ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の予言者   作:バトクロス

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4話完結じゃなく6話位必要そうです。
それと三人称視点ではオラクル、リオとの会話でもオラクル、その他の生徒との会話ではドクターと使います。

それと感想と誤字報告何時も感謝しております。図々しいですが、低評価の人も高評価の人も評価していただけると有難いです。


予言者とミレニアム

「『ミレニアムの調月リオがエリドゥの情報を一部解放、並びにセキュリティの大幅強化。』……流石にここまで大きなズレは見過ごせない。」

 彼女はタブレットを閉じて言った。

「オラクル、申し訳ないけど……キヴォトスの為、先生のために死んで貰う。」

 

 

 

 

 

 悲しい事だがミレニアムが所持するスーパーコンピュータは借りることは出来なかった。仕方がないからそれよりも数段スペックが劣るコンピュータを借りて3日前からデータの整理を行っている。

「正直言って今までのデータを整理してバグが無いか確認する程度の事しか出来なさそうだ。プリースティスには怒られてしまうな……いや、それよりも心配をかけるなと泣かれるかもしれない」

 独り言を言いながら『源石』のデータの整理を行っていると扉がノックされ、リオが入ってきた。

「おはよう、リオ。ノックをするのは良いけど一言入って良いか聞いて欲しいな。」

 そう言いながら椅子から立ち上がり、リオの方に向く。彼女の表情は何処か面倒くさそうだった。

「スパコンを借りに言って門前払いをされた日の翌日にユウカ達に詰められたのは知っているわよね?」

 謝罪も挨拶も返さずにずかずかと対面の椅子に座る彼女に内心多少はコミュニケーション能力と言うものを身に着けさせた方が良いかも知れないと思いながら未開封のミネラルウォーターを無言で差し出しながら話を促す。

「その後会議は紛糾したけれど最終的にはミレニアムが所持する特殊な管理シェルターとして情報を一部公開する事になった……私としては非常に納得しかねるけど。その結果一部の部活が私の行動を問題視して攻撃を始めたの。その中でも非公認のヴェリタスと言う部活、後特異現象捜査部のヒマリがエリドゥに対してハッキングを仕掛けてきた……安心して。あの都市の秘密を知りたかっただけで、別に基幹システムに攻撃を仕掛けた訳では無いわよ。」

 そこまで言うと目の前のミネラルウォーターを開け、中身を呷る。最初の頃よりも多少人の表情に気付き、話を展開できるようになったのは成長なのだろう。だが自分の考えている事とは少し違う。

「懸念事項はそこでは無いよ。ヴェリタスに前の黒崎コユキさんみたいな化け物が居るかどうかだ。」

 後に聞いたところによると、彼女は何故か過程を吹っ飛ばして答えにたどり着けるらしい。その原理は誰も分からず、結果としてそんなものだと扱われているとの事。彼女みたいな存在が多数このキヴォトスに居るとしたら色々と困る。

「化け物って……安心してそんなことは無いわ。呆気なく弾かれたから……と言うかヒマリのハッキングを防げるの凄いわね、彼女ソフトウェアについては私をも凌ぐのに。本題はここからなんだけど……貴女の情報が多少漏れたようなの。確かに私が最大限の情報保護をしていなかったとは言え、簡単に情報が抜かれる筈は無いのだけど」

 彼女は理解していなさそうだったが、自分には心当たりが有った。

 

 

「出所はおそらく連邦生徒会ではないか?もっとも何故そんなことをするのかは分からないが……」

 

 

 そう言うと彼女の目が見開かれ、直ぐさま頭痛を堪えるような表情をしながら頭に手を置く。

「確かに可能性としては有るかも知らないけど……有り得ない。普通に考えてそんなことをする意味が無いじゃない。ただ連邦生徒会の信用が暴落するだけよ。」

「だがそうなると何者かが私の暗号セキュリティを突破して連邦生徒会からデータを引っこ抜くか、セミナーの面々が意図的に私の情報を流したと言う事になる。」

「分かったわ。ただ誰が流したかは探らないで。仮にそうだとしたら色々と面倒な事になる。」

 リオの反論に冷静に考え得る事実を述べると彼女は溜息をつき理解を示した。もっとも調査は禁じられたが。

「とにかくその情報から『セミナーがとある外部の人間を匿っており、その情報を意図的に隠している。その人物の為にも、そしてキヴォトスの事を考えても隠し通すべきでは無い。その人物に危険性が無いか判断させろ。』と非難が飛んできている。」

 そこまで言うと彼女は再びミネラルウォーターを飲み、こう言った。

「明後日貴女が直接彼女等と話し合いをして貰う必要が有る。」

「拒否権は?」

「無いわ。」

 溜息を付きながら了承する。

「面倒くさいのは私も同じよ。まぁどの道何時かはしないといけなかった。その時期が早まったと考えましょう。」

 そう言いながら作業に取りかかるリオにこう質問を投げかける。

「対談を起こすために情報を流したと言う可能性は無いか?」

「それこそなんのために?」

「そうだよね。しかし可能性としては捨てきれない、あり得る可能性は……

 

 

 

 

 次の日、校内新聞には『外から来た博士、複数の部活と対談す』とセンセーショナルな見出しの号外が撒かれた。セミナーは学園の生徒には情報を提供しつつも、『事が大きく成りすぎると愉快犯によって様々な騒ぎが起こされる可能性が有る。彼女にも負担をかけたくは無い為断固として外には漏らすな』と全生徒には通知を出した。

 オラクルは人前に出るからとスーツを購入し、何時もの服のリオと共に明日、会議を行う場所の確認をしにきていた。

「……大抵大規模な対談や会議をする場合はこの会議室を使うのか?」

「えぇ、他学園とかの生徒にミレニアムを一望して貰いながら話し合いを行っているわ。」

 リオに連れられて場所の確認に来たオラクルは部屋を見て少し眉をひそめた後、先に部屋を出ようとする彼女に話しかけた「リオ、二つ頼みが有るんだが」

 

 

 

 

 

 翌日、ヴェリタス、特異現象捜査部、保安部、エンジニア部の四つの部長と部員が会議室で待っていた。

(リオが信頼している存在、どう考えても自分とは相性悪いでしょう。)そんなことを思いながら特異現象捜査部、明星ヒマリはあくびをする。(正直外部の人間の人権とかよりもミレニアムに害をなさないか確認したいだけ。と言うかエンジニア部以外は多分同じでしょう。)そわそわしているエンジニア部部長、白石ウタハは恐らく外の博士と言う事が気になって来たのだろう。

 そんなことを考えていると扉が開き、二人の人物が会議室に入ってきた。一人はミレニアムサイエンススクールの会長、調月リオ。そしてもう一人が黒いフードを被り、防護服の様なものを着た女性。

(彼女ですか……リオに匿われている人間というのは)何処か頼りない細さを感じさせつつ、眼光は鋭い。

(見極めさせて頂きましょう。)車椅子の上で手を組ながら目を細める。

「本題に入る。『ドクター』」

「初めまして、私が噂の人間。『ドクター』だ。」

 複数の視線に貫かれながら彼女は経緯を説明し始めた。

 

 

 

 

「……やはり場所はそこか。」ある少女がゴミ箱から号外を拾う。そこには『第二会議室で対談は行われる』と書かれていた。見上げるとガラスが反射して見えにくいが、建物の壁沿いのある一室に複数の人影が見える。

「おい、配置についたか?標的は通常通り、第二会議室に居る。」

 

 

 

「見えているよ」

 そこから数キロ離れた場所で相方の少女が対物狙撃銃を構える。彼女のスコープからも標的の上半身がハッキリと見えていた。

(にしても変な依頼だったなぁ。前払いで報酬の半分をくれたけど、そもそも()()()()()()()()()()。それに依頼内容も外から来た大人を大怪我さしてほしいとは。外から来ているのにも関わらず()()()()()()()()とかさ。どっからそんな情報を手に入れているのか。まぁ人殺しはしたくなかったから硬いだけ有難いけど。)

 そう内心呟きながらスコープを覗き込む。

「ファイヤ」

 引き金が引かれ、超音速で弾丸が発射された。

 

 

 

 

 

「一応経緯は予め説明した通りだ、質問は?」

「何故外に帰らないのですか?恩を返すためと言っても貴女の行動は何処か可笑しい。警戒に値するものであると自覚されていますか?」

「いや、何方かというと保護した後に調月会長が私達保安部に頼らなかったのが不自然だ。問い詰めるべきは会長の方だろう。」

 そんな話を聞いている最中、リオは視線の端で何かが光った気がした。その方向に振り向いた瞬間、窓ガラスが割れ弾丸が飛び込んできた。その弾丸はオラクルの元に真っ直ぐ向かい

 

 

 

 オラクルが事前に頼み込んで設置していた()()()()()()()()に罅をいれ、そこで止まった。

 

 

 

「本当に()()()()が起きた……」

 オラクルは会議室の下見をした際、『狙撃による暗殺が有るかも知れない、自分の座るところには防弾ガラスを追加してくれ』と言っていた。リオも内心突拍子もない想定だと呆れながらも準備をした。

「何故そうなると思ったの?」

 オラクルに尋ねると彼女は苦笑して

「対談を引き起こすために情報を流したと仮定した際、その事象が自分をある一定の時間、一定の場所に拘束出来ると言う事に気が付いた。しかしその目的が分からなかったが……会議室を下見して、これは狙撃による暗殺のためでは無いか?と考えただけだ。」

 そう言いながらある一点を見つめる。

()()()。リオ」「えぇ、要請通り『C&C』は既に動き出しているわ。」

 

 

 

「なに!?」『おい、どうした!』「ターゲットの場所に追加で防弾ガラスが設置されていた!」『はあ!?何処から情報を手に入れやがった!』「分かんないよ!」

 そう言いながらスコープを再び覗き込むと標的と目が合った。間違いなくこちら側は見えない筈なのに。鳥肌がたつと同時に風切り音がした。直感に従って回避するも、()()()()()()()()()()()()

「くそ、私達は掌の上で踊らされていたんだ!前金は貰っている、逃げるよ!」

 肩を押さえながら通信を切り、逃走を開始する。建物から飛び降り、路地を抜け、相方との合流地点まで走り続ける。不自然なまでの()()()()()に疑問を抱きながら合流地点に到着する。

「遅いぞ!」相方にそう言われながら車に乗り込みエンジンをかける。

 

 

 

「お疲れさん」

 ショットガンによってボンネットごとエンジンが穿たれ、車が爆発した。

 

 

 

『確保したぜ、取り逃がしはしなかったが、車の中にも傭兵の隠れ家にも依頼主の情報は無かった。二人まとめて確保したから消す時間は無かったはずだ。最初から依頼主の情報は持って無かったと考えるのが妥当だ。』

「分かった。」

 そう言ってリオは電話を切る。

「狙撃の場合は大抵二人組以上で行動するから、それぞれをキチンとマークしておけば大抵合流地点でその他の協力者もまとめて拿捕できるねぇ……確かに3人以上なら合理的ね。今回は二人だけだったからただネル達の苦労が増えただけだけど。取り逃がすとは思わなかったの?」「君の信頼を信用しただけだ。」

 事前に頼み込んだもう一つの「何かしらの事が有った時の為に、特殊部隊を会議中だけでも動かしてくれ。」と言う依頼を思い出しつつ部活に面々に向き直る。

「場所を変えて話しましょう。」

『いや、結構です。』

 二人を除いて目の前で起きた事件に衝撃を受けたようで、今日はお開きと言う雰囲気になった。

「私はまだ話したいです。」「私もだよ。」

 残った二人はヒマリとウタハだったが、ウタハは単純に外の技術に興味があっただけのようなので後日話をする事で合意した。

 

 

 

 

「秘密主義、ここに極まれりですね。」唯一話したいと言ったヒマリをつれ、リオと共にエリドゥに帰還した。

 開幕から敵意が滲み出ている彼女を無視してリオが何時も食事をしている部屋の扉を開け、ヒマリを招く。

「もし、貴女がこれ以上話を聞こうとするならばそれなりの規約に従って貰うわ。」

「そんな無茶「一つ、彼女の存在をみだりに話さない。二つここで聞いた話を誰にも漏らさない。三つ、彼女を殺害しない。4つ、連邦生徒会と秘密裏に連絡をとらない。」え?」

 ヒマリが反抗する前に4つの約束事を突きつける。

「……想像よりも物騒ですね。しかも1つ目と、3つ目、それと4つ目は重なり合っていませんか?」「それだけ抜け道を作りたくなかった。それだけよ。」

 ヒマリは訝しげに問うもリオは突き放すように告げる。

「分かりましたよ、えぇ。どうせ拒否したら何時もの秘密主義で私を突っ返すのでしょう?」

 悪態を付きながら開かれたリオとドクターに続いて入り、扉が背後で閉じた。

 

 

 

「それで、リオ。いい加減話をしてくださらないかしら。」

 部屋に入って既に数分経過した。「あと一人来るのよ。」とリオが言うものの、その人物は今だ来ない。痺れを切らしたヒマリが話をしろと問い詰めた瞬間、「遅くなりました!」と声がした。振り向くとセミナーのユウカが小走りで入ってきた。

「全員揃ったことだし、話し始めましょうか。」

 

 

 

 

「まず何でさっさとキヴォトスの外に出ないのですか?出る方法が分からないなら連邦生徒会にでも聞けば良いのです。」そう真っ先にヒマリが問い詰める。

(そもそも貴女が長期間ミレニアムに滞在していることが問題なのです)内心そう思いながらはぐらかしは許さないと眼光で示す。

「……自分は宇宙人でワープゲートの故障でこの惑星のこの都市に来た。だから直すまで帰ることが出来ない。そう言えば納得するかい?必要とあれば証拠も提出しよう。」

 返事は自分を馬鹿にしているとしか思えない話だった。

「巫山戯るのも大概にしてください!」そう言うとリオの方を向き、「貴女もこんな言葉に踊らされる程耄碌しましたか。下水と言うよりも最早排泄物ですね。」と怒りを滲ませながら言う。視界の端で少々ドクターの表情が硬直したように思えた。

「失礼、ではヒマリはワープゲートでは無くUFOの事故で来たと言ったら信じるかい?」

「巫山戯た事を。もっと納得できる理由を教えなさい!」

 ドクターのその発言に青筋がたつ。思わずそう言い放つ。だがその発言に対し彼女は肩をすくめて言った。

 

 

「……なら話は終わりだ。君はただ自分が納得できるだけの『解釈』を求めているだけのようだ。真実を知りたいわけでは無いのならこの対談の趣旨にはそぐわない。帰り道位は分かるだろう、帰ると良い。」

 

 そう言われると共に立ち上がったドクターに無理やり車椅子を動かされ、扉の外に出される。

「なっ、巫山戯ないでください!」そう叫んでも扉は開かなかった。

 

 

 

 

「それでユウカ。君は信じるのだね?」

 戻ってきたドクターからそう言われ、ユウカは「証拠を見せて頂けるのでしたら。」とあくまで中立的な見方を示す。

「それでこそ研究者の卵だ。」笑顔でそう言い、いそいそとパソコンを取りに行くドクターを横目に会長に尋ねる。

「会長は彼女がミレニアムに有益だと考えていらっしゃるのですか?」

「そうとは限らない、だが彼女は少なくとも彼女なりに私を助けてくれる。結果として害が与えられる可能性は零では無いけど、それは他の人間でも同じ事よ。」

 直ぐさま帰ってきた返事に内心舌を巻く。(随分と高く評価しているのね。)

「……会長はあの人が来てから少し変わりました。」

「そんな事は……いえ、そうね。確かに変わったかも知れないわね。」

 少し笑顔を見せるリオに驚きながらも「最初から教えてくれれば良かったのに」と愚痴を零す。

「別に悪意があったわけではない、ただこんな突拍子もない真実を言ったところで何も得るものは無く、寧ろ抱える必要の無い秘密を抱えるだけの事だと思ったの。」

そんな話をしていると「最低限のデータは持ってきた。」と言いながらパソコンを抱えたドクターが戻ってきた。

 

 

「『オラクル』、遅いわよ。」

「申し訳ない、データを移し替えるのに時間がかかった。」

「『オラクル』とはなんですか?」

 リオがオラクルと呼んだ事に疑問を呈すとドクターが代わりに「自分のコードネームだ。『預言者』と言う意味で自分の名前の様なものだ。『ドクター』は立場、所謂『セミナー会計』と言うようなものだ。リオだけは自分をオラクルと呼ぶ。」答えた。

 微妙な表情を浮かべるユウカに「完全に理解できるとは思えないが……これが『スターゲート』の情報の一部だ。」と言いながら中身を見せる。

 受け取ったユウカが目を通すこと数分

 

「……申し訳ありません。全く分かりません。」

 

 

そこに書かれた数式とプログラムの羅列はミレニアムの中で才児と言えるであろうユウカから見ても、全く理解が追いつかないものだった。

「これが『スターゲート』、所謂ワープゲートの基礎中の基礎の部分、『ワームホール生成理論』雛形だ。流石にこの情報よりも先の情報は漏らせない。」そう言うドクターに対し、理解できない物を見る目で見る。

「これが基礎ですか?あの……もう少し分かりやすく異星人で有ることの証明って出来ませんか?」

 えぇ……と言う目でこちらを見ながらリオに「事故とはいえ、ゲートからダイナミック不法侵入した際のデータ残ってないか?」と聞くも「あるけどそれが星の外から来たのかは断定できないわ。」と言われる。

「あの、会長、何で客観的証拠が無いのに異星人だと言い切れるのですか?」そう尋ねると歯がゆそうに

「この星では有り得ない科学力を持っている事が証拠になるとは思ってたけど、確かにそれがどれ程凄いのかを判断するのは難しいわね……」

 意外な所で躓きそれから数分経った。

 

 

 

「とにかく、納得するしないは後回しで、自分はワープで他の中継地点に行くためにこの星の座標を調べて貰っている。その解析が終わるまでは帰ることが出来ないって事です。」

 多少疲れた様子でドクターがそう言った。

「とりあえず別の質問に答えますよ。」

 そう言われ、他の気になっていた事を質問する。

「そもそも恩人とはなんなのですか?」

「それなら簡単だ」と言われて彼女はキヴォトスに来てからの動向を説明する。話を聞いているとドンドン顔が引き攣って来るのを感じた。

「会長。とりあえず初っ端の行動については後でお説教です。人道的な扱いを心がけてください。」

「彼女は少し苦言を呈しただけだったけど?」

「それでもです!」

 会長の反論を封殺してドクターに頭を下げる。

「リオ会長が失礼しました。いきなり教材を与えて個室に監禁するとは……」

「気にしなくて良い。」

 そう言ってこちらの謝罪を受け取らない彼女に対して個人的な疑問が湧き上がる。

「あの……不快だと思ったら言ってくださいね。やっぱり会長に対して何処か甘いですよ?それにキチンと恩は返して居るのですよね?資金援助もしたと言っていましたし。」

「そうかな?まぁ、多分甘いのは彼女が話をする際合理的で、尚且つ性根が悪くないからだと思う。後はヒマリだっけ?彼女の様に感情を表に出して人の恩人に対して排泄物とか言わないからね。リオはデリカシーは無いが意図的に人を傷つけるための言葉は使わない。結果として人を傷つける事は有っても。」

 彼女が随分とヒマリに対して悪印象を抱いている事に驚く。(余りヒマリ先輩を知らないとはいえ、彼女はミレニアムの生徒とは随分と価値観が違うようね。何だかんだヒマリ先輩は多くの人間に好かれているのに。)

「他に質問は無いか?」

 そう言われ、1つ伝える事を思い出す。

「前コユキに数秒で解かれた暗号なのですが……すみません、やっぱり導入させて頂けませんか?コユキ以外に誰も解けなかったので……」

 そう言うと彼女はニヤリとして「ミレニアムが誇るスパコンの貸し出しは?」と聞いてくる。

「……他の人が寝静まった深夜にに3時間、それなら使えます。」

「十分だ。とりあえず自分の事はある程度信用してくれるかい?」

「えぇ、私個人としては信用しても良いと思いました。ノアにもそう伝えます。」

 そう言って帰ろうとすると呼び止められる。

「それと……時間が有るならご飯でも食べていかないか?ついでに助けが必要な事が有るならある程度手を貸そう。リオ、せっかくの機会だ。一度後輩とまともに話してみないか?」

 振り向いて「料理は無さそうに見えますが……」と言うと「奥に冷凍食品が入っている。」と返答が来た。

「……まさか毎日冷凍食品ですか?」

 

 

 

 十五分後。

「お二人とも、取っつきにくすぎるんですよ!会長は秘密主義ばかりで何考えているか分からないし、ドクターはドクターで人当たりは良いけど結局何考えているか分からないし!」

「無礼講で良いわ。」とリオが言った結果冷食を前にユウカが激しい勢いで話し続ける状態が続いていた。

「第一まず何で情報源さえ言えない様な所に無断で探りを入れているわけですか?例え何かを知ったとして今回のように抱え込んで潰れるだけでしょう!?それに貴女は生徒会長なんですよ。何でそんなに人望を意に介さないで動くんですか!?」

「オラクル……確認だけど」「アルコールは入ってないはずだよ。身から出た錆だ、反省して聞きなさい。」

 余りにも口撃が激しいため、現実逃避でアルコールを疑うリオにやんわりと突っ込みを入れるオラクルだったが、「貴女もですよ!ドクター!」と呼ばれ、目を見開く。

「まず、貴女を知る一部の生徒から何と呼ばれているか知っていますか!?」

「いや、知らないが……」

「化け物黒フードですよ!確かに外部の人は弱いから防護服を着るのは分かりますが、もう少し怪しさを減らしてください!」

 その言い草に多少ショックを受ける。

「いや……話せば自分がどんな人間か分かると思うのだが……」

「学生がいきなり現れた明らかに不審者の格好をした謎の大人に態々話しかける訳がないじゃ無いですか!」

 オラクルが居た場所ではそんな事を考えた事さえ無かったため、その発言に驚く。そんな彼女を置いて更にユウカの怒りはリオに飛び火する。

「そもそも会長!貴女はドクターの服装に何か思わなかったのですか!?貴女は服装のセンス良いじゃないですか!」「……見苦しい服装ではないし、別に自分には関係なかったから考えもしなかった。」

 そんな返答にユウカはプルプル震えていたが溜息をつき、こう言った。

「ドクターは確かそのスパコンを使っている時間以外はもう出来ることは無いんですよね?」

「あぁそうだ。それ以外はリオに頼み事をされたとき以外は基本的に調べ物をしている。」 

「とりあえず明日からはヴェリタス、保安部、エンジニア部の所に向かってください。良いですね!」

「分かった。」

「それと……」

「如何した?」

 少し言い淀むユウカに問いかけるとキッと睨み付けられながらこう言われた。

「防護服なのは分かりましたから、もう少しデザイン性のマシな奴を着てください!明日エンジニア部に連絡を送っときますから!」

 

 

 

 

 

「ユウカは優秀だな。それに人望が有りそうだ。」

 その後、冷凍食品を食べ終わった後も、更にもう少し話をして帰って行ったユウカを見ながらオラクルが呟く。

「自慢の後輩よ。」

「それを言った事は有るのかい?」

「……」

「そう言うところだ。ただの人間として言わせて貰うなら、もう少しコミュニケーションは大切にした方が良い。」

 そう話しかけながらリオに問いかける。

「それと……明星ヒマリとの確執について教えてくれ。少し大人げなさ過ぎた。機会があれば謝っておきたい。」

「……」何故かリオの返答は遅れた。

「……謝る必要は無いわ。後で情報と補足は送っておく。」

 

 

 

 

 オラクルが自室に戻った後にポツリと呟く。

「……オラクルがヒマリと友好的な関係を築く事は良いことだ。なのに何で()()と思ったのでしょうね。」

 

 

 

 

 次の日、ユウカに連れられて約束通りまずは保安部に向かっていた。

「すまないな、君も仕事が有るだろうに。」

「いえ、この程度大したことではありません。それに暗殺未遂が有ったばかりですから。」

 オラクルは隣で案内をするユウカを横目で見つめる。(リオやヒマリが性格になんが有る大天才ならユウカはバランスの良い天才だな……組織的にはユウカの様な人材が居るのは有難い事だろう。)

 そんな事を考えているとユウカが一つのドアの前で立ち止まる。

「此処が保安部の部室です。」

 

 

 話し合いは比較的早めに終わった。もともとセミナーの下部組織的な側面が強く、自分達に情報を共有しなかった所について追求する予定だったらしいが、逆にこちらからある程度情報を開示し、更にユウカの手助けもあったことで、彼女等の疑念はある程度解消された。

「……随分と信用されているな。君が言うほど嫌われては居なさそうだが?」

 そう言うと彼女は微妙な顔をして「予算を握っている人間が嫌われない事などあり得ますかね?」と言ってきた。

「彼女達は『セミナー会計』は嫌いでも『早瀬ユウカ』は好きなんだろう。実際君はリオが取っ付きずらい事を考えると一般生徒にとってはセミナーの顔でもあるのではないか?身近に感じるからこそ恐怖心や不快感が軽減されより、君の魅力が強く感じられるのだと思うよ。」

「そうですかね……」

「……その様悩みを抱える等身大の人間性が垣間見える事も、好かれている原因の一つだろう。だが、それでも気になるなら今度生徒に聞いてみると良い。」

 そこまで言って彼女が何時の間にか自分を見つめている事に気が付いた。

「キチンと二人きりで話したのは今日が初めてでしたが……リオ会長と仲が良く、思想も近しい場面が多い為、似たような性格なのかと考えていましたが、随分と人間らしいんですね。彼女の様な合理性の塊とは大違いです。」

 

 

 その言葉に何故か反論しようとしている自分が居ることに気が付いた。(随分と入れ込んで居るな。)そう思い、苦笑しながらユウカに自分が考えていることを伝える。

 

 

「彼女よりもよっぽど自分の方が()()()()()、いや、()()()()()()()()()()()()。彼女は確かに強権的で人の心に疎いが、それでも彼女のやっていることは究極的には全て()()()()()()()()()()()()彼女は学生で有りながら自分の仕事はミレニアム、もっと言えばキヴォトスの平和の為に尽くすことだと考えている。確かに人の心が無いように見えるかもしれないが、彼女の根幹をなすのは責任感と優しさだ。それは人の心によって構成されるものじゃ無いか?」

 自分が饒舌になっていることを自覚しながらも話しを続ける。

「その考え方自体は素晴らしいものだと思う。だが、彼女の合理性は()()。何処かで『私が正しいのだから納得して貰える筈だ』と言う考えが透けて見える。だから無駄が多い。」

 そこまで言うとユウカの目に恐怖が浮かんでいるのが見えた。

「でもドクターはそんな風には全然見えません!」思わず口調が強くなり、直ぐさま口を塞ぐ彼女に優しく言う。

「自分は確かに普通の感性を持っている。喜怒哀楽をある程度感じ、辛いことは辛いと漏らす、ただの人間だ。だが……どうしようも無く必要な事であれば自分は()()()()()()ことも厭わないだろう。仮にその中に大切な友人や子供、孫が居ようとも。咽び泣きながら、それでもレバーを引くだろう。勿論例えだがね。トロッコ問題に関しての考え方は彼女と極めて似ている。」

 そこまで言って一息つくと彼女に向き合いこう言った。

「期待に添えるような回答が出来ず申し訳ない。今のは忘れて欲しい。」

 そう言って気を取り直したユウカと共にエンジニア部に向かった。

 

 

 

 ユウカの瞳には未だに恐怖の色が見え隠れしている事に気づかぬまま……

 

 

 

「初めまして、ドクター。私は白石ウタハ。エンジニア部の部長だ。一応リオから未知の病原菌や、ウィルスが無いことは確認済みだと連絡は受けたけど、それはそれとして身体測定をして貰おうと思っているよ。」

 扉を開けると直ぐさま髪の長い少女が元気よくまくし立ててきた。

「落ち着いて頂けないか?」

 思わず半歩下がりながらそう言うと彼女は多少落ち着いたようで、詳しい話しを始めた。

「一応前の集まりに自分も居たけど、他の部活と違って野次馬根性だったんだ。だから別にそこまで堅苦しくし無くて良いよ。後はユウカから『まともなデザインの防護服を作って。ただし変なのは付けないこと!予算は彼女が出すから!』と言われてね。身体測定、受けてくれるかな?」

 頭を掻きながら少し考え了承する。

「変なのが出て来ても驚かないでくれよ。」

 

 

 

 結論から言うと彼女達はオラクルの脳波が定期的にある特定のパターンを描くことに気が付いたがそれが何を意味するかは誰も分からなかった。

 

 

 

「……とりあえず検査は終わりだ。奇妙な脳波が観測された事以外は特に気になることはなかった。」

 そうウタハが言った時、彼女はオラクルに心当たりが有ることを疑った。

「これは()()()()()()?ドクター。」

()()

 間髪を入れず答えたオラクルを疑惑の籠もった目で見つめる。

「……まあ良い。今の所大きな問題は確認できなかったよ。貧弱なのはキヴォトス外の人間に共通するものだから安心してくれ。防護服は1週間有れば作れると思う。その時にまた話そう。」

「ありがとう。」

 先に折れたのはウタハだった。話しを流し、他の話題に移ったウタハに感謝した。そのまま部屋を出ようとするオラクルに向けてウタハは言った。

 

 

「何時かは話して貰うよ。技術者として追求するべき物だと思ったからね。」




オラクル(ドクター)……この出来事の数万年後、例えは現実となり、滅亡のレバーを引いた。だがそれは不完全なものであった。

灰白質のリンチピン……自分が向かう場所を決して忘れるな。亜空間は征服されたかもしれないが、進路を外れた心は航海における唯一の敵かもしれない――それでも、偉大な旅路なのだ。

リンチピン……リンチピンとは、非侵襲的な精神インプラント技術を用いた治療法であり、空間認識能力と記憶力を強化するために使われる。主な被験者(Lynchpined)は、超光速航行が可能な艦船の操縦士であり、リンチピンによる強化は操縦士の使命を果たすのに不可欠である。
端的に言うと、リンチピンは議論中における脳波パターンを記録し、それを周期的にメタ意識層に再刺激することで、操縦士は目的地への主体的、論理的でかつ明瞭な認識が可能となる。
リンチピン無しには長期に亜空間に晒される航海においては主体的、論理的でかつ明瞭な認識は困難である。
オラクル達は、異なる目的の為、それを使用した。
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