誰にも理解されない狂人をしていたら、いつの間にか全く知らない神様を崇拝することになっていた 作:匿名希望
「腕も背中もいってえなぁ……」
ま、立ってるだけでも相当アレだった以上、あんな衝撃を受けて死んでいないだけ幸運だったと捉えるべきか。
「にしても真っ直ぐな奴」
ルエルの仲間とおぼしき俺とリフを認識した勇者は、数を減らそうと俺に攻撃を仕掛けて来た。
見るからにヒョロくて弱そうだしな。
手法自体はとてもシンプルで、この場で最速と思われる程の速度から放たれる剣での刺突。
それをギリギリ理解できた俺が取るのは、当然防御一択なのだが……。
「なけなしの魔力に、現状枯れ木みてぇな足腰だぁ今の俺は」
防御が間に合ったとて踏ん張れるわけがないのであった。
おかげで勇者とリフの戦いに巻き込まれずに済んだがな。
「うっひゃ〜、近くで見るとほんとに枝じゃん。今にも折れそう」
「うっせぇ。この枝のおかげで今生きてんだよ」
「確かに? リハビリにはきつ過ぎてそうな防御行動お疲れさ〜ん?」
リハビリなんだとしたら俺は泣く。
なけなしの魔力がまたすっからかんだよ。
「つーか今のでどうして生きてんの? 流石に死んじゃったかな〜って焦ってたんだけど」
「……お勤め中、どうにか魔力が使えないか試してた時期があってな」
「え馬鹿じゃん、どうせ魔力封印の魔道具なんでしょあれ?」
「暇なんだからしゃあねぇだろ。……んでその暇つぶしの結果、あの枷微妙にバグってたんだわ」
「んへ、バグってた?」
魔力封印というのはつまり、本来であれば己の意思でコントロールできる魔力への命令を無効化している状態だ。
「魔道具ってのは本来、
「そうだねぇ、あってるあってる」
「あの枷の使用者、俺になってたんだよ」
「……んん〜?」
お、ルエルも気付いたみたいだな。
そう、使用者である俺は、魔力封印の効果で俺の意思では魔力を使えない。
……筈なのに、形式的には魔道具には俺が魔力が込め続けていたということになるんだよ。
「あ〜、なんか概念的なズレ? みたいなことになってたと」
「そういうことだ」
「で、それがどうして今生きてることに繋がるのさ」
「あれこれ試してたら魔力で身体を微々強化できるようになってたわ」
「ほえ?」
1.01倍くらいのバフ量だったと思うがね。
「いやいやいや、おかしいでしょ〜?」
「身体を通ってる時に微妙にバフ乗せられたっぽいぜ」
おそらくあの枷限定のバグ技だし、筋力の衰えが多少マシになる程度の効果しか得られない。
そのおかげで今生きてる訳だし役には立ったな。
「そーいう小賢しいの得意だよねぇ、フィアちゃん共々さ〜」
「バカ言え、小賢しさで言ったらシオンに敵う奴はいない」
「いやそうだけどそうじゃなくな〜い? フィアちゃんとカラムちゃん小賢しいって話だし」
そうして血を大量に流しながら笑うルエル。
「お前はお前で無事じゃ無さそうだが」
「ん〜? あっははは! へーきへーきこんなのかすり傷だよかすり傷、帰ってフィアちゃんに治してもらうまでぜーんぜん平気だからね!」
「じゃあ平気ついでに手を貸してくれ、動けん」
「はいよ〜」
ルエルは軽々と俺を担ぐ、そして今なお高速戦を繰り広げている勇者とリフの方を見据える。
「名残惜しいけど、お荷物抱えちゃったし先帰るね〜! リフちゃんもてきと〜なタイミングでこっち来るよーに!」
「ン!」
「ッ……!」
後は、鬼のフィジカルでひとっ飛び。
さっさと身体の調子を戻したいもんだね、不自由が過ぎる。
「一旦とうちゃ〜く!」
「ここは?」
ひとっ飛びした後辿り着いたのは、平原の各地に点在している廃墟同然の小さな砦。
「一応仮拠点! 馬鹿正直にアジトから監獄まで真っ直ぐ移動とかしてらんないよ〜」
「そりゃそうか」
いかにも急拵えしました感満載だもんなぁ、あちこちに黒く乾いた血の跡がある。
ここに住み着いていたであろう野盗共のものだろうか。
「お掃除はしたけどまだ散らかってるんだよねぇ」
「これで掃除とか言ってたら怒られるぞ」
「うげ、今のな〜し!」
4年前でさえ普段がずぼら過ぎて延々と怒られてたってのにな、お前の妹に。
反応から見るに今もそれは変わっていないらしい。
「ルナティにゃいつまでも気苦労が絶えんなぁ」
「あっははは! いつまでも可愛い弟だよ〜? 貰う?」
「貰わん」
この
あいつにも問題がない訳じゃないし。
「第一、あいつは極度の男嫌いだろうが」
「んー、カラムちゃんとはちゃあんと話してるしぃ?」
立場上、話はしなきゃってなるタイプのしっかりものだぞあいつは。
体質も俺はそこまで気にならん。
「ぜっこーの相手じゃん貰ってよ〜」
「断る、俺ぁ誰かと一緒になるつもりがないんでな」
「そっかぁ……んー残念っ!」