第4話 異形の化け物
ーーー
ザッ…ザッ…
パキッ…
ザザザザザ…
木の枝を踏み…森がざわめく音と俺の足音だけが響く夜の森…
冒険家の勘が働いた。
ーーー
間違いない…誰かにつけられている…
ーーー
深い森の中で…俺はそう確信する。
ルミネの町から…北へ随分と進んだが…
深い森が続くだけで…
それらしい…洞窟は見当たらず…
辺りは日が沈みかけていた。
不安と焦燥感も…あったと思う…
何者かを…探り出すため…
俺は、こう問いかけた。
「後を付けているのは!分かっている!」
「さっさと出て来い!」
盗賊か…山賊か…
この辺りの情報は分からないままだ。
ただ…ありもしない洞窟を探し続けているだけかも知れない…
すると…何者かの声が、俺の問いかけに答えた。
「何処か…聞き覚えがある声だな…」
「まあいい…金品を奪えるなら…」
「誰でもいい!」
バッ!
シュザッ!
キィィィ!!!
「くっ…」
ほんの一瞬の出来事だった。
真夜中の森には、刃が擦れ合う音だけが…鳴り響く…
護身術を身に付けていたのは…偶然じゃない…
盗賊や山賊には、度々命を狙われたことがあるし…魔物にも遭遇して来た。
冒険とは、常に危険がつきまとうもの…
キチッ…
「素人か?気配を隠し切れていないぞ…」
俺は、他にも仲間が居ないか警戒しながら…
挑発する…
「悪りぃな…久々なもんで…」
「素性は隠せても…手癖までは隠せないしな…」
「そんなもんだよ…」
月明かりで…お互いの姿が見えるようになる…
それは…思いもしない再会となった。
「お前…ロイゼか?」
「フェルト!?」
ーーー
パチッ…パチッ…
パチッ…
夜の森を照らす焚き火を囲み…
つい先程まで斬り合っていたとは思えない…空気が2人を包み込む…
ハハハハハッ!
フェルト『まさか…ロイゼが盗賊あがりだったとは…』
「今知った。」
ロイゼ『あれ…言ってなかったっけ?』
「おっかしいな…」
真夜中の森は、静けさに満ちていた。
俺達の笑い声だけが響く…
フェルト『だが…剣術は衰えていなかった。』
ロイゼ『ああ…盗賊たるもの…どんな武具も扱えてこそだからな…』
「それで…」
「ラゼリスと船長は…見つかったのか?」
フェルト『いや…まだだ…』
「情報が無いとなると…探したい物も探せない…こんなの…いくらでも体験したけどな…」
ロイゼ『お前にも…あるんだな…』
「町長から…洞窟の話を聞いたか?」
フェルト『ああ…』
ロイゼ『実は…俺もだ。』
「夜が明けてから…討伐に向かうか…」
フェルト『そうだな…』
焚き火に背を向け眠りに着く…
不思議と…辺りから魔物の気配がしない…
静かな夜だった。
ーーー
「武器の手入れは欠かせない…」
翌朝…ロイゼが武器の手入れをしていた。
使い古された武具のようだ。
フェルト『せいなるナイフか…』
ロイゼ『ああ…こいつが無いと…そもそも仕事にならない…』
「もう近いはずだ。」
「とっとと…洞窟を見つけ出して…化け物とやらを始末しようぜ…」
ーーー
暫く森を辿ると…
洞窟の入り口が見えた。
「此処だ。」
夜を明かした場所から…それほど遠くない…
だが…
異様な気配と血の匂いが洞窟から漂う…
フェルト『魔物が寄って来なかったのは…』
「洞窟が近かったからか…」
ゴホッ…ゴホッ…
ロイゼ『何だ!?この匂い…』
「鼻が曲がりそうだ。」
「それに…この異様な気配は…洞窟の奥から…」
「こりゃあ…」
「今の俺達なら…少々手こずるかもな…」
フェルト『まあいい…拍子抜けより…』
「骨のある魔物の方が倒し甲斐がある…」
ロイゼ『それも…そうだな…』
「入るか…」
ーーー
洞窟の奥へと進んでいく…
魔物との遭遇を避けながら…
勘のいいロイゼがこう呟く…
「この奥だ。この奥から異様な気配がする…」
「血の匂いも強くなった。」
其処彼処には、骨が散乱している…
薄暗い洞窟の奥から…微かな声が聞こえてくる…
それは魔物の声だった。
ーーー
「何故だ…何故…この俺様が…」
「この様な場所に…」
「この世界は…つまらぬ…」
「実に…つまらぬ…」
「あのお方が存在しない世界など!」
パキッ…
「ヤベ!?」
気配を消し身を潜めていたが…
骨を踏み締める音で、魔物に気付かれてしまった。
「誰だ!?」
「まあいい…」
「久しぶりのご馳走だ。この世界での愉しみ…それは、人間の血肉を貪ることだろう…」
フェルト『此処で迎え撃つ…』
キィィィ…
ザッ!
腰のどうのつるぎを引き抜き…魔物の前へと出る…
其処には、異形の魔物が居た。
「あのお方より…実力を認められた。」
「このダークイーター様が…」
「貴様らを血一滴残さず…喰らい尽くしてくれよう!」
「せいぜい…泣き叫ばないでくれよォ!」
フェルト『来るぞ!』
チキッ!
武器を構える…
ダークイーター『逃げ惑え!人間ども!』
「ドルマ!」
ドゥン!!!
ロイゼ『コイツ!闇の呪文を!』
フェルト『真っ向からは!避けるぞ!』
「2人で力を合わせて一撃を!」
ロイゼ『ああ!』
ダダダダダッ!!!
シュッ!
ザザザザザッ!!!
ダークイーター『ちょこまかと…』
「では…コレならどうだ!」
「深き眠りにつくがよい!」
「人間ども!」
ロイゼ『しまった!?』
「これは…あまいいきか…」
魔物のあまいいきが直撃した。
洞窟内には逃げ場がない…
ここまでかと思ったそのときだった。
「させません!」
「バギ!」
ヒュゥゥゥ!!!
ダークイーター『なんだと!?』
「誰だ!?」
聞き覚えのある声と風属性の呪文が俺達を勇気付けた。
充満するあまいいきは、風属性の呪文によって吹き飛ばされた。
俺は驚きのあまりこう叫ぶ…
「まさか!?」
ロイゼ『ラゼリス!』
「無事だったのか!」
ラゼリス『私は、あのお方より使命を受けし者…』
「それを果たすまでは…」
フェルト『これは心強い!』
「君の力が必要だ!ラゼリス…」
ラゼリス『はい!』
「マジックバリア!」
「さあ!今のうちに…」
彼女が唱えたマジックバリアが、魔物の呪文の威力を弱める…
「小癪な…」
ダークイーター『まあいい…まとめて!あの世に送ってくれるわ!』
ロイゼ『多才だな!助かる!』
「フェルト!攻撃を合わせるぞ!」
フェルト『ああ!』
「任せろ!」
ダークイーター『おのれ!おのれ!おのれ!人間め!』
「俺様を虚仮にしよって!」
フェルト『虚仮だと…お前は人間を虫ケラ当然のように痛ぶってきた。』
「そのツケが回ってきただけだろ…」
「魔物は俺達が始末する!」
ロイゼ『堪忍するんだなァ!』
ダダダダダッ!!!
魔物の反撃を避け…攻撃を当てる…
「かえん斬り!」
「アサシンアタック!」
ゴォォォ!!!
ザグッ!!!
「ギャアァァァァァ!!!」
魔物の断末魔が響き渡る…
焼け爛れた奴の顔は酷く醜い…
ドサッ…
魔物は息絶える瞬前…
こう言い放った。
「貴様など…オルゴ…デ…ミーラ様には…」
「敵わぬ…わ…」
「いずれ…あのお方の元へ…」
「生まれ…か…」
ファファ…
ーーー
ロイゼ『倒したのか?』
「呆気なかったな…」
フェルト『皆んなの協力があってこそだ。』
「正直…危なかった。」
ラゼリス『私達が協力すれば…大いなる闇にも…』
フェルト『ああ…』
ロイゼ『どうやって…此処まで辿り着けたんだ?』
「ラゼリス…」
彼女はこう答えた。
「洞窟内から音がしたので…」
「お助けしようと…」
ロイゼ『なるほど…』
ラゼリス『あと…この世界が何なのかが分かりました。』
「ここが何処なのかも…」
「!?」
ーーー
「表の世界と裏の世界…」
「その狭間に位置するのが…」
ラゼリス『5つの島が浮かぶ「ジ・ヘブン」の最下層…「ジ・アビス」です。』
「この場所こそが…大いなる闇…」
「アミュシエルが封印されている場所…」
「そして…此処は、歴代の勇者様がご活躍なされた。表の世界の裏…」
「つまりは…裏の世界なのです。」
フェルト『不思議なぐらいだ。』
「戻って来たんだな…俺達は元の世界へ…」
ラゼリス『はい…そのようですね…』
ロイゼ『いよいよ…訳が分からなくなって来たな…』
「俺達は、とんでもないところに飛ばされたわけだ。」
ラゼリス『問題は他にも…』
「私達の魔力レベルでは…この世界の基準にも匹敵しないと言うこと…」
ロイゼ『どう言うことだ?』
フェルト『まさか…』
彼女はゆっくりと事実を語った。
「はい…」
「此処は…古の時代…」
「神々の決戦から…それほど経っていない世界だからです。」
ーーー
「ダークイーター」は「ゾンビーアイ」みたいな魔物です。
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