ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「なんか騒がしいな」
「ふむ、どうやら探索者が悪さをしているらしいぞ」
「いつもの事だな。マトモな探索者なんざマジで数えるくらいしか居ねぇし」
「そんなにか? ウォルタリアは騎士団が探索者としてやっていたが……こちらはそんなに酷いのか」
「大体8:2でクソが多い。ギリギリヤクザじゃない奴らが大半だ。強い奴も弱い奴もな」
「改善しようとはならないのか。国としても行儀の良い探索者が多い方が良いだろう」
「変に押さえつけて反抗されたら面倒なんだろ。基本放置だよ、一般人からしたら迷惑な話だが」
『ダンジョォォォン……』
「うーむ、中々に闇が深い話だな。ここに関してはウォルタリアの方が良いと断言できるな。……して、何を食べる?」
「肉食いてぇな……食い放題でも行くか。安いところ」
「金が無いのか? 出しても良いぞ」
「無くは無いが、無駄遣いする余裕も無いしな。雑に食いたい気分なんだよ」
『エンシュツ! エンシュツ!』
「あ? 加藤、お前は金あるだろ。自分で払えよ」
「と言うか姫君の護衛は良いのか? こんな所をぷらぷら歩いてるから驚いたぞ」
『タカラバコ!』
「ふむ、たまたまか。まぁ良い、今日は私が奢ろう! ウォルタリアを救ってくれた礼にもならんが、せめてもの恩返しだ」
「コイツそんな事してたのか。……まぁたまーに良い事するからな、コイツもコイツの仲間も」
「ふふ、少し嬉しそうだな戦友よ」
「んな事ねぇよ、早く行こうぜ」
「そうだな。加藤、この辺の焼肉屋に案内してくれるか?」
『ダンジョォォォン!!!』
「ナチュラルに受け入れてんじゃねぇェェェェェ!!!」
『タカラバーーー!!!』
踵落としで偽物の頭部を破壊する。魔力で出来た体はそのまま霧散していった。
「加藤ォォォォォォォ!!!」
「何て事をするのだ加藤! 加藤が死んでしまったでは無いか!!!」
「自分の言葉の矛盾に気づけぇぇぇ!!! 国語の授業寝てたのかお前はぁ!」
「……む? 何故加藤が複数いるのだ? と言うより先程私達と居た加藤が消えているぞ!」
「確かに……お前いつの間に単為生殖出来るようになったんだ? 前から単細胞だとは思ってたが」
「誰がアメーバだ! シンプル偽物なんだよ! 会話おかしかっただろ!?」
「いや2年前まではお前あんな感じだったぞ。てっきり昔に戻りやがったのかと思ったが違うのか?」
「私はお前と長い付き合いの戦友が普通に接していたから本物かと……」
「……セラフィナ、前の俺ってあんな感じだったか?」
「まぁ大体あんなだったぞ」
「偽物だけじゃ無くて過去の俺も皆殺しにしなきゃ」
「そんなドラえもんじゃ無いんですから……。それにそんな事してる場合じゃないですよ!」
「そ、そうだ。2人とも、フェアリル知らないか!?」
「……何があったのか?」
「あのね、フェアリルが……」
ゴレット達に事の経緯を説明し、半信半疑の顔をしながらも信じてくれた。
「進化ってあれだろ? よく分からんが魔力くれーって言ってたやつだろ? そんでその魔宝珠っていうのを盗んで今暴れてる訳か」
「暴れてる……まぁ暴れてるか。そういう訳だから探すの手伝ってくれ。このままだと俺の名誉がフェアリルが作ったパチモンのせいでめちゃくちゃだ」
「今更感あるが……分かった。知らない仲でも無いしな、探せば良いんだな?」
「ウォルタリアの救世主の頼みを断るつもりは無い。人探しは得意では無いが、贋物討伐は任せてくれ。市民も困っているしな」
「助かる。ルロ、フェアリルの居場所は分かるか?」
「フェアリルの気配が何個もあるの。さっき倒した偽物の加藤みたいに自分のを作ってる……どれが本物か分からない……」
「ふむ、ならば総当たりするしか無いな。ある程度の位置を教えてもらえるだろうか。片っ端から対応しよう」
「うん。えっとね……」
「おい加藤、アタシはどうすればいい。後加奈子」
「そうだな……セラフィナ、加奈子さん家まで送ってくれるか。家に居た方が安全だろうし」
「いえ、私も探しますよ! 元はと言えば私が盗まれてしまったのが原因ですし……ルロ様からせっかく貰った物を……」
負目があると言うことか。盗んだフェアリルが悪いので加奈子さんに落ち度は無いと思うが……。
「街中に暴れる贋物が居るのなら、家に居たとて変わらないだろう。1番安全なのはお前達の隣だと私は考えるが」
「……加奈子さん、お母さんは……」
「今日はたまたま実家に帰ってるので居ないんです」
「……よし、危ないんで俺やセラフィナから離れないで下さいね」
「はい!」
偽物達がやってる乱闘騒ぎに巻き込まれても困る。早くこの馬鹿騒ぎを終わらせなければ。
◇ ◇ ◇
「し、神父様! 街中に変な探索者が!」
「今日は教会から出ていませんが……」
「いや神父様の事じゃなくて! 外を見てください!」
信者の方の言われるまま外に出てみると、視界の至る所で騒ぎを起こしている者が見えた。
「確かに変ですね。一体何があったのですか?」
「カタコトの探索者と思わしき者達が各地で迷惑行為を繰り返しています。我々の孤児院の近くでも……」
「直接襲ってくるのですか?」
「いえ、直接暴行してくる様子はありません! やってるのは大体軽犯罪です!」
「成程、少し確認してみますか。【
暴れている者の動きを止めて近くで観察する。見た目は人だが魔力で構成されている人形のような物と言ったところでしょうか。何やらDMCのカードリストで見た顔ですね。
「ふむ……街中にこれが彷徨いているのですね?」
「は、はい! 何か動いた方がよろしいでしょうか……」
「そうですね。弱き人々が巻き込まれるのは許されません。金持ちなら良いですが」
「で、では指示をお願いしま「よっと」……え」
捕まえた者の眉間に指を突き刺す。当然魔力の塊故に血を流すような事は無い。
「あの……神父様?」
「いやぁ良かった。丁度人手が必要な時期ですので実に助かります」
指先から自分の魔力を流し込み、侵食する。魔力の質的にルロ様の物に似ているが……練りが甘過ぎる。この程度なら私でも容易だ。
「さぁ、頑張りましょう! 真の平等の為に!」
使える物は何でも使う。それが私達、【自我中心】のモットーだ。
◇ ◇ ◇
『ブバァー!』
『ゲベェー!』
『ボバーッ!』
「だぁぁぁぁぁ! 邪魔くせぇぇぇ!!!」
「ど、どんどん増えてますよ!」
「おいキリ無ぇぞ! 潰しても潰しても湧いてきやがる!」
「ウォルタリアで見たぞこれ! あん時よりマシだけども! モンスターよか雑魚だけども!」
ルロの指示通りにフェアリルの気配がする方に移動している間にもどんどん偽探索者共が湧いてくる。放置しようにも道を塞いでいるので叩っ斬った方が早い状態だ。
「【
ルロが【消失】を使用すると視界に入っている偽探索者達が跡形もなく消え去る。だがまた湧いて悪さをし始める。本当にキリがない。
「これもう探索者評判地の底だろ! 終わりだよ終わり! フェアリルー! お前の復讐によって無関係の奴が被害受けてんぞぉぉぉ!」
『んだテメェ! 何で俺と同じツラしてんだ!』
『ガントバシテンジャネェヨボケ!』
『ざけんなぁぁぁ! ぶっ殺す!!!』
「無関係じゃなさそうだな」
「本物の人達まで乱闘参加したら完全にスマブラ状態じゃないですかぁ!」
「畜生! 普通に探索者が治安カスなの忘れてた!」
これだけの騒ぎ、当然モデルになった本人達も気付く訳で。自分の顔をした奴が彷徨いてて頭に来た馬鹿共が一緒になって暴れ出している。あちこち至る所で始まる乱闘騒ぎ。飛び交う魔法や弾薬。ぶっ倒れる負けた連中。いつの間にゴッサムシティに引っ越したのだろうか。
「この先なのに……もう一回……!」
「ルロ! 無理するな! もう数十回は使ってるだろ!」
「でも……早く行かないと! 早く……!」
ルロの使う【消失】は魔王の一族しか使えないぶっ壊れ魔法だ。だが当然消耗も激しい。魔王レベルになればそれこそ無限に打てるだろうが、ルロには無理だ。インターバルも大して空いていない。これ以上は無理させたくない。俺らが必死こくしか無いわけだが……。
「ああああああ! 一般人共が邪魔過ぎんだよぉ! 巻き込まないようにセーブすんのめんどくせぇ!!!」
セラフィナの言う通り、ここは普通の街中だ。ダンジョン内や周りに何も無い空き地ならまだしも、こんな所で俺らが本気で暴れれば建物はぶっ壊れるし巻き込まれる人達が出るしで最悪な事になる。これだけの数、警察も動いているだろうが……この地獄を収めるのは無理だろう。
「か、加藤さん! あれ! あそこ!」
「どうし──ハァ!?」
加奈子さんの指差す方には身を縮こませた子供が居た。今の時間は20時を回っている。こんな時間に1人で外を彷徨いている時点で親は何をやっているんだと思うが、何よりの問題は探索者と偽探索者達の乱闘に巻き込まれそうな位置だと言う事だ。実際流れ弾の魔法が子供の方向に向かっている。
「クソが! テメェツラ貸せやぁ!!!」
「は!? お前まさか加──ブゴッ!?」
「オラァァァァァ!!!」
「ギョアアアアアアアア!!!」
手の届く範囲に居た探索者の顔面を鷲掴みにしてぶん投げる。投げ飛ばした探索者は流れ弾の魔法に当たって地面に落ちた。子供は無事だ。保護しようか考えたがまだ距離があるし、何より大元を止めない限りこの混乱は広がるだろう。
「おい加藤! 何だこの馬鹿騒ぎは!? 俺も混ぜ──」
「よっしゃぁぁぁ!!! 日頃の恨みィィィ!!!」
「ウギャアアアアア!!!」
「いやそれ本物ォォォォォ!!!」
再び流れ弾が子供の方に向かったので周りを蹴散らしながら近くに寄ってきたハゲを投擲する。無駄に耐久力があるお陰で子供はノーダメージだ。
「何すんだテメェェェェェェ!!!」
「あ、本人か。間違えた」
「嘘付くな! よっしゃって言っただろ! 日頃の恨みって言っただろ! 間違いなく確信持って投げただろ!」
「人聞き悪い事言うんじゃねぇよ。ガリガリ君で当たり引いた気分なだけだ。勘違いするな」
「しっかり喜んでるじゃねぇか! ふざけんな!」
「んな事より高木! 面倒な事になった! 街中に魔力で出来た偽探索者が湧いてる! 大元は俺らが何とかするから他はお前が何とかしろ!」
「いやそれなんだけど部下全員、馬鹿探索者が撃った魔法の巻き添え喰らってさー。動かせる奴数人しか居ないんだよね。ハッハッハ!」
「なんでこうも最悪が更新されていくんだ。……そうだ!」
「何が良い手があるんですか!?」
「スゥー……あーーー! あそこでいたいけな幼い少年が探索者の魔の手にーーー!」
「なぁぁぁんですってぇぇぇぇぇ!?」ニュロロロロロロ!
俺の声に反応して近くの公園の水飲み場からゲルダリアが出てきた。狙い通りだ。どうせ子供が手を洗う時に出てきて触れようとか考えてたんだろう。最悪だ。
「この世のショタは誰でどんな種族であろうと私が守る! ウォォォォォ! アイツらショタを傷付けるつもりよぉ!!!」
『『『『『そんなの許さないわぁぁぁぁぁ!!!』』』』』
「よし! これで人手は充分だな! 高木! ここは任せたぞ!」
「これ味方じゃねぇよ! 第三勢力! あ、おい待てぇ!」
大量のゲルダリアが本物も偽物も見境なく体内に捕らえていくのを尻目に、俺達はフェアリルの元に走り出した。