ブルーアーカイブ×アークナイツ 調月リオと星外の預言者 作:バトクロス
追記
流石にあの誤字は自分でもどうかと思ったので謝罪させていただきます。
いつも誤字報告してくださる皆さんありがとうございます。
ラプラスの魔女
私は夢を見る。
それはただの夢では無い。
過去、未来、他者の記憶、可能性。
少し前……大体
実際、後に暗殺未遂は起きた。
だから私は全てを諦め自分の存在を隠したのだ。ただ静かに朽ちるために。
未来は変えられない。
その
ある日の夜、丁度連邦生徒会長が失踪する少し前。
私は見る夢を操作できない。
そこは無機質で、見たことのない記号や、聞いたことが無い音が飛び交っていた。ミレニアムでも作られていないであろう高性能ロボット達が忙しなく動き回っている。
「ここは……何処だ?」
外をみようと数分歩くと1つの窓があった。覗いてみる。
「……!」
言葉を失った。そこからみた景色は一面の漆黒の中にポツポツと光源があるものだった。
「これはまさか……
落ち着こうと自分の判断を口にしていると……奇妙な音が聞こえてきた。
鳥肌がたった気がした。
後ろを向くと、遠目からも分かるくらい理解不能な
「……っつ!?」
思わず夢の中である事を忘れ咄嗟に物陰に隠れる。
あんな物キヴォトスでは見たことが無かった。
恐怖を感じる中、だんだんと意識が薄れ、そして消えていった。
それから数週間後の夜。
そこに立っていたのは、
数週間前に見たあの金属の化け物だった。
その化け物の前に奇妙な服を着た人物が立っている。
「ケルシー、プリースティスに何か言われたか?」
彼女はその化け物に何か語りかけている。
『……!……≫!』
化け物が何か音を出す。
「それは違うよ、君はama-10では無い、ケルシーだ。君の生き方の方針は示されているけど、君の生き方は強制されるべきものではないんだ。」
彼女はその音を聞いて何か話している。
彼女は穏やかだが、
(何なんだこの夢は。キヴォトスが滅んだ後のこの世界の姿か?)
そんな事を思いながら夢の世界が壊れていくのを感じた。
更に数週間後の夜。
彼女は先程までとは異なる研究施設らしき所に居た。
「おはよう?違う……こんにちは?違う……敵意は無い?違うは じ め まし て?」
その直後、ただの雑音だった彼女の発する声が言葉という形を持つ。
「ミ レ ニ ア ム、つ か つ き り お?」
その人物は
「っは!はっ、はっ、はっ……」
飛び起きる。
「大丈夫ですか!?」
救護騎士団の蒼森ミネが私の以上に気が付き、とんできた。
「あぁ、大丈夫だ。夢見が悪くてね。」
ごまかしながら考える。
明らかな不確定要素。だが別にその他の夢で見る未来が変わった訳では無い。私が何かする事はないだろう。そう考えて少し自分を落ち着かせる。
「……一つ頼みがある。」
そう言って裏紙に軽くみた人物の顔を描く。
「この人物が見つかったら教えてくれ。」
そう言ってミネに押し付けた。
「……分かりました。時間が有れば探してみます。」
「助かるよ。」
不快な違和感が残っていた。
あの存在は、未来に現れる何かの前兆なのか。
あるいは私が未だ観測していない別の可能性なのか。
単なる勘、それに従って彼女に一応頼んだ。
その日の夢は、
「未来が目茶苦茶だ!」
寝起きの言葉は自分でも信じられない位汚かった。
『迎えの車には乗られましたか?』
「あぁ、ありがとう。」
『いえ、こちらが調月会長に頼み込んだ立場ですので。安全に関しては『正義実現委員会』に頼み込んで護衛の車を付けています。』
「お気遣い感謝する。それで、今運転している彼女は……」
『安心してください。彼女に対しては今回の依頼について説明してあります。』
今自分はトリニティの迎えの車に乗ってミレニアムを出た所だった。迎えの2人乗りの車は車種は分からないものの高級感があり、また恐らく頑丈であろう事が察せられる。
「じゃあ話をしよう。今回の
『はい。各組織の高官や成績上位者向けの特別授業の講師、それと
「……教材はそちらが指定するのか?」
『えぇ。ですがある程度の裁量権は貴女に預けます。そもそも
「……随分と回りくどい事をするな。」
『それだけ回りくどい事をしても私は貴女を使える事の方が大きいと判断したのです。では待ち合わせ場所は彼女に案内させますが、フィリウス派が所有する会議室を使う予定です。本来はティーパーティーの場に招待することも考えましたがミカさんに初手で警戒心を与えたくはなかったので。……それと多分貴女の知り合いにも会えますよ。』
彼女の意味深な言葉に首を傾げると彼女が電話を切った。
「……」
「……」
気まずい雰囲気が漂う。運転している彼女の事についてはティーパーティフィリウス派に属している事しか知らない。と言うかそもそも運転には免許が必要なのではなかったか。
「……君の名前を教えてくれ。」
迷った挙句、一先ず名前を聞くという普遍的な選択を取ることにした。
「……ティーパーティフィリウス派所属、三年の
彼女は慇懃無礼にそう運転しながら語った。
「そうなのか……わかった。」
「……随分とそう言う扱いに慣れていらっしゃいますね。
「いや、私は外の世界ではあるプロジェクトの主導をしているただの研究者だ。私が慣れてそうに見えるのはそう
私は、
護衛として派遣された正義実現委員会のハスミを連れてある扉の前まで来た。
「この先にティーパーティの方々がいらっしゃいます。先生のことですから心配はしておりませんが、一応粗相のないようにと言っておきます。」
彼女はそう言って扉を開き、私を中に招いた。
「では、失礼します。」
扉が閉じられる中私の前には二人の生徒が居た。
「こんにちは、先生。こうしてお会いするのは初めましてですね。ティーパーティのホスト、桐藤ナギサと申します。」
彼女はそう言いながら手をもう一人の生徒に向ける。
「そしてこちらは、同じくティーパーティのメンバー、聖園ミカさんです。」
「二人ともよろしく。」
そういうとミカが顔を覗き込んできた。
「へー、これが噂の先生かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね?なるほど、ふーん……うん私は結構よいと思う!!ナギちゃん的にはどう?」
話が見えない。
「ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ……失礼しました。あらためまして、お初にお目のかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです。」
「うんそうだね、先生、ごめんね?まあとりあえず、これからよろしくってことで!」
お互いに何か納得したのだろうが、それにしてもずいぶんと二人は親しい中のようだ。
「分かった。ひとまずよろしくね。」
そういうとミカは笑顔で、ナギサは複雑そうな顔をした。
「……トリニティの外の方がこのティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです。普段は、トリニティの一般の生徒たちも簡単には招待されない席でして……」
「お気遣い感謝する、とでも言うべきかな。」
「ナギちゃん、恩着せがましく聞こえるよ。」
「……失礼しました。本題に入らせていただきます。こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして。」
「そうだろうね。」
「先生もナギちゃんもずいぶん本題に入るのが早いね!もうちょっとこうアイスブレイクとか要らないの?ちょっとした小粋な雑談とかは?」
少し会話が上滑りしていると思った。
「
だから本質を突くことにした。
反応は劇的であった。
ミカの笑顔が消える。
ナギサもまた、先程まで浮かべていた柔らかな微笑みを消していた。
空気が変わる。先程までの会談ではない。
目の前にいるのはトリニティを統治するティーパーティのメンバーだった。
「……先生。」
ナギサが静かに口を開く。
「その話を、どこで知ったのですか?」
その声には明確な警戒が込められていた。
「先生。」
今度はミカだった。先程までの軽い調子ではない。
「それ、誰から聞いたの?」
二人の視線が集まる。その視線は誤魔化すことを許さないと言っていた。ナギサは既に自分のスマホを手にしている。
「知らないよ。」
「……はい?」
ナギサの眉が僅かに動く。
「だから知らないんだ。」
私はそう言いながら紅茶に手を伸ばした。
「今のはカマをかけただけだから。まぁ確証はあったけどね。」
数秒の沈黙。
「…………」
「…………」
二人とも言葉を失っている。私は困ったように苦笑した。
「そんな顔をしなくても。」
「いえ、そうなるでしょう。」
ナギサが即座に返した。
「先生は今、私たちが隠している何かを知っている前提で話を進めました。」
「実際、反応してくれた。」
「それをカマをかけたと言い張るのですか?」
「うん。」
先生はあっさり頷いた。
「私はその情報は知っている。だけど君達がそれを知っている証拠は何もないよ。」
ナギサとミカが目を見合わせる。
「では何故、そのような発言を?」
「……その当事者であるオラクルと既に私はミレニアムで渡り合った事がある。その時にその映像を見せられたんだ。」
多少ハッタリを張りつつもそう言うと、二人の身体が僅かに強張る。
「映像?」
「うん。」
私は頷いた。ミカが即座に返す。
「それと今の話がどう繋がるの?」
「簡単だよ。」
先生は二人を見る。
「リオやオラクルの性格なら、このような重要情報を隠すとは思えなかった。」
ナギサの目が細くなる。
「つまり?」
「ゲヘナにも共有しているだろうし、トリニティにも共有しているだろう。」
「……」
「……」
「そして、それほど重要な情報ならトリニティの中枢である君たちが知らないはずがない。」
そこで私は少しだけ笑った。
「だから適当に言ってみた。」
「適当に、ですか。」
「結果的には当たったみたいだけど。」
ナギサは頭に手を当てて考え込む。
「……ならば何故言ったのですか?」
「会話が上滑りしていると思ったから。そして勘だけど……君達が私に対して警戒心を隠しながら話していると思ったからだね。」
「……確認ですが、先生は連邦生徒会長とは。」
「全く面識は無いよ。」
「……本題に入ります。私たちが先生にお願いしたいのは、簡単なことです。」
「簡単だけど、重要なことだよ。」
「補習授業部の、顧問になっていただけませんか?」
「補習授業部?」
聞きなれない部活だ。
「はい。つまり、落第の危機に陥っている生徒たちを救っていただきたいのです。『部』という形ではありますが、今回は顧問というより、『担任の先生』と言ったほうが良いかもしれませんね。」
解せない。
「トリニティ総合学園は、昔からキヴォトスにおいて『文武両道』を掲げる、歴史と伝統が息づく学園です。それなのにあろうことかよりにもよってこの時期に、成績が振るわない方がなんと4名もいらっしゃいまして……」
「私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか……『エデン条約』の件で、今はバタバタしててね。あの子たちの件も何とか解決しないといけないんだけど、人手も時間も足りなくって……その時にちょうど見つけたの!新聞に載っていた『シャーレ』の活躍っぷりを!」
「……中小規模の依頼ならともかく、大規模の依頼であるミレニアムの評価は賛否両論だったと思うけど。」
本当にいろいろと
「あ、先生信じていないんだね。今はみんなBDで学習する時代だし、学校の教員とか、教授とかならまだしも、『先生』って概念は珍しいんだよね。先の道を生きると書いて『先生』……つまり、導いてくれる役割ってことだよね。尊敬の対象、あるいは生きる指針としてみんなに手を差し伸べ、導く……『補習授業部』の顧問として、これはぴったりだなって思って!」
「あの動画のことを考えなければ、あなたは若くして責任感を背負う尊敬できる人間であると言われています。」
いろいろと思うところはあるが、私には
「どのみち引き受けるつもりだった。最大限尽力するよ。」
彼女たちが安堵の表情を浮かべる。
「ありがとうございます。もう少し説明しますと……この『補習授業部』は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて創設し、救済が必要な生徒たちを加入させるものです。少々特殊な形ではありますが、急ぎということもあり、シャーレの超法規的な権限をお借りしつつ……といった形で、ですね。」
「この部活の本質は?」
「あくまで『成績の振るわない生徒たちを救済すること』にあります。だからこそ、こういった特殊な形での創設が許されたわけですが……」
そこまで言うとナギサは一枚の紙を取り出して私に渡した。
「これが生徒たちの名簿です。」
そこには4人の生徒の名前が書かれていた。
「詳しい内容についてはまた追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」
2つ、聞いておきたいことがあった。
「
「
ナギサが静かに否定する。
「それと、この学園はトリニティだよね。なぜティーパーティーの生徒会長が二人しかいないんだい?」
自分の二つ目の質問に二人の表情が硬くなった。
「セイアちゃんは今トリニティにいないの。入院中で……。」
「本来のホストはセイアさんですが、そのような事情で不在のため、私がホストを務めているところです。」
「そうか……伝えられる状態ならお大事にと言っていたと伝えてほしいな。」
「承知しました、また何かあれば聞いてください。」
そうして自分はティーパーティーの部屋から出て行った。
その日、私は夢の中で
私は夢を見た。人気の無い建物に自分は佇んでいた。人気を感じ、振り返るとそこには一人の少女がいた。
「……つまるところ。エデン条約というのは、『憎みあうのはもうやめよう』という約束。トリニティとゲヘナの間で、長きにわたって存在してきた、確執にも近い敵対関係。そこに終止符を打たんとするもの。より簡単に言おうか、つまりはゲヘナとトリニティの平和条約だ。」
「奇妙な夢だな……おーい。」
夢にしては妙にはっきりしている。だが彼女は此方の行動に反応を返さない。
ただ聞いていることしか出来なかった。
「ただ、連邦生徒会長の失踪をきっかけにこの条約は何の意味も持たなくなってしまった。」
少女は静かに言葉を続ける。
「『エデン』……それは太古の経典に出て来る楽園の名。そこにどんな意味を込めていたのかは分からないけど、まぁ連邦生徒会長のいつもの悪趣味だろうね。」
風が吹く。少女の髪が揺れた。
「キヴォトスの『七つの古則』はご存知かい?その5つ目は正に『楽園』に関する質問だったね。『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか。』」
答えが帰ってこないと確信し黙って話を聞く。彼女の声には諦めが混じっていた。
「他の古則もまたそうであるように、少々理解に困る言葉の羅列だ。ただ1つの解釈としては、これを『楽園の存在証明に対するパラドックス』であると見ることができる。『もし楽園というものが存在するのならば、そこに辿り着いた者は、至上の喜びを抱くが故に、永遠に楽園の外に出ることはない。』もし楽園の外にでたのならば、つまりそこは真の快楽を得られるような
私はその議論について漠然と
「存在しない者の真実を証明することは出来るのか?つまるところ……この5つ目の古則は、初めから証明することが出来ない事に関する『不可能な問い』なのだよ。」
彼女は初めてそこで言葉をきり、空を見上げた。
「しかしここで同時に思うことがある。証明できない真実は無価値だろうか?この冷笑にも近い文章を通じて、何か真に問いたい事があるのではないだろうか。」
彼女はそう思っているのだろうか。口調には諦めが滲んでいる。けれども何処か歯切れの悪い……
「エデン……経典に出て来る楽園。何処にも存在せず、探すことも叶わぬ場所……夢想家達が描く甘い甘い虚像。」
彼女はそう言って此方をみた。
「どうだい?そう聞いてみると、この『エデン条約』そのものが、まさしくそんなもののように思えてこないかい?」
彼女は私に何を伝えようとしているのだろうか。
「先生……もしかしたらこれから始まる話は、君のような者には適さない、似つかわしくない話かもしれない。不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を潜めるような……相手を疑い、前提を疑い、思い込みを疑い、真実を疑うような……しかし同時に紛れもなく真実の話でもある。どうか……最後まで見届けてほしい。」
最後に彼女はこう言った。
「それが先生、この先を選んだ君の責務だ。」
目が覚める。
「……そう言う話はオラクルの方が得意だと思うけど、やってみようか。真実を見極め、そして……生徒を救う為の仕事を」
日織キョウカ……ティーパーティ・フィリウス派所属の3年生。
ナギサからの信頼は比較的厚い。
もっとも、それはあくまで一人の優秀な部下としての評価であり、居なくなったとしても組織そのものは問題なく回る程度の存在だと認識されている。
それ故に今回、重要だが政治的責任の伴わない仕事……オラクルの身の回りの世話役を任された。