっ! ガッ! グハァ!」

 

 嬉しい……は嬉しいんだけどこれは俺の症状を悪化させるような気がする。持ってて良いのかな、加奈子さんに怒られないかな。多分仕事の休憩中とかずっと開け閉めする気がする。いかんせん寸止め感がヤバいのでずっと満たされない。

 

 

ポン

 

 答えに悩んでいると優しく肩を叩かれる。珍しくニヤついて小馬鹿にするような声色でセラフィナはこう言った。

 

「素直に喜べよ」

 

 先程の俺の言葉をブーメランにして煽ってきた。何も言い返せない。余計な事言わなきゃ良かった。

 

「……加藤? もしかして嬉しくな「う、うっれしぃぃぃ!!! あー嬉しい! 最高! 神神神! ありがとうルロ! 俺嬉しいよ!!!」──! 本当? 良かった……」

 

 とても嬉しい。嬉しいんだ俺は。この目から流れているのは何だろう。しょっぱいな。止まらないな。でも笑わないと。あはは。

 

「何でしょう、今ほど背中が煤けているマスターは初めて見ました……」

 

 少し離れた所で呟くロールの言葉は聞かないようにした。そんな事はないのだから。

 

◇ ◇ ◇

 

 泣き笑いを続けるマスターをどうするか考えているとルロ様がこちらに近づいて来た。

 

「えっと……ロール、だよね?」

 

「はい。ロールです。マスターの所有物。ゴレ娘のロールです。所有物です」

 

「何で2回言ったの?」

 

「大事な事だからです」

 

 この世の何よりも大切な事は何回言っても良いと思う。恥ずかしくて言えないなんて言ってたら後悔しか残らないのだ。

 

「それで何のご用でしょうか」

 

「うん。はい、ロールに」

 

「……………………………は???」

 

 突然手渡される小さな箱。マスターやセラフィナ様が受け取った物と同じ見た目の箱。

 

「……これは何でしょうか」

 

「? お土産」

 

「誰に対してのですか?」

 

「ロールだよ?」

 

「何故ですか?」

 

「仲間外れは悲しいから……。加奈子と鶴岡にもあるの。……あ、高木にも」

 

 マスターの仲間や友人なら分かる。私がマスターと会う前に色々あったと聞いているから、それ関係なのだろう。だから余計に分からない。

 

「何故私なんぞに土産など持って来たのですか?」

 

「嫌だった……?」

 

「いえ、分からないのです。私は貴方様と殆ど会話をしていません。土産なんて物を渡すような関係性では無いはずです。こう言うのはある程度好感度を稼がないと貰えないとこの前実況動画で見ました」

 

 何か物を受け取るにはその相手に対価を払わないといけない。当然の摂理だ。買い物をする際に金銭を、愛を受け取るには愛を払わないといけない。対して私は何も払っていない。何かを受け取るのはおかしい筈だ。

 

「えっと……あげたいからじゃダメ?」

 

「……いえ、そう言う事であれば受け取らせて頂きます」

 

「うん! 加藤、お土産加奈子達にも渡したい」

 

「オッケェェェイ!!! 行こうぜ行こうぜ! 走ればこの水も乾きそうだ! FOO!⤴︎!」

 

「無理やりテンション上げてるのバレバレだぞ」

 

「うるせぇよ! 黙れよ! 分かってんなら言うなよ!」

 

 受け取った箱の包装を解く。中にはゴーレムの整備に用いるリペアキットが入っていた。マスター以外から何かを貰ったのは……初めてだった。

 

◇ ◇ ◇

 

 ルロが加奈子さんに土産を渡したいと言う事で、連絡を取って会う事になった。仕事終わりに家に来てもらうのも忍びないので待ち合わせ場所を決めてそこに行く事に。時間的にそろそろ出なければ間に合わない。

 

「よし、そろそろ出るぞ」

 

「うん。分かった」

 

「でも良いのか? 話じゃ姫さんに近づこうとしてる魔族だって居るんだろ? 城以外にも居るんじゃねぇのか?」

 

「む……確かに……魔王も居ないし、前みたいにしてたら不味いか……?」

 

「それなら大丈夫。よいしょ……」

 

 ルロがフードが付いたローブを羽織る。一瞬だけルロが消えたと思ったら再び視認できるようになる。

 

「何だそれ? ただのローブじゃないよな?」

 

「えっとね、お父さんに外に出る時に羽織るようにって渡されたの。私を私って認識しづらくするんだって」

 

「何でもありだな、あのおっさん」

 

「そりゃ魔王だからな。そんくらいやるだろ」

 

「これあれば大丈夫。行こ!」

 

「はいはい。じゃあ行くか。ロール! そろそろ出るぞ!」

 

「……あ。は、はい。今行きます」

 

 自力歩行出来るし、折角だからとロールも一緒に連れて行く事にした。たまに買い物で同行させたりするが、最近は家に居てばかり。外の空気を吸わせてやろう。呼吸しないけど。

 

「加奈子、今日お仕事?」

 

「平日だからなぁ。普通にシフト入ってるよ。俺は休み取らされたけど。高木に無理やり」

 

「いやそれに関しては高木間違ってねぇだろ。姫さん見てないで仕事してる場合じゃねぇんだからよ」

 

「まぁ要人警護頼まれてるようなもんだからな……これに関しては文句無いわ」

 

 家を出て待ち合わせ場所に向かう。途中通りがかりの人何人かとすれ違うが特に視線は向けられない。以前ルロと初めて会った時はめちゃくちゃ見られていたのに偉い違いだ。

 

「効果は本物みたいだな。全スルーだ」

 

「以前はそんなに目立っていたのですか?」

 

「魔族自体日本に対して居ねぇからな。居ても基本探索者とそれ関連の仕事してる奴だけだ。観光地なら話は変わっけど」

 

「ツノがなぁ、デカいから隠すにも限度あるから仕方無いんだが……ルロ、暑くないか?」

 

「うん。全然大丈夫」

 

「……ルロ様、汗をかいていますが本当に大丈夫ですか? ご無理はせぬ方が宜しいかと……」

 

「心配してくれてありがとう。でも……お父さんが作ってくれた物だから、着ていたい」

 

 少し汗ばみながら嬉しそうに言うルロにロールが豆鉄砲食らったような顔をする。その後すぐに取り直して持っていたハンカチでルロの汗を拭いた。

 

「失礼しました。であるのなら、脱ぐ訳にもいきませんね」

 

「うん、拭いてくれてありがとう」

 

「いえ……大した事ではありませんので」

 

 俺はこの時驚きを隠せなかった。何せロールの人族魔族嫌いは筋金入りだ。俺は別としてもメンテナンスをするオピスに対してもこんな対応はした事がない。先程土産を貰っていたが、それで心を許したのだろうか。

 

「なぁ、ロールの奴ちょろくね? 土産であんなに懐柔されるのか? 今度から他の奴にも持って来させようかな」

 

「主人に似たんだろ」

 

「……………………」

 

 セラフィナの返しに俺は何も返せなかった。俺そんなにちょろくない……ちょろい? ちょろいんかなぁ……。

 

「? 加藤、足遅くなった?」

 

「いやそんなちょろくは……土産程度で……いやでもこの前サンドイッチくれた宿のおっさんの為に戦ったし……あれ? あれれ?」

 

「ほっとけ姫さん。自問自答で忙しいんだアイツ」

 

「いや俺がちょろいとかんな訳ねぇし。難攻不落だぞ? キレる刃物だぞ? 何人たりとも近づけさせない針山だぞ? えでもセラフィナ何だかんだ住まわせてるし物にすぐ釣られてるし魔王に良いように使われてるし」ドカドカドカ

 

「マスター、側溝に落ちたまま前進しないでください。溝蓋(みぞぶた)がどんどん蹴散らされています」

 




ルロが渡した宝箱はオルゴールみたいなもんだと思ってください。パチの演出流れるオルゴールってなんだよ。
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