ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の預言者   作:バトクロス

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今回は一部読みにくい所が有りますが、そこは何かが隠れている……かも。今回は特殊、補習授業部と特別授業が無いトリニティに入って最初の日曜日の話です。
補習授業部は土曜日にも授業があり、特別授業は金曜日で終わっていると設定しています。





 5日間補習授業部を指導し、ヒフミに対して違和感を伝えた翌日。

 休日であるこのタイミングを利用して私はトリニティから一度出て、再び連邦生徒会の防衛室長室を訪れていた。

 緊張で吐きそうだ。私は本来こんな交渉事は好きでは無いし、向いていない。本来は私は純粋に生徒達の助けになって悩みを解決する事だけを考えたかった。だが、オラクルの頼みとは別に今回のエデン条約を考えるとSRTはあった方が良い……私が、私がやらなければならないんだ。

 

 

 

 

「また来たんですか。今度は一体何を企んでいるのです?」

 不知火カヤは呆れたようにそう言った。

 

「言い方に棘があるな、実行力が有ると言って欲しいな。」

 私は苦笑しながら資料を机の上へ置く。その資料は補習授業部のあった平日の午前中に作ったものだ。

 

「前回言われた事を整理してみたんだ。今回は()()()()()()()()()。」

 その言葉に、カヤの眉が僅かに動いた。

 

「……ほう。」

 資料に手を伸ばす。

 ページをめくる。

 そして数分。

 部屋は静寂に包まれ、ただ紙をめくる音だけが続いた。

 やがて資料が閉じられる。

 

「予算。」

 最初に口を開いたのはカヤだった。あるページを開き直し指をさす。

 

「元々SRTへ割り当てられていた予算の再編成。そして不足分についてはシャーレも負担する。」

 視線を上げる。

 

「随分と思い切りましたね。」

 

「今の連邦生徒会はSRTに充てていた予算を既に一部他の事業に使っているだろうしね。それに対外的な責任分散としての側面もある。」

 彼女の視線に物怖じする必要は無い。ただ自分の意見を言うだけだ。

 

「連邦生徒会だけが予算を出しているなら、また私兵だと言われるだろう。」

 

「成る程。」

 彼女は頷く。

 

「少なくとも政治的には前回より遥かにマシです。」

 そのまま次のページへ進む。

 

「組織構造。」

 やがて彼女は読み上げた。

 

「通常時はヴァルキューレ所属。非常時のみ独立運用。」

 

「前回言っていた通りだよ。」

 

「ええ。」

 資料は閉じられていない。それがまず評価の証拠だった。

 

「私も元々、防衛組織そのものには反対ではありません。」

 

「知っている。前回君がそう言っていたからね。」

 

「だから言います、この部分は良い。」

 その言葉は短い。

 だが明確だった。

 

「旧SRTの今の問題責任が宙吊りな事ですが、そもそもの原因は組織構造が独立し過ぎていた事です。ヴァルキューレなら簡単にその様な事象は起きない。」

 彼女は指で机を叩く。

 

「警察組織の枠組みに組み込むなら話は変わる。」

 

「そう思ってもらえるなら嬉しいよ。」

 

「まだ賛成はしていません。しかしこれについてはそこまで問題は無いでしょう。」

 そして次。

 指揮権。

 

「リン代行に私、アオイにアユム……そして先生。」

 カヤは読み上げる。

 

「五名中三名の承認。」

 沈黙。

 

「確認ですが、権力欲は無いのですよね?」

 

「無い。それは前言った通りだ。」

 

「そうですか。」

 それだけだった。

 だが彼女はそれ以上そこは追及しなかった。だが()()()()()()()()()()

 

「権力分散という意味では悪くありません。」

 そして続ける。

 

「少なくとも、一人の判断でSRTが動くよりは遥かに安全です……しかし。」

 やはり来た。

 

「先生。」

 資料が閉じられ、彼女の薄目が此方を見定める。

 

「何故貴方が入っているのですか?」

 

「シャーレは独立組織だから。」

 私の返答は即答だった。

 

「それは理解しています。」

 

「なら。」

 

「理解しているからこそです。」

 彼女はため息をつく。

 

「連邦生徒会の緊急対応機構に、外部組織の代表が承認権を持つ。そんな前例はありません。」

 

「今までにも無かった状況だからね。それに……カヤはシャーレが独立組織であると言う建前と、シャーレは連邦生徒会の影響を大いに受けていると言う実情を使い分けるつもりかな?」

 

「……少なくとも他の人間がどう思うかは分かりませんから。最悪の想定を行うべきです。」

 

「仮にそうだとしても……キヴォトス全体に関わる危機なら、連邦生徒会の外から見られる人間が必要だと思う。それとここだけの話、君は君が言う『ことなかれ主義の生徒達』がそんなに強権を振るうことに賛同するかな?私は必要とあれば賛同するよ。多数決には数が必要だ。」

 

「……反論しにくいですね。」

 カヤは小さく呟く。

 そこでもう一枚、エデン条約を推し進めるリオやオラクルに対しては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そもそもこのタイミングでこの話を持ってきたのには一つ理由がある。」

 

「何です?」

 

 私は少しだけ声を落とす。

「ここだけの話だ。」

 

「ミレニアムは近いうちにエデン条約へ参加する。」

 カヤの表情が僅かに変わる。

 

「……ほんとうですか?」

 

「まだ表に出ていない話だ。だが実質的には決まっている。しかもただの停戦協定や平和条約ではない……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 カヤは黙る。

 その反応を見ながら続けた。

 

「そうなればゲヘナとトリニティだけの話ではなくなる、ミレニアムも加わる。」

 

「ですがそれはあくまで平和条約でしょう?」

 彼女は安全保障と言う概念について今一理解しきれていない様だ。

 

「そうだ。だが同時にキヴォトス最大級の政治的枠組みでもある。」

 カヤが腕を組む。

 

「続けてください。」

 

「ゲヘナには風紀委員会がある。」

 

「ええ。」

 

「トリニティには正義実現委員会がある。」

 

「ミレニアムには?」

 

「C&Cと()()()がある。」

 そこで私は一度言葉を切った。

 

「なら連邦生徒会には何がある?」

 

「……ヴァルキューレがあります。」

 

「警察組織だ。」

 私は即座に返す。

 

「優秀ではある。だが本質的には治安維持組織だ。」

 沈黙。

 

「先生は、エデン条約に対する牽制としてSRTを使うべきだと言いたいのですか?」

 

「そこまでは言っていない。ただ、連邦生徒会としては見せ札としてのカードを一枚持っておくべきだと言っている。」

 その言葉にカヤは眉をひそめる。

 

「カード?」

 

「危機が起きるとは言わない。実際彼女達は侵略の為にエデン条約を結ぶつもりではないんだ。」

 

「……随分と詳しいですね。」

 

「私はミレニアムで成り行きとはいえ多少はその事について聞いたからね……先に言うと私はこの様な事は()()()()()()()()()()()()。」

 私はそう前置きする。

 

「だが危機が起きた時、誰かが武力を持っている状態と、誰も持っていない状態では交渉力が違う。」

 

「……。」

 

「私はエデン条約を否定する気は無い。」

 

「でしょうね。」

 

「だがエデン条約が成立した後も連邦生徒会は存在する。」

 そして最後にこう言う。

 

「なら連邦生徒会も自分の手札を持つべきだと思う。」

 私はそこまで言って口を閉じた。

 

 

 

 

 

「……話を戻します。ヴァルキューレによる監査。」

 

「うん。」

 

「ただし機密捜査権無し。」

 

「そうしないと任務にならない。」

 私の言葉に彼女は即座に首を振った。

 

「駄目です。」

 否定の口調は強かった。

 

「そうだと思った。理由も分かっている。」

 

「なら話は早いですね、旧SRTも機密を盾にしていました。」

 

「……だが、機密とは知られてはならない事を言う。機密とは知る人間が少なければ少ない程漏れにくい。」

 

「それでもです。最低限、防衛室長とリン代行には開示義務を設けてください。」

 

「そこは検討する。」

 

「検討ではありません。必須です。」

 意志は固そうだった。

 

「……そこまで言うのなら、分かった。」

 今度は責任者について。

 

「リン代行と私、そして先生。」

 カヤが腕を組む。

 

「ここは修正が必要です。」

 

「理由は?」

 

「責任が曖昧です。」

  彼女は即答した。

 

「失敗した時、誰が責任者なのか分からない。」

 

「全員だ。」

 

「政治はそういう仕組みじゃありません。」

 

「厳しいな。」

 

「防衛室長ですから。」 

 そして資料を机へ置き直し、カヤは椅子にもたれかかった。

 

「……。」

 長い沈黙。以前ならここで終わっていた。

 だが今回は違った。

 

「……私はこの案に全面的に賛成している訳ではありません。ですが、私がこの案を伝えられた場合()()()()()()()()()()()()は有ります。」

 彼女は手のひらを此方に向ける。

 

「組織構造、予算、指揮系統、監査……そして責任。」

 彼女は指を折りながら数える。

 

「まだ粗はあります。」

 

「多いかな?」

 

「微々たる物ですが。ですが前回とは違う。」

  そして初めてカヤは小さく笑った。

 

「少なくとも話を聞く価値はあります。」

 

「それは進歩と思っていいのかな。」

 

「ええ。大きな、大きな進歩です。」

 そう言ってカヤは資料をまとめる。

 

「防衛室で前向きに、実行に向けて検討します。」

 

「ほう。」

 

「それとリン、アオイ、アユムにも回します。」

 

「ありがとう。」

 私の言葉にカヤは肩を竦める。

 

「勘違いしないでください。私が全力で賛成意見を投じたとして、今回通る保証などどこにもありません。」

 

「知ってる。」

 

「それに学園側の反発もあるでしょうし、世論もある。」

 

「そうだろう。」

 そして立ち上がる。

 

「ですが。少なくとも、私は今回の案にベットする事にしました。」

 

「それは嬉しいな。」

 私はそこまで言って腕時計を見た。

 

「……長話をして済まなかったね。これからもよろしく頼む。」

 そう言って前回の様に追い出されないよう、自分から部屋の外に出た。

 

 

 

 

 

「今回の件に関しては本腰を入れざる負えないですね。落ち目のカイザーとの関係を打ち切ってでも此方にベットする事にしましょうか……やってやります、このプロジェクトを達成して私こそが超人の後釜になるのです!」

 

 

 

 

 

 

 カヤとの打ち合わせが終わり、防衛室を出ると疲れから思わず壁にもたれ掛かってしまった。幸い周囲には生徒達は居ない。

『先生!無理をしないでください!防衛室に入る直前まであんなに緊張感と自己嫌悪で吐きそうだったじゃないですか!』

「アロナ……大丈夫だ。私は大人だからね。子供がこんな()()()()使()()()()()()()()()をする必要が無いのが本来なんだ。それを多少は肩代わりしてあげる事も必要じゃないかなぁ。」

『先生!それは先生の役割からズレてます!そもそも先生の生徒達を守り、生徒達の味方で居ると言う心情はどうなったのですか!?』

「違うよ、アロナ。私は本質を変えたことは一度もない……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼女達みたいに合理性や正義の為なら、生徒達を切り捨てかねない人間とは違う。私は生徒達を守り抜く為に汚い手を使っているんだ。」

『先生ならそんな手段を使わなくても何とか出来ます!』

「そうでありたいよ……」

 

 

 

 

 

 

 私はキョウカと話をした翌日、ナギサから送りてきた秘匿通信で話をしたが、残念ながら余りめぼしい情報は手に入らなかった。

 

 その為依頼のことは後回しにして先にミレニアムに電話をする事にした。どうせなら直接会って話したかったが、先生とは違い私には特別な防御手段が無い。仕方無く連絡は私が持ち込んだ端末で行う事にした。

 

「……やぁ、リオ。1週間ぶりだな。」

 

『えぇ……何か進展があったの?』

 通信は無事に繋がり、彼女の声を久し振りに聞く事が出来た。

 

「生憎現状は何も。ただ、上層部に対して自分の価値は示せたと思うし、これ以上待っても進展は無いと思うから、来週から本格的に対象にアクションを起こすことにするよ。」

 

『そう。私は貴女に関しては何も心配してないけど……トリニティはどう?』

 

「なかなか厳しいね、ミレニアムに遭難したのは本当に幸運だったと痛感したよ。此処は非合理的な慣習が多すぎるし、人の感情を読む前にそもそも対象と接触する事が難しいから……そう考えるとユウカのフットワークが寧ろ軽すぎるのか?」

 

『ユウカが軽いのと、トリニティが不必要に重いのは両立するわ。』

 そんな軽い報告をした後直ぐに本題に入る。トリニティでは様々な手段を講じて会話を楽しませる、或いは興味を惹きつける必要あったが、リオは無駄話を好まない。

 

「ミレニアムの状況について知りたい。主にコユキの教育とエデン条約への対価の投資、量産型アビ・エシュフにティタノマキア、そしてリオ、()()()()()()。」

 

 

 

 

「まずコユキはどうだ?」

 

『現状維持よ。』

 開口一番の質問に対して、リオは溜息混じりに答えた。

 

「進展無しか。」

 

『厳密には違うわ。エンジニア部に任せていたプロトタイプは会話自体は成立するようになった。けれど対話型AIとして完成したと言える段階ではない。』

 端末越しにキーボードを叩く音が聞こえた。ピコンと対話データが送られてきた。

 

『これが会話ログよ、後で確認しておいて。貴女の案ではコユキに必要なのは知識ではなく、功利主義によって常識を補助する仕組みよ。だけどこの対話型AIは功利主義と常識の定義そのものが曖昧すぎる。』

 

「確かに道徳や哲学は人口知能が判断基準を考えるのはむずかしいからね。」

 

『えぇ。それにコユキはAIの言う事を素直に聞く人間でもないわ。勿論ただ人間に後から指導されるよりは常時判断基準の補助が出来るAIはあった方が良いけど……』

 僅かに苦笑する気配。

 

『現状はむしろ悪い影響を受ける可能性の方が高いわ。』

 

『話を聞いた感じ、それは否定できないな。』

 

『だから今は最低限の判断補助機能だけ先に作っているところよ。完成はまだ先になる。』

 彼女の判断に頷いた。

 

「焦る必要は無い。あの問題は長期戦だ。たった1週間でそんなに進む訳がない。」

 

『同感よ。』

 短く返答した後、リオは話題を切り替えた。

 

『次はエデン条約関連ね。』

 

「あぁ。投資はどうなった?」

 

『概ね予定通り。今は相手方から貰った情報を元に概算を出した所よ。これはユウカとノアがやってくれたの。予算関係は元々会計の仕事とはいえ上手く纏めてくれたことには感謝しているわ。』

 

「臨時予算の内訳は?」

 

『七割は部活動の支援と学園運営に回したわ。』

 

「思ったより多いな。」

 

『当たり前でしょう、ミレニアムは研究学園よ。軍隊ではない。』

 その言葉に少しだけ満足そうな空気が混ざる。

 

『インフラ、設備更新、研究助成、予算不足の部活動への補填。こちらの方が遥かに重要だわ。』

 

「残り三割が軍事費か。」

 

『えぇ……と言うよりも3割の内の半分は、設備費として計上しているの。ソッチのほうが角が立たない。』

 そして少しだけ声が低くなる。

 

『正直に言うと私は軍拡そのものに積極的ではない。』

 

「そうだと思っているし、そうであって欲しいと思っているよ。」

 

『私は武力の価値を理解しているわ。だけど武力は維持費が高すぎる。』

 

「なるほど。」

 

『だから必要最低限。それ以上は研究投資の方が有益よ。』

 私はリオの回答に異論を挟まなかった。

 その判断は実に彼女らしいと思えたからだ。

 

「量産型アビ・エシュフは?」

 今度は技術の話。

 すると通信の向こうから微かに嬉しそうな気配が返ってきた。

 

『順調よ。』

 

「ほう。」

『少なくとも量産型機そのものはほぼ完成した。』

 珍しくリオの返答が早かった。

 

「それは……思ったより早いな。」

 

『既存技術の流用が出来たから。それと投資に先駆けてエリドゥに施設を作ったの。元々あの都市は私が作ったロボット達と無名の司祭の技術力を解析した時の副産物によって出来ているの。予算さえあれば1週間でちょっとした施設位は作れる。』

 彼女は続ける。

 

『話を戻すと、装甲制御、火器管制、演算補助のオンオフ機能。そういった部分は既に完成したのただ……』

 

「問題は飛行能力か。」

 自分の確認に彼女は

 

『そう。そこなの。』

 と僅かに悔しさを含んだ声で言った。。

 

『スラスターユニットの縮小化が上手くいかない。』

 

「出力不足?それとも姿勢制御?」

 

『そこは問題ない。問題は重量と排熱、そして継続性。』

 即答。

 

『出力だけなら無理をすれば可能。でもそうすると稼働時間が死ぬ。それにレールキャノンの瞬間的な放熱とは比べるまでも無いとは言え、ずっとスラスターを吹かしていると直ぐに火傷になる。』

 問題は理解した。それは工学者として極めて普通の壁だった。

 

「飛べる。だが戦えない。」

 

『ただの実験用の飛行機ではなく量産型の兵器だから。』

 ただ、彼女の声には力が籠もっていた。

 

『この程度の技術的障害、超えてみせるわ。』

 それが彼女の結論だった。

 

「念の為聞こうか、()()()()()()()()?」

 もう一つ技術的な事について尋ねる。

 

『……貴女は反対だったのよね?』

 

「あぁ。」

 

『ならごめんなさい。余り言えることは多くない。ただ、どの道スラスターとセルユニットの輸送方法以外は今のアビ・エシュフと対して変わらないわ。』

 

「これについては秘匿しておきたいと……わかった。」

 

『ごめんなさい。ありがとう。』

 それだけ言って彼女はこの話については会話を打ち切った。

 

 

 

 

 会話を打ち切って数秒後オラクルが再び私に対して口を開いた。

 

『最後だ。君について聞きたい。』

 思わずが小さく息を吐く。

 

「何から聞きたいのかしら。」

 

『随分と嫌そうだね。最近の様子とか。』

 

「嫌なわけではないの、ただ……話す内容が思い浮かばないの。貴女が何を求めてこの話をしようとしているのか。」

 

『なら具体的に聞こう。』

 少しだけ笑いながらオラクルは言った。

 

『トキはどうだ?』

 彼女が何を言いたいのか、思い当たる節しかなかった。

 

「あの子に何を言われたの?」

 

『別に。』

 間違いなく嘘だった。

 

「……最近よく来るわ。」

 

『そうか。』

 

「仕事を手伝う。」

 

『うん。』

 

「相談に乗る。」

 

『うん。』

 

「そして。」

 私は少しだけ言い淀む。

 

「頼ってくださいと言ってくる。」

 オラクルは吹き出しそうになった様だ。

 

『随分と積極的になったね。良い事じゃないか。』

 

「良くないわ。」

 即答。

 

『何故?』

 

「重い。何というか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 今度は本当に吹き出した。

 

『トキが聞いたら泣くぞ。』

 

「分かってるつもりよ。だから言ってないし、好きにさせているのよ……私もトキの事は信頼しているし、大切なのよ」

 恥ずかしい事を言っていると自覚はしている。だが否定はしなかった。

 

「ただ以前より素直になったのは事実ね。」

 自然と声が少し柔らかくなる。

 

「前は私を無言で支えようとしていた。何を考えているか分かりにくかったけど、聞かれないのは都合が良かった。」

 

『今は?』

 

「口煩く支えようとしている。」

 少しだけ考え、そして続けた。

 

「だから扱いに困るのよ。」

 

『君は好意を向けられるのに慣れていないからな。』

 

「そうかもしれない。」

 否定しなかった。それが答えだった。

 

『リオ。』

 

「何?」

 

『たまには頼ると良い。』

 オラクルの声は静かで、そして優しかった。

 

「貴女まで同じ事を言うのね。」

 

『トキほどしつこくはない。』

 

「えぇ、本当に。」

 思わずくすりと笑う。数ヶ月前なら考えられない事だった。

 

『私はその内帰る。』

 オラクルが唐突にそう言った。思わず黙る。

 

『だから私以外にも頼れる相手は増やしておけ。』

 

数秒。

沈黙。

「努力はしているわ。」

 

『知っている。』

 

「ユウカもいる。」

 

『うん。』

 

「ノアも、トキもいる。」

 

『うん。』

 

「だから大丈夫よ。」

 そう強がって電話を切った。

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