ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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 小さな一室。そこには椅子が1つだけ。本来であれば仕切りがあり、相手の顔を見ることは無いが、今回は外している。

 

「さて……じゃあ始めるか」

 

「そうですね」

 

「」

 

 今から始めるのは単純な事。尋問である。

 

「取り敢えず名前と職業」

 

「フェアリル……カードゲームメーカーに勤めてます……」

 

「年齢」

 

「30……」

 

「年上かよ……で? 俺より年上が8歳の子供利用して何しようとした訳?」

 

「取引先に作るように言われたカードゲームを作って完成間近になった途端、いきなりちゃぶ台返しされて単なるメンコにされたので復讐しようと思いました……」

 

「具体的にどう復讐するつもりだったのですか?」

 

「進化して強くなって家凸して拳でぶっ飛ばそうとしました……」

 

「想像の5倍は脳筋だったな」

 

「陰湿で無いだけマシなのかもしれませんね」

 

 そもそもその進化とやらで暴れられる程の力を手に入れられると決まった訳でも無いのに……。皮算用にも程がある。

 

「ってかもしかしてあれか。お前DMCの制作者か? 直近でのカードゲームなんてあれしか無いし」

 

「そう……3年間かけて使った自信作……大人気作品になる筈だったのに……!」

 

「取引先……ダンジョン運営側にメンコにされてしまったと言う事ですね」

 

「そうよ! 何で!? 何でメンコ!? 何度も途中経過のチェック頼んでもガン無視されて! それでも必死に作り上げたのに! 直前になって『何この訳分からないゲーム。ルールブック1000ページとか狂ってるでしょ。私が流行るのに変えるからカードだけよこしなさいな』って……」

 

「ちゃぶ台返ししたのって高木の上司だよな多分……」

 

「高木さんの上となると本部の人でしょうから……会長とかでは無いでしょうか。高木さんを運営側に推したのは彼女らしいので」

 

「脅されてたんだな、きっと」

 

「人の弱み握るの得意ですからね、彼は」

 

 にしてはドラツさんにめちゃくちゃ反抗されてるあたり、彼女の弱みは握ってないのかもしれない。いや、気強いし単に怯んで無いだけか。大した物だ、今すぐ転職した方がいいのに。

 

「な、何よ! 復讐は何にも生まないとか綺麗事抜かすつもり!?」

 

「いや復讐は個人的には賛成派なんだが……単にルロを巻き込もうとしたからこうしてる訳で」

 

「労働の搾取は許せませんよね。本当に許せませんよね」

 

「あ、あれ? 思ってたんと違う反応……」

 

「俺もこの前も高木にやり返したばかりだし、そこに文句を言うつもりは無いぞ。ただ……まぁ今回はやり返すのやめとけよ」

 

「な、何で?」

 

「明らかにお前が不利なんだよ。その取引先は金は支払ってんだろ? これで払ってないんだったら労基なりSNSで告発なりあるだろうけどさぁ……」

 

「現状ではフェアリルさんが普通に犯罪者となってしまいますね」

 

「うぐ……うう……」

 

 俺と鶴岡の言葉を受けて泣き始めてしまったフェアリル。俺達にはよく分からないが、フェアリル個人としてはDMCに並々ならぬ想いを込めていたんだろう。

 

「まぁ……なんだ。元気出せよ。飯でも奢るか?」

 

「お優しいですね、珍しい」

 

「流石に哀れに思えてきて……まぁ進化の方はもう手を貸さないけどな。ルロ巻き込もうとしたし」

 

「完全に保護者ですね」

 

「ほっとけ。こんな不安定な精神の奴に力を持たせたら何やらかすか分かったものじゃないだろ。他所様の子供預かってんのにリスク背負う必要無いだろ」

 

「加藤さんも十分不安定な精神をお持ちですが……」

 

「半分くらいはお前らの所為だろ! ギアススクロールの件然り!」

 

「人の所為にするのは褒められたものではありませんね。元は加藤さんが蒔いた種。それが我々の心で芽吹き、咲いている訳です。世界は変えるつもりですが貴方は変わらないで下さい」

 

「絶対抜け出してやる。この負のループから……!」

 

 フェアリルそっちのけで鶴岡と言い争いしていると懺悔室のドアがノックされる。音が鳴る位置が低いので、すぐに誰か分かった。

 

「加藤? 鶴岡? 入るね……?」

 

「ルロ、ちょっとま──遅かったか……」

 

 フェアリルに合わせたく無かったのだが、ルロが入ってきてしまった。待っている間、クォーツと一緒に遊んでいた筈なんだが……。

 

「フェアリル……大丈夫? どうして泣いてるの?」

 

「え、えっと……な、何でも無いわ……」

 

「嘘。教えて」

 

「ううう……」チラ

 

 助けを求めるかのようにこちらを見てきた。どうしたものか、バカ正直に『コイツはお前を騙して自分の復讐に巻き込もうとしました』なんて言えば間違いなくルロは悲しむだろう。フェアリルも自分が悪いと言う認識があるからこうして言葉に詰まっている訳で。

 

「(おい、どうする? 鶴岡お前何とかしろ)」

 

「(加藤さん、昔からですけどその困った時取り敢えず仲間の誰かに丸投げする癖やめた方良いですよ。大体が私や高木さん、オピスさんですが)」

 

「(仕方ないだろ、お前ちゃんと大学出てたんだろ? 中退した俺より勉強出来るんだから言い訳も得意だろ。詐欺師なんだし。頼んだ)」

 

「(自分を卑下しても他人に困り事をなすりつけて良い免罪符にはならないんですよ?)」

 

「お前神父だろ! 俺の悩み聞いて解決してくれよ! いつも耳障りの良い言葉ばかり吐いて生きてるんだからイケるって!」

 

「ハッハッハ! 流石に誠に遺憾ですね。私は信者の方々が聞きたい言葉をかけているだけですよ」

 

「それが耳障りの良い言葉って言うんだよ!」

 

「ねぇ、ガッツリ声出てるけど大丈夫? 私が言うのも何だけど」

 

 しまった。ついうっかり小声にするのを忘れていた。

 

「今の無しで頼む」

 

「いや無理でしょ」

 

「3秒ルールで何とかなりませんかね?」

 

「言霊に3秒ルールは適応されないわよ。──ちょっ!?」

 

「答えて。どうして? 加藤達も、ちゃんと教えて」

 

 ルロの目は本気だ。今まで見た事がない──いや、ある。これはあれだ。

 

「(魔王のガチの時の目……)」

 

 口調自体は普段と変わらない。だが彼女の目はあまりにも魔王とやり合った時の目と似ていた。上に立つ者の目。決して相手を下に見ている訳では無く、目の前の問題を解決して先に進む目だ。性格が違い過ぎてあれだが、やはり親子なんだな……。

 

「……分かった。フェアリルはな……」

 

◇ ◇ ◇

 

「フェアリル、これは?」

 

「それ出す前に相手のトラップ破壊した方が安定するわよ」

 

「分かった……じゃあセラフィナ出す」

 

「ぐおおおお! それキツ過ぎんだけど! カウンター狙ってたのに!」

 

「1枚しか採用出来ないUR枠、セラフィナさんにしたのですね」

 

「うん。エルフの人よりセラフィナの方がいい」

 

「いやぁキツイなぁ……どうすっかなぁ……こっちのダンジョンもう踏破されるよなぁ……ブツブツ」パチパチ

 

「戦友よ! シャカパチはマナー違反だぞ!」

 

「ああ悪い。あー負けか? 負けでいいですか? とうとう負けるのか俺」

 

「10連勝もしたのですから充分では?」

 

「勝てるんだったらいくらでも勝ちたいんだよ。それに内訳5回は加藤相手だし」

 

「まぁ加藤さんとの試合はすんなり勝ってましたからね」

 

「俺カードゲーム嫌いだわ」

 

「20連敗もすればそうなるのも致し方ないな……」

 

「格ゲーだけでなくカードゲームもダメなんですね。またスマブラ大会します?」

 

「お前ルイージで即死してくるからやだ」

 

 負け過ぎてやる気を完全に無くしたのでその場で寝転ぶ。ルロはそれなりに勝っているので楽しそうだ。

 

「あ……! 負けちゃった……」

 

「危ねぇ! ゲルダリア出してなかったら負けてたぞ!」

 

「ゲルダリアはフィールドを水にすると毎ターン増殖するから壁に最適よ」

 

「何でそんなに再現してんだよ」

 

「探索者関連の大量の資料送りつけられてきたもの。ぜーんぶ読んで1枚1枚作ったわ。再現してて当然」

 

「ふーん……え? じゃあ俺達の事なんで知らなかったんだよ。資料見てたんだろ?」

 

「写真は無かったし、私が見たのはイラストレーターが書いたイラストだけだもの。それにまさか本人だと思わないでしょ。たまたま見かけただけなのに」

 

「成程な。所で俺のカードに関してなにか言うことはないか?」

 

「イラストよりはマトモな顔してると思う」

 

「はーブッコロブッコロ」

 

「萎え過ぎて怒りも湧いてきませんか」

 

「お前はいいよなぁ鶴岡! 男のくせにSRだもんな! コモンのリーダーがここに居るぞ! レア度分けろ!」

 

「人の価値を格付けするなんて実に虚しいことではありませんか」

 

「高レアの野郎が言っても説得力ねーんだよ! オラ! 寄越せ!」

 

「ちょ! テンションおかしいですよ! 落ち着いてください! 私が加藤さんに筋力で勝てる訳無いでしょう! 誰か、メディック! メディーック!」

 

 負けた腹いせに鶴岡に絡んでいると、勝ったルロがこっちに近づいてくる。表情はニッコニコだ。

 

「加藤! このゲーム楽しいよ!」

 

「俺楽しくない!」

 

「??? どうして?」

 

「ルロ様、加藤さんは全然勝てないから不貞腐れてるだけですよ。対戦前は絶対勝つって意気込んでたんですから」

 

「そっか……じゃあ一緒に師匠に教わろ! フェアリルも教えてくれるよ!」

 

「いやいいよ。後ろから応援してるからやってきな?」

 

「……一緒にやりたい……」

 

「加藤さんの負けですね」

 

「せめて敗北宣言くらいはさせろ?」

 

 まぁやるけども。やるんだけども。起き上がると周りから質問されまくってるフェアリルの姿が見える。少し前の悲壮感漂わせていた時とは大違いだ。

 

「ルロ様のおかげですね」

 

「そうだな」

 

 懺悔室でルロにフェアリルの事を話した結果、ゴレット達を誘ってDMCを遊ぶことになった。メンコでは無く、本来の遊び方で。

 

『じゃあ本当の遊び方、教えて?』

 

『え……?』

 

『フェアリルが作ったちゃんとしたルールでやりたい。作った人なら詳しい……よね?』

 

『あ、遊んでくれるの? 私が作ったゲーム遊んでくれるの!?』

 

『うん、遊びたい。だから……仕返しはやめて欲しい。私ルール覚えたら頑張って広めるから……!』

 

 と言う事で本来のルールのDMCで遊ぶ事になった。フェアリルはお前を利用しようとしたと伝えたが『そっか』の一言で終わってしまった。その際やたらと俺の方を見て笑っていたのが気になるが……。

 

「じゃあやろ! 加藤先攻でいいよ」

 

「んー。あんまやる気起きないが……」

 

「あ、そう言えば加藤。貴方確かセラフィナのパラレルが欲しいとかさっき呟いてたわね。はい、開発者として全カード持ってるから1枚あげるわ」

 

「よし! よしよしよし! 今度こそ俺が勝つ! あ、待ってスリーブ入れるから! これだけ三重スリーブにするから!」

 

「それ反則だぞ」

 

 確かにフェアリルはルロを巻き込もうとしたが、未遂で済んだし本人も許しているし問題無いだろ。何よりDMCだ、これは神ゲーだ。間違いない。だってこんなにやる気が出るんだから。

 

◇ ◇ ◇

 

「……帰ってきませんね」

 

「ああ……」

 

 マスターが家を出てもう6時間は経過している。取り調べに時間がかかっているのだろうか。だが引き渡すだけでそんなにかかるものか? ……と言うより。

 

「絶対寄り道してますよね」

 

「帰って来たらまた説教してやらねぇと……」

 

「まぁまだ午後を回った程度なので大丈夫ではありますが……」

 

「流石にマスターも連日夜までルロ様を連れ回す事はしないだろう。だとしても今回はスマホすら置いて行った為、連絡すら取れない。どうしたものか。正直な話、セラフィナ様と2人きりは勘弁して欲しいです。普段マスターがバイトに行ってる間も2人で家に居る訳ですが、会話をすれば間違いなく口喧嘩になるのが非常に面倒なんですよね。このツンデレのツンを放棄したロリは」

 

「全部口に出てんだよボケ」

 

「申し訳ありません。わざとです」

 

「クソがぁ……」

 

 凄まじい形相でこちらを睨んでくるセラフィナ様。ゴーレムで良かった。人間や魔族だったら覇気でぶっ倒れていたかもしれません。

 

「大体なんでお前アタシの顔に若干似てんだよ! 余計ムカつくんだよ! 目とか!」

 

「それに関してはマスターにお願いします。このボディを作成したのはマスターです」

 

「オピスも止めろや……。普通同居してる女に似せて作るか? 何考えてんだよアイツ」

 

「顔が良すぎるのが悪いとか言ってましたね」

 

「……ふーん……まぁ……許してやるか」

 

「簡単で助かります」

 

「テメェは許さねぇけどなぁ!」

 

 また始まってしまった。今はルロ様が居ないので命令違反にはならない。私の猛毒舌でセラフィナ様の血管を破壊しようと思いつく限りの皮肉と罵倒を織り交ぜた口撃をしようとしていたが──。

 

「おーい加藤ー。入るぞー。居るか? 居るよな?」

 

「居ねぇよ」

 

「え!? 居ねぇの!? そんなぁ……仕事サボってアイツをおちょくりに来たのに無駄足じゃねぇか!」

 

「それが理由ならお前の人生半分以上無駄だろ」

 

「無駄かどうかは俺が決める事にするよ」

 

「客観視を捨てた先は一体何が待っているのでしょうか」

 

「カスの煮凝りだろ」

 

 確か高木と言う方だった筈。マスターの仲間……親友……悪友……? 敵だ。よくマスターが恨み言を言っているので多分敵だ。

 

「おー、加藤のゴレ娘。元気してたか」

 

「特に不調はありません」

 

「いいじゃん。さーってと、酒飲も。俺の秘蔵のおしゃけ〜……無い!?」

 

「片したぞ」

 

「は!? 嘘だろ!? 俺のどぶろく捨てたの!?」

 

「捨てたら勿体ねぇだろ。全部料理に使ったんだよ。意外と悪く無かったぞ」

 

「勿体無ぇぇぇ!!! 料理酒代わりに使うようなもんじゃ無いんだぞ! ウワアアアア!タカギデルジバゼヨ!!」

 

「誰も押してませんが」

 

「人の家に勝手に酒置く方悪りぃだろが。文句言うな」

 

「ちっくしょー。その通り過ぎて言い訳思いつかねぇ。今日は俺の負けだ」

 

「勝ち負けがあるような会話には聞こえませんでしたが……」

 

「負けたんなら帰れや」

 

「冷たっ。まぁまぁ、一応伝える事あるからそうせっかちになるなって」

 

「伝える事? んだよ」

 

「いやさ、これオフレコなんだけど高ランクアイテムがまーた無くなり始めたんだよね。全部じゃねぇけど」

 

「……は? 何でだよ」

 

 セラフィナ様は意味が分からないと言う顔だ。それもその筈、マスター達のチームが復帰してから市場にはアイテムが出回り始め、大きく相場が落ち始めた。他の溜め込んでいたチームも損切りも含めて高ランクアイテムを放出。見事以前の常識的な(それでも高いが)値段に落ち着いた。以前私がマスターに直接聞いたから間違いない。話してるマスターの顔は男梅のようだったが。

 

「あんだけやってまだ足りねぇのか? 毎週行くダンジョンにこの前の魔王のテストもあったろ。他所の連中も吐き出したんなら足りない訳無いだろ」

 

「それが足りないんだよなぁ。問題は何かって言うと簡単だ。探索者側の話じゃ無い。買う連中さ」

 

「買う連中……ですか?」

 

「今我らが住む日本はすんげー勢いで他国からアイテム買い付けに来られてんだよ」

 

「「他国?」」

 

 思わずセラフィナ様と声が被ってしまったが、高木様は気にした様子もなく続ける。

 

「人族の国が主だけどな。魔族側はマチマチ。まぁあっちは魔王が全部仕切ってるからな。勝手に人族側の国に干渉すれば大目玉だ」

 

「他所でもここと同じような事が起きたってのか?」

 

「違うね。少なくとも他所の国で市場に物が無くてヤバいなんて話はこれまで無かった」

 

「では何故?」

 

「世界各国の資産家だったり金持った探索者が高レアアイテムをかき集めてるんだよ」

 

「何だ、戦争でもおっ始めようってのか?」

 

「それがどうも違うみたいでな。何とびっくりあら不思議! そいつらが買った高レアアイテムの数々は、行方が分からなくなってしまいましたー!」

 

「分からなく……? 買った人々が持っているのでは無いのですか?」

 

「無い。跡形も無く。本来高レアアイテム……Sランク以上の物についてはダンジョン運営だけで無く、国も必ず所在が分かるように記録している。扱いようによっては人が死んだり大規模事故が起こるからな。俺らの装備もちゃーんと記録されてるんだぜ?」

 

「ダンジョン出る際に記録させられるからな。何がドロップしたのか」

 

「この前の魔王のテストは全部俺が記録しといたしなー」

 

「……あの、待ってください。繰り返しになりますが、取り扱いに注意しなければならないアイテムが何処にあるのか、分からないと言う事ですか?」

 

「そうだな」

 

「買った連中から問いただせばいいんじゃねぇのか」

 

「問いただした結果……何て返って来たと思う?」

 

「知るか。早く言え」

 

「『神様に渡した』だとさ」

 

「……はぁ? マジで意味分からねぇぞオイ。んな舐めた答え返してきたってのか?」

 

「俺も最初聞いた時ふざけてんのかって思ったわ。でも事実なんだよ。大金出してアイテム買って、神様に渡しましたーだとよ。じゃあ何だよその『神様』とやらはって話なんだが……その『神様』に高レアアイテム渡すと、すんばらしい力を授けて貰えるらしいぜ?」

 

「力……?」

 

「今まで碌な魔法が使えなかった奴が、いきなり魔法の天才になったり。目が見えなかった奴が未来予知出来る魔眼を開眼したり、エリクサーですら治す事の出来ない生まれつきの欠損やらも治せる癒しの力……他にも色々。そんな力を授けてくれる存在」

 

「鶴岡のインチキ宗教の派生じゃねぇだろうな、それ」

 

「まぁ実際インチキっぽいんだよな。だってアイテム買った連中は貰えなかったらしいし。何でも相応しくないからとか。選り好みするんかーいって感じだよな。アイテムだけ取られてドロンされたって騒いでたんだとよ」

 

「話全然違うじゃねぇか。バカが騙されたってだけだろ」

 

「だが事実として多くの高レアアイテムが無くなってきている。おかしいと思わないか? アイテムを渡しても力とやらを貰えなかった奴らが既に居るんだ。なのにアイテムをかき集めて貢ぐのをやめない……。それはつまり」

 

「……力自体は本当にあって、それを実際に見たから釣られてるって事か?」

 

「かもなぁって感じだ。実際の所どうなのかは分からん。どうもその『神様』言われてる奴も直接バカ共に会ってる訳じゃないっぽいからな。自分の手下使ってんだろうが……」

 

「ふーん……まぁアタシらには対して関係無いだろ。言う必要あったか?」

 

「いやいや、俺達のチーム基本的に情報源が俺か鶴岡だろ? 世間の事ある程度知っとかないと、いざと言う時困るぜ? エリクサー欲しいよぉ……あ! 売ってない! ふぇぇぇん! みたいな?」

 

「無いなら潜って取ってくるだけだろ」

 

「まぁ本音はマジで加藤をおちょくりに来ただけだからな。あと魔王のお姫様を預かってるんだし、情報頭に入れとくのは悪い話じゃないだろ」

 

「それはまぁそうかもな。わーったよ、帰ってきたら伝えて……おい。何してんだ」

 

「え? 何もしてないぞ? 珍しく」

 

「お前じゃねぇ。こいつ……ロールだよ。おい! 反応しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見知らぬ景色に見知らぬ人々の死体が所狭しと並んでいる。それを見下ろす████の群れ。最後の1人になった女性が串刺しにされた。

 

「(……これは、何ですか……?)」

 

 理解出来ない。私は先程までセラフィナ様達と会話してた筈。だと言うのに今私が見えている光景は、何の心当たりもない物。1番理解出来ないのは人々を蹂躙している存在だ。姿を見ているのに理解が出来ない。どう言った物なのか分からない。分からない物に殺戮されている人々も……分からない。分からないのに。

 

「(どうして私はこんなに悲しいんでしょうか)」

 

 串刺しにされた女性が地面に叩きつけられる。何度も地面を跳ねた後、その瞳は偶然私の方を向いていた。まるで勇者のような装備を身に付けた彼女は……2度と動かなかった。私も動かなかった。動けなかった。何も知らない筈なのに、何も分からない筈なのに。──恐怖で、動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!! しっかりしろ!!!」

 

「──ハッ」

 

「お、再起動したぞ」

 

 セラフィナ様の怒声で今まで見ていた光景から解放される。2人とも困惑した様な表情だ。

 

「……申し訳ありません」

 

「何度声掛けても反応しねぇからぶっ壊れたかと思ったぞ。面倒かけんな」

 

「早くオピス呼べって泡食ってたの誰なんですかねぇ〜ブゲェ!?」

 

「余計な事言うんじゃねぇ!」

 

「いつも喧嘩してる相手が様子おかしいと調子狂うもんな、分かるよ〜セラフィナくん」

 

「言うなって言ってんだろうがぁぁぁ!!!」

 

「ギャハハハハ! ……やべ、煽り過ぎた。修羅の顔だ。逃げよ」

 

「逃すと思うか???」

 

「バカな!? 早すぎる……ギャァァァァ!!!」

 

 どうやら無駄な心配をかけたようだ。申し訳ない。だが……あの光景は何だったのか。脳も無いのに脳裏に過るなんて変な話だ。

 

「(あまり考えても仕方ありませんよね)」

 

 念の為オピス様に見てもらった方がいいかもしれない。一先ずはあの光景は忘れる事にしましょう。……何度も見たい物でも無い。

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