ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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遅れて申し訳ありません


ひっくり返したれやぁぁぁ!(文字通り)

 あの後、複数の店を回ったが結局俺は神イラストのバニーセラフィナを当てる事は出来なかった。

 

「………………」

 

「あ、あの……セラフィナさんが黙っちゃったんですけど……」

 

「限界ですねこれは。ふとした瞬間に爆発しかねないです」

 

 何が最悪ってセラフィナのパックから確定封入かと思うくらいリファルさんのカードが出て来てしまい、セラフィナの機嫌が地に落ちた事だ。リファルさんって最高レアだから出にくい筈なのにどうなっているんだ、引き寄せあってるとしか考えられない。

 

「マスター、見てください。マスターのカードが保存用、観賞用、実用用、布教用、攻撃用の5枚も出ました。日頃の行いでしょうか、神様は見ているものですね。1ミリも信じてませんけど」

 

「俺のカードでどうやって攻撃するんだよ」

 

「こうですね、ほれほれ」ヒラヒラ

 

「(般若の表情)」

 

「やめろぉ! 見せつけて煽んな! 攻撃って精神攻撃かよ!」

 

「ロールさんってどうしてこんな性格なんですか?」

 

「元から人族魔族に憎しみがあった所に主人が加藤さんですからね。似てしまったのでしょう」

 

「俺こんなに酷いか!? こんなに邪悪か!?」

 

 俺の風評を下げてくる鶴岡に苛立ちながらもロールを止めようと近づく。だがその前にロールはセラフィナの前でカードを見せびらかすのをやめて──。

 

「冗談です。どうぞ」

 

「……は?」

 

 カードを1枚、セラフィナに差し出した。余りの唐突さにセラフィナも面を食らっている。

 

「……何のつもりだ? お前」

 

「何って……カードを渡しただけですが?」

 

「何企んでやがるって言ってんだよ。唐突過ぎておかしいだろ」

 

「私がおかしいって、優し過ぎって事ですよね?」

 

「無自覚チートみたいな事言ってんじゃねぇよ!」

 

「別に深い意味はありません、本当に。ただ……」

 

 ロールは少しだけカードに夢中なルロに視線を向ける。視線を感じたルロはロールに目線を合わせて首を傾げる。

 

「……?」

 

「……何となく、そうしたかっただけです」

 

「……そうかよ。ありがとよ」

 

 礼を言うセラフィナの顔は死ぬほど悔しそうだ。完全に負けたと思っている。勝ち負け決めるもんでもないだろうに。

 

「ロール、セラフィナにカードあげたの?」

 

「はい、5枚ありましたので1枚くらいならと。これ以上機嫌を悪くされても困りますので」

 

「そっか。偉いね」

 

「……そうだな。ロール、偉いぞ。成長したな」

 

「恐悦至極。イェーイ」

 

 真顔でダブルピースをするロール。ルロに土産を貰ったのがいい影響を与えたのかもしれない。冷静に考えてコイツホントにゴーレムなんだろうか。実は人間とか言われても驚かない。

 

「私、感動しております。多く持つ者が持たざる者に分け与える……この世のあらゆる行いで1番尊い……おっと感動し過ぎて涙が」

 

「この人ブレませんね……」

 

「昔っからこんなんですからね、コイツ」

 

 何せ仲間相手にも普通に金を巻き上げてこようとする奴だ。使い道は褒められる事しか無いだけに始末が悪い。

 

「さて、良いものも見れましたし私はこれで失礼しますね」

 

「ねー鶴岡、アンタんとこの孤児院に行きたいんだけど着いて行っても良いかしら良いわよね?」

 

「ハッハッハ。申し訳ありませんがゲルダリアさん、貴女を孤児院の子供達に近付けるつもりは一切ありませんので。では失礼」

 

「何で!? 私警戒され過ぎでしょ!?」

 

「妥当だろ」

 

「黙りなさいコモン風情が! SRだった私に歯向かうなんていい度胸ね!」

 

「モンスターカードのSRだけどな」

 

「それホント許せない。マジ許せない。誰がモンスターって話よね、舐めやがってヒューマンが」

 

「スライム……モンスターじゃないのにね。可哀想……元気出して……?」

 

「あらぁ〜良い子ね貴女。私好きよ貴女みたいな子。種族関係なく私に優しくしてくれる相手はみんな好きよ私。ルロだったかしら? ありがとうね」

 

 何故か近所のおばちゃんみたいな喋り口調になったゲルダリアがルロをローブの上から頭を撫でる。ペチャペチャ音が鳴ってうるさい。

 

「……そう言えばどうして加藤と一緒に居るの貴女。脅されてる?」

 

「お前じゃねぇんだからんな事しねぇよ」

 

「私だってしーまーせーんー! で? どうなの?」

 

「えっとね、お父さんの仕事の関係で加藤の所に居てくれって言われたの」

 

「あらそーなの。お父さんの言う事聞けて偉いわねぇ。まぁ家にセラフィナ居るし、コイツ子供には優しいし大丈夫か」

 

「子供以外にも優しいことあるだろ。つーか何さっきから保護者ヅラしてる訳? 会って2時間くらいだろお前」

 

「時間で関係性マウントとかダサ過ぎて話にならないわね。私は普段から子供と触れ合いたいと思ってるからレベルが違うのよ」

 

「願望による虚構の経験値でレベルは上がらねぇよ」

 

「それで? ルロのお父さんは何をしている人なの? 加藤に預けるなんて普通の親とは思えないけど」

 

「お父さん? お父さんは魔王だよ」

 

「へー、魔王ね。魔王……魔王……? 今日からマ王?」

 

「ううん、前から魔王だよ?」

 

「あー……ふーん……そっかぁ……スーッ……あ、そう……うん……」

 

 一瞬でテンションが地の底に落ちるゲルダリア。明らかに様子がおかしい。冷や汗ダラッダラだ。汗腺無いくせに。

 

「おいゲルダリア、どうした。大丈夫か」

 

「ゲルダリア、お腹痛い?」

 

「あ、うん……そう、かも……ねぇ〜」

 

「何でも食うお前が腹壊すって……鉄食い過ぎたんじゃ無いのか?」

 

「そうかも〜気をつけなきゃねアハハハハ!」

 

 わざとらしい笑い声を上げるゲルダリアに不信感を抱いていると、ゲルダリアはゆっくりと俺達から離れ出した。

 

「(やっべぇぇぇ! 嘘、魔王!? 魔王の娘!? 何でそんなのと関わり持ってんのよこのバカ! これバレたらまた捕まる? まーたあのなーんも無い空間に何時迄も閉じ込められる? 勘弁してよ! もう何百年も経ってるじゃ無い! 時効でしょ時効! てか何で私の前に来る訳? 他にも脱走した奴何体も居たわよ! いや待て落ち着け可愛い私。私を作ったのは前魔王、今の魔王じゃない。でも息子よね、やばくない? でもでも今代の魔王ってかなりの平和主義者らしいし? 戦争終わらせたし? ワンチャンバレてもセーフなんじゃ……いやリスクは減らしておくに限る!)」

 

「本当に大丈夫……? 治癒できるよ?」

 

「大丈夫大丈夫! 心配してくれてありがとねー! ちょっと私火急的な用事的な何某があるからこれで失礼するわ! またいつか会いましょ! ばいならぴー!」

 

 そう言って普段では考えられないスピードで去って行った。残された俺たちは呆気に取られる。

 

「アイツ何だったんだ……」

 

「焼きそばの時、話せなかったから……もうちょっと仲良くなりたかったな……」

 

「ああ、そう言えば見ては居たのか。会話はしてないしゲルダリアに至っては認識すらしてなかったけど」

 

 まぁアイツあの後すぐに出て行ったからな。兎にも角にもカードを買うと言う目的は果たした。時間を見ると夕方に近い。

 

「あー、加奈子さん。夕食の件……」

 

「お、奢りますよ? 奢りますけど!? 何ですか! 高級焼肉ですか!? ふぐですか!? 回らないけど家系は火の車になるお寿司ですか!?」

 

「そんなに無理する事ねぇだろ。安いとこにしようぜ」

 

「吐いた唾は飲みません! 何でも良いって言いましたので!」

 

「な、何て男らしいんだ……」

 

「男塾に居ても違和感無いかもしれません」

 

 半分くらいヤケになっているだけな気もするが、本人が奢ると言っているのに拒絶するのも悪い。なるべく安い物を頼むようにしよう。

 

◇ ◇ ◇

 

 早めの夕食を取って加奈子さんと別れた後、家に帰って来て2時間ほど。ルロは居間のテーブルで今日買ったカードを広げていた。

 

「カード買ったの初めて……。これって遊べるの?」

 

「まぁカードゲームだからな。そりゃ遊べるだろ」

 

「どうやって?」

 

「どうやってって……そう言えばこのDMC(ダンジョンメーカーカード)のルール知らないな」

 

 あそこに居た全員カード以外興味が無かった為、遊び方すら知らなかった。気になってスマホで公式サイトを見るとルールブックなるPDFが置いてある。

 

「お、あるじゃん。どれど……」

 

 開いた瞬間目に止まるのはそのバカみたいなページ数。何と1000ページ越え。思考が停止してしまった。

 

「勉強する時の本より多いね……」

 

「マスター、もし読むのが億劫でしたら私が読み上げましょうか?」

 

「全部読むのにどれくらいかかる?」

 

「文章の密度、目次から察するに約5時間はかかるかと」

 

「徹夜コースじゃねぇか、やらなくて良いぞ」

 

「ですが睡眠学習なるものがありますから、寝ている間私が枕元でずっと読み上げれば起きた時には完璧にルールを把握しているかと」

 

「それ根拠無い嘘だぞ」

 

「おーい、風呂沸いたぞ姫さん。入っちまえ」

 

「分かった、今行く。加藤、お風呂入ってくるね」

 

「ああ。……どうすっかなぁ……あ! そうだ! こう言う時は……」

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳でDMC(ダンジョンメーカーカード)のルール教えてくれ」

 

「お前closeって文字すら読めない程の英語力なのか?」

 

「読んだぞ、読んだから裏から入って来たんじゃん」

 

「ふーん、そうか」プシュー

 

「うごぉぉぉぉぉ!!! 眼球に催涙スプレー直は鬼だろぉぉぉ!!!」

 

「当たり前だ、こちとらゴブリン(小鬼)だぞ」

 

 翌日、俺はルロと一緒にゴレットの鍛冶屋まで来ていた。ちゃんとインターホンを鳴らして来たのにこの対応、酷い扱いだ。

 

「帰れや。今日は休みなんだよ。何でお前の顔見ないといけないんだよ。完全に罰ゲームだぞ、分かってんのか?」

 

「そんなに!?」

 

「休日に自分に1ミリも得にならん仕事したい訳無いだろ。理解したか? したなら今すぐ失せろ顔面罰ゲーム」

 

「顔面罰ゲームは越えてる! ライン飛び越し過ぎて新記録樹立してるって! そんな事言わずに聞いてくれよ! 俺の話を!」

 

「初手聞いたわ! 自分で読めよ! ルールブックあんだろちゃんと!」

 

「いや怠くて……あんなん読みたくねぇよ……1000ページて……アホかよ……読もうとした瞬間思考飛んだわ……」

 

「お前利用規約とかプライバリーポリシーとか全部読み飛ばすタイプだろ。開きもせずチェック入れるだろ」

 

「普通じゃん?」

 

「読めよバカ! お前みたいなのが居るから騙し討ちみたいな規約ぶっ込んでくる所があるんだろうが!」

 

「すげぇ……お前めっちゃしっかりしてるじゃん……」

 

「お前がだらしないだけだろ!?」

 

「頼むよ、お前この前ベイブレードしてたじゃん。ホビー詳しいんだろ? ならカードゲームも知ってそうじゃん。この子に教えてやってくれよ」

 

「……DMCをやりたいのか?」

 

「うん。気になる」

 

「仕方ねぇな……分かったよ。それじゃ──」

 

 ゴレットが話している最中にインターホンが鳴る。ゴレットはハッとした表情で裏口に向かう。

 

「ちょっと待ってろ、来る予定だった来客だ」

 

「客来るから休み取ってたのか」

 

「そうだよ、お前のせいで台無しだけどな」

 

「ごめんなさい……」

 

「いや違う違う。お前は何にも悪く無い。気にしなくて良いぞ」

 

「ごめんなさい……」

 

「お前は許さん」

 

「差別だろ!?」

 

「区別だよ!」

 

 そう言って部屋から出たゴレットは数分後、来客を連れて戻ってくる。

 

「む? お前は……」

 

「あれ? ライラ?」

 

 そこに居たのはウォルタリアの騎士団団長のライラだった。以前会った時は何処であろうと鎧を着込んでいたが、今は私服だ。

 

「そうか。そう言えば戦友と旧知の仲だったな」

 

「いやまぁそうだけど……お前何でここにいるんだ? 復興終わったのか?」

 

「まさか。まだまだ掛かる。だが事件が終わった後、寝ずに復興作業をやっていたのが王妃様にバレてな……。お叱りを受けて強制的に1週間休暇を言い渡されてしまったのだ。アナンタも先週休暇を取らされた。私と入れ替わりで仕事に復帰したがな」

 

「ああ、アイツ休みだから来てくれたのか……」

 

 休みの終わり頃に呼び出して悪い事をした。と言うかアナンタも強制的に休まされてたのか。働き過ぎだろ。

 

「【勇者の集い】や他国の応援の者達にも手伝ってもらっている以上、休む訳にはいかないと思っていたのだが……何にせよ仕事はあるのに暇になると言う状態になってな。そこで戦友と共にベイブレードで遊ぼうと……」

 

「ゴレット、要するにコイツお前のベイ仲間になった訳?」

 

「なんかそう言う事になった。腕も悪く無いぞ。ライラ、取り敢えず座れよ。茶くらい出すぞ」

 

 そう言ってゴレットは台所に行き、お茶を持ってくる。自分の分、ライラの分、ルロの分。以上だ。知ってた。

 

「それでお前はどうしたんだ? こちらの子供は?」

 

「ゴレットに聞きたい事があってな。この子は一時的に預かってる子だよ。ルロって言うんだ」

 

「よろしくね……? ゴレット、ライラ」

 

「ふむ。よろしく頼む。尋ねる事があるのなら、そちらから優先するべきだろう」

 

「単にルールブック読むのめんどいだけなんだよ、全く……。ちゃっちゃと教えるから終わったら帰れよ?」

 

「おう! それでルールは? 簡単に頼むぞ!」

 

「ああ、お前みたいな奴でも分かるように教えてやるよ」

 

 

〜加藤でも分かる! DMCのルール!〜

 

・このゲームは40枚のデッキを互いに用意して遊びます。

 

•デッキを置いた後に5枚まで引き、それを手札とします。その後に山札の上からカードを1枚引き、場に置きます。

 

•ジャンケンをして先攻後攻を決定したら、ゲームスタート!

 

•山札から1枚カードを引いて手札に加えてその後──────

 

 

 

 

 

 

 

 

「相手の場のカードの近くに手札のカードを1枚叩きつけてひっくり返す。先に5枚ひっくり返した方の勝ちだ」

 

「ただのメンコだろうがぁぁぁぁぁ!!!」

 

「この時、叩きつけるカードはレア度が高い方が良い。何故なら加工の分、カード重量が若干低レアより多いからな。叩きつけた際に風が出やすい」

 

「知らねーよそんな豆知識! 何で1000ページもルール書いてあってやる事メンコなんだよ! テキストは!? ステータスは!?」

 

「現状インクのシミだな」

 

「イカれてんのか運営は! こんなん流行る訳ねぇよ! 校長カードファイターズと大差無いんだぞ! ギャグだろ存在が!」

 

「最初存在知った時は俺もワクワクしたんだがなぁ。ルールブック読んだら最後の1ページ以外の文が全く意味無いんだよ。どうも途中までちゃんと作ってたのを無理やりメンコにされたみたいなそんな感じ。書いてる奴後半キレてるんだよな、これ」

 

「何? 取引先に『あ、やっぱ仕様変更で』って前日に言われたみたいなノリなの? ちゃんとしたゲームだったのメンコにするとかセンス無さ過ぎだろ」

 

「メンコ? メンコって何?」

 

「カードを叩きつけあってひっくり返して遊ぶ物だな。確か日本の遊びだったはずだが……」

 

「後ろから読めばわざわざ聞きに来なくても良かったのか……。数話引っ張ってメンコとかマジ舐めてるだろ」

 

「何、安心しろ加藤よ。大丈夫だ」

 

「……何が?」

 

「本格的なカードゲーム系の話は他の作品に任せよう。沢山あるしクオリティ高い物ばかりだから、読者もそっちで良いだろう」

 

「他所様の作品に頼ってどうすんだぁぁぁ!!!」

 

「一時期ランキング占領してたくらい多かったから大丈夫だろう」

 

「ただ役目押し付けてるだけだろうが! 迷惑だろ相手側だって!」

 

 何と言う事だ。まさか昨日のセラフィナの遊び方が正しい遊び方だったなんて。分かるかそんな伏線。

 

「加藤、私メンコしたい。ダメ?」

 

「えぇ……いや良いけどさぁ。メンコで良いのか? 他にもカードゲームあるぞ?」

 

「うん、メンコが良い」

 

「一応カードなら俺も買ってるからやってみるか?」

 

「うん! 一緒にやろう!」

 

「ならテーブルは邪魔だな、寄せよう。戦友、一旦隅に置くぞ」

 

「おう、頼んだ」

 

 やるとなったら急にテキパキ動き始めたゴレット達を尻目に、俺は一応持って来たライトドラゴンのカードを眺める。

 

「……イメージ改善に繋がらねぇだろ、これ」

 

 高木の上司って普通にバカなのかもしれない。そんな奴が日本のダンジョン運営のトップとは……探索者の未来は暗い。

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