ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「居た! あそこ!」
「残った気配はあれだけなんだな!?」
「さっさと終わらせんぞ!」
「待って!? 早過ぎ──ウップ」
「加奈子さん耐えて!!! 頑張って!」
幾つかのフェアリルの気配を追って、とうとう最後の場所に来た。道中の邪魔者達は増えに増えまくったゲルダリアのお陰で素通りすることが出来た。
「加藤よ!」
「ライラ! ゴレットも無事だったか」
「一応教えてもらった場所探したけど、どれも空振りだったぞ」
「こっちもだ。残りは……あそこだな」
視線の先は商業ビルの屋上。あそこから強い魔力の気配を感じる。
「よし、行くぞ!」
「おう!」
「え、嘘で──ぎゃぁぁぁぁ!!!」
地面を蹴ってビルの屋上までジャンプする。大した高さでも無くて助かった。一々階段なんて登ってられない。
「フェアリル! 居んのか!?」
「よっと……あ、加奈子。大丈夫か? 悪りぃ悪りぃ」
「ウゴゴゴゴ……吐き気と恐怖が混ぜ込みご飯……」
「当然のように飛び上がるのだな……」
「もう超人だよな、コイツら」
羽ばたきながら降りてくるライラ。……加奈子さんもゴレットみたいにおんぶして貰えば良かったのかもしれない。セラフィナに担がれてた所為でグロッキーになっている。
「……居た……」
ルロの視線の先に目をやると、そこにはこちらに背を向けた黒髪と黒い羽。間違いない、フェアリルだ。
「あらら? もう来たの。早いわね」
「おい、もう辞めろ。こんなくっだらない事して何の意味があるんだよ」
「復讐って言った筈だけど?」
「じゃあ関係無い連中巻き込むな」
「大丈夫よ。私が生み出した偽物達には直接一般人に暴力を振るわないようにしてるもの」
「ぼ、暴力振るわなければ良いわけじゃ無いですよ! 迷惑行為ずっと続けてるし……何より乱闘騒ぎで周りに流れ弾が飛んでるんですよ!? 危険過ぎます!」
「ああ……そんな事になってたのね。まぁ……」
フェアリルの表情は笑顔だ。だがその目には正気は無い。俺達とDMCで遊んでいた時の奴とは──別人だ。
「私がやってるわけじゃ無いし、知らないわよ」
「テメェ……舐めてんのか? アァ? ぶっ潰されてぇならそう言えや」
「セラフィナ」
「テメェが作ったもんがやらかしてたらテメェのせいだろうが。ガキが悪さしたら親が悪いのと同じなんだよボケ。もう一度聞くぞ。テメェ、舐めてんのか?」
顔に血管を浮かび上がらせながら凄むセラフィナ。常人なら気を失うであろう殺気を飛ばされたフェアリルは──。
「私が作ったものはめちゃくちゃにされたんだけど?」
笑みを消し、一切の光を失った瞳でそう言った。
「──ッ」
圧倒的な負の感情を叩きつけられたセラフィナが怯む。コイツが怯んでる所なんて初めて見た。正直俺も面を食らっている。それ程、フェアリルの様子は……ヤバかった。
「必死に作ったものを、全力で作った作品を! 碌に途中経過も確認しないような依頼主にリリース直前に3秒で考えたような適当な物に変えられる! 金払ったから良い? 依頼主に文句言うな? 良い訳無いでしょう!? 文句あるに決まってるでしょう!? お客様は神様ってか!? 限度があるわ!!!」
堰が切れた様に捲し立てる彼女に、俺は返す言葉が無かった。何せ受けた仕打ちに関しては同情しても良いと思える物だ。いくら仕事だからと言って限度があるのもそう。
「舐めてる? 他人舐め腐らないとやってられないのよ! 知った事じゃ無いわよ他の連中なんて! んな殊勝な考え出来てんならそこの人間から宝珠盗んだりしねぇわよバァカ!」
「テメェ……」
「クソクライアントの目的はアンタら探索者のイメージ改善なの。だったら地の底まで叩き落とす! 直接会ったところで勝てるとも限らないなら、確実にダメージが入る方を選ぶに決まってんでしょ!」
「そ、それでも! 街の人達は何にも悪く無いのに被害受けてるんです! お願いします、もうやめて下さい!」
「辞めるわけ無ーい。まだまだ増やすわ。直接怪我させてないだけ有難いと思いなさい。アッハッハッハッハ!」
高笑いするフェアリル。話が通じる状態で無いのは明らかだ。となると力尽くで捩じ伏せるしか無いが……。
「別にかかって来ても良いのよ? 意味無いけどねぇ! さっきのリプレイ映像撮影したいって言うならどうぞぉ?」
セラフィナの攻撃がすり抜けていた時点で、何かしらの力が働いているのは明白だ。恐らくルロの魔力で進化した際に得た力なのだろうが……セラフィナがダメなら俺も無理だろう。要するに暴力を封じられている訳だ。説得も無理、殴って止める事も無理。……どうするか。
「……加藤、任せて」
「ルロ」
「フェアリル。お願いがあるの」
「……何かしら?」
「私と──私達と、
◇ ◇ ◇
「拝啓、加藤様。人に面倒を押し付けてお元気でしょうか。俺は今、ゲル塗れの乱闘騒ぎの中に居ます。偽探索者が次々と増えるのに対抗する様にゲルダリアが増えまくるせいで収拾がつかなくなっています。幸い一般人は避難出来たのでそこは良かったのかなって。【
『ギョアアアア!』
増えたゲルダリア諸共魔法で吹き飛ばす。本物の探索者も吹っ飛ばしているが問題無い。威力は抑えてある。
「さて、現実問題どうするかなー」
ここまで騒ぎが大きくなってしまった以上、何もありませんでしたーは通用しない。仮にこの騒ぎが収まったとしても面倒な事になるのは確定だ。
「支部長!」
考えながら雑に敵をしばいていると、空から俺を呼ぶ声がする。見上げるとそこにはボロボロのメイド服を着たドラツの姿が。急降下して俺の隣に着地する。
「何だ、起きたのか。寝てても別に良かったぞ」
「そう言う訳にはいきません。怪我の治療、ありがとうございます」
「あんなん適当に回復打てば終わりだし。てかお前だけ? 他の連中は?」
「まだ気絶中です。起きたのは私だけでして」
「そっかー、なら仕方ない。クッソあのモブめぐみんめ……あいつの所為だろマジで」
「何ですかモブめぐみんって」
「いやお前らに流れ弾撃って来た魔法使い居ただろ? 魔女帽子とローブ羽織って爆破魔法撃って来たけど顔はめぐみん程じゃ無かったろ? でもブサイクって訳でも無い。ローブも地味だしモブめぐみんだろ?」
「言っている意味が分からないのですが、その人は取り敢えず殴って気絶させました」
「モブめぐみん……モブみんだな。次はモブネス枠探そうぜ」
「バカな事言ってないでこの状況どうにかする術を考えて下さい。ヤキ入れますよ」
「ってもなぁ……」
2人で露払いしているが、糠に釘。暖簾に腕押し。まるで減る気配が無い……ん?
「あれ、減ってね?」
「……本当ですね。減って来ています」
先程までひっきりなしに現れた偽物の数が落ち着いて来ている。勿論ゼロでは無いのだが……。
「一体何が……! し、支部長! あれを!」
ドラツが示す方向を見る。視線の先には──。
(-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-) (-人-)
「すごい数の信者が集まってきているぅぅぅぅぅ!!!」
道を所狭しと手を合わせた人々がこちらに進行してくる。何故信者が分かったかって? そんなの鶴岡の宗教の服着てるからに決まっている。
「おや高木さん。こんばんは」
「お前とうとう起こすのか。この混乱に乗じて革命を」
「? 何か勘違いしている様ですが……私はこの騒ぎの対処に来ただけですよ」
「そんな数の信者引き連れて言っても説得力ねーよ」
「いやいや、よく見て下さい。彼らを」
「あぁ? ……え、コイツら……」
「街中にいる……偽探索者!?」
ドラツの言う通り、鶴岡に付き従っているのは軽犯罪をしまくっていた偽探索者だった。あんなに暴れていたのに大人しく鶴岡の言う事を聞いている。
『ビョウドウビョウドウビョウドウビョウドウ』
『メアリスーサマ! メアリスーサマ!』
『キョウサンシュギッテ……イイヨネ』
『イイ……』
「あの、言動の思想が強過ぎるのですがこれは……」
「よくぞ聞いてくれました! どうもこの偽物達は魔力で作られた幻像のような物でして。ただ練りが甘くて外部からの魔力干渉を遮れないのが分かったので……」
「分かったので?」
「私自身の魔力で侵食して乗っ取りました。無限の信者、ゲットだぜ! 始まりましたねこれは」
「終わりだよ。何もかも」
偽探索者作った奴、お前はとんでもない奴にとんでもない物与えちまったぞ。
「乗っ取った個体には近くに居る未侵食の個体に飛びつく様命じています。私の魔力が入った個体が触れる事で、未侵食の個体も私が乗っ取る事が出来るんですね。いや〜上手くいって良かった。これで街の騒動を抑える事が出来ますし、使える信者も増える。イイ事づくめです。是非生み出してくれた方にお礼を言いたいのですが、何処にいるか知っていませんか?」
「お前絶対限界ギリギリまで作らせるつもりだろ」
「失礼な! キチンと残業代は私のポケットマネーで払いますとも!」
「働かせる事は確定事項なのですね」
「素晴らしい力を持っているなら、他者のために使うのが当たり前だと思いませんか?」
『『『然リ! 然リ! 然リ!』』』
「イスカンダルみたいになってんだけど。王の軍勢なんだけど」
「にしては随分とアカいのですが……」
だが効果の程は確かなようで、確実に偽探索者を鎮圧していく。何せねずみ算式に鶴岡側のが増えていくので、どう足掻いても数の暴力で抑え込めている。
「問題はゲルダリアだが……あいつどこいった?」
アイツの分身こそみれど、本体が見えない。別の場所に移動したのか? 変に暴走されても困るのだが……。
「ショタを平等に……私に平等に……ショタを……」
「ヨガファイアー(【火球】)」
「あちゃぁぁぁぁぁ!!! 何すんのぉぉぉ!」
ストIIの火だるまやられの如く吹っ飛んで地面に落ちるゲルダリア。良かった、目が覚めたようだな。
「お前まで洗脳されてどうすんだ」
「ハッ!? 私は何を!? 確かショタのピンチに駆けつけて助けたお礼に一緒にお風呂に入る約束をしていたような気がしなくもない!」
「ご都合主義より都合の良い思考回路ですね」
「つーかお前もお前で仲間まで取り入れるなよ」
「いやゲルダリアさんが私が掌握した個体を取り込んでしまってそのままという感じでして。事故ですね」
「あれ? てか何で私ここに居る訳? 加藤は? 確かアイツの声が聞こえたから水飲み場から出て来たんだけど」
「この馬鹿騒ぎ終わらせるからその間なんとかしろってよ」
「は〜、いつもの丸投げじゃない。そう言うとこは変わんないわね。……ま、良いわよ。働きますか」
先程まで好き勝手動いていたゲルダリアの分身が一転、各方面均等に散らばって行く。
「取り敢えず外に居る探索者っぽい奴ら全部捕まえるけど良いわよね?」
「おう、良いぞ。本物だろうと偽物だろうと暴れてんのは変わらねぇしな。殺さなきゃ何でも良い」
「誰が人殺しなんぞなるもんですか。もうちょっと増えようかしら……」
「おっと、だとしたら私達は街の端の方に行きます。そこから挟んでいく形で」
「はいはい。好きにしてよ、合わせるから。高木は?」
「俺はテキトーにそこら辺のしばくわ。そっちは任せた。行くぞドラツ」
「は、はい」
数に関してはこれで何とかなる。ならば俺が考えるのは後始末だ。
「どう処理すっかなー。言い訳考えないと……」
こちとら言い訳だらけの人生だ。良い感じに言いくるめてやるさ。