ブルーアーカイブ×アークナイツ 調月リオと星外の予言者 作:バトクロス
私がオラクル達の所に着いたのは夜の8時、日が暮れた頃だった。2度目となるエリドゥの談話室にはオラクルとリオ、恐らくリオが呼んだであろうトキとユウカが居た。
「ノアは居ないのか……これで全部かい?」
「えぇ、ユウカには自分が何時も何をしているかを次期会長として覚えてもらおうと思って。後もう一人呼んでいるわ。……それにしてもちょうど良かったどの道近日中には
リオの言葉通り、自分が用意された椅子に座った直後扉がもう一度開き、一人の生徒が現れた。
「あぁ?あたしが一番最後か。」
初対面の印象はただのヤンキーだが……リオが呼んだ人間なのだろう。そんな存在では無いはずだ。
「君はリオから呼ばれたのかな?初めまして」
「初めましてだな先生……そう言えばオラクルもそうか。C&Cコールサイン00。美甘ネルだ。リオに呼ばれて此処に来た、もっと何も知らないがな。」
彼女はそう言うとドカッと椅子に座る。
「オラクル、君は彼女と繋がりがあるのかい?」
「いや、一度リオに頼んで傭兵を捕らえてもらっただけさ。後一応自分は怪談のようなものとはいえ存在はミレニアムで認知されているよ。」
苦笑しながらオラクルは手を叩き、
「それで、ゲーム開発部の依頼で動いている先生が何故
そう微笑みながら尋ねた。
自分は近い内にヴェリタスとゲーム開発部が鏡を求めてセミナーを襲撃すると言う事を伝えた。
「あの子達いったい何を……!それにヴェリタスも!そんな事を企む人間達だからこそ安全性の為に鏡を奪う必要があったのに、何も分かってないじゃない!」
「それを伝えたの?」
「あ、いえそこまで伝えて居ません。彼女達もそれくらいは分かっていると思っていました……」
「貴方はヴェリタスに対しての意識が甘すぎるわね。」
頭を抱えるユウカにそこまでリオが言い、此方に顔を向ける。
「……それで先生、何を伝えたいの?」
彼女の言葉に喉を鳴らし、
「……彼女達が暴挙に出る前に一度ゲーム開発部とヴェリタスの2つの組織に対して鏡についての返還交渉を形だけでもしてくれ。」
「どうせ彼女達は納得しないわ。話すのは時間の無駄……「
「……ゲーム開発部に関しては本来ミレニアムプライズで賞を取れば部活が存続すると言う前提の上で動いてきた。その過程でG.Bibleに縋り、それを解析するために暴走している。つまりヴェリタスとゲーム開発部の目的は
「何が言いたいの?」
「そしてセミナーに対して彼女達が鏡を取り返すと宣言した場合……
ゲーム開発部に対してミレニアムプライズ終了までの謹慎処分を通告してほしい。
そうすれば彼女達の同盟は他ならぬゲーム開発部によって内側から崩壊する。」
まず最初に考えた事としては、先生の話し方が余りにも苦渋に満ちたものだった。
私はリオ会長と先生の橋渡し兼中立な立場として様々な事に取り組んでいた。しかし今、先生が血を吐くような表情でモモイ達に制裁を課してほしいと言った。
その変化は到底納得できるものではなかった。
「先生!何故その様な事を言うのですか!?確かにセミナー的にはそうすべきかもしれませんが先生はゲーム開発部の依頼で来たはずです!それが何故依頼主に不利益を被らせるようなことを?」
リオ会長の前である事を忘れ、思わずまくし立てる。先生も会長の様な思考回路に染まってしまったのか?その様な問いかけを隠しながら問う。
「
帰ってきた言葉はシンプルで酷く重いものだった。
「彼女達と君達セミナーや、その他の部活との折り合いや交渉のため、そして彼女達が後に不利益を被る可能性を極力減らすように動いていたつもりだが……どうやらそれが
そう先生は自笑気味に言った。だが額に手を当てて、そしてそれを下ろしたとき。彼の目は鋭い眼光を灯していた。
「だが私は無すべきことをやるだけだ。最早私の助言や助けが意味を成さないのであれば……彼女達から嫌われようが最終的に彼女達がもっとも後ろ指を刺されることなく過ごしていけるよう努力しなければならないんだ。」
私が衝撃を受け、沈黙しているなかゆっくりとトキが口を開く。
「先生、代替案は用意しているのですか?私は何度か彼女達に会っていますがその様に抑えつけただけでは爆発します。」
その言葉は共に廃墟に侵入したと言う確かな実績が裏打ちする、もっともらしい意見だった。
「実は私もそこは詰めきれていないが……トキならどうする?」
「……難しいです。……ミレニアムプライズに作品さえ出せばとりあえず半年の存続を認めるとかですか?」
トキの歯切れの悪い回答にオラクルが口を挟んだ。
「トキは貴方から貰ったシステムのコピーと解析は出来なかったと聞いている。けど、オリジナルさえ手に入れば私達は解析出来るのだろう?……だからヴェリタスでは無くデータを持ってきて私達に解析させるのはどうかと提案するのはどうだろう。可能ならアリスの方からも調べてみると伝えて。」
悪く無い案だった。
「でも彼女達はセミナーを信用するでしょうか?」
そう疑問を口走ると……彼女は私の方をみて
「彼女はセミナーを信用しないと言う選択を自分達で選択した。なら
と言った。
「……私はオラクルの案に賛同するわ。」
沈黙の中、最初に口を開いたのは私だった。
「私の立場としてもその案は、システムとアリスを正当性を確保した状態で調査できるのはありがたい。彼女達にとっても悪く無い選択肢の筈よ。」
私の言葉に続いて
「……仕方ありませんか。私もその案に賛同します。ただ、彼女達が一度拒否しても説得の時間は頂きたいです。」
ユウカも条件付きで許容した。
そうして静かに、だが確実に話は詰められ……ヴェリタス、並びにゲーム開発部との返還交渉の日時が決められた。
「それであたしはなんで呼ばれたんだ?」
1つ目の議題が終わった直後美甘ネルが、そう尋ねて来た。
「非常にシンプル。仮にヴェリタスが暴走した際に貴女とトキに鎮圧してもらうつもりだからよ。」
「……それは分かったが何でこの二人なんだ?正直他の三人でも十分だろ?」
彼女は訝しげにそう問う。
「それを話すには、もう一つ頼みを説明しないとね……」
私はそう言って持ち込んでいたコンテナを部屋の端から引っ張り出し、部屋の中央でコンテナを開ける。
「これは……何だ?」
彼女達が見たものは奇妙な形をした大きい銃……いや鈍器?だった。ネルが手に取り、その重さに驚く。
「おっと!?これはかなり重いぜ。」
そう言いながらも持ち運ぶ彼女を見て満足しながら説明を始める。
「これは携行型レールガン、『ひかりのたんけん』。前エンジニア部に対して宇宙戦艦用のレールガンを小型化して量産してほしいと頼んだのよ。それの試作品がちょうど今日来たの。小型化されて質量はバッテリー等を合わせて35kg。元のやつを全て0.6倍した大きさで、質量比もそれと近しいものよ。」
「ミニガンの2倍か……キヴォトスの生徒でも持つのは難しいだろうな。まぁ私なら持てはするが。」
そうネルが呟いたのも束の間
「リオ会長!それはエンジニア部に関する過干渉では?」
とユウカに突っ込まれた。
「あら?説明していなかったかしら。」
「確かにエンジニア部に依頼を出したとは聞かされましたが、この様なものとは聞いていません!戦争でも始めるつもりですか?」
何処かで聞いた言葉を吐かれ、思わず苦笑しながら説明する。
「エンジニア部は今期予算を食いつぶしながら1つの巨大なレールガンを作った。だけど誰も使う事は出来なかった。当たり前よね、装備する宇宙戦艦ありきなのに本体が無いんだもの。」
ユウカの顔が少々困惑を覗かせる。
「それは……考えなしでは?」
「ええ、ただ自分としてもエンジニア部がつぶれるのは困るから、都市防衛用として小型化、量産化を目的に資金援助したの。生身の生徒に持たせるためでは無くパワードスーツや警備ロボットに装備させる予定よ。」
「過程は分かったが、現状何を伝えてえのか分かんねぇな結局防衛用と言っても軍拡だ。リオ、お前は私達に何をさせたい。」
ネルの言葉に頷き結論を告げた。
「実は今、ゲヘナとトリニティから
彼女達の空気が凍ったのを見て、そのまま話し続ける。
「貴女達にはその為の装備の被験体として協力して欲しいの。副次効果として、実際
その話を提案されたのは本当に昨日の夜だった。
先生の行動や連邦生徒会への対策を踏まえて作られた極秘パス。そこに通信がかかってきたのだった。
「もしもし、此方セミナー会長の調月リオよ。定期会談はまだ先なのでは?」
『こんばんは、トリニティ生徒会長桐藤ナギサです。一つお尋ねしたい事が有ります。先生の依頼は後何の位で終わりそうですか?』
「……具体的な日時は分からない。だけどミレニアムプライズまでと考えると後10日。依頼が早く終わったり後始末する事を考えると8〜11日と考えて欲しいわ。」
『成る程……近々我々トリニティとゲヘナが連邦生徒会の立ち会いのもと
「ええ、『リニティ総合学園とゲヘナ学園と共に構成員を供出し合い「エデン条約機構(ETO)」を設立、同機構によって両自治区の紛争解決を行うことで両学園間の全面戦争を回避する構想。』だったわよね?」
『ええ、元々は連邦生徒会長の主導で行われていました。しかし連邦生徒会長は失踪。またそもそも我々は彼女が不穏分子と判断した人間は排除し、それ以外の人間もコントロールしようとする人間である事を知っています。』
「……本題は?」
『貴女の人間性と実績を加味して、連邦生徒会だけでは無く、シャーレ、そして
「……流石に私としては断りたいのだけど、とりあえず理由を聞いても良いかしら。」
『分かりました。エデン条約はそもそもゲヘナとトリニティが互いに信用する事が前提であり、何方も完全に一丸となれてはいません。その為中立監視役としての連邦生徒会が間に立つ必要があったのですが……現状完全に機能しているとは言えません。なのでまずそこをシャーレに一部役割を負ってもらいます。』
「……続けて。」
『貴方達に頼みたい役割は条約に噛んで居ること、そして一部戦力の保有です。それ以上は
「前者は分かる。形だけでも他校を巻き込んでいれば、面子の都合上反対勢力についての抑止となるもの。でも後者は?」
『現状トリニティとゲヘナの戦力比は45:40と我々は考えています。勿論これは我々の推測であり、
「成る程……」
『理解されたようですね。貴方達の戦力はおよそ15。もう少し大きくしてもらいたいとは思っていますが、例えばゲヘナが我々に戦争を一方的に仕掛けようとしてもミレニアムが我々につけば戦争には勝てません。逆も然りです。貴方達は
「まるでフェザーンね……」
『どうされましたか?』
「いえ、気にしないで……分かった明日話してみる。ただ対価は有るのかしら。後ゲヘナは納得しているの?」
『ゲヘナも了承しました。と言うか全面戦争に発展した場合、ゲヘナの方がキツイですから。それと勿論対価は考えてあります。情報、技術、或いは利権……そちらとは末永く良い関係を維持したいので。』
「分かった、前向きに検討する。ただ連邦生徒会への交渉は貴方達にやってもらいたい。それとさっき基本的にそれ以上は求めないと言ったけど、例外は?」
『そうですね……例えば
始めに反応したのはオラクルとユウカだった。
「ナギサ達は面白いね、元々は信用を前提とした条約を、信用を必要としない条約に変換するとは。それにミレニアムはこの条件の場合、
彼女は面白そうに肯定した。彼女は研究者で有りながら、この様な政治劇にも非常に造詣がある。と言うか彼女達がこの様な思考回路になったのも
「私は反対です。我々は
反対に真っ先に否定の立場に立ったのはユウカだった。彼女はオラクルとは逆に情と倫理を重んじるためやはり受け入れがたいだろう。
「いや、ユウカの意見を否定する訳では無いが、キヴォトスの外には集団的自衛権と言う言葉がある。その学園と同盟を結んでいる場合は必ずしも侵略とは認められないと思う。」
以外にも先生は中立の立場だった。外の世界で似たような話を聞いていたのだろうか……
「因みにシャーレとしてはこの話は?」
「初耳だよトキ。まぁ生徒からの願いだ。受けるつもりだけど。ただその場合は少し責任の持ち方を考え直す必要がありそうだね。」
「流石先生、責任からは逃げませんね。」
トキの疑問に先生は答え、軽くトキから笑顔を向けられる。最近ずっと一緒に行動しているから仲良くなったのかしら。
「私は……リオ会長に従います。」
私に向いてトキは賛同した。だがやはり最近少し距離を置かれている。私は内心悲しかった。
「……で、ネル。貴女はどうなの?仮に戦力として繰り出される場合、貴女にかかっているけど。」
私達の戦力としては最強の彼女に視線を向ける。結局実行可能性は彼女がやると言うかにかかっている。
「要はさ、『喧嘩するなら俺も殴るぞ』って横から睨み効かせろって話だろ?……悪くねぇな。シンプルで分かりやすい。新装備の実験、やってやってもよいぜ。」
彼女は獰猛な笑みを見せてそう言った。
会議は終わり外からの人間は皆帰っていった。ユウカは話に噛むと言って、トキは呼ばれてリオについていった。残ったのはここを根城にしているオラクルと私だけだ。
故に彼女について聞くタイミングとしては今が最適だった。
「よぉ、オラクル。少し話をしたいが時間はあるか?」
「君は美甘ネルだね。良いよ時間は有り余っているから。」
彼女はそう言って浮かせていた腰を降ろした。
「君は、自分の暗殺実行犯を捕らえて欲しいと自分が頼んだ時に実行してくれたエージェントだよね。あの時はありがとう。」
「別に、ただの仕事だ。感謝はリオにしておけ。」
「リオにはもう言っている。だが事だとしても、君に対して感謝をしない理由にはならない。」
「そうか。なら礼は受け取っておく。それよりもオラクルは先生と同じく身体強度が低いんだよな?先生もそうだがよく生徒達と面と向かって会話して交渉できるな。」
軽く会話の流れを作り、私はいきなり本題に入った。
「なぁ、一つ聞きたいんだけどよ。さっきの会議、全部理解してたよな?それ、予めリオから話聞いていたのか?」
「いや、初耳だ。そもそも私はキヴォトスのパワーバランスをパソコンで調べられる範囲の事しか知らない。勿論最低限は理解しているとは思うが……」
「それでいて、あの反応か……普通ならもう少し
あたしが知りたかったのは彼女の不気味な思考回路だ。会話は成立しており、表面的な人格も把握できはする。だが、どうにも
「悩む必要があるのは、選択肢に価値の差が無い場合だけだよ。今回はそうじゃない。ミレニアムの短期的な資源としても、三大校全体のリスクとリターンの釣り合いでも、そしてキヴォトスの全体的な幸福の総量でも受けるべきだ。」
「お前……情が無いのか?」
彼女の徹底した合理性を前に思わずそう呟く。
確かにこいつはリオが好むタイプの人間だろう。
こいつは嘘を言ったり、口先だけの偽善を口走ったりはしない。だから信用できはするが……
「いや、それは違う。私は
「あぁ。そう見えるな。」
私はそう言ったが、彼女が多少傷付いた顔をしたので多分これは正しいなと思った。
と言うかこいつ、もしかして人前に立つときの顔とそれ以外の時の顔の差がやばいくらい有るのではないか?と思った。
「まぁとりあえず思考回路は触りだけ分かった。私個人として気に入らねぇが、分かりやすくはあるし、嫌いとまでは行かない。」
完全に演じられているのならそれはもうお手上げだが、とりあえず私は隠し持っていた矛を収めた。
「ただ、
調月リオの音声記録その4
『オラクル、貴女は小さい頃の夢を覚えているかしら?将来何になりたかったとか。』
『夢と言うか、夢と言う単語を知る頃には既に自分は研究者としての教育を受けていたと思う。モラトリアム期間と言うものが余り無かったんだ。それでどうかしたのかい?』
『私の夢について相談に乗ってほしいの。』
『君の夢は君が決める物だ。』
『それは分かっている。それでも貴女に聞いてほしいの。』
『……分かった。』
『私の将来の夢は貴女について行って科学の真髄を学び、それをキヴォトスに持ち帰って発展に繋げたい。』
『それは無理だ……全てにおいて。キヴォトスに戻る機会は無く、我々の研究内容はこの文明には劇物で、そして恐らくキヴォトスは君を必要としている。』
『そう、分かっては居たけどやっぱりそうなのね。』
『……まぁキヴォトスに対して君が『私が居なくても大丈夫』、もしくはキヴォトスから『君が必要ない』と言われた場合は引き取ってあげるよ。』
『貴女は慰めのつもりで言ったかもしれないけど、本当にそうなったらしがみついてでもついていくから。』
『……分かったよ。約束だ。』
先生
対象は現在、複数の立場間における意思決定を強いられている。
理想と現実、個人判断と組織的責任の間で揺らぎが継続。
従来の価値基準による判断は困難となっており、最適解ではなく現実的妥協点を選択する傾向が顕著。
――当該環境下においても機能は維持されている。
外部個体(ユウカ)からの支援に対し、肯定的反応が確認された。
調月リオ
対象は従来と比較し、選択における柔軟性が増加。
状況に応じた妥協を許容する傾向が観測される。
ただし、合理性偏重および高圧的傾向は依然として強く維持。
当該性質について自己認識はあるが、修正意思は限定的。
――判断基準は依然として安定状態を維持し、高い再現性を示す。
ユウカ
対象は制度・倫理を基盤とした思考を維持。
現状の意思決定環境に対し強い抵抗感を示すが、完全否定には至らず、条件付きでの受容を選択。
感情と論理の乖離が継続的に発生しており、内的負荷は増加傾向。
――組織の安定維持において重要な制動要素として機能。
トキ
対象は命令・状況に対する適応能力が高く、判断における感情的揺らぎは低水準。
所属個体(リオ)への追従姿勢を維持しつつ、他個体(先生)への信頼も並行して形成。
意思決定よりも実行段階において価値を発揮する傾向が強い。
――当該局面においては調整役および現実的補完として機能。
美甘ネル
対象は自己役割(戦力)の認識が明確であり、状況理解において直感的把握能力を有する。
抽象的概念に対する関心は低いが、核心部分の理解速度は高い。
外部個体(オラクル)に対して軽度の警戒および興味を同時に示す。
――現場適応能力は高く、状況変化に対する即応性を保持。