ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
『ふはーは! どうよ高木! 各所で売り切れ続出! すんばらしい成果だわ! これはもう勝ち勝ち山の狸さんね!』
「単に【勇者の集い】メンバーのカードが客寄せパンダになっただけっすよ」
『あー! 負け惜しみ負け惜しみ! コケる言ってたハゲがざまぁ状態で気分上々鯉のぼりよ! やはり私が正しかったわ!』
「それ言うなら鰻登りでしょうに。てか別に儲け出すのが目的じゃないのでは?」
『当たり前でしょ。これは布石よ。まずは存在を知って貰わないとお話にならないわ。だからこそ兎に角目立たせる! 人気ぶっちぎりのリファル達を前に立たせて、他の高レアに美形を入れる! 容姿が良いって言うだけで人は評価が甘くなるわ! 事実高レア求めてカードを買う人間ばかりでしょ!』
「【勇者の集い】ファンが殆どとオタクが少しって感じですけど、割合的に8:2くらい」
『ファンから興味無い人にも広がるでしょ! オタクだって同じよ! どうせオタクなんて顔の良いイラスト描かれてれば買う様なチョロい存在なんだから! こっからどんどん広まっていくわ!』
「舐め切っていますね……」
「絶対揺り戻しあるだろこれ。てか何でメンコなんすか。途中までちゃんとしたカードゲームだった記憶なんですけど。外注してましたよね?」
『あー、そうなんだけどルールブック見た瞬間あまりにも長過ぎて。こんなん誰もやらないって思った時に思い付いたのがメンコよ! 誰でも出来るでしょ? 正直カードゲームあんま興味無いし無理やり差し替えたわ』
「外注先泣いてると思いますけどね。やったのリリースガチ直前ですよね?」
『良いのよ別に。金出してるのこっちだし。そもそも面白い物作ってって頼んだのに1000ページ越えのルールブック作るっておかしく無い? 広める気ゼロよね? 基本的に理解出来ない物って面白いって思えないのよ? 何で水戸黄門があれだけ長続きしてるのかって言うのは『分かりやすい』からよ。面白い物は分かりやすい。基本よ基本』
「だからと言って前日にちゃぶ台返しは酷いと思いますが……もっとこまめに確認していれば頼まれた側もダメージ少なかったと思うのですが……」
『気にし過ぎよドラツ。安心しなさい! 報酬多めに渡したし! 文句言わせないわ! 金渡してるんですから! この調子で次々と新しい弾を出して探索者を身近に感じさせる! それと同時に探索者連中への引き締めをやるわ! これのダブルパンチで評判回復! 私へのクレーム激減! 仕事も激減! 国から評価! 良い事づくめよ! そのうち国と同レベルの権限だって夢じゃないわ〜! あーはっはっはっはぁ!』ガチャン!
「……支部長、どう思いますか」
「知ってるかドラツ。金さえ払えばある程度の奴は大人しくなる。だが今までの苦労を蔑ろにされた奴は止まらない。何だったら暴走を始める……そう言うもんだ。ちなみにこの件とは一切合切関係無いと思われるが、会長が委託した外部企業のDMC制作担当者が音信不通になったらしいぞ」
「バリクソ関係あるじゃ無いですか。あからさま過ぎますよ」
◇ ◇ ◇
「オラァァァァァ!!!」
「ハァァァァァァ!!!」
「えい……!」
「「ぐわぁぁぁ!? 強過ぎるぅぅぅ!」」
「やった……!」
「あのさ、さっきから俺のカードだけでメンコするのやめてくれない? すっげぇー複雑な気持ちになるから」
「いやレアカード勿体無いだろ。その点お前はコモンだから気兼ねなく練習に使える。俺のストレスも減る。一石二鳥だ」
「俺のストレスは溜まるから一石一鳥だよ」
あれから2時間、ルロ達3人とずっとメンコをし続けている。後半、一々デッキを置くのもだるくなってマジのガチで普通のメンコになってしまった。もうDMCじゃなくて良いじゃん。
「畜生! こうなったら俺も同じことしてやるもんねー! 見ろ! モンスターカードに分類されてるこのゴブリンを! 普通に差別だと思います! 良いのか? これ床に叩き付けるぞ!」
「甘いな、今まで生きてきて俺がどれだけ差別されてきたと思う? たかだかカード叩きつけられた所で痛くも痒くもねぇなぁ!」
「なにぃぃぃ!? 差別が当たり前過ぎて感覚が麻痺しているだとぉぉぉ!? 今すぐ暖かい食事を取って休みやがれクソ野郎ぉぉぉ!!!」
「怒りながら気遣うとは器用な男だな……」
ずっとメンコし続けてテンションもおかしくなってきた。一旦落ち着こう。
「にしてもルロ、お前凄いパワーだな。セラフィナみたいだ」
「確かにな。種族は何だ? 魔族なのは分かるが……」
「あ、えっと……」チラ
「あーこの2人ならいってもいいんじゃないか? 知った所でどうこうしないだろうし」
「うん……あのね、私のお父さん魔王なの」
「……なんと。それは誠か?」
「まぁ驚くのも分かるけど──うおっ!?」
ライラに返答している時にゴレットが詰め寄って胸ぐらを掴んできた。顔は怒りと焦りで一杯だ。
「どうした落ち着け。ジャンプしても音は鳴らないぞ」
「カツアゲじゃねぇよ! お、おま、お前! ドチャクソ偉い方じゃねぇか! 何で言わないんだよ!」
「いや目立つのはなーって思ってさ。魔王がわざわざ特別なローブ渡してる時点であっぴろげにしない方がいいだろ。多分」
「お前何で魔王様に関わり持ってんだよ! しかもやたらフランクだし!」
「別に大した奴じゃないぞアイツ。いや確かにバカほど強いし戦った時、本気出されたら勝てる気しなかったけど単なるパチカスダメ親父だぞアレ。様付けなくていいぞ」
「良い訳ねーだろうがぁ! お前俺の種族分かって言ってんのか!」
「え? ……あ! ゴブリンって魔族じゃん! 忘れてたわ!」
「忘れるなよ! 前見ろ! お前の目の前に居るのが人族に見えるか!?」
「いや正直種族とかどうでも良いし……何でも良くない? ほら、人間中身が大事って言うだろ?」
「だから人間じゃねぇんだってば!」
魔族は基本的に魔王に頭が上がらない。魔王と言う肩書きだけでは無く、本能的に服従してしまうらしい。前にオピスが言ってたのを覚えている。反発できる奴も居るが、非常に稀だ。
「申し訳ありません。とんだ失礼を……どうかお許し下さい!」
「大袈裟じゃね? そんな平にならんでも」
「お前取り敢えず黙れ! 頼むから! ゴブリンはただでさえ軽く扱われるんだぞ! もしゴブリンの俺が失礼を働いたなんて広まった日には他の魔族から何されるか分かったもんじゃねぇ!」
「そんなふざけた事してくる奴居たらしばき回してやるよ」
「余計悪化するだろ! ふざけんな!」
「落ち着けって。ルロだってさっきまで遊んでた相手がいきなり態度変えたら困惑するだろ。な?」
「うん。一緒に遊んだから友達。大丈夫だよ?」
「あ、ありがとう……ございます……」
「寛大な対応感謝する。本人が言うのであれば、このままの態度で行こう」
上手い事着地出来たようだ。そっか、ゴレットの対応が魔族の普通なのか。まぁ戦争終わらせて魔族引っ張ってる奴の1人娘だもんな。何かあれば首が飛ぶと思っても仕方ないか。そう思っていると胡座をしていた俺の足の上にルロが座ってきた。軽過ぎて乗ってるのか分からないくらいだ。
「ねぇねぇ加藤。私、加藤のカードで勝ったよ?」
「おう、やるな。個人的には叩き付けないで欲しかったが正しい遊び方だから何も言えねぇや」
「大丈夫、ちゃんと防護魔法で保護してたから。傷付いてないよ」
「え? そんなの使ってたのか?」
「うん。みんなのカードにも使ってたよ」
「「「え?」」」
自分が使っていたライトドラゴンのカードをよく見る。微かだが魔力が確かにカードを覆っている。これだけ薄く的確に防護魔法をかけれるのか……高木でも難しいぞ。何より言われるまで気づけないのが凄い。
「加藤のカード、傷付いて欲しくないから……加藤?」
「何で泣いてんだ加藤」
「最近周りにどんどんぞんざいに扱われている気がするから、心遣いが沁みるんだ……」
「それは大変だな……しかし大体がお前が発端なのでは?」
「分かってんだよそんな事! タイムマシン! タイムマシンをくれ! 過去からやり直して輝かしい未来を!」
「輝いてるの宝箱の演出じゃねぇだろうな」
それは違うよと否定しきれないのが怖い。たった1回、宝箱の演出を見てしまって今がある以上俺の欲望耐性はコックカワサキの透けて見えるサンドイッチ程度の厚みしか無いのだ。
「しかし成程。流石は魔族の姫君。魔法の腕も大人顔負けとはな。やはり魔王の一族は我々とは生物としての格が違うのやもしれない」
「? そうなの?」
「初代魔王はそれこそとんでも無い強さを持っていたと言い伝えられている。たった1人で人族全てを屠れるとも聞いたな……」
「よくある話だな。俺もガキの頃散々聞かされたよ。『魔王の一族こそこの世界の頂点』ってな。それに引き換え俺達ゴブリンと来たら……」
「そんな酷かったのか?」
「筋力無し知力無しそもそも魔法も使えやしない。子沢山なのだけが取り柄さ。戦争の時にそんな奴らの使い道なんて分かりきってんだろ」
肉盾、か。聞いてて不愉快な話だが、当時は人族も魔族も気が狂っていたとしか言えない争いばかりしていたらしいし、それくらいならやるだろうな……。
「……」
「あ、いや悪い。折角遊んでるのに空気読めてなかったな……」
「む、むう……私はどうこう言う権利を持っていないのでな……」
ライラは居心地悪そうに眉を顰める。そういやコイツゴレットと会った時ガッツリ差別発言してたな。竜人族は魔族との戦争時、矢面に立って戦っていた為、敵対心が色濃く残ってるのかもしれない。
「あールロ、ゴレットも悪気があって言ったんじゃなくてな……」
「うん、大丈夫。それに……もうそんな事起きないよ」
ルロは優しく微笑む。笑顔の向き先はバツが悪そうな顔をしたゴレットだ。
「お父さん、よく言ってるの。【あぁ〜もう良いって戦争とか。ホントいらんわアレ。あんなもん、誰でもコビー変身セットだからな。分かるなルロ。命が勿体無いって奴だ。だから何としても回避しないとなぁ……仕事終わらん、パチスロ打ちたい。分身しようかな】って」
「魔王の奴、日常的にそんな事言ってんの? 威厳なさ過ぎだろ、何だよ誰でもコビー変身セット。初期の方が変身しやすい見た目だろ」
「そこじゃないのは分かるぞ、私でもな」
「私も……誰かが傷付くのやだ。人族も魔族も。誰でも。ゴレットもだよ?」
「え、あ……」
「いつか魔王になったら、誰かが誰かを悪く言ったりするの無くせるよう頑張るね。だから……」
「だから……?」
「もっと色々な遊び、教えて欲しい。みんなで遊ぶの凄く楽しいから……」
ゴレットは少し顔を下げて頭を掻いた後、ゆっくりと顔を上げる。先程までの諦めの笑顔とは違う、愉快な感情を隠さない笑顔を浮かべて。
「良いぜ! こうなったら何でも教えてやるよ! 今日は休みだからな! ライラとやる予定だったベイブレードからやるか!」
「うん! やろう!」
「おお! 待っていたぞ戦友! 今日の為に私もマイベイを買ってきた! 私のメテオドラグーンが火を吹くぞ!」
「持ってき過ぎだろ。何だそのアタッシュケース。ミッチミチじゃん」
「安心しろ、お前や姫君の分は私が貸そう。好きなのを使うと良い! 有名なベイからマイナーベイも取り揃えているぞ!」
「沢山……! どれが良いかな……」
楽しそうにベイブレードを眺めるルロ。聡い子供だとは思っていたが、差別云々の問題も知ってはいるんだな……。認識を改める必要があるかもしれない。この子は俺が思うよりずっと強い子だ。
「8歳のガキを23時まで外で遊ばせて帰って来た言い訳がそれかテメェ! 舐めてんのか! 連絡くらいしろバカ!!!」
「だって! だって!!! トライピオが! 俺のトライピオが弱過ぎて全然勝てなくて! 何だよダウンフォースって! あんなんただのクソ雑魚パンチじゃねぇか畜生!」
「知らねーよボケ! 姫さん飯も風呂も終わってないのに寝ちまってんだろ! 預かる言ったんだったらちゃんと責任持てや! あったま来た! ちょっとアタシの部屋来い!」
「待て待て待て! いやほらルロも夢中になってたから! ゴレットの家にホビーあり過ぎるのがダメなんだよ! あんなん遊ぶからね! 誰でも遊ぶからね! だから許してぇぇぇ!!!」
「お2人共、ルロ様をちゃんとベッドで寝かせる事から始めるべきだと思いますよ。着替えもしていませんし」
「そう! よく言った流石はロールだ! と言う事で着替えの方頼んだぞセラフィナ! 俺はちょっと家の周りの索敵に行ってくる! 敵が居るかもしれないからな!」
「逃すか! オラァァァ!!!」
「ぎょああああああ!!! ヘルプミーィィィ!」
「んぅ……すぅ……」
「……仕方ありませんね。運ぶだけなら出来ますし、やっておきますか」
◇ ◇ ◇
「……ふ、ふふ……許さない……私の血と涙の結晶を……よくも、よくも……!」
あのゲームを作るのに私がどれだけ苦労したと思ってる。ずっと夢見てたカードゲームを作る夢を、リリース直前でただのメンコにされて踏み躙られて。この恨み、はらさでおくべきか。
「その為にも……あの子供。あの強大な魔力があれば……!」
失意の中ふらついてた時に見かけたローブを着た子供。抑えている方ではあったがそれでも目眩がするほどの魔力の量と質。今まで生きてきて、あれ程の物を持っている存在は見たことが無い。
「どう近づくか……油断した所で拝借したいけど……」
あれだけの力に何の策もなく真っ向から手を出せば、抵抗されて私のような妖精は消し飛ばされてしまうだろう。故に強引な手は不味い。となればあの子供を懐柔するのが1番早いし穏便に済ませる。
「様子を伺いつつ、フレンドリーに話しかけて接近。隙を見て魔力を頂戴。あのぶっ飛んだ魔力さえあれば、復讐なんて簡単……!」
そうと決まれば尾行だ。あの子供と一緒に居たチンピラにも警戒しつつ行動しなければ。
「舐め腐ったダンジョン運営が……クソダサメンコと共に地獄に叩き落としてやるわ……!!!」