誰にも理解されない狂人をしていたら、いつの間にか全く知らない神様を崇拝することになっていた   作:匿名希望

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「迷っタ」

 

「迷ったなぁ」

 

 

 悲報だ、暗過ぎてリフも俺も出口がわからない。

 さっきから壁や扉にぶつかりまくってる、主にリフの奴が。

 

 

「オ顔、ぼコボこ」

 

「じゃあ出てからフィアの奴に治して貰え」

 

「ソウする」

 

 

 そう言ってまた壁にぶつかるリフ。

 おいそこはちゃんと冗談だって伝えろよ。

 壁にぶつかった程度で傷付くやわな身体はしてないだろう。

 

 

「壁壊ス?」

 

「……の方が早いかもなぁ」

 

 

 ぶつかり過ぎてちょっとイラッとしているらしい、声に怒気が混ざっている。

 手っ取り早い手段とは言えそれをすると騒ぎを聞きつけて看守どもを呼び寄せることになるのだが。

 もっとめんどくさい奴も。

 

 

「この状態で騎士団連中を相手にはしてらんねぇわ、却下」

 

「? ワタシ戦エる、カラムも戦えル?」

 

「俺ぁ病み上がりとかそう言う次元じゃねぇよ今」

 

 

 不思議そうに傾げてる気がするけどリフさんよぉ、知らねぇかもだが俺って4年間何も食ってねぇんだよ。

 さっきまでは特製の枷に繋がれてたおかげで生きてたが、もうそんな保険は存在していない。

 

 

「見えてないだろ、今俺フラッフラだぜ」

 

「意外、カラムは人間だッた?」

 

「生き物なんだよバカタレ」

 

 

 人間もだが、生き物ってのがそもそもそう言う仕組みだよ。

 

 

「生き物みんな平等に食うもん食ってねぇと生きられないもんだろうが」

 

「ん」

 

「てことで、ゆっくり歩いて出て行くぞ。魔力もすっからかんだしな」

 

「ハい」

 

 

 あの枷は魔道具と呼ばれる不思議アイテムの一種だ。

 道具ってのはエネルギーになる燃料を入れなきゃ働かない、魔道具だって例外じゃない。

 そしてあの枷が使う魔力は、捕らえた罪人のもの。

 

 

「こんなシステム考えた奴ほんっといい性格してるよ」

 

「ん、とテモ効率的」

 

 

 ここに収監される様な凶悪犯は全員実力がある、つまり高い魔力の持ち主だ。

 そんな燃料を使わない手はないってな。

 

 

「高い魔力が仇になる監獄ってのも、中々面白い体験だぜ。試すか?」

 

「遠慮する。4年も居たらキズだらけ」

 

「自由に歩き回る前提かよオメー」

 

 

 知っててくれよ、枷ってのは捕まえる為の道具なんだ。

 

 

「歩き回ッて、どうやっテ出る?」

 

「そりゃあお前、左に沿ってりゃいつかはそれっぽい場所に出るだろ」

 

「ワァ」

 

 

 褒めんなよそんな声出して。

 俺に解決策なんてものはない!

 

 

「外、ルエル暴れてるのニ」

 

「んん? あの戦闘鬼がか」

 

 

 珍しいな我欲の塊なのに。

 

 

「勇者と遊ブため」

 

「……勇者ぁ?」

 

「正しキ神に選ばレたって言ウ、スゴク強いらしい」

 

「ああなるほど」

 

 

 前言撤回我欲の塊だからこそだった。

 結局戦いたいだけじゃねぇかあの戦闘狂。

 

 

「入り口付近、スゴイ音してタ」

 

「しかもこの辺りで戦ってんのかよあいつ」

 

「ん、嬉々とシテた」

 

 

 だろうよと。

 ……つまり出口付近はうるさいんだな。

 

 

「音聞こえねぇなここは」

 

「途方もナい」

 

「誰か案内人でも居たら良いが。こんな場所じゃあなぁ」

 

 

 看守は無理だ、この暗闇じゃあな。

 あっちは見えるがこっちは見えないとなると、何されるか分かったもんじゃない。

 できることなら囚人でここに詳しい奴とかなんだが……。

 

 

「多分、ムリ? みンな死人みたいダから」

 

「心が死んでるだろ、本当に」

 

 

 この環境下で半年保った奴は俺くらいって不真面目な看守は言っていた。

 光栄だね。

 

 

「身体じゃナクて心を殺ス大監獄。ワタシも死ヌ?」

 

「さぁ知らん。俺は死んでないからな」

 

「確カに?」

 

 

 不自由で食事ができなくて何も見えないってのも所詮は環境だ。

 心が壊れる前に慣れてしまえばいいし、そもそも苦しいと思わないのならば壊れることもない。

 負荷すごいだろうけど。

 

 

「……ん」

 

「どうした?」

 

 

 不意にリフが立ち止まる。

 

 

「音がシた」

 

「どんな音だ」

 

「ここの壁にぶつカる音と、アハアハ言ってるルエルノ声」

 

 

 どうやら常人より優れたリフの耳が雑音を捉えたらしい。

 

 

「この壁の向コうがワ、外」

 

「……なら丁度良いな。リフ」

 

「合点、承チ」

 

 

 俺の言葉と共にリフが魔力を貯め始めた……っぽいのを感じる、見えないけど。

 人殺すのとここの壁壊すのとじゃあ、難易度は変わるか。

 

 

「超過駆動」

 

「離れとくぜ」

 

「ん」

 

 

 人造人間であるリフは、色々と人間離れしているが。

 その機能の1つとして、肉体の限界を己の意思で自由に超えられるらしい。

 これもその延長線だ。

 

 

    とにかク、全力でぶん殴ル」

 

 

 電流が走ってリフの姿が若干見える。

 拳を構えてるな、殴り壊す気か。

 

 

「いっセーの!」

 

 

 その若干締まらない掛け声どうにかならないのか、面白いとは思うが。

 まぁ  

 

 

「ぶっ壊すには十分だったなぁ」

 

「開通、デす」

 

 

 前が見えねぇ……。

 眩し過ぎる、てか俺が光を浴びなさ過ぎなだけか。

 

 

「……んん〜? おうおうカラムちゃんじゃ〜ん! おっ久〜!」

 

「久しぶりだなぁ欲望全開女」

 

 

 相当遠いとこにいるとは思うんだが、とにかくルエルの奴の声がでかい。

 距離感が掴めんし眩しくて視界も潰れてる。

 

 

「そういうカラムちゃんはガリッガリじゃん。エゴの極み?」

 

「そう言う場所に居たからな」

 

「お勤めご苦労さ〜ん」

 

 

 やっと見えて来たが……。

 おう、あいつも変わらんなぁ。

 

 

「お前も大概ボロボロじゃねぇか、相当手痛い攻撃もらってんなぁ?」

 

「あっはははは!」

 

 

 ルエルの身体には無数の傷がある、血も中々の量を失ってそうだ。

 内臓いくつかやられてるだろあれ。

 

 

「勇者ちゃんってば弱っちぃのに速いんだよねぇ、避けきれないや」

 

「へぇ、鬼のお前がそう言うってこたぁほんとに速いんだな」

 

 

 ルエルの身体能力は常人じゃ比にならないほど高い、勇者ってのはそれをもってしても追い切れない速さだと。

 

 

「ワタシなら追える?」

 

「ん〜? あー確かに! いい勝負しそうかも!」

 

 

 おいうちの身体能力トップ2なんだぞお前らは。

 それといい勝負する速さをしておきながら弱っちぃだぁ?

 

 

「伸び代はあるのか」

 

「たっくさん!」

 

「ああそう」

 

 

 正しき神に選ばれたってのも大袈裟じゃ無さそうだ。

 今は相手にしたくねぇなぁ。

 

 

「あ、来たよ〜」

 

「は?」

 

「ン」

 

 

 おい待て今……げっ。

 横側からとんでもない圧が、馬鹿みたいな速度で近付いて来てるなぁ。

 

 

「一体どこまでぶっ飛ばしたんだ?」

 

「え〜っとぉ……7里くらい?」

 

「イつ?」

 

「ちょうどリフとカラムがそこぶっ壊す直前くらい〜」

 

 

 何、その勇者28キロを走って数分ちょっとで戻って来てんのか?

 ほんとに限界超えたリフと同レベルじゃねぇか。

 

 

「ご対面って訳かぁ……」

 

「速度、勝ブ?」

 

「何回ぶっ飛ばせば終わるのか楽しみ!」

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