ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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竜の復讐

 

「DMC……? この状況で何を言っているの?」

 

「私達が勝ったら、大人しくして。フェアリルが勝ったら好きにして良い」

 

「あのねぇ。そんな提案、私が受ける必要あると思う? 貴方達の攻撃なんて効かないんだし、このまま──」

 

「逃げるの?」

 

「……」

 

「じゃあ私の初勝利。やった」

 

 ニヒルに笑って勝利宣言をするルロ。見え見えの挑発だ。引っ掛かる奴はそう居ないだろう。だが──。

 

「……良いわよ。受けるわ」

 

「無理しなくても良いよ? 怖いなら」

 

「あまり調子に乗らないで。私が作ったゲームよ? 初めて数日の貴女に負ける訳無いでしょ?」

 

「でも私、筋がいいよ。フェアリルが褒めてくれた」

 

「──ッ。……良いわよ。どうせなら複数人でかかって来なさい!」

 

 そう言ったフェアリルは掌に数枚の紙をこちらに飛ばしてくる。取って読んでみるが──。

 

「1対複数のレギュレーション……」

 

「難しい話じゃ無いわ。単に人数分、1人側がライフや手札の使える数が増えるだけ。使用禁止カードも無いわ」

 

「これで負けたら大人しくするんだな?」

 

「吐いた言葉は引っ込めないわ。作成者に勝てるなんて思い上がってるみたいだけど……現実を見せてあげる!」

 

「うん。分かった」

 

 苛立ちを隠さないでカードを取り出すフェアリルを見ても、ルロは態度を崩さない。フェアリルに聴かれないように小声でルロに話しかける。

 

「ルロ、どう言うつもりだ?」

 

「?」

 

「確かに俺やセラフィナじゃアイツを止めれない。だがお前の【消失】なら気絶させられないか? 使い過ぎて無理か?」

 

「ううん。使える。でも今使ったらダメ」

 

「何でだ?」

 

「今のフェアリル、私の魔力で暴走してるんだけど……そのせいで体が限界なの。魔力と【同化】しかけてる……」

 

「【同化】? 聞いた事ないな……」

 

「普通の人は体と魔力は別なの。えっと袋が体で魔力が物で。いつもは中に入れて取り出せるんだけど……」

 

「本来混ざらない物が混ざりかけてるって事か?」

 

「うん。この状態で魔力を消す【消失(ロスト)】使ったら……」

 

「フェアリルごと全部消しちまうって事か……!」

 

 何とまぁ面倒臭い事をしてくれたもんだ。物理的にも魔法的にも暴力を禁じてくるとは。

 

「姫君よ。強制的にどうにかする事が出来ないのは理解した。しかしここでDMCをやった所で何になるのだ?」

 

「今のフェアリル。話聞いてくれる……?」

 

「まぁ……無理だろうなぁ、受けた仕打ち考えれば。物作りの同業者としてあのキレ具合は共感しちまうぜ」

 

「じゃあ話を聞いてもらう状態にするしかない。そしたら何とかできる」

 

「何とか……ですか?」

 

「うん。えっとね──」

 

 

◇ ◇ ◇

 

「準備はいいかしら?」

 

「大体な」

 

 5分後、俺達はフェアリルと対峙する。だが1つ問題があった。

 

「おいフェアリル。1つだけ言っておく事がある」

 

「? 何よ今更」

 

「俺とライラ──デッキ忘れた」

 

「本当に今更じゃないのよぉぉぉ!!!」

 

「しょうがねぇだろ! だって普通に家で寛いでたんだよこっちは! お前が加奈子さんに盗み働いたから急いで出て来たんだよ! つまり誰が悪い? お前が悪い!」

 

「私は外食時に持つのはなぁと……」

 

「じゃあ全然準備出来てないじゃない! 見栄張るの何!?」

 

 そう。普通にデッキを持ってないと言う話だ。装備は持ったけどデュエリストの装備は忘れたのだ。バイクも持ってないし。

 

「はぁ……まぁ良いわ」

 

「貸してくれるのか?」

 

「いいえ? どの道2人はデッキを使う事は無いもの」

 

「何? それはどう言う──」

 

 つもりだとライラが言う前に、フェアリルの目が怪しく光る。

 

「ッ! 何だ……!?」

 

「おい! 何しやがった!」

 

「加藤さん!? しっかりしてください!」

 

「ライラ! 大丈夫か!」

 

「安心してくれ戦友。特に異常はない……だが今のは何だ?」

 

 体に違和感が走る。痛みや不快感は無い。だが何かが……それこそ、強化魔法を受けた時のような感覚に近い。

 

「すぐに分かるわ。じゃあ始めましょう! 相棒カードは固定だけどねぇ!」

 

 相棒カード。DMCの目玉ルールだ。プレイヤーは好きな探索者カードを自身の相棒にする事が出来る。相棒にされたカードはいつでも使う事が出来、破壊されても手札に戻ってくる。第二の手札のような物だ。

 

「ルロは加藤を。ゴレットはライラを。貴方達のデッキに2人をモデルにしたカードが入ってるでしょ? それを相棒として使ってもらうわ!」

 

「加藤が……私の……相棒?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「行こう、加藤!」(サトシっぽい服着たルロ)

 

「エンシュッツュ!」(汚い電気を放つ加藤)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「わぁ……」

 

「ルロ。俺ピカチュウじゃないからな?」

 

「進化したらラリチュウになりそうだな」

 

「ゴブリンスレイヤーに討伐依頼出すぞお前」

 

「初期手札は貴方達は5枚! 私は8枚! ダンジョンライフは貴方達が20、こちらが40! 先にゼロにした方が勝ちよ! 先行は私が貰うわ!」

 

 山札からカードを引いたフェアリルはカードを掲げる。するとフェアリルの前にカードのような物が浮かび上がる。

 

「それ……罠カードか?」

 

「街中の偽物と同じ原理では無いか?」

 

「その通り。今から私達がやるのはリアルDMC! 使ったカードが実体化! 当然ダメージも本物! 折角力があるんだもの! 使わないと勿体無いわ!」

 

「何でもありだな……!」

 

 フェアリルの『デッキを使う事は無い』に首を傾げながらも、今のフェアリルの滅茶苦茶具合に悪態をつく。魔王の一族の魔力だ。それこそ漫画のような力を行使できても変じゃない。それくらい魔王というのは規格外だ。

 

「私はこれでターンエンド。貴方達の順番は貴方達で決めなさいね」

 

「手札的に……俺からやって良いか」

 

「うん。良いよ」

 

「つっても俺のコントロールなんだよな……。罠一枚貼って終わりだ」

 

 罠カードは内容問わず1コストで使用できる。相手が探索者で攻撃して来た時に使う事が出来、妨害したり自分に有利な効果を発動できる。ゴレットのデッキは罠盛り沢山で序盤を耐えて、強い探索者を出してボコボコにするデッキだ。死ぬ程ボコられたからよく覚えている。

 

「私のターン……! 1枚引いて……」

 

「どうするんだ?」

 

「えっと……攻撃する! 1コストでカトウを召喚!」

 

 ルロは俺のイラストが描かれたカードを掲げる。それは光り輝いて、街にいる俺の偽物が現れ──。

 

「無いなぁ……」

 

「あれ……? 出て来てくれない……」

 

「おいテメェ! 自分だけ卑怯な真似してるんじゃねぇだろうなぁ!」

 

「な訳ないでしょ。ゴレットの方はちゃんと出てるでしょ? 外野は黙ってなさい」

 

 確かにその通りだ。じゃあ何故出てこない? コストは足りているのに……。

 

「加藤? どこ行くの?」

 

「え?」

 

 ルロに言われて気付いたが、俺は何故かフェアリルの方に足が動いていた。戻ろうとしても出来ない。体が勝手に動いている。

 

「は? は?? は???」

 

 そのまま俺はフェアリルの近くまで寄る。当然、フェアリルが貼った罠がある訳で──。

 

「来たわね。罠カード発動! 【モンスターの奇襲】!!!」

 

 佇んでいたカードが光り輝いてその中から大きな影が出てくる。

 

「ゴガァァァァァ!!!」

 

「ライトドラゴン!」

 

 罠からライトドラゴンが現れた。咄嗟に攻撃される前に潰そうと剣を抜いて切り付ける。

 

キン!

 

「……あれ」

 

 簡単に弾かれた。まるで歯が立たない。

 

キンキンキン!

 

 何かの間違いかと思い、何回か切り付ける。全ての攻撃は弾かれた。

 

キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

 

 ライトドラゴンは涼しい顔をしている。周囲の空気も涼しいを通り越して凍っている気がする。

 

キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!!

 

「ハァ! ハァ! ハァ……」

 

「グルルルル……」

 

 必死に倒そうと振りまくったが効果は無い。息を整えた後、俺は納刀し──。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめーんね!」

 

「ガァァァァァ!!!」ボォォォォォ!!!

 

「モエチャッカファイアァァァァァ!!!」

 

「加藤さぁぁぁぁぁん!?」

 

 可愛く謝ってみたがダメだった。ブレスをモロに喰らって俺は吹っ飛ぶ。全身に走る痛みに涙が出そうだ。

 

「加藤! 加藤! しっかりして!」

 

「ぐ、ぐふぅ……」

 

「おい加藤! 何やってんだ! そんな雑魚トカゲにやられるとか遊んでんのか!?」

 

「ち、違う。なんかおかしい。俺の攻撃が碌に効いてない……。たかがライトドラゴン程度にこんな事は……ま、まさかさっきの眼光は!」

 

「ククク……アーハッハッハッ! ようやく気付いたようねぇ! そうよ! 今! 貴方やライラはこの場に置いてカードその物! そしてステータスも効果もカードの通り! 加藤、貴方の今の実力は体力2、攻撃2、防御2のコモンステータスなのよぉぉぉ!!!

 

「俺YOEEEEEEEEE!!! 何でもありじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 先程のフェアリルの光はどうやら呪いと同じ物だったようだ。実際呪いの中には対象者を弱体化させる物もある。詰まるところ、今の俺はクソ雑魚ナメクジと言う事だ。

 

「加藤が勝手に突っ込んでったのは……【凶戦士カトウ】の効果、【可能ならば毎ターンダンジョンにアタックする】が発動したって事か!」

 

「つまり加藤のカードを召喚する度、勝手にダンジョンに向かって行って返り討ちにされると言うことではないか! 不味い……足手纏いだ!」

 

「事実陳列罪やめろ! 傷付くだろ!」

 

 ボロボロになりながら何とかルロの近くまで戻ってくる。相手の場には罠カードで山札から出て来たライトドラゴンが残っている。このまま俺を出し続けては俺がボコられるだけだ。

 

「ルロ、取り敢えず俺を召喚するのやめて別のカードを……」

 

「その……私のデッキ、低コスト探索者はカトウしか入ってない……出さないと暫く何もできない……」

 

「わ、罠は? モンスターもあるだろう!?」

 

「引けてない……手札全部高コストの探索者……」

 

「oh……」

 

 一応俺がアタックを防ぐ場合、ライトドラゴンはこちらにアタックさせる事が出来ない。意味自体はある。

 

「だから……加藤、頑張って! 私いっぱい治すから!」

 

「……こ、こうなりゃヤケだ! コストが貯まるまで、特攻してやらぁぁぁぁぁ!!!」

 

 序盤のダメージレースを支える為、俺の自爆特攻が始まった。




ライトドラゴン君、悲願の復讐を遂げる
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