ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の予言者   作:バトクロス

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この調子だと完結は30〜50話位になりそうです。何でそんなにプロット通りにいかないのでしょう。


幸運なデッドロック

 次の日、アリスの事について、いきなりトラブルが発生した。

「先生、アリスを生徒としてゲーム開発部に迎え入れたいんだ。」

 

「どうやって?セミナーに交渉するのかい?」

 

「違うよ、ヴェリタスに生徒の在籍データを弄って貰ったんだ!」

 昨日の今日で頭が痛い。モモイはアリスをゲーム開発部の一員として迎え入れようと考えたようだ。

 

(リオは確かに『今回のゲーム開発部に関しては今後監視は継続しつつも、何かしら致命的な破局が訪れかねないと判断するまで直接的な干渉は取り下げる。』とは言っていたけど……これは多分判断されちゃうよなぁ)

 

「……それは事後報告では?」

 

「はい。先生ごめんなさい、お姉ちゃんを止めれなくて。」

 

「そう言うミドリも賛成したじゃん!」

 

「いや、最終的にはそうだけど報連相は大切じゃん。」

 ポケットからスマホを取り出しながら彼女達の言い争いを遮る。

 

「ごめん、少し電話させて。」

 

「?わかった。」

 

リオに情報を共有すると、予想通り彼女は待ったをかけた。

 

『……天童アリスを生徒の在籍データを改竄して生徒として迎え入れる?確かに情報共有に関してはきちんとしてくれた事はありがたいけど、それを許せるとでも思うの?』

 

「許されるとは思ってない。だがこれは受け入れるべきだ。無理やり引き離したら、モモイ達の行動がコントロール出来なくなる。」

 

『そこを何とかするのが先生でしょう?先生は()()()()()()()()()のよ。』

 

「それを言われると耳が痛いね……だけど仮に受け入れなかった場合、天童アリスの処遇や管理をどうするつもりなんだい?」

 

『勿論強制的に押収し、検査、管理をセミナーが行う。安心して、そこまで酷いことはしないし、全て終わったらゲーム開発部に対して貸し出す事も認めるつもりよ。』

 

「全く安心できないね……自分が生徒に対してその様な事を行うのを許すとでも?」

 

『許す許さないではなくて、そもそもあれはアンドロイドであって人では無いし、貴方の言う生徒に対する考え方、もっと言えば()()()()()()()()()()()()()()。』

 彼女のその発言は許されるべき物では無い。そもそもカイザーとかのロボット人間はどうなのか、それらを踏まえて反論しようとすると。

 

『リオ、その考え方は個人的に許容されるべきではないね。』

 

 電話の先からオラクルの声が聞こえてきた。思わぬ助け舟に面食らう、それはリオも同じ様だった。

 

『オラクル、どういう意味?』

 電話口からリオの怪訝な声が聞こえてくる。よく考えると昨日オラクルの考え方や人柄は少ししか知る事ができなかった。彼女がどの様な考えを持つのか気になる。

 

『いや、単純に自分も完全に()()()()()()()()()()()それを人並みの愛情と尊重を持って育て上げたから、それを否定されると悲しいと言うだけ。』

 意味が分からない言葉が聞こえた。恐らくリオに近づいていたのだろう。はっきりと言葉が聞こえた。

 

「え?()()()()()()

 

『そう言えば言っていなかったわね。オラクルは私とは比べ物にならない程の研究者よ。もっともその話は私も初めてだけど……』

 リオはそう言って話を流す。

 

『先生、貴方とは今度個人的に話そう。確かに私の知り合いには、君と同じ……いや君よりも冷徹な、作られた知的生命体の事をペットとしか思って居ない人も居る。だけど私個人としてはその考え方は良くないと考えている。』

 

『そう……けど現時点のキヴォトスにはロボット人間は居るけど彼女の様な存在は居ないわ。暫定としてやはり人権と言うものは……』

 

「リオ、頼む。今回の連絡は諍いの為ではなく妥協点を探す為だ。一度そこからは距離を置いて欲しい。」

 これはチャンスと思い、勢いに任せて話をずらす。数秒の沈黙の後少し気落ちしたリオの声が聞こえてくる。

 

『……分かったわ。彼女の扱いについては一度流す。それで妥協点としてはどう考えているのかしら。』

 

「私としてはまずアリスがアンドロイドである事をセミナーとヴェリタスに共有する。次にアリスに許可を取った上で身体を調べさせて貰う。私個人としては彼女の意志を尊重した上で行う事に関しては特に文句は言わない。ただヴェリタスと共同で行って欲しい。」

 彼女だけだと過激な事をする可能性がある為ここは譲れない条件だ。

 

『……解析の失敗や事故については誰が責任を取るのかしら?』

 

「トラブルの内容次第だけど、出来る限り公平に定めるし、ある程度は自分も背負うよ。

 

『……あやふやね。それでデータの改竄と増えた人員の言い訳は?』

 

「まず彼女の事は出来る限り秘匿する。そして知るものについてだけど……ゲーム開発部の人員と言う点としては正体不明のアンドロイドがゲーム開発部に懐いてしまった為、彼女の観察とコントロールの為と言った名目。それに付随して暫定的なものとして学籍を提供し、外部に対してのカモフラージュを行うと言うのはどうだろうか。」

 

『……それだと時間が経てば経つほど隠すのが難しくなるわ。何しろあのゲーム開発部だもの。直ぐにトラブルを起こすでしょう。』

 

「済まないが、此方としても時間が限られているんだ。リオ、一先ずこれで納得して欲しいな。」

 

『わかった。ただしまた後で詰めるから。』

 

 

 

 

「先生、何を話していたの?」

 

「いや、ちょっとアリスの学籍についてね。」

 電話を終え、一息ついてモモイ達に向き合う。

 

「先に言っておくとこれ以上の無茶はしないで欲しい。昨夜はリオに散々絞られたんだ。」

 無駄だし聞き入れられると思ってないが一応釘を刺す。

 

「安心して!これで部員足りるはずだから廃部回避の要件は満たしているはずだよ!」

 

「本当にご迷惑をおかけしました。ありがとうございます。」

 モモイは元気に、ミドリは多少申し訳なさそうに感謝を伝えてくる。原因は彼女たちであるとはいえ、情報は非対象であることを考えると、彼女たちを責める気にはならない。それにリオとの緊張感のある会話とは異なる空気は自分の意識を緩めてくれる。

 しかしそんな中でも頭を痛める要素がある。

 

「それで……なんでアリスはこんな口調になっているのかな?1日でここまで変化が有るとはね。」

 目の前には先程リオと話した件の生徒、天童アリスが居る。

 

「えっと、昨日余りにも喋り方がロボットぽくて話し方を教えようと思ったの!」

 

「それでゲームをさせてみたらハマったようで……私達が寝たあともし続けて朝になったらこんな口調になっていました。」

 思わず天を仰ぐ。余りにも素早く彼女の人格が形成されてしまったようだ。

 

「えっと、君がアリスだよね?」

 思わず当たり前の事を聞いてしまう。

 彼女は少し首を傾げて笑顔で頷く。

 

「はい!アリスはアリスです!」

 

「……そうか。よろしくねアリス」

 搭載された会話プログラムは高性能なようだが、やはり時間が足りてない。幾ら最初から言語機能が搭載されていても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。自分が依頼をこなし、ミレニアムから出るまでにはきちんとした会話が出来るようになって欲しい。

 

 そんな事を考えていると

「さて、服装、学生証、そして話し方。この辺は全て解決出来たから……後は、武器だね。よし、アリス、ついでに先生、せっかくだし案内するよ。」

 

「案内?」

 

「私達の学校、ミレニアムを!」

 流石にそれはストップだ。

 

 

 流石にこれ以上リオとのトラブルを起こしたく無いと言う心情を建前で隠しながら、エンジニア部に行こうとするモモイ達を必死で説得し、自分が後程ある程度のものを提供すると約束した上で、一先ず市販の護身用のアサルトライフルを与えた。

 

 

 

 

 

「では監査を始めます。」

 ユウカが宣言するなか、ゲーム開発部は4人揃って集まっていた。

 先程ロッカーのなかから出てきた、花岡ユズには正直驚いたがそれだけだ。どうやら最初私が多少警戒されていたらしい。ただモモイ達とのコミュニケーションを観察して恐れる人間では無いと判断したようだ。

 もう少し親交を深めたかったがその時間は無かった。

 

「……以上で天童アリスさんの入部を確認し、ゲーム開発部の部員の人数が規定のラインに達した事を認めます。」

 幾つかの質問の後、ユウカの監査は手際よく、予想以上に素早く終わった。恐らくリオが予め先程の話をユウカに伝えたのだろう。

 

 

 

だが、話はそれで終わらなかった。

 

 

 

 どうやら直近に制度が変更されたらしく、今は部活の規定人数を満たすだけでは存続を認められず、同時に部としての成果を証明しないといけないようだ。

 

 制度変更直後のため猶予期間はあれど、その期間は月末まで。今月中に結果を出せなければ、ゲーム開発部はたとえ規定の人数を満たしていたとしても廃部になるのだろう。

 

「もう一度廃墟に行こう。」

 モモイ達がその結論に至るまでの時間は短かった。

 自分も異論は無い。

 だが、その前にすべき事が有る。

『先生、お時間頂けますか?』

 そのメッセージに『わかった』と返し、モモイ達に向き直った。

 

「ごめん、少しだけ時間をくれないか?ユウカから呼び出しを受けちゃって……」

 

「タイミング悪いなぁ、後回し「分かりました。ですがなるべく早く戻って来てくださいね。」ちょっとミドリ!?」

 モモイは反対の様だったが、ミドリの執り成しもあって、私は部室から出て、相手が指定した待ち合わせ場所に向かった。

 

 

 

「先生、本当に申し訳有りません。」

 

「いや、待って。何でいきなり謝るの!?」

 待ち合わせ場所につくと、直ぐ様ユウカから謝罪の言葉が飛んできた。顔を上げたユウカの表情は先ほどは隠していた疲労が滲んでいた。

 

「私は先生がリオ会長とゲーム開発部の何方の機嫌も伺いながら、板挟みの状況で何とか依頼をこなそうとしているのは知っていますから……あの子達の相手は大変ですよね?」

 呼ばれた理由が何となく把握出来た。ただの謝罪以外にも何かしら有るだろうが対してネガティブな事では無いだろう。

 

(それにしても……)

 から交流が有ったが、シャーレに来ていた時と変わらず随分と責任感が強い様だ。

 ユウカを安心させる様に笑顔を浮かべながらその懸念を払拭しようと

「気にしなくて良いよ。生徒はそんなものだと思っているし、あの元気さは良いものだ。もっとも多少無鉄砲だとは思うが……個人的には寧ろリオの方が辛いかな。妥協案を提示するのも大変だよ。」

 そう言うと何故かユウカの顔に笑みが浮かぶ、

 

「会長は……()()()()()()()()()()()のですね。」

 当たり前の事を何故感慨深く言葉にしている?そんな思考が表情に出ていたのだろう。

 

「あの人は天才です。確かに全知の学位を持つヒマリ先輩……よりは学業については劣るかも知れません。しかし会長はヒマリ先輩とほぼ同等の能力を持ちながら学業以外にも様々な事に力を入れてきました。」

 彼女は過去を振り返っているのか少し目線を泳がせた。自分にも覚えがある。オラクルと初めて会ったエリドゥ、それも彼女が作ったものだった筈だ。

 

「リオ会長は昔は恐れられ、遠ざけられる存在でした。あの人の理論武装は合理的かつ強力で、相手の立場を考えず、反対する人々を抑えつけるようなものでした。そんな会長が妥協案を提示させ、受け入れる。」

 ユウカは目線を戻し、

 

「成長したと思いませんか?」

 こう締めくくった。

 

 

 

 

「それで……呼び出した要件は謝罪だけかな?」

 

「あ、いえ!もう一つ有ります!」

 

 ユウカは少し慌てた様子で端末を取り出し、数回操作した後、こちらに画面を向ける。

 

「これは……?」

 

「先ほどの件——天童アリスちゃんについてです。」

 

 画面には簡易的ではあるが、複数のログと注意書きが並んでいた。

 

「正式なものではありませんが、セミナー内部での『暫定扱い』の案です。」

 

 指で一つの項目を示す。

 

「このまま何も対処しなかった場合、リオ会長の思惑通り、アリスちゃんは()()()()()として押収される可能性が高いです。」

 

「……やっぱり、そうなるか。」

 

 予想はしていたが、明文化されると重みが違う。

 

「ですが、先程先生が会長に提示した条件——」

 

 ユウカは一瞬だけこちらを見る。

 

()()()()()()()()()()という一点。そこに重みを置いて先生が手を打てば、この分類は変更できます。」

 

「つまり……?」

 

「言葉を選ばずに言えば、()()()()に切り替えられます。」

 

 少しだけ声が落ちる。

 

「ただしその場合、責任の所在が問題になります。」

 

「……こちらに来る、か。」

 

「はい。」

 

 迷いなく頷く。

 

「本来であれば、ミレニアムの生徒が背負うリスクはある程度はミレニアム、もっと言うならセミナーか会長が背負うべきものです。」

 

 だが、と続ける。

 

「今回に限っては……」

 

 一瞬だけ言葉を止め、視線を落とす。

 

「先生が間に入っている、いや寧ろ発端である事を考えると、シャーレに全責任が有ります。そして発生したトラブルについてはいち早く公表すると。」

 

「……リオはアリスをものではなく人として扱う事を逆手に取って、ゲーム開発部に所属していると言う名目を利用してシャーレに全責任を押し付け、全ての行動にリスクを付与し、私の行動を縛るつもりか。」

 

「今までの話は会長からの伝言の意図を、()()()()()()()()()()()()()()()()。会長の意図が完全に理解できている訳では有りませんから。」

 

 重苦しい沈黙が満ちる。だが意外にもユウカの顔は、責めているものではなかった。

 

「……だから謝ったのかい?責任を押しつけることになるから。」

 

「それもあります。」

 

 そして、声を潜めて続ける。

 

「ですが一番の理由は……無責任だとは分かっていますが、それでも先生に頑張って貰いたいと思ったからです。」

 

 

 

 私は思わず声を失った。

 

 

 

「……先に言っておきますが、私は先生の判断が間違っているとは思っていません。」

 その沈黙をユウカの一切の迷いのない声音が突き破る。

 

「……ユウカ?」

 

「会長も、正しいです。でもそれだけでは足りない場面もあります。と言うよりも会長の正しさはデータ上のものです。」

 

 その目は真っ直ぐだった。

 

「私は監査の時予め会長から天童アリスがアンドロイドだと知っていました。ですが彼女と会い、話をし、私は彼女が他の生徒と同様護られるべき存在だと感じました。」

 セミナーとしては甘いですよね……と彼女は呟くと頭を振ってこう締め括った。

 

「だから、私は今回……()()()()()()()()()()()()()()()()と思っています。」

 

 

 

 

 そこまで言い終わると空気が、少しだけ変わる。

 

「これは公式な立場ではありません。セミナーとしてではなく、あくまで私個人の判断です。」

 彼女はそう言って苦笑する。

 

「怒られるかもしれませんけどね。」

 

「……それでも?」

 

「はい。それにモモイ達の事もなんだかんだ気にかけているんですよ私。」

 

「だから——」

 

 ユウカは私に端末を差し出す。

 

「必要なデータや調整はこちらで引き受けます。後リオ会長の知る情報の横流しも。」

 

「その代わり。」

 

 ほんの少しだけ強くなる声。

 

「……最後まで、諦めず、責任を放り出さないでください。」

 

「分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェリタスから提供された情報をもとに、再びゲーム開発部、そして護衛についたトキと共に廃墟を訪れた。

 だが状況は先ほどとは異なっていた。

 

「先生、いくら何でも敵が多すぎます!」

 ミドリの叫び通り、戦闘は激化の一途をたどっていた。

 

(こんなことになるのなら、ゲーム開発部がエンジニア部に行こうとするのを止めるべきではなかったか)

 後悔先に立たず、じりじりと疲労がたまる中、

 

「これ以上の戦闘はリスクの許容値を超えています。一度撤退するべきかと。」

「このままではじり貧だよ!増援がやってくる前に無理やりにでもとっぱしようよ!」

 トキとモモイが同時に意見を言った。真っ二つに割れた意見だったがさらにミドリがトキの意見に、ユズがモモイの意見に賛同した。多数決で考えるのならば硬直状態。おのずと目線は私とアリスに向けられた。

 

「私はみんなの意見に任せるよ。」

 そういうと目線がアリスに集中する。

 

「アリスは前に進むべきだと思います」

 

「でも、先生が危険に晒されたら!」

 

「大丈夫です。アリスが先生を守ります。」

 方針が決まったようだ。

 

「君たちを信じる。行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 幸い強硬策はうまくいき、工場に侵入することが出来た。

 

「ねえねえ、私達ってもしかして実はすごい強いんじゃない?C&Cとか、他の学校の戦闘集団と比べても遜色ない位には!」

 

「それはないです。ですが実際私も驚いています。私から見ても動きが良い。」

 

「きっと先生のお陰ですね。」

 

「わたしも、そう思う……先生が居ると、安心感が全然違う……。」

 そう口々に達成感と称賛の言葉を口にするも、

 

「でも残弾数が心許ないよね。」

 そう突っ込むと無言で首肯する。

 

「じゃあ皆、出来るだけ戦闘は避けていこう。」

 そう言って虱潰しに調べようとすると。

 

「あ……ここは……?」

 アリスが何かに反応した。

 

「アリス、どうしたの?」

 直ぐにモモイが気が付き、戻ってくる。

 

「分かりません……ですが、どこか見慣れた景色です。此方の方に行かないといけません。」

 

「えっ?」

 モモイの困惑を他所に、アリスは歩き出した。

 

「アリスの記憶にはありませんが……まるで『セーブデータ』を持っているみたいです。この身体が反応しています。」

 歩みを止めない。

 

「例えるなら、そう、チュートリアルや説明が無くても進められるような……或いはまるで、何度もプレイした事のあるゲームを遊んでいるかのような……」

 独白は続く。

 

 

 

 

 

 そしてアリスを追いかけていた私達は、電源が着いた1台のコンピューターを発見した。

 

 

 

 

 

 

調月リオの音声記録その3

『リオ、特定時間内のスパコンのアクセス権を君に返す。』

『……まだ持っていても良いのよ?』

『いや、残念ながら私の研究について、あれで出来ることはもう無いと判断した。』

『分かったわ……技術的に何れ停滞が起こる可能性は考えていたけど、随分と早く終わったわね。』

『いや、他にもこの都市の事を隙間時間に調べて居たからね。決して最短効率では無いよ。』

『そう……ねぇ、オラクル?』

『どうしたんだい?』

『研究者と言うものは未知なる資源、もしくは謎。それらに対しては何かしら思う所が有ると私は考えていた。だけど貴女はそれらに余り興味を示して居ないわ。調べた痕跡は残っているのに。』

『何が言いたいんだい?』

『この都市の謎は貴女にとって魅力的ではないのかしら?』

『成る程……そうだな、デカグラマトンと言うものに当初は少し興味が湧いた。最初はオーパーツ、もしくはそれの改造品だと思ったからね。』

『ヒマリが対応している存在ね。まさかヒマリの立場を考慮して動かなかったと言うこと?』

『それもある。だがもっと言うと調べた段階で大したものではないと理解できてしまったからだ。』

『……一応貴女が調べられたデータは上辺のものよ。』

『まぁそれは間違いない。だが、前売りつけたセキュリティソフトからカイザーグループの基幹システムに侵入した際、幾つかのデカグラマトンに関する機密データを入手出来た。ダミーの可能性は薄く、比較的精度の高い情報だと考えられるよ。』

『そう……その情報は特異現象操作部に流せる?』

『……別に良いが、私から渡すと角が立ちそうなんだが。』

『そこは私に任せて。』

『分かった。』

 

『これがデータの入ったUSBだ。』

『ありがとう。因みに貴女が興味を失ったその正体は?』

『ん?あー、極めて優秀で自己増殖性を持つAIだった。』

『それ以上の事は?』

『その中に入っているデータにある程度の事は書いてあるが、本質的には分からない事も多い。ただ、カイザーグループはデカグラマトンはオーパーツとは関係無い突然変異体だと考えているようだ。彼等のデータは確実な事実とそれに基づく推測で出来ているからここは断言出来ないが……』

『因みに何故興味を失ったの?』

『ん?再現性が無い上に、我々の技術力から考えるとそこまで驚く事では無いからね。』

『……取り敢えずヒマリには渡す事にするわ。』

『角が立たないよう頼むよ。それと、もう一つ興味が有った謎は有るよ。』

『何かしら。』

『君達が持つ神秘と言う謎の力だ。正直興味は有る。だが、これについては研究しようとするとどうしても倫理的な問題が横たわっている。君は合理性を第一に考えているが、同時に人並み程度の倫理観は持っている。私は君からこういう点では、嫌悪感を持たれたくないからね。』




先生
対象は現在、複数の立場間における意思決定を強いられている。
理想と現実、個人判断と組織的責任の間で揺らぎが継続。
最適解ではなく、現実的妥協点を選択する傾向が顕著。
──当該環境下において機能は維持されている。
外部個体(ユウカ)からの支援に対し、肯定的反応が確認された。

ゲーム開発部
対象群は、自己同一性の維持を優先。
外部協力者(先生)への感謝は確認されるが、意思決定において自己優先性の低い状況に対し、一部構成員に軽度の不満が発生。
――集団としての行動方針に変化なし。

調月リオ
対象は従来と比較し、柔軟な意思決定を選択する頻度が増加。
ただし観測上、合理性偏重および高圧的傾向は依然維持されている。
当該性質について自己認識はあるが、修正意思は確認されていない。
――判断基準は安定状態を維持。

オラクル
対象は本件における主要な介入をほぼ終了。
現在は積極的干渉から離脱し、経過観測段階へ移行している可能性が高い。
当該存在にとって、キヴォトスの資源・現象の多くは優先度が低い。
――ただし特定領域に対する関心のみ例外的に継続。
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