ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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せいぞ〜〜〜ん、せんりゃく〜〜〜!(訴訟)

 

「【篠家】?」

 

 篠目がぶち撒けた血を水で流す。変にコンクリートじゃなくて土の上だったので誤魔化すのは簡単だった。量が量なので全員でやる必要があるけど。

 

「ああ、篠目の実家。生まれた人間に必ず篠って文字を入れる決まりがある。過去の魔族との戦争時に大活躍したお家だよ。その功績からか、国に対しても滅茶滅茶強気に出られる。連中居なかったら日本が無かったって言っても良いくらいだからな」

 

『すまぬな大地よ……わっちの血で汚してしまって……虫さんトコトコで可愛いのう……』

 

「そんな家からどうしてこんなアッパラパーリナイが生まれてしまったんだよ」

 

「神様の悪戯よ。きっと」

 

「悪戯越えて軽犯罪だっつの」

 

 掃除しながら篠目の身の上を高木から説明される。つまりこの死にたがり馬鹿は超が付くご令嬢という訳だ。国にすら口出し出来る一族とかとんでもないな。

 

「元々バカみたいに強い人間しか産まれないらしいんだが、篠目は外れ値。一族最強らしいぞ。過去も含めて」

 

「まぁ外れてるな。生物としての枠から」

 

 自分から死にに行くとか火に飛び込む虫所では無い。地元大好きみたいな感覚で死ぬの大好きと言われても困る。

 

「てか高木は何でそんなに詳しいのよ。キモくない?」

 

「いや篠目ってチーム入った時からイカれてただろ? なんか裏があるんじゃないかと思って調べたんだよ。そしたら一族最強なのに放逐されてるっていう。笑ったわ流石に」

 

「あぁ……なんか昔言ってたな。家追い出されたって」

 

「でもちゃんとは聞いてなかったわよね。何で教えないのよ」

 

「俺に言うなよ。口止めされてたんだからよぉ」

 

「「口止め?」」

 

「『どうか言わないで欲しい、あそこの家とはもう関わりたくない』ってな。まー俺も実家とは仲悪いからよ、気持ちを汲んであげてた訳」

 

「でも今言うんだな」

 

「そりゃあのヤバい兄貴が出てきて何も知らんは無理だろ。篠目の兄貴、篠夜……アイツ相当ヤバいぞ」

 

「どうヤバいのよ。ヤバ人材ならこっちだって負けてないわよ。行きなさい迷惑中毒者加藤! ラリった顔して突撃よ!」

 

「人ですらない奴が行けよ。お前が1番広範囲に迷惑かけまくってんだろ」

 

「自分の両親を無理矢理隠居させて家乗っ取ったんだよ。すげぇよな、篠目が1番強いと言っても他の一族だってバカみたいに強い。それ全部掌握してんだから」

 

「強さで無理矢理屈服させたって言うのか?」

 

「多分な。物騒だよなぁ、おっそろし〜」

 

「ふーん……さっきの話から考えると、両親が篠目を追い出してあの兄貴が連れ戻そうとしているって感じか」

 

「そうなるわね。……ねぇ」

 

「あぁ」

 

「「キショくね?」」

 

「ハモるほどのキモさだったかー」

 

「いやだって……自分の側に居るのが正しいだの言ってる兄貴とか……キショいだろ」

 

「しかも篠目ってもう20よね? 20の妹にシスコン発動してるの? エグ過ぎてロックマンエグゼなんだけど。トランスミッションなんだけど」

 

「まぁシスコン発動しててキモイのは確かだが、奴さんは大真面目。権力振り回して指名手配でっち上げてまで捕まえようとしてる訳だろ? このまま終わる訳無いってのはお前らも分かるな?」

 

「……そうだな」

 

 高木の言う事はご尤もだ。このままだと篠目は良くて逃亡犯。悪くて座敷牢だろう。そりゃ暴れれば覆す事は出来るだろうが少なくともシャバの空気は吸えなくなる。あの兄貴もそれを分かってやっているのだろう。大した執着だ。気持ちが悪い。

 

「おい篠目。お前帰りたく無いんだろ?」

 

「……そうじゃの。あそこはわっちの居場所では無いし……」

 

「そうか。なら何とかするか」

 

「……しかし」

 

「何弱気になってんだよ。その為に俺らに会いに来たんだろ?」

 

 正気に戻った篠目の背中を軽く叩く。コイツのこんな姿は見た事が無い。余程何かしらのトラウマがあると見えた。ならやる事は一つだ。

 

「悪いがこの件が終わるまでは俺達の言う事はちゃんと聞いてもらうぞ。勝手に暴走するな、良いな?」

 

「……あい分かった。約束しよう」

 

「それに掃除に時間取られるから切腹は控えろ。良いな?」

 

「分かった。我慢しよう」

 

「後俺のギアススクロールにサインと血判押せ。良いな?」

 

「分かった。押させてもらおう。……ん?」

 

「言質取ったァァァァァ!!!」

 

「「ちょっと待てぇぇぇ!!!」」

 

 あまりに上手くいったのでガッツポーズをしていると高木とゲルダリアに詰められる。

 

「何だよ。なんか文句あんのか?」

 

「お前この状況で騙し討ちみたいな事するか!? 仲間だろ!」

 

「お前にだけは言われたく無ぇんだよハゲ! いっちばん最初に騙し討ちしたのはお前だ!」

 

「そこのハゲがやり出したとしても篠目関係ないじゃない!」

 

「うるせぇ! こちとら全然進捗無くて焦ってんだよ! ケルコットも結局『いや、なんか怖いので……』って言ってサインしてくれなかったし! まだ俺とセラフィナの2人分しか無いんだよ! 後5人足りねぇんだよ! 少しでも稼がないといけないんだ! その為なら俺は手段を選んでられねぇ!!!」

 

「読者も大して覚えてないだろう設定の為にピンチの仲間嵌めるのかお前は!」

 

「DA☆MA☆RE! 例え世間が読者が作者すらも忘れようと俺は忘れねぇ! 良いだろこんくらい! どうせ相殺されるんだし! なぁ篠目! 良いよなぁ! リーダー命令だもんなぁ!?」

 

「くっ……不覚……! だがどの道わっちに選択肢は無い……この件が終わったら……サインしよう……」

 

「ヘイヘイヘェェェイ! よしお前ら! 全力で篠目を助けてやろうじゃないか! だって俺達、仲間だろ?(Dの意思)」

 

「今だけすっげぇ〜〜〜辞めたくなって来たわね」

 

「船降りてぇ〜〜〜」

 

 掃除も終わった。早速行動に移そう。安心しろ篠目。こうなった俺はやるぜ!

 

「さて、その前に残った仕事やってくる」

 

「ああ、あの加奈子と呼んでいた者が居ただろう? わっちの代わりに謝っといてくれんか? 迷惑かけて申し訳ないと」

 

「謝れる事は謝れるのよね篠目って」

 

「反省は別にしないけどな。あ、加藤。お前の勤怠評価、サボりで下げとくからよろしく」

 

「あ、今回の制裁これかぁ……」

 

 この後普通に加奈子さんに怒られた。後に寿司を奢る事で何とか許して貰えたけど。

 

◇ ◇ ◇

 

「と言う事で、篠目の兄貴がキモ過ぎ委員会なので何とかしようの会議です」

 

「会議って教会でやるもんなのか?」

 

「ここなら情報漏洩しても鶴岡の責任に出来るからな」

 

「ハッハッハ! 流石に怒って良いですか?」

 

 急に呼び出しが来たと思ったらメンバー全員集合していました。喜ぶ事なんだろうけど、面倒毎持って来たなぁ篠ちゃん。

 

「まぁ取り敢えず久しぶり。元気してた?」

 

「うむ。わっちは元気じゃ。まるで生き返ったかのような晴れやかさでな……」

 

「それはさっき死んだからだよね? さて、会議と言っても先ずは状況を教えて貰わないと。お家の事とか、お兄さんの事とか。他にも分かる範囲で色々と」

 

「どうしたのよオピス。急に仕切っちゃって」

 

「こういう話し合いの時にグダるの知ってるからね。絶対グダるんだよ僕達の会議は! 僕まだ炒飯の時の事覚えてるからね!?」

 

「あのダンジョン内で飯作るかーって話になってから炒飯の作り方で揉めたやつか? あれどんくらい時間かかったっけ。高木覚えてるか?」

 

「30分くらいじゃなかったか?」

 

「3時間半だよ! 炒飯作るのに3時間半! ずぅぅぅぅぅっと炒める前にご飯にマヨネーズ和える和えないで3時間半! あれ程無駄な時間この世に無いよ!」

 

「ホントくだらねぇよな。アタシからしてみれば和える一択なんだよ。米同士がくっつかねぇだろ」

 

「いやいや、マヨネーズの風味が入ってしまうのが私的にはどうにも……。炒飯の油分はラードだけ派なので……」

 

「あれ結論出たでしょ? 食べれれば何でも良いのよ極論。最悪炒めなくても良いわ」

 

「何食っても溶かせるだけだろ全身胃液舌バカ」

 

「取り消しなさい加藤! 誰が酸性よ! 私はノーマルよ! オバケ信じてないし!」

 

「いや霊はおるぞ。あれはわっちが子供の頃、1人で肝試しした時──」

 

「ほらもう脱線してるじゃん! アンデットが存在してる時点でオバケもクソも無いんだよ!?」

 

 ほら始まった。こうなって来ると誰かがツッコミ役と言うババを引かないと何にも進まないし決まらない。それが僕達だ。高木君なんて僕を見てニヤニヤしている。『今回お前ツッコミな!』とでも言いたいのかな。石にしてやろうかな。

 

「ほら! 篠ちゃんも早く! 今日は早めの解散にしたいんだよ!」

 

「何でそんなに急いでおるのじゃ?」

 

「今日僕エステの予約入れちゃったんだよ! 遅刻したく無いんだよ!」

 

「お主の無駄に高い美意識も変わらないのぉ」

 

「女かよ。んなもんやってもやらなくても変わらねぇよ」

 

「セラちゃんが無頓着過ぎるだけだからね? サキュバスの血混ざってるからって何もしなくてもそれって狡いよね」

 

「そこだけは捨てた親の血に感謝してるわ。それだけな」

 

 兎にも角にも他の皆を話を聞くモードに切り替えさせる。場が落ち着いたのを見て、咳払いをしてから篠ちゃんが語り出した。

 

「わっちは篠家と言う格式の高い家に生まれたのじゃが……わっちは次期当主候補として育てられた。基本的に強い者が上に立つ決まりがあってな。わっちより強い者がおらんかったからほぼわっちに決まっておった。まぁ色々あって親に勘当されたんじゃが。そして兄様じゃが……」

 

「やたらとお前に執着あったぞ。過去に何があったんだ」

 

「逆恨みとかですかね。兄より優秀なのが許せないなんて、あり得そうな話ですが」

 

「いや、それが……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『篠目、これ食べるかい? あげるよ』

 

『篠目、トイレかい? 着いて行ってあげよう』

 

『篠目、お風呂かい? 一緒に入ろうか』

 

『篠目、寝るのかい? 添い寝してあげよう』

 

『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』『篠目』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幼児の頃からこんな感じでな。部屋に勝手に入って『下着を仕舞っておいたからね』と言われた辺りでサブイボが立ってしもうた。それっきり兄様は苦手なのじゃ。あ、やばいストレスでハラキリしそう……」

 

「通報しろそんな兄貴」

 

「思ってたよりシスコンだったし思ってたより気持ち悪かったわね」

 

「だが人に冤罪ふっかけるまでの執着はよう分からん。今までわっちに不利益があるような事はしてこなかったからな。権力を握ってから人が変わったのか元々の素質なのかは分からんが……」

 

「うーん、話だけ聞くと篠ちゃんの事好き過ぎるから暴走しているって印象だけど……どうだろ」

 

「何にせよこのままだと篠目は追われ続けるんだろ? だったらその兄貴も息かかった奴もぶちのめせば良いじゃねぇか」

 

「それが出来れば苦労しないんだよ。考えても見ろ。自分の都合で警察やら何やら動かせるような奴なんだぞ。俺でも自分の意思で動かせるのは部下だけだ。腕っぷしで解決したら最悪ここに居る全員罪でっち上げられて豚箱行きまである」

 

 高木くんの言う通り、別に僕らは特別階級の集まりじゃない。体制側に真っ向から歯向かう気も無いので暴力は流石にまずいね……。

 

「それに兄貴本人は良いとして上から命令されてるだけの警官やらに矛先向けるのはダメだ。仕事って事にされてやらされてるだけだしな」

 

「チッ、まぁ仕方ねぇか。わざわざ罪やらかして捕まる理由つくる必要も無ぇしな……」

 

「待ってください。私も一部ではありますが警察を動かせますよ。それに最近漸く、私に心酔してくれている政治家が出来まして。もう少しです」

 

「この前警察に職質されそうになって用水路に飛び込んで逃げたけどセーフよね?」

 

「……事実陳列されるだけで捕まるんじゃねぇのかコレ。アタシも何度も警察と揉めてるしよ」

 

「陳列される前にグチャグチャにするしか……」

 

「並べる商品増やしてどうすんだよ」

 

 困った事に僕達は基本的に権力者と揉めるような事は起こした事が無かった。好き勝手にやってただけだから接点が無かっただけなんだけど……だからこそ、こう言う時の対処法が分からない。

 

「一先ずの案として、篠目さんは私の方で預かる方向でよろしいでしょうか?」

 

「何でじゃ?」

 

「簡単な話です。篠目さんをうちの宗教に入信した事にして信者になってもらいます。そうすれば例えまた警察が追ってきても時間を稼げます」

 

「それ公務執行妨害になりそうなんだけど平気かしら」

 

「そもそもの話、存在しない罪でしょっ引こうとしている訳で。証拠はあるのかと逆に詰めてやれば警察も渋い顔をするでしょう。何より……ウチは非常に面倒で関わりたく無いと思われているそうなので。何故か」

 

「成程! お前の宗教が胡散臭過ぎるし、自分たちの内部に味方する奴らも居るで警察のモチベ駄々下がりになるんだな!」 

 

「不服ですがその通りです加藤さん。ですので今すぐにどうこうは無いでしょう」

 

 でもそれは時間稼ぎにしかなっていない。つまり、その時間を稼いでいる間にお兄さんに篠ちゃんの事を諦めるor手を出せなくさせる必要がある。……って事なら、あれかなぁ。

 

「うん。やるしか無いね。高木くん」

 

「ん? 何だ?」

 

「弁護士探して欲しいんだけど……頼める?」

 

「は? いやまぁ良いけど……まさか」

 

「そのまさか。いくら名家と言えども世間体ガン無視は出来ないでしょ。だったら法に庇ってもらおう。要するに──裁判仕掛けるよ!!!

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