ブルーアーカイブ×アークナイツ 調月リオと星外の預言者 作:バトクロス
「……結論としては以上よ。」
『早い段階でエデン条約への参画を決めていただき感謝します。』
『気が早いぞトリニティ、彼女はまだ一般生徒に対して説明していないではないか。そこのとこはどうなのだ。』
「安心して、ミレニアム生は基本的に研究が全ての人間が殆どよ。ゲヘナとトリニティからの資本援助を理由とすれば一部の生徒以外は賛同するわ。」
『そうか。だがミレニアムは教育機関としての面が強い事については資金援助で説明をつけられるにしても、単純に軍拡に消極的な生徒達も居たはずだ。一般生徒ならともかく運営組織であるセミナーの生徒達には、どうやって説得したのか気になってな。あぁこれは単なる疑問であり、別に問い詰めるとかそう言うつもりではないぞ?』
『確かにそれは気になりますね。教えて頂いても?』
「……まぁどの道早い段階で言うつもりだった事だし早めに言う事にするわ。エデン条約についての頼みだけども、追加でミレニアムはゲヘナともトリニティとも
『私達トリニティとしては、前に言ったように楔としての役割を明確化する為に同盟を結ぼうとは思っていますが……』
『私も元々ミレニアムをエデン条約に参入させると考えた時点でそこら辺は既に考えてあるからそこは別に構わない。しかしそれがどう説得と関係するのか?』
「『集団的自衛権』と言う外の言葉があるの。彼女達にはこう説明したわ。『ゲヘナへの攻撃はミレニアムへの攻撃。ミレニアムへの攻撃はトリニティへの攻撃。そしてミレニアムへの攻撃はゲヘナ、トリニティに対する攻撃である。そう相手に思わせるための仕組みよ。』同盟とはその為の看板だと説明したわ。」
『そうなのか。それなら安心だな……お前は因みにどうして提案を受けた?やっぱり金か?』
「私に関しては資金関係よりも、その条約に参加することの構造的な利点を重要視しているわ。」
『何というか、一般的なミレニアムの生徒達の特徴からは外れていらっしゃいますね。研究者と言うよりも統治者と言うか……いえ、その様な人間でなければ学園を運営することは出来ないのは承知していますが。』
画面の向こう側の2人が様々な質問をし、それに対して私は丁寧な説明を心がけながら会話を続ける。
先程まで私は、先生への依頼とその後始末について説明していた。
トリニティとゲヘナ。本来なら顔を合わせるだけで揉め事になりかねない相手同士だが、今では比較的冷静に建設的な議論を行っている。もっとも、大抵私を間に挟みながら会話を行う為、確執は表に出していないだけであるのだろうと察せられるが。
「因みにお二人は問題はないのかしら。ただ元からあったシステムに相乗りするだけの私達と違って貴女達は抱え込む責任もトラブルも多い筈よ。」
話が一段落した所で逆に2人に問いかける。
『ゲヘナは元々自由意志を尊重している。賛成反対以前に
万魔殿の権限や実情が非常に気になったが、自信満々な羽沼マコトの発言に一先ず納得する。
『……ミレニアムに貸しを作るのは余り好ましくありませんが、トリニティとしては一つ頼みが有ります。それと、ゲヘナにはあまり聞かせたくない事です。もし羽沼議長が良いのであればこの会談が終わった後二人きりで話すことは出来ますか?』
「……そこまで大きな物でなければ良いけど。羽沼議長はそれで良いかしら。」
反対に桐藤ナギサの発言は苦渋に満ちたものだった。とりあえず話は聞くと言うスタンスを見せる。
『仮に私に言うべき事なら勝手に調月会長が言うだろう。私は構わない。』
そう言って羽沼マコトは回線を落とした。
『ありがとうございます。まず前提条件をお話させて頂きます。実は最近の先生の活躍と貴女からの話を聞き、連邦生徒会とは切離された組織であると言う建前がどうやら本当で有るようだと判断しました。そこで近々シャーレに一つ依頼を出す事にしてます。』
「その内容は?」
『成績不振の5人の生徒達を補習授業部と言う部活に纏め、その生徒達を教導、並びに監督してもらうと言うものです……
「先生に監視してもらおうと、あばよくば生徒達がポロっと自白をするのを期待して……ん?
少し話がきな臭くなってきた。
『はい、推測や物的証拠、噂に過ぎないものの積み重ねであり、
「それで?何かしら問題があるのかしら。」
話が読めない。
『私が頼みたい事、それは
私の友人の聖園ミカの疑いを晴らす為、もしくは疑いが真実であったと明らかにする為に、貴女の食客であるオラクルを貸し出して欲しいと言う事です。
勿論安全は
彼女の発言は
私がミカさんを疑い始めたきっかけは些細なものでした。彼女から渡されたUSBを観た後、彼女はまず
次に彼女が図書館に入り浸るようになりました。ティーパーティの権限で彼女が借りている本を見せてもらう様に言いましたが無理でした。ですが、彼女の部屋に理由をつけて入らせて貰ったとき、その壁に並んでいる本は
3つ目は彼女が学園の
そして最後、彼女が比較的信用していたパテル派の生徒がある日急に『ミカ様の事について話が有ります』と私の所に尋ねて来た事です。その時は他の派閥の生徒だった事も有り、ぞんざいに対応してしまいました。しかしその後話を聞こうと思いその生徒に話を聞きに言った際、彼女は前言を撤回しました。
『申し訳ありません。やはり勘違いでした。』
そう言ったのです。
ですが、私はその時の彼女の表情を忘れられません。
此処までの違和感が重なり、私はある考察に辿り着きました。ミカさんはエデン条約に対して、元から反対しているが何かしらのアクションを起こそうとしているのではないだろうか。
そしてその為にトリニティ内部の支持者を集めているのではないか。もしそうだとすれば、彼女が調べている歴史書や宗教書にも説明が付きます。
そして最悪の場合、彼女はエデン条約を阻止する為、武力を含む極端な手段を考えている可能性がある。
私はそう考えたのです。
(そんな内情を言える訳がありません。何とか彼女を丸め込まないと……)
そんな事を考えながら調月生徒会長の返事を待つ。
『……まず先に言っておくと彼女が食客であると言う貴女の考えは
彼女の最初の発言は要領を得なかった。
「どう言う事ですか?」
『確かに彼女は傍から見ると、私お抱えの賢人に見える。だか彼女と私の個人的な関係は
そこまで彼女は言った後。
『まずは彼女がトリニティで決して
と言った。
「……ミレニアムに対する直接的な対価は求めないのですね。」
彼女の事だからそこら辺を求めると思っていたがそうではなかった。
『そもそもこれはオラクルに対する依頼であってミレニアムに対しての直接的な依頼ではないもの。それなら今私達が抱えているリスクに対する保険を忍ばせておく程度が丁度よいわ。』
納得しつつも最後の事に関しては言及しておく。
「最後の事について以外は分かりました。しかしキヴォトス全体の危機と言うものについては判断できかねます。それに私一人ではトリニティは動きません。」
『……貴女の立場も分かった。ならミレニアム、ゲヘナ、トリニティの合同作戦があった時、任意のタイミングで
此処らへんが手打ちのラインだと彼女は無言で言っていた。私はそれを飲むことにした。
「分かりました。それで手を打ちましょう。ただし、オラクルが拒否した場合はこの約束は無効でお願いします。」
『勿論そのつもりよ。』
今度こそ話を終えた私は回線を落とした。
彼女が回線を落としたのを確認し、深く椅子にもたれかかる。
「……疲れた。」
誰も居ないからこそ弱音を吐ける。
私は今回アリスの危険性については
だからこそ私は今回トリニティに対してアリスの暴走の際に、トリニティとゲヘナの戦力を呼べる様にしつつ、トリニティの戦力について指揮権を奪取出来るようにした。
彼女はエデン条約関係の揉め事の延長線上の話だと思っていただろうが、私の想定していることは
私の判断はミレニアムにとって間違いではなかったと思ってはいる。
「それはそれとして、オラクルが私から離れるのは寂しいわね。」
「賛同しにくいな。
「分かっているわ。彼女にはそれは飲んでもらうよう言っている。」
「だがそれはナギサ一人だけだ。他の人間はそう思わない可能性もある。ミレニアムに色々と助言しているのは君との信頼関係が有るからだ。」
「それで足りれば良いがな。」
そう言いながら彼女は溜息をつく。
「ナギサが優秀なのは理解しているが
「……そうね。」
「まして私は外の人間だ。善意で協力したつもりでもそれを快く思わない者は必ず現れる。その様な生徒達から敵意を向けられないためには
オラクルとの交渉は難航した。彼女は私を信頼しては居るが、その信頼が仇となっている。
「そもそも貴女の交渉力と深い知見が有れば、トリニティの生徒相手でも交渉事なら完封出来るのでは?」
私の個人的な見解に対して彼女が異を唱える。
「寧ろ宗教国家……じゃなくて学園のトリニティの方が寧ろ苦手だ。
「……そこまで言われると難しいわね。」
彼女に対して言葉での説得を諦める。元々彼女に私が論戦をして
「……お願い。私を助けると思って貸し一つで頼みを聞いてほしいの。」
そう言って頭を下げる。
最後の手段は情に訴えかける事だった。
「ちょっとずるいな……」
頭を上げると苦笑する彼女の顔が目に入った。
「君は私の安全と権利を全力で守ってくれるかい?」
彼女の言葉に全力で頷く。
「勘違いしないでね。私はトリニティでは無く
「えぇ、裏切らないと約束するわ。」
彼女は私の返事にまた苦笑しながら言った。
「次からは話を進める前に私に言ってくれ。頼むから。」
「ははは……冗談ですよね?」
連邦生徒会の保有するサンクトゥムタワー。その一室である防衛室長執務室で防衛室長、不知火カヤは頬を引き攣らせながら対面の人間の要求を再度問いただした。
「冗談ではないよ。私は連邦生徒会長直轄の暴力装置だったSRTを、権限を分割した上で再度運営するべきだと言っているんだ。」
彼の言っている事に思わず閉口する。
「……どうやらある程度調べてから来たようですね。それなら連邦生徒会の動きも読めているはずです。現状SRTは極めて扱いが難しく、潰してヴァルキューレに移籍させた方が良いという世論が一般的だと。何故貴方がその事象に干渉しようとするのですか?まさか彼女達から依頼を受けたのですか?」
真っ先に疑ったのは元SRTの生徒達からの依頼だった。
「いや、違う。何なら私はSRTに所属する生徒に対して
即座に帰ってきた言葉は強い否定、
「解せませんね、シャーレは基本的に生徒からの依頼を解決するために存在する組織ではありませんでしたか?これは越権行為では?」
「……訂正だがシャーレは、権限だけはあるが目標のない組織だ。生徒の依頼を解決する事以外は行ってはならないという
彼は冷静な対応をして来る。着任当時はもう少し生徒に対して甘かったと思うが……
「……一つ確認しても?」
私は額を押さえながら問いかける。
「何かな?」
「先生。貴方は何を目指しているのですか?」
彼は一瞬だけ首を傾げた。
「どういう意味だい?」
「そのままの意味ですよ。」
私は椅子に深く腰掛ける。
「SRTはかつて連邦生徒会長直属の武力組織でした。そして連邦生徒会長失踪後、その存在意義は急速に失われた。」
机の上を指で軽く叩く。
「それを今になって再建しようと言う。ですが貴方は当事者ではない。関係者でもない。」
一度言葉を切り、目を細めながら突きつける。
「ならば聞きます。先生、貴方は何を得たいのですか?」
「何も。」
返事は再び即答だった。その返答に思わず眉を顰める。
「何もですか。」
「あぁ。」
彼は平然と言った。
「私は権力が欲しい訳でも無いんだ。」
「前はそう振る舞っているように見えましたが、今はそうは見えませんね。」
私の言葉に先生は肩を竦めた。
「手厳しいね、だが権力が欲しいなら私は最初から別の行動をしているよ。」
「例えば?」
「連邦生徒会の管理権限を握るとか、シャーレを武装組織に変えるとか……そもそも
その言葉に思わず黙る。確かに彼なら出来なくもない。少なくとも能力は有る。
「私が問題視しているのは別の所なんだ。」
先生はそう言うと私を真っ直ぐ見る。
「今の連邦生徒会には権力を行使する為の武力が存在しない。」
「ヴァルキューレがあります。」
「あそこは警察だ……それに頼りない」
即座に返される。
「私が言っている防衛組織ではないね。有事の際にあそこが冷静かつ的確に対応できるかと言われると、私が調べた限り怪しいと思うな。」
「だからSRTを復活させると?」
「半分正解だ。」
先生は続けた。
「正確には権力を分散し、責任を宙ぶらりんにしないSRTだ。」
またその話だ。
思わず溜息が漏れる。
「先生、私はその考え自体は理解出来ます。」
防衛室長としては、元々SRTの廃校には反対の立場だった。むしろ魅力的ですらある。
「ですが、それでも私は反対です。」
彼は少しだけ意外そうな顔をした。
「理由を聞いても?」
「世論です。」
私は即答した。
「今のキヴォトスでSRTの名前を出せばどうなると思います?」
先生は黙る。
「連邦生徒会長直属の私兵、権力の暴走……失敗した組織。残念ながらそう判断する人間が大半でしょう。」
連邦生徒会の人間どもは事なかれ主義の人間ばかりだ。超人に縋るだけのカスどもだ。会長に責任を押し付けてSRTを使い倒し、超人が消えれば臭いものに蓋をする様に扱う。そんな人間どもが今形成されている世論を後押しにしているのだ。
そんな思いを押し殺しながらそう建前を言う。
「ですが貴方自身はどう思う?」
「私ですか?」
意表を突かれ、少し考える。
「私個人の意見ならば、完全に廃止するべきだったとは思っていません。そもそも、私は連邦生徒会長の次に関係があった人間ですから。」
本音はもっと過激だ。だがそれを隠した発言の筈だった。だが先生の瞳が僅かに細くなった。
「ほう。」
「ですが個人の意見に価値はありません。」
私は誤魔化すように首を横に振る。
「連邦生徒会は私一人で動いている組織ではない。リンも、アオイも、他の室長達も……そして各学園も居る。」
先生は静かに聞いている。
「彼女達を説得できない限り、この案は通りません。」
「だからこそ来たんだ。」
彼の発言に思わず眉を顰める。
「何ですって?」
「君は防衛室長だ。」
「だから?」
「少なくとも軍事面の価値は理解できるだろう。」
反論できない。それが少し腹立たしかった。
「理解出来る事と賛成する事は別です。」
「承知している。」
「なら、」
「だから私案を持ってきた。」
先生は私の言葉を遮る。
「再建ではなく再編。連邦生徒会長直属でもない、防衛室直属でもない、複数の権力者による承認が必要な形にする。」
私は黙る。
「それでも反対か?」
その問いに少し考える。
考えた末に結論を出した。
「反対ですね。」
先生が僅かに肩を落とした。
「そうか。」
「ですが。」
私は被せる様に言葉を続ける。
「話は聞く価値があります。」
彼が顔を上げる。
「先生。」
私は指を組みながら言った。
「その案はまだ粗すぎる。」
「……。」
「組織構造、予算、指揮権、監査機構、責任者、何も決まっていない。」
そして椅子から立ち上がる。
「私を説得したいのなら、まずその辺りを詰めてから来てください。」
「なるほど、承知した、」
「あと。」
私は少しだけ呆れた様に言った。
「リン先輩や他の室長を説得する材料も用意してください。」
先生は苦笑した。
「難題だな。」
「当然です。」
「そしてもう一つ。その案は
此処だけは聞いておきたかった。
「……助言はあったが、今回の形に纏め上げたのは自分だし、この考えが正しいと
その言葉に一先ず満足しながら扉に手を向ける。
「では先生。今日の所はお帰りください。」
「追い出されている気がするな。」
「気のせいではありません。」
その言葉に彼は小さく笑った。
「分かった。また来るよ。」
そう言って執務室を後にした先生を見送りながら、私は深く溜息を吐いた。
「全く……カイザーとの関係性が切れかけている今、非常に魅力的な案ではあるのですが。」
防衛室としては魅力的。
だが政治的には危険。
だからこそ厄介なのだ。
「精々使い倒してやりますから、
そう呟きながら山積みの書類へと視線を戻した。