ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の予言者   作:バトクロス

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設定を思いつきましたが、文書構成能力が追いつきません。誰か文才をください。


予言と神秘の接続
調月リオと星外の予言者


 ()()()とは宗教ではただ未来を見通すのではなく、神の言葉を伝える存在、人々の導き手であるとされている。ならば自分にとって彼女はまさしく予言者(オラクル)だった。

 彼女はあの日、()を通って現れた。

 

 

 

 ある日様々な計測機器が異常な数値を示した。それに気が付いた瞬間、爆発音がして要塞都市が揺れる。それは異常事態が起こった事の証左だった。

 私はその場所に向かうと……人間が一人、起き上がろうとしていた。全身を覆う黒っぽい服とフード、何処か研究者、或いは探索者のような服をきた存在は立ち上がり、被っていたフードをおろす。灰色の髪と目を持つ中性的な美人。起き上がった彼?彼女?の頭上に()()()()()()()事に気が付く。

「動くな!」銃を突きつけながら直ぐさま警備ドローンを呼び、周囲を包囲しながら「貴方は何者?所属と名前を言いなさい。」と問いかける。

ここは……門の事故か?座標の位置が特定出来ない……と言うか、不味いな。即死しなかっただけましとは言え、現生人類が居る。見た所キチンとした文明は存在することを考えると言葉は存在するだろうが……直ぐに言葉を理解しなければ……

 ()()()()()()()()()その人間は恐らく言葉を話しているのだろうが私にはただの雑音にしか伝わらない。(……聞いたことの無い言語だ)

 とにかく外から来た人間で有ることは確定だろう。私はそう考え銃を下ろさせる。

「初めまして、私は調月リオ、ミレニアムの会長よ。……拘束させて貰うけど、悪いようにはしない。まぁ言ったところで無駄だろうけど。何故貴方がここに来たのかは分からないけど原因さえ解明すれば直ぐに元いた場所に返す。」

 そう言いながら彼の痩せ細った手を掴もうとする。

おはよう?違う……こんにちは?違う……敵意は無い?違う し て?」

 直後、ただの雑音だった彼の発する声が言葉という形を持つ。

「ミ レ ニ ア ム、つ か つ き り お?」

 咄嗟に銃を突きつけるが、自分の手の震えに気が付く。

(明らかにさっきまで彼は言語は分かってなかった、なのにもう固有名詞と挨拶が推測できている?あの情報量で?)

 この人間は自分をも上回る()()かもしれない。リオは数秒悩み決断した。

「申し訳無いけど、暫く返せない。」

 

 

 リオは人間をある空き部屋に幼児用の教育BD、初等教育用の教科書、中等教育用の参考書、高等教育用の参考書、辞書、メモするための筆記用具とノート、そしてコンピュータとその説明書と共に一日監禁し、その様子をカメラで監視した。

 最初は予めセットしていた幼児用の教育BDを見ていた。その次に初等教育用、中等教育、高等教育……一日で何所までたどり着くか見ると言う目的もあったが……「……12時間ぶっ通しで読みこみ国語と数学の高等教育の教科書まで読了、そして3時間仮眠を取りコンピュータで論文を検索……あの人はなんなんだ?まさかアンドロイドなのかしら?」

 そもそも彼の最初に話していた言語を解析にかけた結果キヴォトス内外全ての言語と一致しなかった。そのため何処かの原住民かと思い言語学だけで無く数学や物理の参考書も渡したが、原住民にしては服が整いすぎている。

 酷い違和感が有る。まるで()()()()()()()()()()()()()のような違和感が。(何を阿呆なことを。そんなこと有るわけが無い……)

 そんなことを思いながら彼を監禁していた扉を開ける。部屋の中にはコンピュータで論文を検索している人間の姿があった。

「言葉……と言うかこの世界の事分かる?」半ば確信を持って彼に問う。彼は振り返ってこう言った。

 

 

「君のお陰でね。ただ合理性を求めたのは分かるがもう少し人道的に扱って欲しいな。」

 

 

 

 リオはその人物を部屋から出し、話し合いの場所を設けた。

「お互い初対面の印象は良くないだろうけど、そこに拘泥するのは合理的ではないわ。お互い水に流して自己紹介をしましょう。」リオがそういうと人間は笑いながら「別に気にしては無いよ。寧ろ君の対応はかなり有難かった。思うところが無いわけではないけどね。」言った。

「私は調月リオ。キヴォトスの三大学園の1つ、ミレニアムの二年生であり、会長よ。主にハード面の研究をしているわ。」リオがそう告げる。あくまで興味深い突如として現れた隣人、その程度の自己紹介で十分と考えていた。

「私はオラクル、ドクターとも言われている。君とは異なる星……星?それとも人工衛星かな?まぁそこで生まれた、所謂異星人だ。職業としては研究者、主に神経学の研究をしていた。それ以外もプロフェッショナル未満とは言え、大概の事は出来る。」

 リオの思考にノイズが走る。

(神経学者……神経学者?()()()()ではなくて?)専門外の事にも関わらず一日でここまでこの星の文化圏を理解する頭脳に衝撃を受ける。(それに()()()……)そしてその出自にも。(目的を知らなければ……侵略だった場合、即座に()()()()()()がある)

 そう覚悟を決めリオは1つの問いを投げかけた。

「貴方は何故、此処に来た。そしてここで何をするつもり?」

「『スターゲート』……そちらの言葉で言うならワープゲートの事故で此処に来た。今後の予定としては現在地の特定と帰還への準備、及び帰還が主なやるべき課題だ。後は暇つぶしとしてこの世界の事を知りたい、あと多少は研究もしたい。」

 疑念は杞憂で終わり、リオの視線が哀れな遭難者を見る目に変わる。

「そう……分かった。それで住む場所や戸籍はどうするの?」そう言うと「何とかする。」と具体性を欠いた言葉が出て来る。呆れながらもこう告げる。

「じゃあ此処に居なさい、資材や食料、寝床も提供する。代わりに色々と手伝って貰う。」

 そうして二人の奇妙な生活が始まった。

 

 

 

「男物の服はないから今日まではその服で過ごして、明日注文する。」

「いや、私は女性だよ?」

「……そう。」

 始まった!

 

 

 

 彼女が最初に行ったのは所持していた機器の修理だった。機器を修理し始めて1週間。

「持ち込んで居たデバイスだけだとこれが限界か。……よし、これで最低限『門』の修理は終わった。ここからが鬼門だが……」

 リオは彼女が修理したこの装置の仕組みが全く分からなかった。

「これは……何?」

「『スターゲート』……まぁ簡潔に言うとワープ装置だ、ブラックホールとホワイトホールを同時に発生させ、それによって生じるワームホールを利用して時空間を超越して移動する物だ。もっとも完全なものではない。ほぼ起きえない事故とはいえ観測者の有無等による対称性の欠如による事故も未だに有る。更には……」

「分かった。もう大丈夫、理論をすっ飛ばして事象を説明するのは。とにかく何が鬼門なの?」彼女の説明に頭を痛めながらリオは話を切り上げるようそう言うと、彼女は溜息をつきながら質問に答えた。

「……ワープするための手法は幾つか有るが、手持ちの機材とこの星の文明を考えると直せる範囲でスターゲートの修理をしたところで殆ど使えない。可能な唯一の方々は相方となるゲートが有る座標を特定し、そこに向けて跳ぶ方法だけだ。そのためにはこの星の座標を調べる必要が有るが……なかなか難しい」

 リオはその説明を聞いてほっとした。

「ミレニアムの人口衛星のシステムを使えば約1500万光年の大まかな星の座標は観測できるはずよ。もっとも半年くらいはかかると思うけど……」

 そう言うと彼女は目を瞬かせ、その後微笑んだ。

「ありがとう、感謝する。」

 

 

 

 次の日、リオはオラクルを連れて連邦生徒会に向かっていた。

「送迎に態々ヘリコプターを使うとは、色々とすまないな。」

 ヘリコプターから降りたオラクルがリオにそう謝罪すると「謝らないで、貴方の体は貧弱だからしょうが無いじゃない。」そう言った。

 「キヴォトスに外から人が入ってくる事は珍しいの。それに貴方のような存在は……珍しいとかそんな言葉では言い表せない。」だから連邦生徒会に連絡をして便宜を図る。そう言ってスタスタ歩くリオをオラクルが小走りで追いかける。

「それにしても、調べた時に驚いたが本当に『女子生徒』しか居ないんだなこの都市は。大人が居ないというのはどうにも歪んで見えるが……君も冷静に考えると学園の生徒会長と言うよりも理事長辺りに見えるな。」

「そう言えば自己紹介の時に詳しく説明をしていなかったわね。謝罪するわ。」

「別に気にしてない。この世界を理解する為の時間でそこら辺は分かった、理解できたとは言えないが。」

 リオは警戒心から自己紹介をおざなりにしたことを謝罪するも気にしてないと流される。

「それと、君はミレニアムを出た後は()()()()()()()()()()なのかな。」

「……まだ考えてない」

 リオがそう話を打ち切ると、ジト目でオラクルを見つめる。

「それにしても……」

 すれ違う生徒達が毎回オラクルの服装を二度見して居るのをみて、リオが苦言を呈する。

 

「一応私の替えの服は渡した筈なのだけど、何故最初の服を着ているのかしら?」

 

 明らかな不審者に咄嗟に銃に手が伸びる人も居る中、オラクルは口を尖らして言った。

「スタイルが違うんだよ。自分の胸部はスカスカだし、ズボンやスカートもすっぽ抜ける。身長が合うものをくれたのは助かるけど、流石に着られないな。」

 無言でリオは視線を外し、呟く。

「通販で貴女に合う服を買いましょうか。」

 

 

「失礼します。」リオはそう言って連邦生徒会の会長室の扉を開ける。

「オラクル、彼女が連邦生徒会会長。キヴォトスの頂点に立つ生徒で、別名超人と呼ばれる存在です。」

「初めまして、私はオラクル。不慮の事故で此処に飛ばされた人間だ。今はリオに世話になっている。」

 オラクルは彼女に挨拶をするが、返事が来ない。寧ろ無言で圧をかけているように感じられる。

「どうしましたか?」リオがそう問いかけると漸く硬直が解けたように彼女が動き挨拶を返す。

「……初めまして、オラクル。予め調月リオ氏から頂いた書類等で情報は確認済みです。キヴォトスに滞在することは許可しますが、自分の身は自分で守ること、それと迷惑をかけないで頂きたいです。」

「私はあくまで異邦人だからな。少なくとも同僚達に比べればそこら辺弁えているつもりだ。安心してくれ、滞在中にする事は精々出来る範囲での研究とデータの採取、それとリオが助けを求めた場合のサポート。それだけだ。」

 何処か冷ややかで敵対的な口調の会長に対し、オラクルは穏やかに対応した。

 

 

「こんな人間今まで現れなかった。不穏分子として注目しないと……場合によっては排除も選択肢にいれる必要も」

「帰り際に会長が何か言っていたような気がした。」

「気のせいよ。」

 そんなことを言いながら二人は手続きを終え、帰って行った。

 

 

 

「そう言えば君の所の他の役員には話をしておいた方が良くないかな?」

 ヘリコプターでの送迎中にオラクルがそう言うとリオの視線がそれる。

「……別に言う必要は無いわ。」

「そうかな?基本的にミレニアムは独裁的な組織では無いはずだ。普通なら手続きをするべきだがしない。となると私の存在、もしくは()()()()()()()()が問題なのだろうが……そう言えばあの都市、人が居ないうえに外に出るときはやたらと遠回りしていたな。」

 リオは無言を貫く。

「若いな」そう言いながらオラクルは並んで歩き続ける。

「言いたくないなら言わなくて良いが……居候させて貰っている分際だ。相談にはのろう。」

 

「……分かった。」

 

 

 

 

「要塞都市エリドゥ、それが貴女がワープしてきた場所よ。」

 帰宅した二人は、ご飯を食べながら話し始める。リオの目の前には割引シールが貼られた唐揚げ弁当、オラクルの前にはスパゲッティとサラダが置かれている。

「AMASと呼ばれる戦闘ドローンによって防衛され、中央には巨大な制御タワーが有る。この都市は『無名の司祭』と呼ばれるキヴォトスの危機に備えて作成されたもの。私が作れる限界までの防衛機構を備えている。」

「……これだけの都市をどうやって造った。協力者は?資金は?」

 話の腰を折らずに最低限の情報だけ聞くオラクルに感謝しつつ、リオは答えた。

「協力者は一人、もっともただのエージェントですが。資金は……横領しました。」

 オラクルは自分の口角が下がっているのを自覚しながら結論を言った。

「……つまりその危機とやらに対して先走って計画を立てた結果、周りとの協力が出来ず、資金は自分だけでは集めきれず横領に手を出した。だから相談など出来ないと……日の浅い隣人には話せるわけだ。」呆れた感情を混ぜつつふと彼女はリオの言動に違和感を覚える。「まさかその情報は不明瞭、もしくは非合法的な入手方法なのか?」

「察して頂戴。」

 その返答に呆れつつも取りあえずの方針をたてる。

「取りあえず横領分を稼ごうか。たまにはこんな遊びも悪くない。少しだけ、最高級の性能を持つコンピュータを貸してくれ。別に電子マネーを引っこ抜く訳では無いから安心してくれ。」

「遊び?それにコンピュータ?」

「あぁ、それと……」

 怪訝な顔をしつつも了承するリオに対してドクターは声色を変え、重苦しく言った。

「差し出がましい事だろうが、食事のバランスは考えた方が良い。せめてサプリもとりなさい。」

「別にこれで困ったことも無いから大丈夫よ。」

 その抜群なスタイルでそう言われるとオラクルは何も言えなかった。

 

 

 

 数日後、「取りあえず横領額の全体の30%程の金は稼がせて貰った。」と言う言葉を聞いてリオは椅子から転がり落ちた。

「何をしたの?」震える声でそう尋ねるリオに対し、事もなげにこう答える。

「この都市にはカイザーグループと言う企業連が存在する。大きな対抗馬が存在せず、利権を貪るだけの存在にはそれなりに後ろ暗い事が有るものだ。」

 そう言って借りてきたパソコンを見せると様々な悪事の情報が所狭しと並んでいる。

「まず、このパソコンを多少改造してスペックを上げる。もっともいつも自分が使っていた量子コンピュータには及ばないが……それでカイザーグループの情報を引っこ抜く。で、その後この情報を公開すると脅すことで取りあえず第一段階」

 リオはその言葉に汗をかくもオラクルは気づかないのか話を続ける。

「次にカイザーグループの情報セキュリティを破壊し、この都市のハッカー達に対して『今はカイザーグループのセキュリティが崩壊している』と連絡をする。するとカイザーはどうすると思う?」

「……一時的にオフラインにするか、電源ごと一時的に切ってその間に直そうとする。」

「そう、普通ならそうだ。」

 オラクルは興が乗ったのか、まるで授業をするように話を続ける。

「だが、そこに一つのメッセージが届く。『最新式のセキュリティは如何ですか?』と。勿論カイザーは怪しんで解析しようとする。だがそのセキュリティからはワームもウィルスもトロイの木馬も発見出来ない。『よし買おう』そう彼等は決めた。そしてそのセキュリティを作り、売り込んだのは自分だ。」

「……酷いマッチポンプね。」

「だが合理的だろう?それにカイザーグループのセキュリティは脆く、自分の心情的にも痛まないからちょうど良かったんだ。それに犯罪をしているのはお互い様、身から出たサビだ。この作戦は探られて痛い腹は無い善人には効果がないからな。」

 リオが顔を顰める中、オラクルは何てこと無いように話す。

「あぁ、安心してくれ。彼等が見つけられないだけであのソフトにはトロイの木馬は数多く存在している。私の技術をばら撒く様な事はし無いさ。」

 何処かずれたオラクルの発言に対し、溜息を付きつつリオ一つオラクルに頼んだ。

「……貴女が単独で出来るもっとも強固な暗号化プロセスとセキュリティをこの都市に張り巡らせて欲しい。あと『無名の司祭』の情報は……伏せる。そしたら彼女達と話す機会を提供する。ただしその時は『ドクター』と呼ばせて貰う。良いわね?」

「……?分かった。」

 

 

 

 

「『平文変移関数』だ、自分達の技術なら楽に解析できるが、この都市のレベルの技術なら酷く苦労するだろう。ついでに連邦生徒会にも売り込んで横領額を全て回収出来たぞ。」

 そう言ってあっさりと仕事を終わらせたオラクルにリオは最早驚かなかった。(薄々察していましたが……彼女の頭脳は次元が違う、恐らくヒマリよりも……)

「ねえ、貴女に親しい友人や同僚はいたの?」

 珍しい質問にオラクルは多少驚きつつ答える。

「ああ、居たよ。同僚としては異なる部署だったけど、『ラプラス』や『シュレディンガー』、『ロックスミス』に『シュナイダー』……そして自分と研究をしていた『プリースティス』が居たよ。」

 詳しい話を聞かせて欲しいと頼み込むリオに困った顔でオラクルは話を濁す。

「『ラプラス』と『シュレディンガー』はもう随分と会ってない。『ロックスミス』と『シュナイダー』は今はもう眠りについている。実質今共に過ごしているのはプリースティスだけだ。」

「自分達の仕事は宇宙の終焉を超えることだ。大勢の天才達が不可能に挑戦している。」

 話し続けるオラクルを抑え、リオは「役割じゃ無くてどんな人かを聞きたいの」と言う。

「……プリースティスについてだが、意志が強く、美しい、天才的な女性だ。ただ多少思い込みが強く、傲慢で、自分が認めたもの以外を見下す傾向が有る……私は彼女から認められているようだけどね。本当はもっと言いたい事はたくさんあるんだが……とにかく魅力的な人だよ。」

 

 

 

 

「これは一体何なんですか!?」「説明して頂けますよね?」「もう少し待って頂戴。もう一つ質問されるであろう事が増える事を考えると、今このタイミングで質問に答えるのは非合理的なの。」

 下から怒声が聞こえる。リオが連れてきた事を考えると恐らくセミナーの人員なのだろう。だが、話ではリオ以外に三人居ると聞いていたが二人分しか声が聞こえない。そんな風に考えていると、自分が居る部屋のドアが開く。

「連れてきたわ、『ドクター』」

 立ち上がり二人の少女を見つめる。

(紫がかった髪で活発そうな方が早瀬ユウカ、白髪で大人しそうな方が生塩ノアだったか。)インプットした情報を片隅に入れながら口を開く。

「初めまして、私は『ドクター』。都市の外からやって来た異邦人だ。ひとまず落ち着いた所で話そう。」

 そう言って二人をいつもリオと共に食事を取っている場所に案内する。

 

 

 

「初めまして、私は早瀬ユウカ。セミナーの会計をしています。」

「私は生塩ノア、ユウカちゃんと同じくセミナーに所属していて書記をしています。」

 二人が挨拶したのを確認してリオが話し始める。

「まずこの都市についてだけど……ある匿名のメッセージが来たの。そこには『キヴォトスが滅びる』と書いてあった。詳しい情報は伏せさせて。その情報自体が非合法だし、その情報を精査するために幾つか危ない橋を渡ったから……とにかくそのためにこの都市を造った。自分以外にはこの都市の事はトキと彼女しか知らないわ。」

「確かに私は詳しい情報を知っている、だがそれは君達を蔑ろにしていた訳では無い。自分はなし崩し且つ不可抗力だった。調月会長の気持ちも多少は理解してあげて欲しい。」

 彼女の言い方だと色々と不味いと考え、咄嗟にフォローをする。

「そうなんですか?」

 生塩ノアが疑わしげな目を向けるとリオは「……そうよ」と返事をした。

「……まぁ良いです。それでこの都市を造るための資金はどうしたんですか?」

「殆どは自分の資産運用と特許を使って用意したけど、一部は彼女に援助して貰った。」

 早瀬ユウカの問いに、リオがそう答えるとユウカの目がこちらに向く。何故か敵意を感じるのは気のせいだろうか?

「そもそも貴女は何故そんなに会長と親しげなんですか?」

「いや、恩人だからね。距離感が近いというなら気を付け「違います!」?」

 彼女の質問に答えようとしたら遮られた。

「違うとは何が?」訝しげに問うと直ぐさま答えが返ってきた。

「どうしてこんなに会長が親しげなんですか!?弱みでも握ったんですか!?今までで何もかも秘密主義で友達もおらず、同等の頭脳があると言われているヒマリ先輩とは犬猿の仲。なのに何でこんなに円滑にコミュニケーションがとれるんですか!?」

「ユウカちゃん、少し落ち着いて。そもそも多分ドクターさんは会長の他の人とのコミュニケーションを見てないと考えられます。」

 生塩ノアが止めに入ったものの、あんまりにもな言葉に思わずリオの方に顔を向ける。顔を逸らされる。

「気にしてないわ。」そう彼女は言うが残念ながらそれを信じる人はここには誰も居ない。

 

 

 この日、早瀬ユウカはイライラしていた。

 朝早くから会長に呼び出され、いざ集合場所に到着したらそこから暫く歩くと言われ、様々な通路を移動してたどり着いたのは全く情報に無い無人化された都市、思わず会長に尋ねると『造った。』と言われ、問い詰めても先延ばし。(もう少し待って頂戴?いい加減にして!)そろそろ堪忍袋の緒が切れそうになっていた。

「ユウカちゃん、落ち着いて。」

 ノアがそう言ってくれてなければ恐らくもっと早い段階で爆発していただろう。そんなこんなで目的の場所に着いたようだ。

「この中に『協力者』が居る。なし崩しだけど……」

 何処か歯切れが悪く彼女が言いながら扉を開ける。

「連れてきたわ、『ドクター』」

 リオが呼びかけた相手は椅子から立ち上がり、こちらを向いた。

 灰色の髪と灰色の目をした痩身の人だった。こちらを見つめる目は知性を感じさせ、同時に何処か不気味な印象を抱く。中性的な整った顔立ちだった。服装がリオ会長に似ているのは偶然か、或いは買ってもらったか。

(そんなことより……)目線を上にずらすとそこには()()()()()()()()()()()()

「初めまして、私は『ドクター』。()()()()()()()()()()()異邦人だ。ひとまず落ち着いた所で話そう。」

 

 

「どうしてこんなに会長が親しげなんですか!?弱みでも握ったんですか!?今までで何もかも秘密主義で友達もおらず、同等の頭脳があると言われているヒマリ先輩とは犬猿の仲。なのに何でこんなに円滑にコミュニケーションがとれるんですか!?」

 話を聞き続け遂に疑念が爆発した。それは数ヶ月とはいえ、同じセミナーに所属している自分よりも距離が近い彼女への嫉妬心があったかもしれない。様々な感情が混ざった声をぶつけると彼女から訝しげに回答が返ってきた。

 咄嗟に会長の方に向いた彼女がぎこちなくこちらに振り返る。

「いや、彼女の思考は分かりやすく、明瞭で、話を展開しやすい。寧ろコミュニケーションをとるならやりやすい方じゃないか?」

 その言葉に動揺する。(この人、会長のデリカシーの無さや合理性による他者との軋轢を気にしてない!?)そんな風に思っているとふと彼女の目つきが多少穏やかになった気がした。

「多分彼女とコミュニケーションをとりやすいと思っている原因は部外者だからだよ。そうだよね?」

「違うわ、単純に貴女のコミュニケーション能力が秀でていて、私と思考回路が近いだけ。」

「フフッ。」

 穏やかにフォローしたはずなのに、フォロー先から台無しにされて少ししょぼくれた顔をする彼女を見て多少警戒感を解くべきかと感じた。とりあえずリオ会長は後でもう一度問い詰めるとして、彼女の事を聞きたいと思った。

「『ドクター』と会長から呼ばれていましたが、貴女は何を研究しているのですか?」

 先程は激発してしまったが、相手は『大人』であり、礼儀正しくしようと言葉遣いを変える。

「リオにも聞かれたな……専攻は神経学だけど大抵の研究分野についての見識はプロフェッショナルの同僚よりは少ないとは言え、持っているね。後、言語学については一人を除いてもっとも詳しいと自負している。」

 その言葉に顔を顰める。

「……いくらなんでも信じられません。やはりペテン師ではありませんか?」

「その発言はリオ会長も遠回しに馬鹿にしていると理解した方がよいね。そこら辺のペテン師如きに騙される存在だと言っている様なものだ。」

 彼女から少し毒舌が帰ってきた後、私は少し口を噤み、続けてこう言った。

「ならばミレニアムの入学試験、そして一部の解決された元未解決問題を解いて貰います。」

 

 

 

 

「ごめんなさい。ドクターさん。先程はユウカちゃんが失礼しました。」

 後ろを振り返ると生塩ノアが立っていた。

「構わない、責任感の有るよい友達じゃ無いか。」

 多少申し訳なさを含んだ顔を見るに本当にただ謝罪に来ただけなのだろう。

「ユウカちゃんはセミナーの会計で、問題児の対応など色々な実務レベルの事象を全て対応していて……トラブル続きで多少気が立って居るんです。そこに新たな問題事が飛び込んできたと思って……」

「気にしないでくれ」

 謝罪を続けようとする彼女を遮り気にしてないと告げると、彼女は最後に忠告してきた。

「元未解決問題は気にしなくて良いですが、入学試験は出来ればある程度点を取って欲しいです。」

「教科の数は?」

 そう尋ねると「5教科の予定です。」

 

 

 

 次の日、試験が始まった。

(リオからはそこまで気にしなくて良い。暫くすればあの子も気が付くと言われたが)

 タブレットに附属したペンを握りしめる。

(そこまで言われて引き下がるのは無しだな。)

 入学試験を解きながら(後でユウカに未解決問題と解決された未解決問題の情報を貰おう。)と決めた。

 

 

「国語、現代文と古文合わせて190点、英語175点、数学200点、物理100点、科学98点、元未解決問題証明成功……」

 採点結果を見たユウカは震えていた。

「リオ会長……答は勿論」「渡してないわよ。」

 念のため聞いたが当たり前の様に言われて頭痛がする。

「……彼女、何か言っていました?」

 そう震える声で聞くと、思い出しながら会長は教えてくれた。

「数学と物理は『用語だけ既に勉強していたから出来た』、化学は『予め勉強していなかったとは言え、用語以外は勉強し無くても出来ると思って居たが、幾つか知らないものがあってそこでミスをした。』、現代文と古文は『古文に裂ける勉強時間が少なく用語が完全には覚えきれなかった。』、英語は『流石に一から覚えるには時間が足りなかった。』と言われた。」

 最早疑う余地は無い。彼女が天才で有ることは。

 

 

 

 

 

「とりあえずユウカの誤解は解けた……何をしているの?」

 自分が借りているパソコンで実験していると後ろの扉が開き、リオが画面を覗き込んでくる。エラーだらけでフリーズした画面を見て目を丸くした。

「いや、持ち込んで居たデバイスの情報をコピーして、パソコンで実験をしているんだが……流石に性能が低すぎる。何かしらやるから報酬としてスパコンを貸して欲しい。」

いや、既に横領額の回収で山ほど恩はあるけど……都合が良いか。分かった。せっかくだし前この都市に張り巡らせて貰ったキュリティプログラムをミレニアム学園にも張り巡らせて欲しい。ユウカ達には事情を説明して協力して貰うわ。」

 

 

 

「会長……いきなりそんなことを言われましても。」

 目の前には無表情のノア、隣には青筋を立てるユウカ、そしてユウカに怯えている黒崎コユキの姿が見える。

「簡単にそんなシステム移行は出来ないこと知ってますよね?費用だってバカにならないんですよ?それでも言うだけの価値はあるんですか!?」

 そう言われ、内心しょぼくれていると隣からオラクルが問いかける。

「……今からこの暗号セキュリティを突破して欲しい。ただし15秒間の間でだ。」

 そう言うとユウカは半眼になって「不可能ですよ?暗号解読の仕組み分かりますか?結局総当たりしか無いんですから今あるスーパーコンピュータでも現存の暗号を解読するのにある程度時間がかかるのですから。」と言う。

 だからこそドクターの『平文変移関数』は()()とリオは理解している。何しろキヴォトスのハッキング等で使われる暗号解読のプログラムは総当たり。短時間で解くには試行回数が()()()()()()。彼女の元いた場所では特定のアルゴリズムを使いながらキヴォトスのコンピュータよりも数段上のコンピュータを使って解読しているらしい。

 だが……キヴォトスには神秘の塊の様な存在が居る。

「彼女は?」

 ドクターがコユキについて尋ねる。

「彼女は黒崎コユキ、セミナーに所属しているけど度々問題を引き起こすトラブルメーカーよ。この前も反省質に閉じ込められていた。」

 そう答えるとオラクルは何故その様な人間がセミナーに所属しているのかを疑問に思った様だ。

「彼女が何故セミナーに所属しているのか気になっている様ね……多分見せた方が早いわね。」

 そう言いながら現在ミレニアムで使われる暗号を解読させる。

「……有り得ない。」

 ものの数秒で暗号が解読された事象について、絞り出す様な声でそう漏らす。

「このセキュリティを15秒以内で突破出来るか?」

 直ぐさま持ってきた『平文変移関数』を解かせようとする。

「にはは……なんか可笑しいけど出来た!」

 確率を超越した速度であっさりと解読された事象を見てドクターはポツリと呟いた

 

「有り得ない、そして()()()()()

 とにかくユウカ達からはほら見ろと言う視線で「とにかく無理ですよ。」と言われリオと二人で帰ることにした。

 

 

 

 

「前は彼女は居なかったが……あの()()()を加味してエリドゥには連れてこなかったと言うことか。」

 そう言いながら中央の制御タワーに帰り着く。

「……彼女なら間違いなく()()して()()()()()()()()()()に出来ないか考えるだろうな。」

「彼女はただの生徒よ。そんなことはさせられないわ。」

「危険人物として実質的にはセミナーで管理しているのにか?君の線引きがイマイチ分からないな……それにしても合理性を重んじる君にしては随分と倫理的で優しいな。」

 多少リオが動揺した様に思えるが気にせず前に進みながら言った。

「君が本当にキヴォトスの危機に立ち向かいたいなら、いずれその優しさは甘さとなって身を滅ぼすだろう。」




補足
平文変移関数……元ネタ『パズルパレス』。粗削りだが名作なので是非読んで欲しい。
スターゲート……オラクル達が利用していたワープ装置。アークナイツではサーミローグで取り扱われている。
ラプラス……オリキャラ。流石に昔はオラクルとプリースティス以外にも研究者は居ただろうと考え追加。元ネタは『ラプラスの魔女』
シュレディンガー……オリキャラ。ラプラスと同じ考えで生み出された。元ネタは『シュレディンガーの猫』
ロックスミス……オリキャラ。上と同じ。元ネタはAC6。
シュナイダー……オリキャラ。上と同じ。元ネタはAC6。
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