ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「落ち着きましたか?」
「は、はい。すいませんもう大丈夫です」
「それは良かった。では勧誘の続きを──」
「したらお前を破壊すると言ったら?」
「今日はこの程度にしておきましょうか。迷惑をかけ過ぎるのはよくありませんからね」
「迷惑かける事自体は良いのかよ」
「人とは毎日誰かに迷惑をかけて生きているのですよ」
「テメェは世界に迷惑かけてるけどな」
「我々の活動がワールドワイドという事ですかね?」
「息してるからな」
「まさかの地球規模の迷惑でしたか。要するに死ねですね。私悲しいです」
「1ミリも悲しく無いだろお前。ずっと笑顔だし」
一悶着あったが加奈子さんが奢る事は割りかし強引に(本人の意思)決まったので、それまで時間を潰すことになった。天気も良いし、家に居てもルロも退屈だろうから丁度良いのかもしれない。
「で? お前はなんで着いてきてんの? 土産貰ったろ。炊き出しの方行けよ」
「先程の応援の方々のお陰で私の仕事が無くなりましたので。人数が多くてもそれはそれで困りますからね、任せました。個人的な買い物もありますからね」
「個人的? 鶴岡、何か買うの?」
「ええ。実はおもちゃ屋に行こうと思ってまして」
「クォーツのか」
「実はいつも遊んでいるトランプがダメになってしまって……ショットガンシャッフルはカードを傷めるとあれ程言ったのですが」
「トランプを消耗するレベルで遊んでいたのですか?」
「いえ、イカサマの猛特訓をしていたらいつの間にか」
「あのガキを本当にどうしたいんだよテメェは」
「いずれ沼を攻略する程のサマリストに……」
「造語作るのやめて欲しいんですけど……」
「おもちゃ屋……日本のおもちゃ見てみたい。加藤、ダメ?」
「まぁ時間もあるしな……折角だし行くか。鶴岡、案内頼む。俺場所知らんし」
「承知しました。着いてきて下さい」
鶴岡にゾロゾロと着いていき軽く10分。途中ルロにおんぶをせがまれたり、ロールにおんぶさせろと要求されたり、セラフィナに手を引っ張られたり、それを見て指差して笑っていた鶴岡にキレたりしながら目的地に着いた。
「……なんか並んでないか?」
「そのようですね……はて、何でしょうか」
鶴岡も想定外の長蛇の列。最後尾のプラカードを持った店員が居るほどだ。尋常じゃない。
「アレか。転売ヤーって奴だろ」
「うげっ。子供のおもちゃにまで手出すのかよ……。終わってんな」
「え? でも外に出てくる人達、誰もおもちゃ持ってないですよ?」
加奈子さんの言う通り、確かに店内から出てくる人は誰1人としておもちゃを持っていない。勿論鞄に入れてる可能性はあるが……だとしても違和感がある。
『DMCの最後尾はこちらでーす! お買い求めの方はお並びくださーい!』
「ダンジョン……何?」
「カード……あ、これカード買いに来た人達の列ですか!?」
「まさか……! マスター! 間違いありまけん! これはポケカの列です!」
「今DMCって言ってただろ! 急にポンコツになるな!」
DMC。小学生時代チョロっと適当なタイトルを遊んでいた程度の俺には聞いた事の無い名前のカードだ。
「えーっと……あ、どうやら今日発売のカードゲームみたいですよ? 検索したら公式サイト出てきました」
「今日発売? だとしたら認知度最低だろ、何でコイツらこんなに並んでんだ? おいポンコツゴーレム、テメェいつもネットに入り浸ってんだろ。何か知らねぇのか」
「人をSNS閉じて即開く中毒者と同じにしないで頂きたいのですが……少なくとも私のサーチ範囲には引っかかっていませんね。お力になれず申し訳ありません。クソチ……何でもありません」
ロールを軽く睨むと堪えてくれた。よし、偉い。今までは絶対我慢しなかったのをルロの前だからか我慢してくれた。後で褒めてやろう。挑発したセラフィナに軽くデコピンをして諌めておく。本人も喧嘩腰過ぎたのを自覚していたのか、何も言って来なかった。
『お一人様1パックとなっております! ご了承ください!』
「1!? すっくな! 数そんなに無いって事か?」
「と言うよりは買い求める人が多いからかと。開店から時間が経っているのにこの列と考えると、相当の人々が買いたがっているようですね」
「はー……何でカード如きにそんな並ぶのかねぇ」
「今時カード1枚で何万円とか普通なんですよ。大学に居た時に友達がちょっとやってましたけど、レアカードなんて全然買えないって嘆いてました」
「へー……宝くじみたいなノリで買ってる奴も居るのか」
「子供に頼まれて買いに来てる方も居るのでは無いですか? 友達間でレアカードを持っていたら自慢出来ますからね」
「何言ってんだ。そんな見せびらかすもんじゃねぇよ。カードゲームなんて夏休みのラジオ体操始まる前に友達とコンクリートの地面に輪ゴムでギチギチに縛ったデッキを置いて遊ぶもんだろ?」
「マスター、遊び方があまりにも平成過ぎます」
「1枚しか持ってない筈のスターマンを必ず毎回出してシールド増やしまくる友達にボコボコにされるのまで定番だろ?」
「マスター、それイカサマです」
「カードゲームよく知らねぇが毎回出てくんならまず疑えや」
「いや俺もシールドにデーモンハンド必ず仕込んでたから……」
「同レベルの争いって昔からだったんですね……」
「まるで今も同レベルの争いしかしてないみたいに言わないで下さい。泣きます」
「? 加藤、泣かないで……?」
背中のルロの優しさに癒されながら騒がしい待機列を眺める。たった1パックの為にご苦労な事だ。幸い別の入り口から中に入れるし、そこから入って──。
『長いわねー、早く進みなさいよー』
『てかこれバレたりしない? 大丈夫そ?』
『安心しなさい! 今回は加藤も居ないし! 髪型も色も変えてるわよ!』
『まぁ髪なんて概念、私達には無いけどね!』
『それもそうだわ! アッハッハッ!』
『『『『『おっぴゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』』
「つまらな過ぎる物だった……」
「なぁぁぁにすんのよぉぉぉ!!! 出会って2秒で即散体される私の身にもなりなさいよぉぉぉ!!!」
「不正手口が以前と同じ天丼スライムに文句を言われる筋合いは無い」
ゲルダリアの分身を真っ二つにしてやる。勢い余って本体も斬ってしまったが相変わらずノーダメのようなので問題ない。
「ちょっとぉ! どうすんのよ! 折角『カードを買い占めてショタにプレゼントする代わりにお触り大作戦』の途中だったのにぃ! 責任取りなさい! こうなったらアンタがショタになりなさい加藤!」
「なる訳ねぇだろボケ! 良い加減懲りろや! お前この前帰るってなった時にやらかして下水に流されたのもう忘れたのか! SNSでクソみたいなリプライしてくるしよぉ!」
「げぇ!? あのアカウントアンタだったの!? おげぇぇぇ! 最悪最悪最悪! こんな全身チンピラヤンキーもどきに出会い厨しちゃうなんてぇ!」
「え、えっと……この……ひ、人? 人ですか? 魔族ですか? 何ですか?」
「ううん。スライムだよ、加奈子」
「ハッハッハッ。相変わらずですね、ゲルダリアさん」
「ゲルダ、アホやってんじゃねぇよ」
「あ、鶴岡とセラじゃない。それと……どちら様?」
「あ、わ、私は加奈子って言います。初めまして」
「ロールと申します。ゴーレムです」
「ルロ……よろしくね?」
「可愛い子達ね。よろしくー。加藤、どこから攫ってきたの?」
「ぶっ飛ばすぞお前。つーか何で全身銀色な訳? さっきの分身も無駄にカラバリ多様だったし」
「いや色変えればバレないと思ったのよ。それに子供って金色とか銀色とか好きでしょ?(憶測)好きなのよ。(確定)だからイメチェンとして鉄食いまくって銀ピカピンになったって訳。どう? 少年の心鷲掴みしちゃう?」
「はずれメタルは黙ってろ「はずれ!?」早く店内入ろうぜ。鶴岡、トランプ買うんだろ?」
「そうですね。そうしましょうか」
「は、はずれ……? はずれ……」
「マスター、あのスライムの方まるで動かなくなりましたが」
「ほっとけ」
◇ ◇ ◇
「ああ、これですね。置いてあって良かったです」
「トランプにも色々あるんだな。【超硬度! 武器に使えるトランプ! 探索者の方におすすめ! ヒソカも認めた】……詐欺商品もあるな」
「ホントに認めたかもしれませんよ?」
「この世の何処にもヒソカは居ねーよ」
店内はまばらに人が居る程度で、それなりに快適だ。殆どの人間がカードを買いに行っているのだろう。
「……」ソワソワ
「姫さん? どうしたんださっきから。落ち着かねぇな」
「みんなが並んでるカードってどんなのかな……」
「あー……調べるか」
スマホでDMCとやらを検索してみると公式サイトらしき物が出てきた。開くとデカデカと大文字が出てくる。
『DMC! モンスターとトラップでダンジョンを作り、対戦相手の探索者を向かい撃て! 自分の相棒探索者で相手のダンジョンを攻略すれば勝利! 40枚のデッキを作って友達と対戦だ!』
「へー……なんかそれっぽいな」
「メンコじゃねぇのか。じゃあアタシ無理だ。ムズイのは覚えらんねぇ」
「あ、カードリストありますよ」
「お、ホントだ。どれどれ……」
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レア度:コモン 【凶戦士】カトウ
体力2 攻撃2防御2
効果:この探索者は可能ならば毎ターンダンジョンにアタックしなければならない。
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「高木ィィィィィィィィィ!!!」
『おいおい、何があったか知らねぇけどよぉ〜。何でもかんでも人のせ俺だァァァッハッハッハァ!!!』
「ネタバラシ我慢出来ずにフライングしてますね」
「いやまぁこれ見た時点で犯人分かりましたけど……」
「どう言う事だ! 説明しろ!」
『なんかダンジョン運営が探索者のイメージ改善をしたいらしくてさぁ。そんで会長……ウチのトップな? が頭捻った結果出てきたのがコレな訳だ。実際の探索者をカードゲームで相棒にして愛着を付けさせてイメージアップだとさ。良かったな、お前の風評も少しは良くなるんじゃね? 知らんけど』
「なる訳ねぇだろ! 何だよこのイラスト! 目ぇガンギマリじゃねぇか! 完全にイカれてるだろ! 脳内ドパ漬けおっぱっぴーだろ!!!」
『え? いやいや似てるだろめちゃくちゃ。クッソ有名なイラストレーターに書いてもらったんだぞ、お前の狂ってる姿を盗撮した写真見せて』
「俺こんなラリラリラなの!? 嘘だろ!? 違うよね!? なぁセラフィナ! 鶴岡! 加奈子さん!」
振り向くと全員セラフィナが持っているスマホを覗き込んでいた。カードリストを見ているのだろう。
「いやー……似てますねぇ。クリソツです」
「に、似てます……ね……残念ながら……」
「マスターがカードの中に居ます。この狂った姿、私は見た事ないのですよね……早く見たいものです」
『ほらな? 露悪的に書いてるとかじゃなくてお前はコレなんだよ』
「今日は……雨だな……」
『室内だろ、お前の居るとこ』
意外と自分の事は見えないものなんだな。いや、見ようとしなかっただけか。ちくせう。
「名前も効果も酷いしよぉ! コレ考えた奴センス無さ過ぎるわ!」
『俺が一生懸命考えたのを貶すのは良くないと思います!』
「お前かいぃぃぃ! どの口が言ってんだ! 殆どブレイズクローだろうが! しかもコモンだし!」
『アッハッハ! 色んな奴にお前の素晴らしさを知ってほしいが故の俺の気遣いさ! まぁ俺はSRなんだがな! 悪いね! 支部長だからさ俺!』
「おや? これは高木さんのカードでは?」
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レア度:コモン 【性根がねじれる者】タカギ
体力1 攻撃1防御2
効果:この探索者はダンジョンアタックした後破壊される。
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『ドラツゥゥゥゥゥゥゥ!!! どう言う事だぁぁぁ! 俺が頼んだのと違うじゃねぇか!』
『加藤さんだけあからさまに下げていたのが何となく気に食わなかったので支部長もレアリティ下げておきました。親友なんですよね? お揃いで良いじゃないですか』
「ナイス! ドラツさんナイス! 敏腕美人秘書! 神的にいい人! ざまぁみさらせ高木! お前も道連れだぁ!」
「そこは自分のレアリティ上げて欲しかったって言った方いいんじゃ……」
「加奈子さん、加藤さんは基本的に自分が酷い目見たら道連れを欲しがるタイプの人間ですよ」
「どっちも性根がねじれてる……」
高木も雑魚コモンになっているのに満足していると、さっきから黙っているルロとセラフィナに気がついた。
「おい、どうした2人共。高木の声聞いて不快感が抑えられなかったか?」
「加藤!」
「へ? どうしたルロ」
「私コレ欲しい! 加藤のカード欲しい!」
「何で?」
「この加藤、楽しそうだから!」
魔王、お前もっとちゃんと教育しろよ。こんなトチ狂った顔を楽しそうって評価になるなんておかしいだろ。
「おい加藤! カード買いに行くぞ! 早くしろ!」
「何でお前まで欲しがってんだ! いらねぇだろ! お前に関しては散々俺を見てんだろ!」
「ふざけんな! 少しでもお前のカード回収しとかねぇとあのクソエルフが集め出すだろ! やらせてたまるかってんだ!」
「どうせコモンだから腐るほどあるだろ! 全回収とかいくらリファルさんでも出来る訳無いだろ!?」
「セラフィナ、並ぶの? じゃあ行こう!」
「ああ姫さん! 売り切れる前に並ぶぞ!」
「あ、おい待てって!」
俺の静止を振り切って走って外に行ってしまった。こんな訳分からんカードの為にあんな列並ぶなんて理解出来ない。
「はぁ〜……仕方ない。俺らも並ぶか。ルロほっとけないし」
「あはは……そうですね。1人1パックだし、ルロ様の為に私たちも買いましょうか」
「クォーツの為に買うのも悪く無いですね。所で加藤さん、どうやらこう言うカードもあるみたいですよ?」
「は?」
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レア度:UR 【猪突猛進】 セラフィナ
体力10攻撃8防御7
効果 ダンジョンアタックする度に設置されたトラップカードを3枚まで破壊する
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「なぁ、このカードゲームって絵柄違いとかあんの?」
「所謂パラレルと言う奴があるらしいですよ。セラフィナさんのはバニー衣装との事で」
「俺ここの買ったら街中の売ってる所ローラーしてくるわ」
「マスター、ルロ様の護衛を投げ出さないで下さい」
「(加藤さんなら本人に頼めば着てくれるんじゃ……)」
何だこの神イラストは。書いた奴は俺と同じイラストレーターのようだがこの神絵に免じて俺のイラストは許すことにしよう。