ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の預言者   作:バトクロス

33 / 39
かなり微妙かつリオの出番が少なくなってしまった章でしてそこは反省しています、もう少し出番を作れた所あったかもなぁと言う話です。
後補習授業部の扱い、特にヒフミがただただ普通の生徒なのでそこから展開を作る努力をするべきだったかなぁとも思いました。

それでも何とか終わらせました、次回からは新章です。


liberation

「この作戦をどう思っているんだい、リオ」

「……はっきり言わせてもらうなら、この程度の組織に負けるようではアリスを突破出来ないと思うわ。」

「私が帰る前にアリスの事については方を付けておきたいね。」

「その事なのだけど……作戦が終わり次第話したい事が有るの、観測した宇宙についてよ。」

「承知した。」

 

 DU地区、サンクトゥムタワー。

 連邦生徒会が保有するその塔の一室は重苦しい空気に包まれていた。

 普段は連邦生徒会の内部で会議を行う為の部屋には何時もと異なり幾つもの勢力の要人が集結していた。

 ゲヘナ学園万魔殿議長、羽沼マコト。

 トリニティ総合学園ティーパーティーホスト、桐藤ナギサ。

 ミレニアム・サイエンススクール会長、調月リオ。

 連邦生徒会防衛室長、不知火カヤ。

 そして遠隔でミレニアム・サイエンススクール次期会長の早瀬ユウカ、ゲヘナ風紀委員長の空崎ヒナ、トリニティ総合学園ティーパーティー元ホストの百合園セイアが参加している。

 今は最後の参加者を待っている所だが、参加者の内過半数が私を睨む、或いは観察するような視線を向けてくる。

 

「……私は先生の推薦込みでカ(・)ヤ(・)防(・)衛(・)室(・)長(・)は(・)今回来て構わないと判断したのですが、何故連邦生徒会の行政官様までいらっしゃっているのですか?」

 

「そうね。私も疑問だわ。七神リン、貴女の様な連邦生徒会長の影響を強く受けている生徒は此処にいて欲しくないのだけど。」

 初手で私に対して桐藤ナギサと調月リオの問い詰めるような質問が来た。

 

「申し訳ありません。ですが彼女は連邦生徒会の会長代理、そしてSRT発動には複数の室長の承認が必要なので。議題についての情報は聞かされましたが……貴女達がカヤ防衛室長と繋がっていようとも、それだけではS(・)R(・)T(・)を(・)動(・)か(・)す(・)事(・)は(・)出(・)来(・)ま(・)せ(・)ん(・)。」

 私は昨日、カヤから情報を渡され、慌ててその情報の精度を確認した上で何とかこの会議に自らをねじ込んだ。彼女があくまで予測される危険性程度のトーンで話していた事がまさかもう起こりつつあった事に驚愕したものだ。

 

「つまりSRTを動かしてほしければ此方の要求を飲めと……キキキッ、勘(・)違(・)い(・)し(・)て(・)い(・)る(・)様(・)だ(・)が(・)S(・)R(・)T(・)な(・)ど(・)居(・)よ(・)う(・)が(・)居(・)ま(・)い(・)が(・)ど(・)う(・)で(・)も(・)良(・)い(・)。(・)マコト様にとっては目的の達成の為の手段は重要な要素では無いからな。」

 私の軽い牽制に対して、羽沼マコトはいきなりならば必要ないと切り捨ててきた。

 

「リン、貴女は一度立場を弁えてください。今回我々はあくまで参加を希望する立場です。必要な事は言うべきですが、敵意を含ませすぎです……失礼しました。」

 

「ハハハ、どうやらそこの防衛室長は立場を分かっているようではないか。だが……私はそこのミレニアムとトリニティと違ってSRTの事について何も知らん。既にトリニティで手を組むと決めた時点で正直些末な事だが敢えて聞こう、お前は何の為に組織を立ち上げ、何を提供するつもりだ?」

 会話を繋いだのはカヤだったが、マコトは彼女に対して答えづらい質問をしてきた。彼女は意見を押し通すときに目の前の彼女たちを引き合いに出して説得したのだから。

 

「具体的な協力体制については後ほど説明します。そして理念ですが……連邦生徒会の権威の衰えによる信用と治安の低下を食い止める為ですかね。」

 

「ほう、では本音は?」

 

「概ね本音です……勿論それだけとは言えませんが、お互いに知られたくない事はあるでしょう。ですが、誓って言えるのは貴女達に対して不利益を与える様な事はしません。単なる暴力装置として警戒されるだけだった頃とは全く違う組織ですから。」

 そう受け流し、更に会話をしながら彼女は私に下手な事を言わないで欲しいと目で訴えかけてきた。

 私は一応連邦生徒会長の代行を務めているのに扱いがすこぶる悪いと思いながら口を閉ざしていると

 

「遅れた!申し訳無い……」

 扉を開けて先生が入って来た。

 

「いえ、先生がご多忙なのは存じ上げて居ますから。そしたら今から始めましょうか……アリウス解放戦争について。」

 そうナギサは宣言した。

 

 

 

 

 

「では最初に飛び入り参加であるSRT再建の立役者である不知火カヤさんに聞きましょうか。連邦生徒会とSRTは何を提供し、どの様な役割を遂行するつもりですか?」

 私は既に先生から大まかな説明は聞いており、納得もしている。しかしそれでも具体的な話を聞く必要があった。

 そして彼女を少しでも見極めようと言う意図もあった。

 

「現場と戦後処理の両方について話をさせて頂きます。まずSRTは少数精鋭の特殊部隊です。その為前線を押し上げると言う方向性では役に立ちません。しかし撹乱や斥候、そして破壊工作と言う面に置いて並ぶものは無いと考えており、また敵の少数精鋭のチームや単独の強者に対しての足止めも十分にこなせます。」

 そこまでを一度に言った後、彼女は七神リンを見てこう続けた。

 

「次に戦後処理についてですが、エデン条約に加入している3学園では抱えきれない少(・)年(・)兵(・)達(・)の(・)更(・)生(・)と(・)再(・)出(・)発(・)を行わせていただきたいと思っています。具体的には一度ヴァルキューレで身柄を預かり、再教育を行っている間に生徒達を受け入れても良いと言う学園を募り、教育が終わり次第生徒達の希望進路を聞き、学園に斡旋すると言う形を考えておりますが……正直昨日の今日で仕上げたものですのでまだ内部合意はとれていません。」

 何(・)処(・)か(・)驚(・)愕(・)し(・)て(・)い(・)る(・)様(・)な(・)行(・)政(・)官(・)を尻目に彼女はそう言って、説明を終わらせた。

 ……トリニティで権力闘争をしてきた私だから分かる。不知火カヤ、彼女は優(・)秀(・)で(・)あ(・)り(・)、(・)そ(・)し(・)て(・)危(・)険(・)だ(・)。

 彼女は確かに私達にとって無視できない明確なメリットを突きつけた。しかし、おそらくそれは空(・)手(・)形(・)だ、明らかに連邦生徒会内で連携が取れていない。なのにおそらく彼女の提言は通り、その政策は実行されるだろう。

 仮に今回の提言を通さなかった場合、連邦生徒会の権威が更に崩れる事になる。先程マコト議長と彼女が話していた際、彼女は『連邦生徒会の権威の衰えによる信用と治安の低下を食い止める為ですかね。』と発言しており、連邦生徒会の過半数がそれに賛同していると考えられる現状、通らないと言うのは考えられない。

 

「分かりました。私達にとっても非常にメリットとなるものですね。分かりました、よろしくお願いします。」

 ひとまずそこで思考を打ち切り、私は彼女達の参入を正式に認めた。

 

「次にゲヘナ学園の羽沼マコト議長にお聞きします。ゲヘナはどの程度協力してくれるのですか?」

 次に長年非友好的な関係だったゲヘナに質問をする。

 彼女の返答はシンプルだった。

 

「風紀委員全員を出撃させる。指揮系統は与えないが、そちらと協力もしよう。」

 

「ありがとう御座い「ただし条件がある」……?」

 理想的な返事に感謝の言葉を告げる前に彼女は割り込んで来た。

 

「戦後アリウスの生徒達の内最低でも100人を我(・)々(・)の(・)学(・)園(・)に(・)移(・)籍(・)さ(・)せ(・)ろ(・)。彼女達には自由と言う物を味合わせる必べきだ。」

 彼女の発言は予想外であり、同(・)時(・)に(・)都(・)合(・)の(・)良(・)い(・)も(・)の(・)で(・)も(・)あ(・)っ(・)た(・)。もともとアリウスの生徒達はトリニティへの憎悪も教え込まれている。その様な生徒達にはやはりどうしても忌諱する感情はあるであろう事を考えると、もともと他学園に移籍してもらう事を考えていた。

 

「……分かりました。戦争が集結した後により詳しく話を詰めましょう。」

 彼女が私達に協力してくれるかは微妙な賭けだったが無事成功した事に安堵しながら最後の協力者に目を向けた。

 

「それではミレニアム・サイエンススクールの調月リオ生徒会長。貴女はどの程度協力して頂けますか?」

 

 

 

 

 

 私は先程の質疑応答を終え、一息ついていた。横目でリンが『何先走って約束を取り付けて居るのですか!』と睨んでくるが仕方がない、あまりにも時間が無かったのだ。

 今回の会議の勝利条件は連邦生徒会がアリウス解放戦争に関与したと言う事実、そしてアリウス分校という戦力の再(・)分(・)配(・)と(・)吸(・)収(・)だ(・)。

 トリニティと言うキヴォトス屈指の戦力を保有する学園に戦争を吹っ掛けようとしているアリウスと言う学園。仮にその戦力が全てエデン条約に勢力に吸収でもされようものならキヴォトスのパワーバランスは更に連邦生徒会にとってマイナスな方向に傾くであろう。

 それを阻止しつつあわよくばヴァルキューレの戦力を拡充したい、そんな思惑があったのだ。

 ただ先生がどこか複(・)雑(・)そ(・)う(・)な(・)目(・)線(・)で(・)私(・)を(・)見(・)て(・)い(・)た(・)のが少々気がかりだ。

 そんな事を考えているとやがて最後、調月リオの発言が来た。

 

「私達は貴女達と違って大規模なハード面での軍事力は持っていないの。だからソフト面で最大限の援助を行う方針よ。」

 そう言って彼女は自分の端末をプロジェクターに繋げた。

 

「遠隔操縦可能な偵察ドローン、C&Cと言う少数精鋭のエージェント、そして戦略強襲用パワードスーツ『アビ・エシュフ・ティタノマキア』。これらが私達の出来る援助よ。」

 それぞれについて説明するわと言う彼女の声に従ってスライドが切り替わる。

 

「まずこの偵察ドローンについては60機程用意するつもりだけど、私達の遠隔操作で動かす都合上一人につき一機しか動かせない。だから同時に使えるのは精々20機程よ。それらのドローンから受け取ったデータをそれぞれのオペレーターに処理させる事でよりスムーズに作戦を遂行出来る筈よ。」

 

「因みにそのデータは複数の端末に送る事は出来ますか?オペレーター以外の総司令部も情報を直接得たいのですが。」

 

「勿論可能よ、C&Cはまぁそこまで説明する必要は無いわね。SRTと同じ様に便利に使って欲しいわ。」

 その発言を行った後スライドが切り替わる。

 

「今から説明するアビ・エシュフ・ティタノマキアについて一つお願い……と言うよりも提案があるの。」

 そう言って彼女から語られたのはそのティタノマキアとか言う兵器の運用方法についての枷だった。

 そこまで危険視するほどのスペックなのか?

 

「……現状その兵器のスペックが分からないと何とも言えません。先にスペックを教えてください。」

 怪訝な顔をしながら桐藤ナギサが私の抱いた疑問と同様の内容を尋ねる。

 

「分かった。なら先にこの機体のスペックを話す事にするわ。」

 そうして彼女はスクリーンにその機体の模擬戦の映像を流しながら語り始めた。

 

「全高8メートル、重さは9トン。分類はパワードスーツであり、この大きさでも人間の様な動きが可能でありながら飛行可能で最高速度はマッハ2.5。ミレニアムからのバックアップによる高い演算処理を活かした戦闘も可能。武装は腕部にガトリング砲を2門、肩部に拡散ビーム砲を2門とマルチミサイルポットを装着し、背部に大口径レールキャノンを2門装着しているわ。」

 彼女のスペックについての説明を聞かずとも、一(・)方(・)的(・)な(・)蹂(・)躙(・)を(・)見(・)せ(・)る(・)模(・)擬(・)戦(・)の映像だけでその危険性が分かった。

 

「……これはもう量産可能なのですか?」

 恐る恐るリンが調月リオにそう尋ねると

 

「予算的にも技術的にも無理よ。」

 そうあっさりと返事が来て、私を含め全員がひとまず安堵したようだ。彼女を次(・)な(・)る(・)不(・)穏(・)分(・)子(・)と(・)し(・)て(・)見(・)な(・)く(・)て(・)済(・)む(・)こ(・)と(・)に(・)。

 

「それで枷と言うのは?」

 私が率先してそう尋ねる。

 

「では今から説明するわ。通常発動時はミレニアム必須+ トリニティ、ゲヘナ、もしくは連邦のうち2者の賛同。今回の様なエデン条約作戦時の優先ルールとして、ミレニアム+トリニティまたはゲヘナのいずれか1つ以上まで制限を緩和。また緊急発動時は現場指揮とミレニアム合意で仮発動+事後追認必須。違反時は発動の為のロック強化、または以後の条約支援停止。」

 そうして語られた事は私達の不安をある程度払拭する事が可能な案だった。

 

「緊急発動時とは?」

 

「発動しなければ生徒複数の死亡事案に発展しかねない緊急事態の時よ。まぁそこは貴女達が判断するべきだと思うわ。」

 酷くあやふやだ、だがそこ以外は大きな問題は無いと思った。

 

「分かりました。この機体は貴女の言うように枷を嵌めたほうが良さそうですね。異論は有りますか?」

 ひとまず桐藤ナギサがそう尋ねるが誰も反対意見はでなかった。

 

「最後、私の役割だね……私の役目は総指揮官だよ。それぞれの組織での情報を横断的に処理しつつ、臨機応変に作戦を遂行する。ミレニアムのドローンからの情報処理は、このシッテムの箱に任せて欲しい。」

 

「分かりました。それではアリウス解放戦争についての話し合いを終えさせてもらいます。5日後、我々の手で未来を切り開くのです。」

 最後に先生が自らの役目を言い、そして会議は終わった。

 

 

 

 

「先生、少し話があります。もし時間があれば少々付き合っていただけませんか?」

 

「うん、大丈夫だよ。」

 会議が終わった後私はカヤに呼ばれ、防衛室の保有する部屋に案内された。

 歩きながら用件についてカヤから事前に説明を受ける。

 

「今から向かう部屋に再建したSRTに応募し、再入学した生徒達が居ます。今回の案件において先生が彼女達の指揮を執ることになりますが、作戦の前に先生に先に会っておきたいという生徒が居るのです。時間を取らせて申し訳無いですが……」

 

「時間については気にしないで良いよ。成る程、では彼女達を指揮するのはカヤではないのかい?」

 

「私はやる事が有りますしそもそも戦略家でもありませんから。寧ろ貴方が戦略家なのが意外です。外で何かされていたのですか?」

 

「いや、私の場合はAIの補助による超演算があってのものだから。もっとも、補助が有ってもそれを活かす能力は必要だからそこは才能だろうね。」

 そんな事を言いながら歩いているとやがて目的の扉につく。

 

「この先に生徒が居ます。」

 そう言ってカヤが扉を開けた。

 扉の先には1人の生徒が居た。

 

「始めまして先生、私はFOX小隊隊長七度ユキノと申します。カヤ防衛室長と共にSRTの再建を行ってくれたと……SRT生を代表して感謝申し上げます。」

 

「ユキノは私の最高のパートナーです、先生が私と接触する前から比較的交友があり今ごたついているSRTの纏め役として頑張ってもらっているのです。」

 カヤの説明を聞きながら私も口を開く。

 

「始めまして、ユキノ。私は確かに彼女の手助けは行ったがそれ以上の事はしていないけど……感謝は受け取っておくね。それで私と話したい事って何かな?」

 そうユキノに尋ねると彼女はカヤを横目で見た後話し始めた。

 

「では簡潔に話させて頂きます。我々SRTはカヤ防衛室長のお陰で形を変えた部分は有るとは言え、ヴァルキューレや警備部から戻ってくる事が出来ました。しかしSRTの生徒達の内、在(・)り(・)方(・)を(・)変(・)え(・)た(・)S(・)R(・)T(・)を(・)見(・)限(・)り(・)志(・)願(・)し(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)者(・)、或(・)い(・)は(・)実(・)力(・)意(・)外(・)の(・)面(・)で(・)の(・)再(・)審(・)査(・)に(・)落(・)ち(・)て(・)在籍出来なかった者が約半数居ます。故に私達の直属の指揮官となる先生には詳しい内部戦力を伝えておこうと判断したのです。」

 

「連(・)邦(・)生(・)徒(・)会(・)長(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)振(・)る(・)わ(・)れ(・)る(・)暴(・)力(・)装(・)置(・)としての運用が基本だったSRTと比較して、今のSRTは組(・)織(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)振(・)る(・)わ(・)れ(・)る(・)治(・)安(・)維(・)持(・)装(・)置(・)で(・)す(・)。故に求められる資質は異なる為、再審査の基準が多少異なるのです。」

 ユキノの説明をカヤが補足する。

 

「成る程、分かり易い話だね……話は今からするのかな?もしそうなら資料は用意してあるのかい?」

 

「データはカヤ防衛室長が持っています。」

 ユキノの言葉を証明するようにカヤが端末を起動させ名簿を写し出した。

 RABBIT小隊、JACKALL小隊、RATEL小隊……様々な小隊の名簿が欠けながら写し出されている。

 その中でも二つ気になる事があった。

 

「……RABBIT小隊はオペレーターだけでなく小(・)隊(・)長(・)も(・)居(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)ね(・)、そして反対にFOX小隊は全(・)員(・)が(・)居(・)る(・)と(・)。他の小隊はともかく此処だけはどうにかしないとね。」

 私がそう呟くとカヤが気まずそうに

 

「RABBIT小隊の2人は先程言った非志願者と審査に落ちた生徒達です。他の小隊はなんだかんだ小隊長はのこっていたのですが此処だけは完全に再建する必要が有ります。」

 と言った。

 

 

 

 

「ひとまずこんな所で良いかな?」

 

「ありがとう御座います。」

 1時間程の調整を経て当日の編成を決定した。当日はそれぞれの歯抜けの小隊を二つ以上組み合わせた上で、片方の小隊長を副隊長にして運用する方針にし、これからの数日を全力で調整に充ててもらう事になった。

 

「それじゃあこれで失礼するね。」

 

「はい。本日はありがとうございました。」

 そのままユキノと別れた後、ずっとカヤに言いたかった事を言う事にした。

 

「カヤ今回のような手段をとるのは今後控えてほしいな。」

 

「今回のような手段とは?」

 

「……否定できない正しさを武器に合(・)意(・)形(・)成(・)を(・)後(・)か(・)ら(・)追(・)い(・)つ(・)か(・)せ(・)る(・)よ(・)う(・)な(・)こ(・)と(・)を言っているんだ。」

 その言葉にカヤは疑問符を浮かべるような顔をした。

 

「正しさは力です、そして力は正しく振るわなければ正義になりえませんが、同時に必(・)要(・)な(・)時(・)に(・)振(・)る(・)わ(・)れ(・)な(・)い(・)力(・)は(・)正(・)義(・)と(・)な(・)り(・)え(・)ま(・)せ(・)ん(・)。ならば私は振るう、それが力を持つということへの私なりの向き合い方です。」

 

「必要な時というのはそれぞれ判断基準が異なる。その判断基準を定めるのが会議であり、根回しであり、準備だ。カヤ……君の強みは自分で確固たる意志と、自分なりの正義を持っていることだ。だがそれに振り回されてはいけないよ。」

 カヤは自分が軽んじられたと思ったのかこちらを向き、少し鋭い目線で反論してきた。

 

「……ですが今回のような案件については何よりも初速が重視されるはずです。それとも先生は違う意見ですか?」

 

「それは違う。今回の件ではそれしかなかったと私も考えている。だからあくまで助言と提案にとどめているんだ。」

 

「先生は……い(・)つ(・)の(・)日(・)か(・)私(・)が(・)権(・)力(・)欲(・)に(・)駆(・)ら(・)れ(・)て(・)暴(・)走(・)す(・)る(・)と(・)で(・)も(・)言(・)い(・)た(・)い(・)の(・)で(・)す(・)か(・)?(・)」

 私はその問いから逃げなかった。

 

「私はそ(・)の(・)可(・)能(・)性(・)は(・)否(・)定(・)で(・)き(・)な(・)い(・)と(・)思(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)、それは君が行動的で、向上心があるからだ。君の強みはそのまま致命的な欠陥につながる可能性はあると私は思っているよ。」

 そういうと彼女はどこか傷ついた顔をした。

 

「そうですか……先生から見た私はそうなんですね。」

 

「勘違いして欲しくないのはこれは君だけの話ではないんだ。君が正しいかどうかに関係なく形(・)だ(・)け(・)で(・)も(・)必(・)要(・)な(・)手(・)順(・)が(・)軽(・)視(・)さ(・)れ(・)る(・)事(・)が(・)危(・)険(・)な(・)ん(・)だ(・)。確かに私達は様々な手段を使って要求を通そうとしているけど、それでも最終的には形式上合意をとってから物事を動かす……君もそうだっただろう?」

 彼女は苦い顔をして頷いた。

 

「理屈は理解できました。先生がその様に私を見ていたことは悲しいですが……分かりました、以降気をつけます。」

 

「ありがとう。」

 そうして会話は終わり無言で彼女と暫く歩く。

 そしてタワーの出口まで来た時彼女が口を開いた。

 

「先生、私は自分の思う正しさを信じます。ですが仮に私が正義ではなくなった時……貴(・)方(・)は(・)私(・)を(・)裁(・)い(・)て(・)く(・)だ(・)さ(・)い(・)。それまでは共に協力しましょう。」

 

「そんな……そんな事!」

 

「それを約束してくれれば、私はより動きやすくなります……だから先生、頼みます。」

 

「……カヤは私のことをどう思っているんだい?」

 

「色々な意味で特別な人です。そして良くも悪くも信用しています。……願わくば、敵対せずにずっと隣にいてほしい、そう思っています。」

 そこまで言って彼女はエントランスの扉を閉めた。

 去っていく彼女に私はかける言葉が無かった。

 

 

 

 

 そして5日後の早朝、全ての勢力が一つの目的の為、アリウス自治区への道を妨げるカタコンベに集結した。

 トリニティからは正義実現委員会、救護騎士団、そしてティーパーティの一部の武闘派。

 ゲヘナからは風紀委員会。

 ミレニアムからはC&C。

 そしてSRTからは特殊部隊の面々。

 それぞれが携行火器以外にも戦車や高射砲、装甲車等様々な兵器を持ち出している。

 

「このカタコンベは入り口は300ヶ所でその中の本当の入り口は限られてて残りは全て偽物、入り口を間違えたらカタコンベで迷い続ける羽目になる。私達は正しい入り口とそこからアリウスに通じるカタコンベの内部ルートを暗号で伝えられているけど、カタコンベの内部は一定周期で変化する……先生は突破する算段はついているのか?」

 アドバイザーとして私に同行しているアズサが不安げに尋ねてくるが、そこは心配していなかった。

 

「リオ、偵察ドローンの用意はできているかい?もし良ければ300のルートを全て虱潰しで確認させたい。位置探知機は搭載しているのだろう?迷ったら一度上空からカタコンベを抜けて戻ってきてほしい。」

 

『承知した。白州アズサ、カタコンベを正規ルートで抜けるまでに貴女はどの程度の時間かかるのかしら。』

 

「私がか?……そうだな、ルートによって異なるが一番時間がかかっても、普通に走って1時間と言った所だと思う。」

 

『そしたら正規ルートの道のりを20キロと想定して、をこのドローンが踏破するのにかかる時間を多めに見積もって10分とする。それ以上に発見に時間がかかっていればそのルートは外れとして上空に脱出させる……準備が出来た、始めるわ。』

 そう言って通信が切れた直後、我々の頭上を20機の偵察ドローンが高速で通過した。

 そして1時間後、彼女から通信が来た。

 

『ア(・)リ(・)ウ(・)ス(・)自(・)治(・)区(・)に(・)通(・)ず(・)る(・)道(・)を(・)見(・)つ(・)け(・)た(・)。(・)運が良いことに比較的短い距離のルートだった、多分走れば30分程かしら。今から私達がナビゲーターとして案内するわ。』

 

「ありがとう。」

 感謝の言葉を伝え、彼女の達のドローンから情報を得ながら後ろに控えていた生徒達に向き合う。

 

「皆、アリウス自治区に通ずる道をリオ達が見つけてくれた。これより作戦を開始する。」

 その言葉に全ての生徒達が反応した。

 それぞれの生徒が一様に強い緊張感と確かな決意、そして獰猛な戦意を纏う。

 

 

 

「宣戦布告は破却、これよりアリウス解放戦争を開戦する。敵はアリウス分校並びにその指導者ベアトリーチェ。君達は多くの異なる経緯で此処にやって来た。だから多くは語る必要は無いが……これだけは言っておく

 

これは解放の為の戦争だ!それを心に刻め!作戦開始だ!」

 そう言って私達はカタコンベに突入した。

 

 

 『世界変革の余震』終了。

『制御されしアポカリプス編』開幕。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。