ようこそ、■■黒い教室へ。 作:ekaterina
1:本当の友人
2:本で繋がった友人
前の話一部修正(伏字)しました。タグ使い慣れたら再修正予定。
それではどうぞ。
私が静乃さん…藤原静乃さんとお知り合いになったのは、ある日の図書館でのこと。
クラスの雰囲気に馴染めず、趣味であり、生きがいでもある読書に勤しもうと今日の一冊に出会おうとする中、すっと自分の頭上に影が差しました。
「失礼…」
「?…あ、ごめんな…さい…」
「いいえ、…?」
「?」
私の正面の本棚の、上の方へ手を伸ばす―――先輩、でしょうか?綺麗な黒い髪が窓から指す夕日にきらめいて、どこか神々しく感じてしまう。
首を傾げた先に目を向ければ、上・下巻に分かれている小説の下巻に指を当てている。そこには上巻があっただろう隙間があり、貸し出し中のようでした。見上げればどこか儚げな、弱く眉をひそめる様子。私も何度も経験した、『借りたかった本がない悲しさ』というものをこの方も感じている様で、思わず、という風に声をかけてました。
「あの、もしよろしければですが…」
「?」
「その、購入した私のもので良ければ…お貸ししましょうか?」
「良いのですか?」
ピクリと眉が揺れ、声はどこか喜色が浮かんでいる。…実は感情豊かな方なんでしょうか?コクリを頷く私の手を握るとお礼を丁寧に言われ、連絡先を交換する。
そこで初めて目の前の先輩かと思っていたのが同級生で隣のクラスの方だと知り驚きました。本以外に興味が無かったのもありましたが、本友が出来るなんて入学する前には考えもしませんでした。
「こんにちは、椎名さん。以前紹介してもらった本ですが――」
「――ですよねっ!本当に繊細な文章が綺麗で、何度読んでも…」
静乃さんはまさに打てば響くという様に、私がお気に入りの小説を上げれば同じ作者や似た雰囲気の小説を挙げ、そしてお互いに紹介し合う。次に会った時に感想を伝えて、またお互いの読む本について触れる。毎日ではなかったですが、ちょうど切りの良いところで静乃さんはやって来て感想を聞いてくれる。
図書室で、カフェで、個室のあるレストランと日を変え場所を変えて、友諠を交わしていた。彼女はBクラスの中でもあまりクラスの対抗戦に興味がないようで、5月以降もあまり自分のクラスの勉強会には参加していないようでした。孤立している訳ではなく、誘われているのを何度も見ましたがやんわりと断っていました。
「…そろそろですね」
「ええ…」
目の前でパタンと本を閉じる音。視線を上げる。最近の静乃さんは、Dクラス――図書室で大きな声を出している所も見かけて、あまり好ましくはない方々――の、中心人物である櫛田さんを迎えにいっています。それとなく聞き出した内容は、櫛田さんがクラスの勉強会を主導している為、労わっているんだとか。
「では…椎名さん」
「あ…」
「お先に失礼を。…
「…っ!はい、楽しみにしてますねっ」
「私もです」
静乃さんは綺麗な姿勢で席を立ち、一礼して櫛田さんの元へ向かう。―――『また明日』―――その一言に、ほんの少し湧き上がる嫉妬をかき消すほどの暖かさが胸を満たす。同じ女性なのに、同級生なのに、別のクラスなのに。そんなほの暗い気持ちが、静乃さんと一緒にいる間は忘れられる。
「っ、はぁっ…。……藤原さん。……静乃、さん…」
だから私は、今日も図書館で本を探す。静乃さんにお勧めする本を。一緒に感想を話す一冊を。
最初の期末試験が終わり、図書館にもまた静寂が戻ってきました。
Dクラスの櫛田さんを迎えに行く回数も気持ち少なくなり、放課後は私と一緒にいる事が多くなりました。そんな中で、一度トラブルというか…揉め事未遂?なことがありました。
私ではなく、クラスのリーダー格の男子生徒…龍園君が、期末試験の前後から他のクラスへのちょっかいというか嫌がらせを始めたのです。興味が無かった私は気にしていなかったのですが、ある日の放課後。
「ちょっとアンタ。Bクラスだからって随分偉そうじゃない」
「ね~。ずっと本ばっかり読んで、頭良いアピールとか痛いんですけど」
「きゃはは、言い過ぎだってっ!」
よりにもよって私を待っていた静乃さんの元へ、真鍋さんやその取り巻きの方が絡んでいたのです。私は思わず、という風にその輪に近寄ろうとしましたが静乃さんに視線で止められます。
「っ…!?」
「………」
ジッと深い碧色に射抜かれると、ドキリと胸が高鳴る。そんな様子に無視されたと思ったのか、真鍋さんは机にドンっと腕を立てて威嚇するように声を荒げる。
「ちょっと!どこ向い、て…」
「失礼」
「ちょ…」「志保っ…」
静乃さんは席を立つと真鍋さんを見下ろすような体勢になり、視線を合わせる。…同性の私でも、ドキドキしてしまう静乃さんのお顔。目を逸らそうにも頬に手を当てられて、逃げられない。…真鍋さんの顔がどんどん顔が赤くなっていく。
「あ…ちょっと…なん、…あ、あう…」
「…『可愛い顔だね』」
「ひゃんっ…」
身長差から見上げる形となった真鍋さん。静乃さんに腰に手を回され、咄嗟なのか恥じらうような少し高い声が聞こえた。
「あ…」
「……『目を閉じて』」
「「………っ」」
見つめ合う二人。その顔…唇の距離が近付いていく。顔を真っ赤にした真鍋さんは何を思ったのか、ぎゅっと目を閉じて、そして…。
「………っんっ!」
「きゃっ…」「あぁっ…」
「…………っ!」
他の方…藪さんと山下さんが息を呑む。もちろん私も。
そして―――その唇が、触れる。静乃さんの―――
「…?…ふぇ…?」
「……」
「な、ななっアンタ…!」
一秒、二秒。ぱちりと目を開けた真鍋さんは、違和感に気がついたのか固まって、視線を静乃さんの指と唇に向ける。ようやくからかわれたのかと気が付いて、腕を払う。
袖で唇を拭うと、声を荒げて罵詈雑言を飛ばし―――ギュッと抱きすくめられた。身長差からすっぽりと収まった真鍋さんは今度こそ抵抗できなくなって、身を固くして―――。
「『次は本当に続け』…あら…?」
「…きゅう」
くたりと真鍋さんの身体から力が抜ける。その様子に慌てた藪さん達が真鍋さんを引き取ると、図書室を去っていく。…刺激が強すぎたようです…わ、私も同じことをされたら気を失うと思いますから仕方ないでしょう。ええ!
「からかいすぎたかしら?」
「そう思います。…やり過ぎですよ?」
「そう?…椎名さんのおススメしてくれた本にあったから、試したのだけれど」
「あれは…」
普段は純文学を書いている作者が現役のホストに取材した、夜職の方を題材にした小説のワンシーン。…当然、男ホストと女の客の心理描写や情景が見せ場だ。読んでいるこっちもドキドキしてしまうようなそれを、整った顔の静乃さんがしたらきっと同性でも恋に落ちてしまう。
私がさっきのは禁止だとこんこんと伝えると、静乃さんは首を傾げながらも頷いてくれました。…妙に慣れていたのが気になりますが…え?「私を巻き込まない様に?」…ズルいです、そんな言い方。
その日はお礼も兼ねてお食事をご一緒させて頂きました。…今考えても、あの時の私は舞い上がっていたんだと思います。そのツケというか…反動が起こったのです。
・
・・
7月1日。普段なら5万近いポイントの振り込まれる予定日。ただしCクラスの面々のほとんどはそれが振り込まれないことをある程度わかっていました。
Dクラスに対する作戦。…龍園君に親しい方々が実行役をしたものの、私のような関心の薄い生徒へも軽く周知はあった。今までのクラスでの活動(特にBクラスへの働きかけ)を知っていれば、それが良くない事だとは薄々理解する。
案の定、クラスでも龍園君を心酔しているような石崎君が怪我をして登校した。そして朝のHR、担任の坂上先生がポイントが振り込まれない理由について説明する。審議中の事案があり、その結果によってポイントが変動するため支給が滞っていると。
「おい、お前ら後は―――」
「龍園さん!分かりました!」
龍園君となにか話した後に、石崎君はバスケ部の方々と一緒に教室から出ていく。この時点でCクラスの面々は確信する。『龍園君が裏で糸を引いている』のだと。
勝気な伊吹さんや、龍園君をあまりよく思っていない時任君などはそれに嫌そうな目を向けていたのが印象的でした。
後日、改めてHRで今回の事件―――暴力事件のことが明かされると、学年中でこの件が取り沙汰されるようになりました。私も渦中のクラスの生徒として、図書館で読書していてもこっそり噂されている、見られているのを感じて居心地の悪さを禁じえませんでした。しかし、
「お待たせ、ひよりさん」
「あ…!静乃さん、いいえっ!わ、私もさっき来たので」
「そう?この前の本も良かったわ。特に灯台の―――」
「ええ、ええ。そうなんですっ!…あのシーンは私もお気に入りで―――」
そんな時世でも静乃さんの対応―――接し方は、以前と全く変わらないもので本当に…そう。本当に、安心したのを今でも覚えています。
お互いに好きな本を読み、感想を語り、次の一冊に思いをはせる。あっという間に過ぎる時間が来たら「また明日」と約束をして別れる。―――そんな日常がずっと続くと、そう思っていました。
転機が訪れたのは、3日後の金曜日。Bクラスの生徒たちが今回の事件の情報収集を始めたのがきっかけだったと思います。張り紙や掲示板などで活動しているのは見聞きしていましたが、静乃さんと約束があった私は変わらず図書室で本を読んで待っていました。
そこに、明らかに友好的ではない面持ち―――おそらくBクラスの生徒でしょう―――が声をかけて来る。名前は知りませんが、何度か静乃さんといる時にこちらを見ていたのは気付いてました。
「ちょっと良いですか?」
「…はい、なんでしょうか?」
「あなたCクラスの人でしょう?散々こっちのクラスに嫌がらせしてたのに、藤原さんと仲良くするなんて…」
「そうだよ…。そのせいで、藤原さんクラスにあんまりいてくれないし…」
「それは…」
思わず、言葉に窮してしまう。彼女達が言っていることは正論でした。この学校の仕組みとして、競い合う他のクラスの生徒とずっと仲良くするのは酷く難しい。何年来の友人同士ならともかく、会って2,3ヵ月の関係はとても儚く感じる。黙り込む私を尻目に、彼女たちは言葉を続ける。それを遮る言葉が、私には直ぐには思いつかなかった。
「何か脅迫してるんじゃないの?…それか、弱みでも握ろうとして―――」
「―――こんにちは、ひよりさん。…あら?」
「あ…」
私はいい。でも、私のせいで静乃さんがクラスで居場所を失ってしまったら?そう思えば途端に言葉が出てこない。しかしタイミング
一瞬の静寂。静乃さんから向けられる視線には気遣いが籠っていた。…それをみて私は、内心の申し訳なさから俯いてしまう。
「待たせてしまって、悪かったわね」
「あ……いえ、別に、そんなに」
「………」
「………っ」
いつも言っているはずの言葉も、どこかちぐはぐになる。静乃さんはどこか温和というか、少し天然そうなところがありますが察しが悪いわけではありません。私の態度からどんなことを言われたのか気付いたのだと思います。
それでも謝ってしまえば――「こちらのクラスの生徒が迷惑をかけてごめんなさい」なんて、静乃さんに言われてしまえば。奇しくもさきほどの彼女たちが口々にしていた「他のクラスの生徒は仲良く出来ない」という事実を認めることになってしまう。もし、
「……続きを読んでいるわね」
「あ…はい」
もし、そうなってしまったら。この図書室での時間も、2人の関係も終わってしまうんじゃないかと、そう思ってしまう。エアコンで涼しい筈の図書室で、背中を伝う汗がじんわりと気持ち悪い。
結局その日はお互いに本を読んで、いつもの約束をしてぎこちなく別れを告げました。
週が明けた月曜日。火曜日の審議が持ち越され、水曜日の再審議の日。そして訴えが白紙になったと告知され、ポイントが振り込まれた木曜日。そして再び訪れた金曜日。そのいずれも、私は図書館へ足を運べずにいました。
理由はふたつ。ひとつは、気まずい思いを抱いたまま静乃さんに会って良いのかと葛藤があったこと…いいえ、本心はただ怖かったのです。会ってしまって、あの関係に区切りのようなものが出来てしまう事が。―――そして、もうひとつの理由。
「それでどうなんだひより。Bクラスの藤原からなにか進展はあったのか?」
「………」
それが、目の前の龍園君からの命令でした。先の一件が彼の耳にも入っていたようで、次の土曜日にはクラスの半分程度を集めたカラオケに呼び出しがありました。
私と静乃さんの関係…。実際、把握はされていたのでしょう。泳がされていた関係について、クラスへの
そこで、私と親しい静乃さんに目を付けたのだと思います。Bクラスでも一目置かれていて、成績も高得点。人を引き付ける雰囲気や容姿は、リーダーの一之瀬さんに比肩すると警戒しているのでしょう。これ以上、静乃さんを巻き込むわけにはいきません。私は努めて真剣な表情で、龍園君への質問に答える。
「…特には、ありません」
「あ?」
「本人とは親しく付き合わせて頂いています。…ただ、他のクラスメイトの方に釘を刺されました。…先日の件で、警戒しているんだと思います」
「…真鍋が絡んだ件でか…チッ!」
「ですのでしばらくは様子見が必要かと思います。…私も、しばらくは距離を取ろうかと」
「………」
舌打ちに反応して、真鍋さんたちの肩がビクリと震える。…まるで生贄のように差し出す形となりましたが、罪悪感はありません。それにあの行動は龍園君の指示によるもの。目的は果たした以上、無意味に責めることはないと予想しましたが、その通りでした。いくつか質問をしたものの、再び眉間に皺を寄せて思案気な表情。
そうして数分ほどでしょう、熟考の後、彼が口を開く。「なら、仕方ない」と。思わず、といったように部屋中で安堵の息を呑む音が複数聞こえる。
しかし、私は彼から視線を外さない。油断できない―――そう思っていると案の定、彼は身を乗り出してきた。足でける様に押しのけた机から軽食やグラスが床に散乱する。小さい悲鳴や恐怖、周囲に緊張が走る中、龍園君は威圧するような笑みを浮かべながら、目だけはこちらを疑ってかかっている。そんな冷たい眼差し。
一転して息を呑む周囲を置き去りに、私は彼の言葉をただジッと待つ。
「それがお前の嘘じゃあなければ、な?」
「…嘘?」
「お前と藤原の仲は
「………」
「そんなお前が?釘が刺された程度で、
「………」
「そうすると…アレか?仲良くなったオトモダチを庇っての行動って訳か。クク」
近くの机から「ひぃ…」と怯える声が聞こえる。…ここで目を逸らしたらダメだ。私はじっと彼の言葉を待つ。
「これから3年間過ごす俺たちより、たかが数カ月程度の知り合いを優先するってのか?なあ、おい」
「…どちらにせよ」
「あ?」
出来るだけゆっくり口を開く。嘘をつく人は饒舌になる。聞かれてもいないことを答えるというのも要注意ですが、これはほとんど本音に近い。…一時的とはいえ、静乃さんと一緒に本を読むあの時間を失うのは本当に悲しい。そう思ってるからこそ、嘘では決してない。
「…しばらく、会うのは控えるつもりです。ほとぼりが冷めるまでは、藤原さんに近づくのはリスクが高いかと」
「………理由は?」
「…これ以上、静乃さんに
「クク、本音が出たな」
そしてほんの少し、真実を織り交ぜて話す。これが相手を騙す際の要素だと、私は先人から学んでいる。
「それに彼女は、Dクラスの櫛田さんとも仲が良いです」
「なに?…櫛田……チッ、なるほどな。Dクラスか」
それらしい事実を口にすれば、龍園君は一度はしっかりと考えてくれる。怒気が少し弱まったのを感じ、ようやく小さく息を呑む。
そう他の事を考えていれば、結論が出たのか龍園君が口を開く。
「…いいだろう、接触があれば知らせろ」
「はい」
「―――次だ。この前にシメた上級生の話じゃ、どうやら夏休みのバカンスとやらは―――」
嘘をついていないと判断してくれたのか、龍園君は身を引いて、別の話を始める。そうして私の生活から、あの図書館での時間がゆっくりと無くなっていったのでした。その週は本当に心が弱っていて、クラスでたまに話す伊吹さんから随分と心配されました。
「…大丈夫なの?ひより」
「っ…ええ、大丈夫です」
「なら良いけど…あんなの無視して良いと思う」
「ありがとうございます、伊吹さん」
きっとなにも言わずに図書室に行かなくなった私を恨んでいるかもしれない。忘れてしまうかもしれない。…もしかしたら、ずっと待っていてくれるかもしれない。その時はしっかり謝ろう。そうして、また一緒に本を読んで欲しい。
・
・・
その代わり、新たに始まったこともあります。
くだんの審議が終った翌週の月曜日。学校で静乃さんとすれ違うことへの後ろめたさから、足早に自室へと帰る。いつも通りエレベーターに乗り、鍵を取り出しドアを開けようとして気が付く。ドアノブに紙袋が乗っている。
小さい、まるで文庫本が一冊すっぽりと収まる程度のもの。私の部屋が廊下の奥の方なので、意識しなければ気が付かないほど自然とそこに収まっている。
「これ…もしかして」
どきどきと高鳴る胸を押さえて、部屋で紙袋を開ける。中に入っていたのはパッケージが取り払われた一冊の本。それも気になっていた今週販売した作品だ。購入時にひとつ貰える紙のしおりだけが挟まっていて、他には手紙も何もない。でも私はどこか予感のようなものを持って、しおりを手に取り裏返す。――そこには、
『あなたのお勧めの本はなんですか?私のはこれです』
「~~~っ…!」
綺麗な字。筆ペンで書いたのか、まるで市販のソレのような一文に、まさに「万感胸に迫る」といった胸中でした。決して折らないように、でもギュッとそれを抱きしめる。
……間違いない、静乃さんからだ。きっとこちらの事情を慮って、こんな形を取ってくれたのでしょう。本当に、よかった。嫌われていなくて、この関係を彼女も望んでくれていて。本当に、嬉しい。
それから私は学校で出来るだけバレないように、しかし本は頂いた紙袋に入れて持つようにしました。偶然を装って静乃さんとすれ違う時も、目なんて合わせない。
「………っ…!」
「………♪」
きっと今は龍園君の監視がある。だから、今はこのくらいの関係で良い。でもいつかきっと、またふたりで本の感想を言い合えあえたら。…そう思っていたのに。
「え…」
終業式が終わり、夏休み。もうしばらくしたらバカンスがあると聞いていたので、私は持って行く本を選びにケヤキモールの書店へと足を運んでいました。良い本が見つかったのと、今日は私のおすすめの本を静乃さんのお部屋に届ける日。
上機嫌なのがバレないようにと、気持ち早足くらいで彼女の住む部屋でエレベーターを降りる。尾行にも気を付け、他の階でも止まる様に工作をして彼女の部屋へ。何時ものようにドアノブの上に本を置いて、自室へと帰る。すると既にもう、私の部屋のドアノブにはいつもの紙袋が乗っていました。「いつもより早い?」そう思って部屋で開けるとそこには、
「なんですか…これ」
ボロボロにされた本が入っていた。地面に落として足蹴にされたのか、所々に汚損が広がっていて、大切に扱われていないのがひと目で分かる。何故こんなものが?そう思ってページをめくっていくと、数枚の白い紙?がバラバラと床に広がる。
何気なしに視線を向けるとそのうちの一枚は正方形の写真となっていて、落ちたのが紙ではなく写真だったことがわかる。ポラロイドカメラというのか、カメラから写真が直接出るタイプの安っぽい印刷。でもそこに写っていたのは―――
「静乃…さん?」
虚ろな表情を浮かべた、私の大切な友達の姿でした。
ぼろぼろになって、なんとか腕に引っかかっているだけの■■。引きずり下ろされた■■■■。
肌に浮かぶ赤や紫の痕。千切れた■■。付着している■■色の―――。
「ヒッ……!」
喉が詰まる。呼吸が籠る。思考が恐怖に支配され、脳がチリチリと焼けつくような恐怖に駆られ、そして―――。
ぱたりと、限界を迎えた私の意識は途絶えたのでした。
読了ありがとうございます。
もっと曇らせていけ。
次は委員長、あなただ。その次は原作主人公か教師かで悩む。
お楽しみに。
感想と高評価、活力になります。
よろしく、よろしくお願いいたします。