2Pカラーの短編置き場   作:2Pカラー

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 P4といいつつ実質P3FESメインなお話


P4ネタ

 目が覚めたら目の前に私がいました。

 何を言ってるのかわからねーと思うが(ry

 いやー、このネタって便利なんですねぇ。素数を数えるのよりもずっと冷静になれました。

 

 さて、冷静にもなれたところで私の身に何が起きたのか振り返ってみましょうか。オカルトな出来事には慣れたと思っていましたが、さすがに心の準備なしに巻き込まれ即対処できるとは思えません。こんな状況に追い込まれた原因の一端でも掴めれば対処法の一つくらい浮かびそうなんですが。

 

 私、狭間和馬、十六歳。高校一年生をやらしていただいてます。中学までは東京の月光館学園というところに通っていたんですが、中学卒業と共に母方の実家のある八十稲羽に戻ってまいりました。ちなみに両親はいません。父親は蒸発、母親は私が四歳の頃に……。っと、まぁつまらない話ですね、やめましょ。

 月光館学園の高等部に進学しても良かったんですがね、学園に出資してるグループのご令嬢にも気を使っていただけて奨学金なんかのお話も貰えてましたし。しかし戻ってきちゃったんですよねぇ。私のことを娘を誑かした男の血とか言って邪険にする祖父とも向き合わなきゃなぁなんて、血迷ったこと考えてしまいまして。

 で、戻ってきて八十神高校ってとこに入学したんですが、入学早々街で猟奇殺人なんか起っちゃいまして。死体をテレビアンテナに吊り下げるだの電柱に引っかけるだの。背筋が寒くなりますよねぇ、ホント。戻ってきたことに早くも後悔ですよ。巌戸台に帰りたくなっちゃいました。

 でもまぁ男として一度決めたことを反故にするのもカッコ悪いかなぁ、可愛げのないチビスケに根性ナシと笑われるかなぁなんて考えながら、こっちで高校卒業くらいまでは頑張ろうと思ってたんです。

 そしたら何故かまぁ、人殺しの現場に通りがかっちゃいまして。いや、未遂だったんですけどね、私が止めたので。別に事件をどうこうしようと思ってたわけでもないんですが。ようやく高校生になっただけのガキがうろちょろしても警察の皆様の邪魔になるだけでしょうとも思ってましたし。

 深夜の散歩、やめた方がいいんでしょうかね? 幸いといっていいのか補導されたこととかはないんですが。

 いえね、別に悪ぶって真夜中に街を闊歩してるわけじゃないんですよ。なんていうか、癖にでもなってるんでしょうかね。二年前まで肉体活動のピークが深夜零時になるようにしてたもので。駆けたり跳んだりしてたものですから。それを引きずってるんですかね、どうも深夜にじっとしてるのが落ち着かなくて。

 でもまぁ私の悪癖も今回は良い方向に働いたんじゃないでしょうかね。人一人の命を救えたわけですし。

 いつものように深夜に家を抜け出して、さびれた商店街の自販機で胡椒博士を買い、適当に歩きながらそれを飲む。そんな日課の最中に事件現場に出くわしちゃいまして。なんか……鈍器? 形状とか描写するのも面倒ですしバールのような物で良いですか、それをオッサン相手に振りかぶってる学生くらいの男が居まして、あらま危ないと蹴り飛ばしちゃったんですよね。そしたらなんとまぁ殺そうとしてたとか。

 テレビでも流れたんですよ? お手柄高校生って感じで。目線は入れてもらいましたけどね。

 なんだかその殺人未遂犯は二件の猟奇殺人も自分のやったことだと自白してるとかで。連続猟奇殺人、三件目を未然に防いだのは地元の学生でした!みたいな特集組まれちゃって。インタビューまでされちゃいました。

 そんでまぁ学校でもちょっとしたヒーローみたいな扱いで。りせちー?でしたっけ、アイドルやってたって子にも話しかけられちゃいました。テレビとか見ないんで実はよく知らないんですけどね。

 それで、どうしたんですっけ? ……えーっと、ちょっと嫌味のマイルドになった祖父と初めてと言っていいくらいのまったりした食事をして……、呼び鈴が鳴って……。

 

「うーん。わかりませんねぇ。なんでこんな状況になってるんでしょう?」

 

「ようやく口を開いたかと思えばそれですか、『私』」

 

 おや? 目の前の『私』が口を開きました。別に意思持たぬ人形とか思ってたわけでもないんですが普通に喋れるとは少し意外です。私の思索中も一言も挟まず静観していましたし、口がきけないのかと思っていましたよ。

 というか自分の声を他人の口から聞くってのも不思議な感覚ですねぇ。

 

「『私』……ですか。つまり貴方も私だと?」

 

「はい。私は貴方、貴方は私。『私』もよく知っているでしょう?」

 

 知っているかどうかはともかく、懐かしいフレーズであることは間違いないですね。

 

「ということはコレは夢……ってわけでは無いですよねぇ。夢と現実の区別くらいはつきます」

 

「ええ。夢なんかじゃありませんよ。現実かと問われれば首を傾げてしまいますが」

 

「それは確かに。この風景は現実味があまりありません」

 

 周囲を見渡すとまるでコロッセオのような空間が広がっています。ずいぶんと霧が濃いですが、間違いないでしょう。

 私と『私』を中心に広がる円形の空間。その周囲には壁があり、その向こう側にはおそらく観客席が。

 

「現実味は確かにありません。しかし懐かしいのでは?」

 

「……ええ。あまりいい思い出ではないですが。なにせホラ、私、蜂の巣にされちゃいましたし」

 

 いやぁ、あの時の彼女たちは容赦がなかった。まぁ人のこと言えないんですけど。私も彼女たちをスクラップにするつもりでしたし。一緒に戦った先輩も、いつもはひょうきんなお調子者って感じなのにあの時はホント怖かったですし。

 ……うん、思い出したくないですね。

 

「しかしコレが夢でないならば、何故『私』は出て来てるんです? しかも私の姿をとって」

 

 湧き出てくる思い出から逃げたってわけじゃないんですよ? そろそろ疑問を解消したいなぁと思っただけで。

 そう、疑問なんです。目の前の『私』が私の考えている通りの存在だとするのならば、それは私の中にいるはずなんです。仮に私の意思なしに私の外に出てきたのだとしても、私の姿をしているはずなどないのです。

 

『私』が、もし本当に『私のペルソナ』なのだとしたら。

 

「理由の一つに、ココが私の出やすい場所であるということもありますが、もっとも大きな理由としては、我慢ならなかった、というものでしょうかね」

 

 そう言った瞬間、『私』の線の様に細まった目が薄く開きました。

 そこから見えた瞳の色は、私のものとは似ても似つかぬ金色。それまではストンと納得していた目の前の『私』=私という理解が一気にかき消されてしまったかのような、そんな気がしました。

 しかしまぁ、この程度では呑まれてはあげませんよ。一応それなりの修羅場はくぐって来てますしね、私も。

 

「はて? 我慢ならなかったとは? 私、貴方に見限られるようなことしちゃいましたかね?」

 

「貴方も私なら理解しているでしょう? 自分に対しての苛立ちも、もちろんあります。しかしそれ以上に我慢がならないのはこの世界の方です」

 

「世界……、と来ましたか。いやはや私とは思えないほどにスケールの大きい」

 

「とぼける必要はないでしょう。私は貴方なんです。貴方の苛立ちも私は当然理解しています。なにせ貴方は私なんですから」

 

『私』が呆れるように大袈裟に肩を竦めた瞬間、左の方でなにかを叩くような音が響きました。それと同時に「ハザマ!」という声も。

『私』から意識を逸らさず少し振り返ってみましたが、霧が濃いですね、良く見えません。コロッセオの観客席になにやら人影らしきものがあるような気もしますが。

 しかし『私』には人影がはっきりと見えるのか、目を細めながら「早いですねぇ。随分と早い」と、そんなことを呟いています。

 そして、「しかたがありません。もう少しお喋りに興じて居たくもありましたが本題に入りましょう」と、心底残念そうに頭を振ると、再び私の目を真っ直ぐ見つめ直し、話を続けました。

 

「殺人。連続殺人。連続猟奇殺人。酷い話だと思いませんか? 思うでしょう? 貴方も私なのだから」

 

 

 

 

 

 特別捜査隊。八十稲羽で二件の猟奇殺人の真相を追い求め、マヨナカテレビに映りテレビの中に落とされた者の救助を行っている高校生を中心としたグループである。正確には『特別捜査隊』とは自称でしかないのだが。

 そんな彼らにとってこの数日は、情報に振り回される、まさしく急転直下の連続だった。

 地元の高校生による諸岡金四郎殺害未遂。逮捕された高校生の二件の猟奇殺人を実行したとの自供。そして諸岡殺しを食い止めた立役者の失踪。

 自分たちの与り知らぬところでの事件解決に、気が抜けたかのような瞬間を狙い澄ましでもしたかのような誘拐に、一同は真犯人の存在を確信するとともに怒りを抱き、同時に誘拐を防げなかったことを、防ごうと動くことすら出来なかったことを悔いた。

 彼らが動くのは早かった。雨の日まで猶予があるだとか、そんな悠長なことは以前からも大して考慮していなかった集団である。夏休み中だということもあったのだろうが、即座にテレビに落とされた『ハザマ』という少年の情報を集め、新たに仲間となった久慈川りせのナビのもと居場所を突き止めた。

『巌戸台分寮』と、そう書かれたプレートの掛けられた古びた洋館。これまでメルヘンチックな城や異様な空気の漂うサウナ、淫靡な雰囲気の劇場と、テレビの中のセットのようなダンジョンをクリアしてきた面々にとっては逆に新鮮さを覚えてしまうほど、その洋館は『普通』だった。クマが言うには他のどこよりも『安定』しているとか。

 門を潜り抜けるとそこは想像とは違い寮の廊下のような場所で、一同は階段を見つけ下へ下へと進んでいくことになる。その、シャドウさえいなければ現実のどこかにあると言われても信じてしまえそうな洋館の中を。

 八つ目の階段を降りると、そこにはラウンジが広がっていた。階段から顔を出したすぐ横にはキッチンと大きめのテーブルがあり、寮生たちが食事をとる姿が容易に想像できる。本来ならエントランスの役目を果たすのであろう立派な扉の横にはカウンターがあり、掲示板には二年ほど前のカレンダーと予定表が。小さめのブラウン管テレビはレトロな趣を醸し出し、それが見える位置にはシックなソファーが並べられている。

 生活感がありすぎるダンジョン、それが特捜隊の面々の脳裏に浮かんだ感想だった。ただ一つ、ラウンジの中心に開いた穴と、そこにある扉の異様な存在感以外は。

 一同は四六商店で買い込んだアイテムで傷を癒し気力を回復させると、扉を開け放った。

 そして一様に一瞬言葉を失うことになる。それまでの、現実にありそうな洋館然とした風景とは一線を画すコロッセオを目にして。

 

 最初に我に返ったのは特捜隊のリーダーでもある鳴上悠。悠はコロッセオの中心で向かい合う二人のハザマを目にして駆け出していた。

 今まで誘拐された本人とシャドウの対立を見てきた悠である。現状の危険性をよく理解していた。

 今、ハザマと彼のシャドウは何をしているのか。まだ会話すらしていないのか。シャドウの揺さぶりは始まっているのか。それとももう既にハザマはシャドウを否定してしまっているのか。もし否定してしまったのだとしたら、いつシャドウが暴走しハザマ本人に攻撃を加えるかもわからない。シャドウの攻撃にさらされることはペルソナに覚醒し、装備を整え、戦闘の経験を積んできた悠たち特捜隊の面々にしても命がけになるのだ。何の準備も心構えすらも出来ていない一般人に耐えられるはずもない。せめてすぐにフォローできる位置まで近づかなくては。そう考えたのは悠だけではなく、他の特捜隊メンバーもすぐにハザマに向かって駆け出していた。

 しかし彼らがハザマのもとまで駆け寄ることはできなかった。闘技場の外縁部に、まるで闘技場と観客席を区切るかのように、不可視の壁が存在していたがために。

 

「な、なんなんすかコレ!? これじゃアイツんトコまで行けねえっすよ!」

 

「俺に聞かれてもわかるわけねえだろ! ってかマジでなんなんだコレ? 今まではこんなもんなかっただろぉが! なんで今回に限って俺らが近づけねぇようになってんだよ!」

 

 ガンガンと不可視の壁を殴りながら完二が毒づき、陽介が焦ったように答えた。

 

「全力で蹴ってもビクともしないんだけど! もー、こうなったらペルソナでー!」

 

「うん。私も協力するよ、千枝。なんとかしてこの壁を壊さないと」

 

 千枝と雪子がペルソナ召喚のために一旦壁から距離をとるが、

 

「だ、駄目クマー! この見えない壁、全員で攻撃しても壊れそうにないクマよー!」

 

「うん。クマの言ってた『安定してる』ってのがスゴイよく分かる。たぶん力づくで壊すのは無理だと思う」

 

 感知力に優れたクマとりせからストップがかかった。

 万事休す、か? いや、ここがコロッセオなら闘技場に入る方法も必ずあるはずだ。観客が闘技場に入るのを防ぐためにこの壁があるのだとしたら、闘士用の入場門のような場所さえ見つければ。

 しかし間に合うのか。いや、間に合わせなくちゃいけないんだ。新たな犠牲者なんてまっぴら御免なのだから。焦る思考をなんとか冷静にさせようと悠は気力をふり絞る。

 そして、

 

「ハザマ!」

 

 せめて自分たちがそちらに行くまで時間を稼げるよう、悠はなにか言うべきことを探す。ソイツの言うことを否定するな? ソイツの言葉に取り合うな? 無理だ。陽介も千枝も、雪子も完二もりせも、シャドウを否定すればどうなるかをずっと見続けてきたクマでさえも無理だった。シャドウは最も見たくない自分を的確に見せてくる。もっとも触れられたくない部分を正確に突いてくる。そんなシャドウを受け入れることは、誰かに言われたからとてそう易々と出来ることではないのだ。

 

 ふと、こちらを向いたハザマと目があった気がした。自分の呼んだ声に反応したのか、しかしわずかに首を傾げると、『金色の瞳のハザマ』、シャドウへと向き直ってしまう。

 霧のせいか。眼鏡をかけていないハザマにはこちらが見えていなかったのかと舌打ちしそうになるが、しかし悠は気づいた。

 

「まだ猶予はあるみたいだ」

 

「ど、どういうことっすか、先輩?」

 

「ハザマの顔だが、表情に陰りがあるようには見えない。シャドウに否定したい自分を見せられていたのなら、」

 

「キレるなりヘコむなりしてるだろってわけか。たしかに今すぐヤベェってわけでもなさそうだな。でもよ相棒、だからってノンビリさせてもらえるってわけでもないんだろ?」

 

「ああ。なんとかしてこの壁の向こう側に行かないと。ここがコロッセオを再現してるんだとしたら、闘技場へ入る入口も必ずあるはず」

 

 それを探そう、そう続けるつもりの言葉を悠は途中で区切っていた。コロッセオの中心、シャドウの口から出た言葉に違和感を感じたがために。

 

「殺人。連続殺人。連続猟奇殺人。酷い話だと思いませんか? 思うでしょう? 貴方も私なのだから」 

 

 違和感。そう違和感だ。シャドウは否定したい自分を見せつける。にもかかわらずハザマのシャドウはごく当たり前の倫理観を口にしている。

 

「人が人を殺し、まるでその成果を誇示するかのように衆目にさらす。それを見た街の人間は、恐怖や嫌悪、罪悪に対する義憤を抱きつつも、話題として盛り上がる。被害者に対する噂を流し、死者に対し中傷するものまで出る始末。まったくもって酷い話です。そう思ったでしょう? 『私』も」

 

 その言葉をハザマに否定させたいのだろうか。いや、それはないだろう。ハザマはモロキンを助けている。モロキンの殺害未遂で逮捕された少年は、確かに『殺人未遂』の罪で捕まったのだ。殴ろうとしただの首を絞めようとしただのならおそらくは『暴行未遂』止まり。『殺人未遂』とまでされるにはそれ相応の理由があるはず。たとえば計画性、たとえば精神的な異常、そして、たとえば凶器の有無。警察に『コイツなら制止されなければ殺していただろう』と思わせるほどの何かを持った人間に、一人で立ち向かえた勇気と正義観を持った人間が、果たして当たり前の倫理観を否定するのだろうか?

 その疑問は悠だけではなく仲間たちも同様に持ったようで、おずおずと千枝が声を上げた。

 

「ね、ねえ、あれってハザマ君のシャドウなんだよね? ってことはさ、ハザマ君がお前なんか俺じゃないって言うわけだから、殺人とかは酷い話だと思わないっていう、……こと?」

 

「違うよ千枝。シャドウの言ってることが隠しておきたい本心なんだから、ホントは酷い話だって思ってるけど表では良い話って……、アレ?」

 

「いやいやいや、里中も天城もそりゃねえだろ。どこのダークヒーローだよ。本心でも殺人は酷いことと思ってるのは当然、表でだって悪ぶったりしてねえだろ。なんせモロキン助けてんだぜ? あのモロキンを。八十高生でモロキン助けるために凶器持った危ないヤローに立ち向かってく奴が何人いると思うよ? りせちーや天城が襲われてるってんならともかく、あのモロキンだぜ? モロキン」

 

「ええいっ、モロキンモロキンうるっさいってんのよ! でもじゃあなんでシャドウはあんなこと言うわけ? 自分を否定させなきゃ暴走できないじゃん」

 

「いや、そりゃわかんねえけど。……暴走する気が無い、とか?」

 

「なによそれ。暴走する気ないシャドウとか、それもうペルソナじゃんか」

 

 ペルソナ、なのか? 確かにテレビの中に入れられたからといって必ずシャドウの暴走が起きるわけではない。他ならぬ悠自身がその証拠。シャドウと向き合うことも、シャドウを受け入れることもなく、始めから悠の中にはイザナギというペルソナが存在していた。しかしあの『金色の瞳のハザマ』がペルソナなのだとしたら、なぜそれはハザマの姿をしているのか。疑問が次々と増え続けていく。

 しかし混乱する特捜隊を余所に、『金色の瞳のハザマ』の話は続いていく。

 

「酷い話です。人の死は決してエンターテイメントなどではない。死者は生者を楽しませるための玩具などではない。死者の身に起きた不幸は悲しんであげるべきなのです。死者と共に過ごせなくなった自分たちを憐れんであげるべきなのです。せめて安らかな眠りをと、祈ってあげるべきなんです。にもかかわらず、メディアはまるで事件をセンセーショナルなイベントの様に騒ぎ立て、世間は根も葉もない噂で盛り上がる。酷い話だ」

 

 いちいち最もな言葉だ。それだけに『金色の瞳のハザマ』の意図が見えない。本当に暴走する気が無いのではないかとすら思えてくる。

 ふと、悠には陽介が気になった。『金色の瞳のハザマ』の言葉に一番心を揺り動かされているのは、小西先輩という思い人を失った陽介だろうから。

 しかし陽介の方へと向き直ることはなかった。続いて放たれた『金色の瞳のハザマ』、いや、『ハザマのシャドウ』の言葉に意識を持っていかれて。

 

「思うはずだ。貴方は私なのだから。こんな下らない人間どもに生きる意味など存在しないと。どいつもこいつも死んでしまえばいい、と。思ったのでしょう? 知っていますよ。私も貴方なのだから」

 

 それまで疑問を口にしていた特捜隊の面々も押し黙っていた。やはりアレはハザマのシャドウ。そしてコレこそが、ハザマの認めたがらない本心ということか。

 急がなくてはならないのは悠にも分かっていた。一刻も早く闘技場へと侵入するための入り口を探さなくてはならない。しかし悠たちの目は、二人のハザマから離せなかった。離せなくなっていた。

 

「どいつもこいつも反吐が出ます。少し苛立っただけで『死ねよ』、少し辛いことがあっただけで『死にたい』。生きるということを馬鹿にするにもほどがある。生きられなかった人を侮辱するにもほどがある」

 

 シャドウの瞳がハザマを射抜く。ハザマはいったいどんな思いでそれを受け止めているのか。

 

「思ったはずです。貴方は私なのだから。分かりますよ。私は貴方なのだから。何故『あの人』が死んで、あんな連中が生きているんだ。あんな下らない連中の命を何十億集めたとしても、『あの人』一人の命の方が尚重いはずなのに。何故『あの人』はあんな連中のために、こんな世界のために命を賭けたのか。そう、思いますでしょう?」

 

「私は――」

 

「『私』にしてもそうです」

 

 何かを言いかけたハザマを遮り、なおもシャドウのお喋りは続いた。

 

「『あの人』は言ってくれました。『私』はいらない人間なんかじゃないと。生まれてきたのが間違いな人間なんかいるはずがないと。普段は無表情で、何に関しても『どうでもいい』と切って捨てるというのに、フフッ、笑みを浮かべて『私』の頭なんか撫でてくれちゃって。嬉しかったですねぇ。生まれて初めて自分のことを肯定してもらえた気分でした。でも、やっぱり『私』にも、『あの人』の命と釣り合うだけの価値なんかありませんでした」

 

「……」

 

「そもそも望まれて生まれたわけでもないですしねぇ、『私』という奴は。母親が『私』という新たな命が胎の中にいること知ったことも、現実の見えていない十七の若人二人、都会に夢見る田舎者の駆け落ちのための切っ掛けくらいにしか思われてませんでしたし。そしてまぁ私が生まれるまでの半年で、父親になるはずの男は現実に打ちのめされアッサリ蒸発。母親になるはずだった女もなんでこんなことになったのと後悔するばかり。お前がいるせいで実家に帰ることも出来やしないと暴力を振るわれたこともありましたっけね。そんなに『私』が邪魔なら捨ててしまえばよかったんですよ。子を捨てたことで得るであろう罪悪感を恐れて、その結果わが子に暴力をふるうなんて、本末転倒でしょうに」

 

 シャドウの口から朗々と紡がれるハザマの半生には、悠たちも絶句せざるを得なかった。

 

「そんな、実の親にすら生まれたことを疎まれた『私』の命が、『あの人』の命と釣り合うはずがないというのに。どいつもこいつも死んでしまえ、そんなことを考える『私』と、皆が生きていける未来を願った『あの人』、どちらにより価値があるかなんて、どちらが生きるべきだったかなんて、そんなこと分かりきっているというのに。ねぇ?」

 

 そこでシャドウは話すのをやめた。もう十分に見たくない自分を見せつけた、後は否定されるのを待つのみ、そう言いたげに笑みを深めてハザマの反応を待っている。

 しかしハザマの表情に相変わらず翳りはなかった。それどころかシャドウの言葉を興味深そうに聞いているほど。悠にはそれがどこか、空恐ろしかった。

 だが、翳りのなかった表情とは裏腹に、ハザマの出した声は、彼の印象とは真逆の、ドスの利いた低いものだった。

 

「で、言いたいことはそれで終いか? わざわざそんなことをほざく為に出てきたってわけかテメェ?」

 

 見ればハザマの線のようだった目はうっすらと開き、口元には獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「ええ、その通り。もしかして怒っちゃいました?」

 

「ハッ。なんだそんなことも分かんねえのかよ。散々俺がテメェだのテメェは俺だのほざいてやがったじゃねえか」

 

 これは、ハザマがシャドウを否定するのか? そう思い、不可視の壁に阻まれ何もできないというのに悠は身構えていた。

 しかし、

 

「分かんだろ? なんせ俺はテメェだ。なら分かるはずだろぉが、俺がブチギレてるなんてのはよぉ!」

 

 み、認めた? 仲間たちも唖然としているのを悠は感じていた。

 

「わざわざ見たくもねえ部分ばっかり曝け出しやがってよぉ、クソが! ああ、そうさ! 全部テメェのほざいた通りだよ! どいつもこいつも死に晒せ、ゴミ以下の分際で『あの人』のやったことを無駄にすんじゃねえ、そう常々思ってるよ」

 

「……そして、そう思ってしまう自分が許せない、と?」

 

「……ああ。ぶっ殺してやりてえくらいむかついてるぜ。なんせ『あの人』のやったことを踏みにじってるみてえなもんだからな。こんなことを考えちまうこと自体がよ、クソ!」

 

「そうですか。ぶっ殺してやりたいくらいに。ハハハッ。やはり出てきて正解でしたね」

 

 心底楽しそうにシャドウは肩を揺らすと、どこに隠し持っていたのか大ぶりのバタフライナイフを二本取り出した。

 特捜隊の面々が息をのんだのもつかの間、シャドウはそのうち一本をハザマへと投げ渡した。

 

「コイツは……。チッ、そういうことかよ」

 

「ええ、そういうことです。ホラ、『私』のぶっ殺したがっていた私はここにいますよ。私も『私』の中に半分くらいは残っているのが分かるでしょう? この空間に感謝ですね。私が全て出なくてもこんな体を持てたのは間違いなく私の出やすいココのおかげなんですから」

 

 まさか戦うつもりかよ、そう陽介が声を上げる。シャドウを受け入れたのにどうなってんだ、と。

 それは至極当然の声。しかし悠には陽介の様に声を上げることはできなかった。

 ハザマとシャドウ、二人の身から立ち上る青い蝶の群れのような力の波動を目にしたがために。

 

 バタフライナイフを構え、顔には獰猛な笑みを浮かべ、

 

「わざわざ憂さ晴らしのサンドバックに立候補しやがったんだ。簡単に潰れんじゃねえぞテメェ」

 

「フフッ。私も少しくらいは楽しませてもらいたいですねぇ」

 

 二人は同時に叫んだ。己の半身であり、己自身であるペルソナの名を。

 

「「来い! ウロボロス!」」

 

 




 ROUND1 ファイト!かな? それとも THE WHEEL OF FATE IS TURNING. REBEL1 ACTION?
 つまりは格ゲーの始まりです。P4メンバー置いてけぼりで
 ハザマは、まぁ分かる方は分かると思いますがブレイブルーのハザマがモデル。それを盛大にアク抜きした感じですかね?(元のまんまだと邪悪すぎますし) キレると口調がテルミっぽくなります。『あの人』は当然P3主人公。FESで『彼』だの『あいつ』だの『あの人』だの呼ばれてたキタロー君です
 ハザマですが一番違ってる点を出すとするなら、必殺技名を叫びません。P3時代は蛇翼崩天刃とか普通に叫んでたんですが
 天田少年に指摘されちゃったんでしょう。「それって中二病っていうんですよね?」みたいな感じで。実際二年前は中二でしたし。順平とかゆかりっちとかは微笑ましい感じで見てたんですけど
 だもんで蛇翼ぶっぱするときは「蛇よイヤー!」みたいな変な叫びに。P4メンバーからは「ジョイヤー」みたいな掛け声? 拳王リスペクト?とか思われてるかと
 シャドウワーカーではエクストラナンバーズに所属。でも八十稲羽の事件は報告すべきかどうか。報告したうえで番長がワイルドだし援軍とかいらないっスみたいな流れが自然かな?
 PQからはハブですハブ。巻き込まれたとしてもベルベットルームから出るのはラスボスが許さない的な。二年前の中二ハザマがP3陣営にもいますし同じ人はNGでーすみたいな
 いろいろ妄想すると楽しいですが、まあこの辺りで終わっとく方がいいでしょう


 P4U2でもP3主人公の出番なかったなぁ。シャドウオンリーのキャラでもいいから動かしたかった。クマ総統、もっとシャドウのコネコネ頑張ってよ
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