ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

97 / 100
熱中症にはお気をつけ下さい。自分は点滴打つハメになりました。


Q.お前も勇者にならないか? A.ならない

 

「馬鹿かお前らはぁぁぁ!」

 

 裁判の為にエネロマ先生から色々教えて貰っていたら、高木から『なんかセラフィナ達が暴れてるらしいぞ』と言う電話があった。指示された場所に急いで行ってみたら、周囲の建物は無事だが舗装されていた筈の道路はバリバリに割れている。まるで今から工事するのかと言った具合だ。

 

「何で喧嘩越えて殺し合いに発展するんだよ! 俺が見てない時に何があった! おいセラフィナ! 答えろ!」

 

「あのまま続けてればアタシが勝ってた」

 

        

        

        

        

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」

 

「お前らは何か言うか?」

 

「やめとこうかな」

 

「そうね、何も無いわよ」

 

 ゴキャッ! ドベチャッ!

 

「どうせ拳が降ってくるしね」

 

「言い訳するだけ無駄よね」

 

 当然2人にも拳をプレゼントフォーユー。俺は差別をしない。銀河系全てのアホに平等に制裁を与える。今だけは俺自身の事は棚と一緒に宇宙に放り投げておこう。

 

「お前らが半殺し状態になるくらいだったら別に良いんだよ! どうせ死なねぇもんそんくらいじゃ! でも周りはそうじゃねぇんだよ! 道路どうすんだ! 車通れねぇ自転車走れねぇ歩行者歩けねぇ! これ何か分かる? 公共の物なんですよ! お前らの物じゃないんだよ! お前らあれだからな! これで救急車通れなくて重病患者が間に合わなくなったらお前らのせいだかんな!」

 

「その通り。その通りなんだけど……ねぇ、彼っていつもこんな感じで説教してるの? だとしたら彼凄くまともに見えてくるんだけど……」

 

「いえいえ、エネロマさん。あれはどちらかと言うと加藤さん自身に被害が来るからブチギレている訳ですね。周りの人の事も考えてない訳では無いのですが、割合的には7:3くらいでしょうか。要は私怨込みです」

 

「被害? 被害って言うと……」

 

『うわ思い出した! アイツ【自我中心】の加藤じゃん!!!』

 

『じゃあアイツら全員その仲間かよ! 通りで強いし狂ってると思った! 逃げろ逃げろ! 何されるか分からねぇ! 連中に喧嘩売った奴らはみんな再起不能にされてるぞ!』

 

『あ、あの人そんなにヤバい人なんだ……』

 

『まぁ見た目からチンピラだものね……』

 

『【自我中心】の加藤か……。家族や友人にも近づかない様言っとかないとな」

 

「ほらぁぁぁぁぁ!!! こうなるじゃぁぁぁぁぁん!!! モォォォォォ!!!(牛化)」

 

「とまぁこんな感じで二次被害が発生し、一般の方々にも素性がバレて結果的に加藤さんの評判が更に下がります」

 

「仲間に足引っ張られるどころか床下収納に閉じ込められてるの初めて見たわよ」

 

「全員しまっちゃうおじさんって事ですね」

 

「もうダメだ〜〜〜」

 

「加藤さん落ち着いて! 諦めちゃダメですよ!」

 

「か、加奈子さん……」

 

「リーダーなんですから! この人達の手綱握れるのは加藤さんしか居ないんですよ! ファイト!」

 

 俺が絶望していると加奈子さんが軽いガッツポーズをしながら励ましてくれた。その通りだ。このままで終われない……!

 

「まず超マイナスを大マイナスくらいに戻さないと……! 高木ィ!!!」

 

『はいなんざましょ』

 

「資材くれ! 道路直すから! はよ!」

 

『まぁ俺もダメージジーンズのパクリみたいな道路困るしな。今部下送るわ』

 

「ナイス! オラオラオラ! まず瓦礫寄せんぞ馬鹿野郎共!」

 

「お、おい待てよ。そもそもアタシはゲルダを止めようと──」

 

「お前もガッツリぶっ壊しただろ? 何だセラフィナ、お前いつの間に自分のケツすら拭けねぇ奴になったんだ? おしめ付けるか? アァ!?」

 

「…………悪かった。もうやらねぇ、約束する」

 

「よし、約束な」

 

「今がチャンス! ごめんち!」

 

「よし、罰則な」

 

「贔屓! 依怙贔屓! 加奈子裁判長! 奴顔好対応変化! 判決!」

 

「いや裁判長じゃないし! エセ中国語やめて下さいよ!」

 

「ごめんね加藤くん。お詫びに僕がこんな時の為にと絵師さんに頼んで作ったセラちゃん(チャイナドレス)のカードをあげるよ」

 

「よし、過不足無いな」

 

「裁判長ォォォ! 今まさに不正の瞬間! 賄賂の瞬間が!」

 

「う、うーん……む、無罪で……」

 

「司法は死んだ!」

 

「良いからキリキリ働けぇ!!!」

 

「ひーーーーーん! ミニマムゲルダちゃんはもう懲り懲りよーーーーー!」

 

 泣き喚くゲルダリアを引っ張りながら片付けに入る。警察に通報されて無いかな、どうかな。いざとなったら逃げるしか無い。篠目の裁判やる前に警察沙汰になったらお終いだ。

 

「すいませんリファルさん! エネロマ先生! ちょっと! ちょっと待って下さい! ごめんなさい!」

 

「て、手伝う? 大変そうだし……」

 

「大丈夫っす! これ以上面倒掛けられないんで!」

 

「面倒ごとって言う自覚はあったのね……。分かったわ、頑張って」

 

「あざす! 急げお前ら! 協力者待たせるんじゃねぇぞ!」

 

「行っちゃったわね……。何と言うか……彼の周りってホント退屈しなさそうねぇ。本人が望んでいるかは疑問だけど……リファル? リファル?」

 

「……あ、はい。エネロマ、どうかしましたか?」

 

「どうしたって……さっきからずっと黙ってたから大丈夫かなって。体調悪い?」

 

「いえ、少し考え事を。……やはり、加藤様は……」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 何とか修復作業が終わった日の夜。本来であれば精霊裁判での立ち回りをレクチャーしてもらう筈だったけど、時間も時間ということで明日やる事になった。

 

「じゃあ今日はこれで解散ね」

 

「すいません。結局こんな時間までかかっちゃって……」

 

「埋めるのに苦戦しましたね。皆さんもうちょっとテキパキ動いてくれないと」

 

「お前は逆に何で道路補修上手いんだよ」

 

「ホームレスの方達を社会復帰させる為にも、斡旋先の仕事を把握してないといけませんので。重機系の資格も持ってますよ」

 

「どんな教祖だよ」

 

 鶴岡さんが現場監督みたいな感じで指示を出していたので作業自体はスムーズだった。まぁ私は見ていただけで、何もしていないけど……。

 

「セラフィナ達は先に帰したし、俺らも帰りますか」

 

「警察の人、来なくて良かったですね……」

 

「いやホントそう。ホントよかった……危なかった……」

 

「来たとしても何とかなりますよ。何とかしますので」

 

「お前に頼ると後々揺り戻しがありそうだから嫌なんだよ」

 

「ハハハ! これは手厳しい。……おっと、もうこんな時間ですか。それではお先に失礼しますね」

 

「ああ、また明日行くから。篠目の面倒見ろよ」

 

「教会内での切腹は勘弁してほしいですねぇ」

 

 鶴岡さんが去っていって、残ったのは私と加藤さん。そして勇者の集いのお2人だ。

 

「じゃあ私もそろそろ……」

 

「あ、送りますよ。夜だし危ないんで」

 

「そんな、考え過ぎですよ」

 

「いやいや、戦えるならまだしも加奈子さんはそんな事ないじゃないですか。送らせてください」

 

「そうよ。今時何あるか分からないんだから」

 

「そ、そうですかね? ……じゃあお願いします」

 

 そう言ってリファルさん達とも別れて加藤さんと歩き始める。時間は20時過ぎ。既に辺りは暗い。

 

「何だか新鮮ですよね。加藤さんと仕事以外で2人って」

 

「……そうですね。あれか、クビになった後の公園で会った時と、その後家に来た時くらいですか。2人だったのって」

 

「誰かしら居ましたからね。高木さんセラフィナさん鶴岡さん。ルロ様にロールさんにオピスさんにゲルダリアさん……最後に篠目さん」

 

「すげぇや。ルロ以外何かしら問題ある奴しか居ねぇ」

 

「ま、まぁ……それは加藤さんが……はい……」

 

「やめて下さい。俺に問題があるのは重々承知してるんで……」

 

 言ってしまえば似た物同士が集まっている。まるで光に群がる虫みたいに……流石に失礼かな、やめておこう。

 

「(でも、何となく分かるんだよね……)」

 

 そりゃあ加藤さんは普通にダメ人間だと思う。ダンジョンにどハマりして身を崩し、好き勝手した結果中毒者になっちゃってそれに苦しんでいる。口も悪いし柄も悪い。世間的には避けられる様な人だ。……でもそれは、決して良いところが無いと言う訳じゃない。

 

「(だってこの人、誰かの為に本気で怒れる人だから)」

 

 ルロ様の時、人族と魔族の事を考えれば下手に手出しする必要性は無かったと思う。魔王さんが流してくれたから何とかなっただけで、本来だったら大問題の案件だ。……それでもあの時、加藤さんは怒った。自分の為だと言い訳しながら、ルロ様の為に。

 

「(ゴレ娘の大会の時もロールさんが貶されたからとか聞いたし……ケルコットさんの時もそう。この人が本気で怒る時はいつも、誰かの為)」

 

 多分【自我中心】のメンバー全員はそれを分かっている。最近出会った私でも分かるのだから、長い間一緒に居た人達が分からない筈が無い。それで付いてきているって事は……きっと何かしら、この人に救われたんだろう。本人に自覚がある無しに。私だって、そうだし。

 

「(だから……ほっとけないんだよなぁ……)」

 

 何と言うか、生まれた時代が悪かったのかもしれない。それこそ戦争の時代とかに生まれていれば、もしかしたら本当に勇者って呼ばれていたのかもしれない。

 

「(……いや、この人は今のままの方が良いよ。やっぱり)」

 

 私としては、加藤さんは高木さん達に怒ってるくらいが丁度いい気がする。何と言うか、加藤さんが本気で怒ると何処か遠くに行ってしまいそうで──。

 

「加奈子さん、着きましたよ?」

 

「へ? ……あ、ホントだ」

 

 なんて事を考えていたらいつの間にか家の近くに着いていた。全然気付かなかった……。

 

「途中から急に黙っちゃって怒らせたのかと思いましたよ」

 

「ええ!? すいませんすいません! ボーッとしてました!」

 

「いや謝らなくても。そりゃね、あの訳分かんない裁判に付き合わされるってなったら疲れますよね」

 

「あいや、そう言うわけでは無いんですけど……ごめんなさい」

 

「ゆっくりしてください。それじゃ」

 

「ありがとうございます……」

 

 そう言って加藤さんはこちらに背を向けて歩き出す。何故か気まずくて仕方ない。

 

「あ、あの!」

 

「? はい」

 

「お、おやすみなさい!」

 

「……はは、加奈子さんも。おやすみなさい」

 

 一瞬驚いた顔をした後、笑って言葉を返してくれた。ゆっくり歩いて行く加藤さんを少しの間眺めて、私も自宅に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『加藤様、【勇者の集い】に加入していただけませんか!?』

 

「え?」

 

 家に入る直前にそんな声が聞こえた。気になって引き返してみると、加藤さんとリファルさんがそこに居る。暗いせいで表情は見えないけど……声色的に、本気で言っていると思う。

 

『私は本気で言っています。加藤様は【勇者の集い】に入るべきだと!』

 

「ど、どう言う事……?」

 

 状況が飲み込めない。一体どう言う事なのだろう。リファルさんは加藤さんの返答を待っている。たっぷり3分ほど経ってから出てきた加藤さんの言葉は──。

 

『すいません。嫌です……』

 

 ガチ拒否だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。