ふむ、付けられているな、気配あまり感じないが見られている。そういえば先輩はそうは思わないみたいだが、道聴塗説、怪談巷説、都市伝説、これらは全て本物だ。それを踏まえたうえで俺は偽物を使おう。本物は怖くてかなわん。そう、この怪異は怖いという考え自体が重要だ。怪異はいない信じないというやつらほど怪異を怖がるというものだ。俺はそれに合わせてストーリーを組むだけだ。
ただし、俺のこれは呪い以外のものという判断が下された、元締のお姉さんも管轄外だと言って全容は分からない。分からないがかなり便利なものだ偽物を使いやすいからな、これだけを見ればお釣りどころではない、一つの収益機構の一つだ。
……ただ、まあそれらを踏まえ得ると、後ろから付けてくる視線については対処しようがない、俺の行動の範囲外だ。なにより金にならない、これが怪異の楽園である幻想郷からのダンスの誘いというのならまだしも嬉しい。先輩みたく年がら年中偽物を扱っているわけじゃないが、それでも恨みつらみは買っている仕事だ。買う気はないが、知らぬ間に売られているし、買わされている。金を払うことはないが、これによりかなり面倒なことにはっている。
先輩のように、後ろから殴られるようなことは避けて来たがどっちらにせよ【蜂】でも【蠅】でも、はたまた【蛇】か、偽物に対するストーリーは沢山ある。学業に身を投じていたことが懐かしい、悪行の対策で負のストーリーを作る学校もある。不格好をかっこよくするためにストーリーを作る人間だっている。この世界は偽物で溢れている。正しくする為に、正しさを導くために、嘘が使われる。
それじゃあ、彼彼女、鬼が出るか蛇が出るか、はたまた蟹が出るか。ストーリーはある程度できた、後はタイミングだ。相手を騙すためには基盤が必要だ。嘘が本当であるという説得力を生むための基盤が必要なのだ。
「ごきげんよう」
「こんにちは、お嬢さん」
「あら、うれしいことを言ってくれるわね、私は紫八雲紫よ、」
「八雲紫、何と書く?」
「数字の八に雲海の雲、そこに色の紫で八雲紫よ」
「そうか、俺は
「貴方を幻想郷に招待しようと思いますして」
「ほう、幻想郷か専門家の中では有名な話だな。いいだろう。いくらだ?」
「幾ら?というと?」
「招待してくれるのだろう?そちらの言う事を聞くのだ。こちらにも何かよこしてくれないとなぁ。あああちらのお金が好ましいな。金というのは使えなければ意味もない、今の時代の金は特にそうだ。信用があるからお金に価値が生まれる。さて、いくらだ?」
「衣食住はすぐにでも手配するわ、金銭はそうねここでの三百万これを手取りと思ってちょうだい」
三百万か、別に低い金額でもないが、生活の質もお金の単位も、レートも何もかもが違うというのなら、少し足りない、だが衣食住が手配されるというのなら三百万はお釣りが来るのかもしれない。それでもだ世の中うまくことが運ぶということなどないということを理解しなければならない。俺とてある程度の専門家だ生存という点においてはある程度の知識と技術があるから別に問題はない、人間やろうと思えば大抵のことができるのだ。
「いいだろう、ついて行ってやる。ただし試したいことがある」
「何かしら」
「俺の種族については黙っていてもらいたい、でなけれ不便だ」
「まぁいいわ、貴方はそういう仕事をするものね」
「さっさと案内しろ、得体のしれない場に三百万で俺が動くのだ早くしたほうがいいぞ」
「それもそうね」
随分と不気味な場所だ目が浮いている。よく分からない原理だが怪異に原理は効くものではないそういった話があるから、話の理に沿って存在しているだけだ。何もかもが分からないのは【くらやみ】だけだ。怪異のタブー存在を偽った怪異の消去にまわるアレを退散させれたものは過去に一人くらい、いやアレは退散とは言えないか。
「ああ、それと今から人に会いに行くのだけど、かなり難しい時期でね、困っているのよ」
「どうしろと?」
「バランサーと言えばいいかしら」
「考えておこう」
バランサーか、あれは何を聞いても中立に立てる専門家にしか出来ないことだ、弱きを見て財布の緩みを見出す俺とは違うが、前提に怪異がいるなら専門家として方向性を変えなければならない。
「ついたわ、ようこそ幻想郷へ、ここはすべてを受け入れる」
「それは、ずいぶんと残酷だな」
「霊夢〜お客さんよ〜」
ふむ、霊夢というのか、神社のようだし管理者か?なら参拝するのが礼儀だろう。ああ両替をしていない、どうしたものか、参拝は礼儀と言うな。賽銭はせず作法だけを…賽銭も作法の一つか。
「出てこないわね」
「八雲、あっちの金は使えるのか?」
「使えるわよただし、こっちでは円銭厘だから小銭だけでもかなりの高額よ」
「なんだ、そうなのかなら」
「……何のよう紫……」
「お客さんよ霊夢」
「……誰?」
「木枯らしという。木嘘の木に枯死の枯で木枯だ、」
「……外来人?」
ふむ、少し騙してみるか、見た所かなり余裕のないやつだな。寝ていないような感じだ。
「ええ、そうよ能力を持っていたから連れてきたの」
「そう……」
「ああ、妖怪だ」
「嘘ね、外の世界に妖怪がいるとは思わないわ」
「いるぞ、もちろんソレラを祓う専門家もいる、だいたい能力を人間が持っていると思うのか?」
「私は人間で持っている、そして妖怪退治の専門家だ」
まだだめか、もう少し意思を誘導しないとだめだな。
「それは貴様が神職だからだろう。それに精通しない人間が持っているわけがなかろう。だいたい幻想郷には能力を持たない人間がいないわけではあるまい。専門家というのならソレラを可能とするだけの立場があるのだろう。何かおかしなことを言っているか?」
「……いや、でもそれなら紫が連れてくるはずが」
「その八雲も妖怪だろう。それとも他に人間しか連れてこないとでも言うのか?」
「……そう…ね、妖怪なのね……なら、今のうちに祓わない「ちなみにだが名前以外は全て嘘だ」「はぁっ?!」
楽しめた、久しぶりだがこう面と向かってくだらない嘘をするのは、金にはならないが自己紹介にはぴったりだろう。
「これでいいか、八雲」
「ええ、いいわよ、プラシーボ効果ね、まさか霊夢を騙せるとは思わなかったわ」
「怒、どういうこと?」
「改めて木枯
「身長もそうだけど、そんな不吉の塊みたいな人間がいるとは思わないわよ、博麗霊夢よよろしくね」