第5話 海底より出でる怪物
ーーー
ルミネの町…
中央広場…
「おう!」
「生きて戻って来たのは其方らが始めてだ!」
「まさか…本当に戻って来るとは…」
俺達は、ルミネの町へと戻る…
町の入り口付近には、町長と商人が見えた。
どうやら出迎えではなく捜索隊を出そうか迷っていたらしい…
「町長…」
フェルト『約束通り…船を出して貰う…これが証拠だ。』
俺はそう言い…ある物を放り投げた。
それは、あの魔物が消えるとき…残していった結晶のようなもの…
コトッ…
「こ…これは!?」
町長はそれを見ると驚いたような表情を見せた。
少し考え込み…町長は口を開く…
「魔石か…こんな物を出さずとも其方らが倒したかどうかを疑ったりはしない…」
「約束通り…船は出そう…」
「だが…そう急ぐこともなかろう…」
「今夜は宴を開こうぞ!」
「明日は…其方らにとって大きな戦いとなろう…」
「今夜は戦いに向けて身体を休めるといい…」
ーーー
はあ…
ロイゼが酒場のバルコニーで深く溜め息をついた。
その後、彼はこう続ける…
「しかし…まだ頭が理解しきれてない…」
「本当に俺達は迷い込んじまったのか…」
ラゼリスは嘘をつくような選択をしない…
味方の危機が迫れば…間違いなく自分の犠牲を選ぶ…
彼女の言葉は、それ程までに受け入れ難く…疑いようもない発言だった。
「ああ…そうみたいだな…」
フェルト『俺達が背負う使命に比べたら…ちっぽけな問題だろ?』
ロイゼ『それもそうだな!』
「ところで…ラゼリスは?」
「ああ…彼女だが…」
俺が伝えようとしたとき…
酒場が騒がしくなった。
どうも…酒がかなり入ったらしい…
飲んだくれの集まりなのか…
酒場の盛り上がりは外にまでも響いていた。
フェルト『見て分かる通り…酒場の話題の的になっているみたいだ。』
「俺達は、長い付き合いだが…連中にとっては…」
「そこらの女性とは比べようのない…美しさだと…」
ロイゼ『まあ…だろうな…』
ーーー
「嬢ちゃん!この町で暮らす気はないか?」
「嬢ちゃんを見てると…」
「なんだか…マスターの若い頃を思い出すよな!」
「そうだ!あの頃は俺達で奪い合ったっけ?」
「お前らには!私の心を奪えないよ!」
「だからか!マスターが独り身なのは!」
ハハハハハハハッ!!!
「あんた達!追い出すよ!」
「今夜は酒が美味い!」
ハハハハハハハッ!!!
ーーー
立ち眩み…目眩も…
ーーー
ロイゼ『それぐらいにしておけ!』
「明日は、俺達にとって!大きな戦いとなる!」
フェルト『例の…王国の精鋭でも敵わなかった怪物のことだ。』
「洞窟を根城にしていた…化け物の討伐は…彼女の救いあってこそのもの…」
「今夜は戦いに向け…身体をじっくりと休めたい…」
俺達の発言は酒場の男達の心に響いたようだ。
酒が入ると騒がしいだけなのかも知れない…
「そうだよな…」
「嬢ちゃんらは、町の英雄になる者だ。」
「俺達も陰ながら…応援しているぞ!」
「今夜は飲むぞ!酔い潰れるまで!」
ハハハハハハハッ!!!
「あんた達!代金はきっちりと払うんだよ!」
「私はマケないからね!」
ーーー
ガヤッ…ガヤッ…
ロイゼ『騒がしいな全く…』
「楽しそうでなによりだけど…」
ラゼリス『ありがとうございました。』
ロイゼ『貸しは返したぞ…ラゼリス…』
「お互い貸し借りなしだな…」
ラゼリス『ええ…はい…』
ーーー
「ロイゼ…」
フェルト『随分と軽い貸しだな…』
ロイゼ『冗談だよ…』
「俺達は共に大いなる闇を祓う…仲間だ。」
ラゼリス『大いなる闇…アミュシエルは、世界の終焉と共に現れる化身…』
「数多の勇者…もとい…英雄達の記憶を取り戻さなければ…」
「世界の歴史が乱れてしまう…」
ロイゼ『確か…あの化け物も言っていたよな?』
「オルゴ・デミーラと…」
フェルト『ああ…恐らくは…魔を統べる存在…』
「魔王のことだろう…」
ラゼリス『これも…英雄達の記憶が奪われてしまった。その弊害でしょう…』
「表の世界では…魔を統べる存在が復活していると言うこと…」
「本来は存在し得ない…魔物が蔓延る世界へと…成り果ててしまった。」
ーーー
バンッ!
ロイゼが鉄の柵を激しく蹴り上げた。
「くそっ!」
ロイゼ『俺達が負けたからか!』
ビックリ…
ロイゼの突然の行動に驚き…
彼を見つめる…ラゼリス…
フェルト『やめろ…ロイゼ…』
「ラゼリスが驚いているだろ…」
ロイゼ『あ…ごめん…』
「まあ…」
「目的が1つだけなら…やり易いよな…」
「ヨーシ!」
「とっとと…明日に備えて寝るか…」
「明日は早いし…」
フェルト『そうだな…ロイゼ…』
ラゼリス『ふふ…』
こうして…俺達は、明日に備え眠りに着いた。
zzz…
ーーー
「船出の準備だ!」
「いいか!野郎ども!」
「この者達こそが!海の魔物と戦う勇士だ!」
「そして!」
「俺達こそが!この勇士を戦地へと運ぶ!海で生きる男だ!」
オォォォォォォォ!!!
「王国の精鋭でも成し得ない…偉業…」
「俺達は、それを成し得ることを信じているぞ!」
「出航ォ!!!」
カンッカンッカンッカンッカンッ!!!
静寂だった港町に…
船長の挨拶と…
船出の合図が鳴り響いた。
ーーー
ザザザザザザザザザザッ!!!
ロイゼ『うお!早い早い!』
「こんな船は初めてだ。」
「ラゼリス…それは?」
彼女が手に待っていたのは俺が放り投げた魔石だった。
あのとき手放した筈だが…
よく見ると紫色の魔石の他に数色あるようだ。
ラゼリス『町長から…調べて欲しいと…』
「私達が現れるかなり前…とある青年が置いて行ったものだそうです。」
フェルト『そうか…』
ーーー
俺達の他にも…あの化け物を倒せる旅人が?
ーーー
「見ろ!王国軍の旗だ!」
ポルトレーテの町から…数隻…
船が見えていた。
「幾度も凝りないな…」
「また…犠牲を出す気か…」
「サントバウラ王国も…廃れたものよ…」
「いや…アレは…」
「ただの傍観か…あの場所で、錨を落としやがった。」
「まあ良い!」
「腰抜けの王国軍共は放っておけ!」
「そのまま!警戒を緩めるな!」
ーーー
「漁船を確認!」
「宜しいのですか?隊長…」
「どうやら…ただの命知らずの様ですが…」
「よい…このまま待機せよ…」
「あの者達の腕を見たい…」
ハッ!
ーーー
「この辺りのはずだが…」
ザザザザザッ…
波の音だけが聞こえる…
ロイゼ『異変はないよな…』
「本当に居るのか?」
フェルト『居ないのなら…そのまま町に向かうはずだろ?』
ロイゼ『それもそうか…』
「!?」
ラゼリス『なにか!こちらへ迫って来ます!』
「船の底から!」
ロイゼ『感じるのか?』
「ラゼリス!」
ラゼリス『ええ…今までに感じたことのない…』
「異様な気配を…」
ーーー
「さあ…どう出る…」
「旅の者…」
ーーー
ブククッ…
「誰だ…我の眠りを妨げる者は…」
ブククッ…
「まあいい…身の程知らずは海の底へ…」
「沈めてやろう…」
「!?」
「この下だ!」
「来るぞ!」
ドドドォォォォォォォ!!!
「遂に姿を現しやがった!」
「海の怪物!」
「此奴らか…我の眠りを妨げる者は…」
「海帝王ケイオス様…わざわざ…お手を煩わせるほどでもありません…」
「このマーコスだけで…十分で御座います。」
「我が何者であるか…知るまい…」
「よかろう…冥土の土産だ。」
「七海(しちかい)の覇皇(はおう)であり…三英雄の1人…」
「海帝王ケイオスとは…我のことだ。」
ーーー
ロイゼ『丁寧な名乗りだな!』
「もう…探る必要は無くなった!」
「行くぞ!フェルト!」
フェルト『ああ!』
「ラゼリス!」
ラゼリス『私達は…その先へ向かいたいのです!』
「其処をお通し下さい!」
ラゼリスが唱えた呪文は俺達を補助するものだった。
「ほう…」
ケイオス『呪文の同時発動か…なかなか骨のある者が現れた。』
ラゼリス『鋭き風の刃よ…悪しき魔を貫き…吹き荒れよ…』
「バギ!」
ヒュゥゥゥ…
ロイゼ『決まった!ラゼリスの魔力なら…』
ーーー
ザザッ!
「ほう…なかなかやりよる…」
ケイオス『威勢だけではないな…』
「!?」
ロイゼ『嘘だろ…傷ひとつ無い…』
ーーー
「ケイオス様…」
ケイオス『マーコスよ…其方は下がれ…』
「皆もだ。」
ハッ!
ザバッ!!!
ーーー
海の魔物を下げた。
ーーー
フェルト『どういうつもりだ?』
ケイオス『我にとって…小舟など…』
「揺さぶるだけで事足りうる…」
「だが…其方らの名を聞いたとき…」
「思い当たる節があった。」
「大天使マキア…」
「この名に聞き覚えは無いか?」
「!?」
ラゼリス『何故?その名を…』
ロイゼ『どうした!?』
フェルト『ロイゼ…やはり…お前だけか…』
「確かに…お前は知らなかったな…」
ロイゼ『どう言うことだよ!?フェルト!?』
ケイオス『そう…驚くこともなかろうぞ…』
「我はこれ以上…其方らに危害を加えたりはしない…」
「無論…他の人間にもな…」
ロイゼ『何だって!?』
「今!危害を加えないって言ったのか?」
ケイオス『七海の王たる我に二言はない…』
「三英雄…その称号を持つ者…」
「我もその1人…」
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「大天使マキア様…」
ラゼリス『私は、「大いなる光」である…主神の使いです。」
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「そして…此処に…」
フェルト『かつて…俺達が敗れた後…アミュシエルを封じ込めた英雄の1人が…姿を現した。』
「完全な記憶の復元は出来ないらしい…」
「海帝王ケイオス…久しぶりだな…」
ーーー