ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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被っちゃやーよ

「当たるかな……1つしか買えないんだよね?」

 

「加藤さんはコモンですし出やすいと思いますよ。加藤さんはコモンですし」

 

「何で2回言った? 言う必要無いだろ」

 

「うるせぇ! アタシにとってはURなんだよ! 分からねぇか!」

 

「怒るのか好意示すのか片方にしろよ」

 

 列に並んだ俺たちを尻目に買い終わった連中が店の外でパックを開けているのが見える。

 

『畜生! 当たらねぇ! 封入率書いてねぇし!』

 

『リファル当たらないとなー。他のカードなんて要らないよ……』

 

『リファルじゃなくても【勇者の集い】メンバーなら誰当たっても嬉しいな。顔整いしか居ないし』

 

『やっぱリファルさんだろ! 金髪美人エルフ! 性格も良いとか文句無い! カード性能も最強だろコレ!』

 

『レアカード殆ど女性陣なの露骨だけどな。ハハ!』

 

「ああ……こんだけ並んでる理由が分かった」

 

 カードリストを見直すと最高レアリティのURに【勇者の集い】メンバーがあった。世間一般的に探索者は基本クソミソ扱いされているが、リファルさん達は別枠。寧ろ探索者の中でも少な過ぎる良心として支持されている。美形しか居ないのもその後押しをしているだろう。

 

「私は会ったこと無いんですけど……その【勇者の集い】って名前は前から知ってましたね。やっぱり大人気なんだなぁ……」

 

「ほぼアイドル&英雄のような扱いですからね。少し前にウォルタリア襲撃を解決した功績も広まっているのも拍車をかけているのでしょう」

 

「あぁ……その……か、加藤さん! 元気出してください! 私は加藤さん達が頑張ったの知ってますから!」

 

「優しさが……辛い……!」

 

 別に俺達の働きが無視されている訳では無い。単に協力者としてカウントされて名前は全く広まってないだけだ。ウォルタリアでも俺達が戦っているのを見ていた者は殆ど居ない。結界で気失ってた所為で。

 

「腹立つよなぁ。アタシや加藤、ゲルダが居なけりゃウォルタリア滅んでたろ。何で全部あのクソエルフの功績になってんだよ」

 

「そう言うなよ。これも今までのツケ払ってるんだよきっと。ほら、不良がいきなり良いことするよりずっと真面目に良いことしてた人の方が偉いだろ? 俺達の積み重なったやらかしの清算をしているとそう思うことにしようそうしよう。そうじゃ無いと精神が保てない」

 

「? 加藤、また戦ったの?」

 

「ん? あーまぁ、な。色々あって少しだけ戦ったよ」

 

「そっか……また誰かの為に怒ったの?」

 

「え? まぁ……厳密に言えばそうかもしれない」

 

 単に腹が立って戦っただけとも言う。別に正義感を持ってやった訳でも何でも無い。そんな真っ当な考えで戦えるなら、俺はここまで落ちぶれていないだろう。

 

「そっか……やっぱり、加藤はかっこいいね」

 

「…………」

 

 嬉しそうに笑うルロ。前々から思っていたが、どうもルロは勘違いしている。あまり子供の考えを否定するような事はしたく無いが、ここに関しては訂正した方が良さげだ。

 

「あのな? 勘違いしてるみたいだから言うが、俺は──」

 

『うわー! ハズレ! コモンしか入ってないわ!』

 

『何だよこの【凶戦士】カトウって。顔やば過ぎだろ、気狂いじゃん。こんなカード出すなよ……』

 

『何が悲しくてこんなヤク漬けチンピラに金出さないといけないんだ……。コモンにしてももう少しまともな探索者居ただろ。要らねー、性能もゴミだし。存在価値ある?』

 

『ある訳無いだろ、ハズレなんだし。あーあ、こんなのに地球の資源使われてると思うと虚しくなるよな。ちり紙交換に出そうかな』

 

「テメェらぁぁぁ!!! 黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがってぇぇぇ!!! しばき回すぞオラァァァ!!!」

 

『『『ギャァァァ! 誰!? 誰アンタァァァ!』』』

 

 最初は我慢してたが無理だった。勝手にカード化された挙句知らない奴に好き勝手罵倒されるとか罰ゲームが過ぎる。道徳に反していると言っても良い。

 

『あ、あれは! あの男は!』

 

『知っているのか!?』

 

『探索者オタクの俺でも言葉に出すのを躊躇する……そんな探索者チームがある。それが【自我中心】!』

 

『【自我中心】……聞いた事がある! ダンジョンを長時間占領し! 大量のアイテムを一度に取引所に放出してパンクさせ! 乱闘騒ぎを繰り返す事100件以上! 出禁になった店は数知れず! 強さだけは最上位の所為で誰も文句を言えない! メンバー内にダンジョン運営者や新興宗教の教祖! 謎のショタコンスライムや移動する度に辺り一面が血の海(自家製)になる銀髪着物激美人! 3度の飯より暴力なロリサキュバスや意味不明道具を紹介してくるダメなドラえもんみたいなバジリスク! そして……それを束ねるダンジョンに狂うリーダー! 【凶戦士】加藤だぁぁぁ!!!

 

「詳し過ぎだろ! てかオピスだけなんかやたら恨み入ってないか!?」

 

『何年か前に騙されて買わされたんだ! 畜生! 美少女かと思ったら男だった!』

 

「勝手にありもしないハニトラに引っかかってるだけじゃねぇか!」

 

『ま、待ってくれ! 【自我中心】なら俺も知ってるが、リーダーってあんなんだったか!? もっと邪悪な……デカい両手と顔だけの化け物だった記憶があるんだが……』

 

「それタダのデスタムーアだろうが! 適当過ぎんだろお前の記憶!」

 

「失礼な! 我らがリーダーはダークドレアムくらいなら返り討ちに出来ますよ! あまり舐めないで頂きたい! さぁ加藤さん! 裏ボス討伐タイムですよ!」

 

「どこ反論してんだよ! 的外し過ぎて俺の背中に刺さってんだよ! 魔神は無理だって多分!」

 

『そ、そう言えば最近復帰したって……。風の噂だが、少し前に開催されたゴレ娘の大会で参加したゴレ娘を観客使ってリンチにしたとか……』

 

『昨日の料理ギルドの入団試験で訳分からない魚の乳首引きちぎったって話だぞ!』

 

『なんか魔王とも繋がりがあるとか何とか会場にいた奴から聞いたな……』

 

『や、やばい! 逃げろ! 関わったら何されるか分からないぞ! アイツの機嫌を損ねた奴は大体再起不能だ! 走れぇぇぇ!!!』

 

『『『『『うわぁぁぁぁぁ!!! 【自我中心(エゴイスト)】がまた何かするぅぅぅ!!!』』』』』

 

「ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!! 誤解だァァァ! いや、やった事は間違い無いけど取り敢えず誤解だァァァ!!!」

 

「間違いないなら誤解じゃねーだろ」

 

「魚の乳首の話気になりますね。教えてもらって良いですか?」

 

「鶴岡さん、その話は絶対やめて下さい。2度と言及しないでください」

 

「修羅が見えたのでこの話はここで終わりにしましょうか。何にせよ列が空きましたね」

 

「こんなつもりじゃなかったのに……うぅ……お終いだぁ……連中から俺の悪評が広まるんだ……買い物に行ったら街の人から『うげぇ!』とか言われるんだ……普通が……遠ざかっていく……」

 

『マジかよ最高だな。今日はパーティーだ。取り敢えずダンジョン潜って景気付けしようぜ!』

 

「死ねどす」

 

『んほぉ〜シンプル殺意たまんねぇ〜。じゃあそろそろ切るわ。ルロ様ちゃんと守れよー』

 

 ハゲとの通話が終わり溜息をつく。ここ最近一気に俺の状況が悪化している。どうなってんだ、とてもつらい。

 

「むー……」

 

「ルロ様? どうかなさいましたか?」

 

「さっきの人達、加藤の悪口言ってた……」

 

「事実陳列罪と言うやつですね。マスター、過去にどれだけの活躍をされたのですか」

 

「頼む。もうほじくり返さないで……。もう限界なんだ……あぁもう早く神イラストのバニー見ないとこれは治らない気がする……」

 

「加藤の良い所沢山あるのに」

 

「ルロ様……そうですよ! さっきの人達は少し言い過ぎです! 加藤さんの良い所は沢山……結構……それなりにありますよ!」

 

「だいぶグレード下がったな」

 

「加奈子さん、そこは嘘でも二郎並に盛って欲しかったです」

 

 ルロは頬を膨らませて不貞腐れている。こんな様子は初めて見た。どうにか機嫌を取らないと……。

 

『次の方どうぞ……あれ? 全然居ない……何で?』

 

「ん。アタシ達の番らしいぞ」

 

「そりゃ俺ら以外みんな逃げたからな……」

 

「まさか加藤さんはこれを狙って……!? さすかと(流石加藤さん)ですねこれは」

 

「思想と同じ体色になりたく無かったら黙っている事だな」

 

◇ ◇ ◇

 

 数分後、全員1パックずつ購入出来た。近くのベンチに座って早速開封する事になった。

 

「地味に私も1人カウントされたのですが、宜しかったのでしょうか」

 

「良いだろ別に。売る相手俺らしか居なかったし。へっ」

 

「マスター、少し投げやりになってませんか?」

 

「なるだろそりゃ。俺が何したってんだよ畜生。あー世界滅びないかなー」

 

「滅んだらやだ……」

 

「あー恒久的平和訪れないかなー」

 

「オセロ並にひっくり返ったな」

 

「げ、元気出してください加藤さん! セラフィナさんのカード当てるんでしょ?」

 

「そ、そうだ! ここでパラレルのセラフィナカードを引ければ差し引きゼロどころかプラスだ! ここで巻き返すぞ! 今日の分を取り返すんだ!」

 

「あ、やばい! ダメな思考! 言わなきゃ良かった!」

 

 早速カードパックを開ける。パッケージにはデカデカとリファルさんのイラストが書かれているので上だけ切り取った。知り合いが書いてあると変に遠慮してしまう。

 

「えーっと1枚目は……うわコモン。てかモンスターじゃん」

 

 このDMCには探索者カード、モンスターカード、罠カードがある。記念すべき1枚目のカードはモンスターカード。……ライトドラゴンか。

 

「あれ、なんか見覚えあるんですけど……」

 

「ん? あぁ、あれですよ。俺と加奈子さんが初めて会った日の……」

 

「あぁ! そうだ! あの時襲ってきたドラゴンだ! 加藤さんにモップでボコボコにされてた!」

 

「いやぁ懐かしいですね。あれからもう……まだ1ヶ月くらいしか……あれ?」

 

「……5ヶ月くらい経ってるような気がするんですけど気のせいですかね」

 

「お2人とも、それ以上はいけませんよ」

 

「そ、そうだな。そんなに経ってねぇわ。うん」

 

「ここの人達と知り合ったのほんと最近でした。ハイ」

 

 世界が捩れかねない気がしたので鶴岡の言う通りこの話題はやめよう。気を取り直して2枚目のカードを見る。

 

「うわっ。ダブりじゃん……幸先悪いなぁ」

 

「カードの種類多いんですがねぇ。運が無いですね」

 

「加藤、ドラゴンに好かれてる?」

 

「ハハハ。そんな事は──」

 

 3枚目 ライトドラゴン

 4枚目 ライトドラゴン

 5枚目 ライトドラゴン

 

「怨念がおんねぇぇぇん!!!」スパァァァン!

 

「使い古されたギャグですね」

 

「ぜ、全部同じカードですね……」

 

「マスター、いつの間にカカシ先生になったんですか」

 

「なってねぇよ! 吸い付いてくるんだよこのトカゲが!」

 

「おいおい、地面に叩きつけんなって。たっく仕方ねぇヤツだなぁ」ヒョイヒョイ

 

 怒りのあまりカードを全て地面に叩きつけてしまった。俺は金太郎飴を買ったつもりは一切無い。

 

「ほ、本当に怨念だったら……ど、どうしましょう……」

 

「おいふざけんなよ。今何話目だと思ってんだ、73話目だぞ? 1話目のやられ役モンスターがしゃしゃり出て良い話数はとっくに過ぎ去ってんだよ。どんだけ恨んでるんだよ。ちょっとモップで殴り殺しただけじゃねぇか」

 

「恨むには十分過ぎてお釣りが来る死に方だろ」

 

「そもそも加奈子さん襲ったのが悪いからね。それが無かったら殺す必要も無かったからね。だから俺は悪く無い。間が悪かったってヤツなんだ」

 

「ですがマスター、その言葉、ライトドラゴンが見たらどう思うでしょうか……?」

 

「どうもしねぇよ。もっかいミンチにするだけだ。ダブった恨みを込めて」

 

「また祟られますね、これは」

 

 俺のパックはトカゲだらけの爬虫類フェスに終わったが、皆のパックはどうだろうか。特にルロだ。俺のカードが欲しいらしいので当たって欲しい。

 

「じゃあアタシが開けるか。フンッ!!!」ビリビリッ!

 

「パックを剥く力が強いように見えるんですけど気のせいですかね……」

 

「加奈子さん、気のせいじゃないっすね」

 

「えーっと? 加藤のカードは……」

 

 セラフィナがカードを確認しようとした辺りで、ずっと項垂れていたゲルダリアがこちらに近づいて来た。

 

「うぅ、はずれ……ハズレじゃないのにぃ」フラフラ

 

「んー……ねぇなぁ。クソッ、ハズレかよ──」

 

──────────────────

レア度:UR+ 【勇者姫】リファル

 

体力10攻撃10防御10

 

効果・このカードはあらゆるカードの効果を受けない

──────────────────

 

「ウガァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

ドパァァァァァァァァァァン!!!

 

「Hな瞬間最大風速ゥゥゥゥゥ!?」ビチャビチャビチャ!

 

「HはHでもHELL(ヘル)の方ですね」

 

 セラフィナが怒りのままリファルさんのカードを地面に叩きつける。とんでもないパワーで叩きつけた為、ソニックブームが起きて近づいていたゲルダリアが周囲に散らばっていった。

 

「ちょっとぉ!」

              「いい加減にしなさいよ!」

 

「セリフも散らばりましたね」

          「バラバラに」

 

「なっちゃった」「どう言う理屈で!? 何で各々意識持ってるんですか!?」

 

「クソ読みづらいから早く戻れよ」

 「じゃないのよぉ!」

 

「フーッ! フーッ! フーッ!」

 

「セ、セラフィナ……? 大丈夫……?」

 

「大丈夫だ姫さん。アタシは大丈夫だ」

 

「何処からどう見ても大丈夫には見えませんがね」

 

「うるせぇ喋んな土人形! 今イライラしてんだ!」

 

「自白してるじゃないですか」

 

 完全に地面に張り付いたリファルさんのカードを見ると傷ひとつ付いていない。どんだけ丈夫なんだこのカード。砂場で遊んでもザラザラにならないかもしれない。

 

「もう! もう! もぉぉぉう! 何よ何なのよ! 私が何したって言う訳!? カード買いに来ただけよ私! ハズレ言われた挙句散乱させられるなんて酷いわよぉ! うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

「おや珍しい。ゲルダリアさんが泣くとは。大丈夫ですか?」

 

「あ、えっと……泣かないで? よしよし……」

 

「……加藤さん、謝った方いいんじゃ……」

 

「え」

 

「流石にハズレって言うのは酷いですよ。ライン越えです。ゲルダリアさん傷付いたみたいですし……」

 

「い、いやでもコイツは」

 

「マスター、私もハズレは言い過ぎだと思います」

 

「加藤さん、こう言うのは早めに謝った方いいですよ?」

 

「うぐっ……分かったよ……」

 

 泣きじゃくるゲルダリアに近づいて軽く頭を下げる。

 

「すまんゲルダリア。ハズレは無かった。お前は大当たりだよ。許してく……れ……」

 

 ゆっくり頭を上げた視線の先に泣いているスライムなど何処にも居なかった。居たのはニタニタと笑う性格ドブスライムが1体。

 

「しょぉぉぉぉぉが無いわねぇぇぇ! そりゃね! 私がハズレな訳無いものね! そんなの分かりきってる事よ! バカねぇ加藤はホント! ハズレ扱いされ続けてたら闇堕ちしてたかもだけど、アンタが頭下げて謝るの激レアだから許してあげるわ! 特別よ? アンタ以外だったら許してないからね! 幸せ者ねぇアンタ! ほら、もっかい言いなさい大当たりって! ほらほら言いなさいよ! ん? ん???」

 

「ッッッ!!! ッッッ!!!」

 

「か、加藤さん堪えて! 今だけは堪えて!」

 

「不味いです、これ以上我慢すればマスターが憤死します!」

 

「大丈夫ですよロールさん。加藤さんはこれまでも高木さん相手に憤死しかけて耐性がありますから。あと3分は耐えれます」

 

「それ全然ダメじゃないですか! 憤死の未来から逃れられないんですけど!?」

 

「元気になって良かった……あ! 加藤当たった! やったぁ!」

 

「ルロ様おめでとうございます! でも今それどころじゃなぁぁぁい!!!」

 

 歯を食いしばって全力で感情に耐える。こうなる気がしたから謝りたく無かったのになぁ……。煽り続けるゲルダリアを前に怒りを抑えながら、そう思った。




川越の鬼才の帰りはいつでしょうか
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