ブルーアーカイブ×アークナイツ  調月リオと星外の預言者   作:バトクロス

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 前話で生徒達について考え抜き、テーマと原作のバランスについて上手く整合性を取るならこうかなと思いました。
 この章は今までで最もプロット通りに進みませんでした。


シルバー・バレット

 前線が血みどろの戦闘に発展しかけている中、ミレニアムのオペレータ達は早瀬ユウカの指揮のもと最善を尽くしていた。

 

「トリニティ4班の第2ドローン撃墜されました!直ちに座標情報とスタンバイ状態だった第3ドローンを向かわせます。」

 

「ゲヘナ1班の第1、第2ドローンを敵兵の発生源特定の為に向かわせました。オート操縦で三方向に索敵を開始します。」

 

「トリニティ2班の撤退を援護します!班周辺の索敵の為、全てのドローンを後退中……進行方向に敵影捕捉!迂回する様に誘導します!」

 オペレータとして選ばれた生徒達は戦闘開始から常に戦況を有利にしようと奮闘している。

 だが、彼女達に出来ることは限りがあり、安全な場所から戦場に居る生徒達がジリジリと削られる事を見続け無ければならない。それは無力感と焦り、そして罪悪感による多大なストレスを与えていた。

 

「トリニティ3班、3時の方向に敵影捕捉。高射砲と戦車隊による砲撃を推奨……いえ、駄目です!アリウス生達と亡霊擬きが乱戦を行っています!砲撃を敢行すれば死(・)者(・)が(・)出(・)る(・)恐(・)れ(・)が(・)あ(・)り(・)ま(・)す(・)!(・)回避と狙撃による牽制を推奨!」

 先程から幾度と発生する砲撃の中止。

 オペレータ達の情報を活用し、先生が巧みな指揮を行い被害を軽減はしているが、既に多くの敵を滅ぼす機会を自ら捨てざるおえない状況と化している。

 

「っつ……トリニティ4班が先程の偶発的戦闘で複数の負傷者が発生した模様。」

 

『分かった。トリニティ3班と4班は一度戦線を後退させつつそびえ立つ廃墟群を砲撃して。一度建物を倒し、瓦(・)礫(・)で(・)1(・)ブ(・)ロ(・)ッ(・)ク(・)ご(・)と(・)封(・)鎖(・)す(・)る(・)。(・)』

 情報を先生に伝え、通信を叩き切る。

 

「……理屈は分かっている、殺人が重罪で有ることも。だが、あんなテロリストの命と私達の仲間と天(・)秤(・)に(・)か(・)け(・)る(・)必(・)要(・)な(・)ど(・)あ(・)る(・)の(・)か(・)!(・)?(・)」

 一人の思わずオペレータの口から思わず怨嗟の声が漏れ出る。

 

「そんな事は言わないで!この作戦の正当性はもとより、アリウス生達の死体を生徒達が見ればス(・)ト(・)レ(・)ス(・)に(・)よ(・)る(・)パ(・)フ(・)ォ(・)ー(・)マ(・)ン(・)ス(・)の(・)低(・)下(・)は(・)避(・)け(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)!(・)」

 直ぐ様隣のオペレータから反対意見が出て、彼女はそれ以上言葉を話す事は無かった。

 だが多かれ少なかれ、全てのオペレータが同様の事を感じていた。

 そんな時、大きな、大き過ぎる成果を遂に得た。

 

「ゲヘナ1班第2ドローン……あの亡霊擬きの発生源を特定しました!」

 

「先生に情報を送る前に正確さを上げて!ごめんなさい、違いましたでは済まされないから!」

 その言葉にリアルタイムでの映像を他のオペレータにも送る。

 

「……これは正しいわね。情報の伝達を!」

 他のオペレータからのお墨付きを受け、彼女は通信を繋いだ。

 

「先生!発(・)生(・)源(・)ら(・)し(・)き(・)場(・)所(・)を(・)特(・)定(・)し(・)ま(・)し(・)た(・)!(・)」

 

『場所は!』

 

「ここです!」

 座標データとリアルタイムの映像を先生に送りつける。

 判断は早かった。

 

『よし!全部隊後退!今から指定する地点に高射砲を使い砲撃を敢行して!』

 戦局は再び大きく動こうとしていた。

 だが、その熱も直ぐに冷めることになる。

 

「……!?先生!アリウス生らしき生徒が発生源に縛り付けられています!祭壇……いや、生(・)命(・)維(・)持(・)装(・)置(・)?(・)」

 その言葉に全てのオペレータに強い緊張と大きな焦りが産まれる。

 

「砲撃でもしたらその生徒は間違いなく死んでしまいます!」

 

「だがこれはチャンスだ、今はまだ耐えているがこのままだと前線に居る生徒達の安全がもう確保できなくなる!」

 ざわめきが生じる中、通信先の先生だけが沈黙を守っていた。

 

 

 

 

『アリウススクワッド、直ちに私のところに集合しなさい。』

 アリウス自治区に何者かの侵入者が現れたと聞き、戦闘の準備をしている時、マダムからその様な伝言を伝えられた。

 その伝言の通り、集まった私達に対してマダムは

 

『アツコ、貴女の力が必要なのです。私と共に来なさい。』

 そう言って私を連行しようとした。

 

『姫に何をするつもりだ!』

 そう言って追いかけようとするさっちゃんに対し

 

『貴女達の一員だったアズサが原因で、今トリニティ率いる連合軍がアリウス自治区に攻め込んでいます。このままではアリウス生達は迫害され、最終的に皆(・)殺(・)し(・)に(・)さ(・)れ(・)る(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)。それを防ぐ為に彼女の力が必要なのです。』

 そう言って皆を追い払い、私は薬を嗅がされて眠らされた。

 気がついた時には私の身体は全身を固定され、数(・)多(・)く(・)の(・)管(・)に(・)繋(・)が(・)れ(・)て(・)居(・)た(・)。

 

『おや、目覚めたようだな。ロイヤルブラッド。』

 声のする方向に目を向けると奇妙な人型の何かが居た。

 

「……人形?」

 

「失敬な。私はマエストロと言う名がある。」

 そう言いながら彼は私を固定している装置らしきものに触れた。

 

「本来、貴女の居る場所はこの様な俗物的な機械仕掛けの紛い物ではなく、崇高で神秘的な祭壇だった。だがベアトリーチェ、あの愚か者の方針でこの様な堕落した手法に頼らざるおえなくなった。なんと嘆かわしい。」

 彼は装置を起動した。

 

「痛っ!」

 顔を動かして痛みを感じた腕を見ると、注射器の様な物が刺さっていた。

 

「急速に複製(ミメシス)を誕生させるのなら、彼女の言う力による掃討を実現するなら祭壇を介した神秘的な手法ではなく、物(・)理(・)的(・)に(・)血(・)を(・)抜(・)き(・)続(・)け(・)る(・)他(・)な(・)い(・)。」

 二重の意味で血の気が引いた。

 

「それでは……私は血を失い続け、や(・)が(・)て(・)死(・)ぬ(・)の(・)?(・)」

 

「そうだ。おおよそ2時間半もすれば意識を失い、4(・)時(・)間(・)後(・)に(・)は(・)死(・)ぬ(・)だ(・)ろ(・)う(・)。これでも生理食塩水や輸血を駆使してこの装置が延命しようとするからだ。」

 そこまで言うと彼は何処か迷いながらこう続けた。

 

「私個人としては……この様な形で神秘が喪われるのは損失であると考える。故に祈るが良い。敵(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)救(・)わ(・)れ(・)る(・)事(・)を(・)。(・)」

 

 

 

 彼が去ってどれ程経っただろう。

 意識が朦朧としている事を考えると恐らくもう2時間以上経つのだろう。

 私の血を利用して何かを産み落とし続けるのを見つつ、少しづつ私が弱まっていく事を実感していた。

 周りは複製(ミメシス)だらけで救援など期待できない事は分かっている。

 それでも、どうか。どうか助けてほしいと、誰に対してなのかも分からない祈を捧げた時、掠れた視界に複数の微かな光と一つの眩い光が映り込んだ。

 

 

 

 

 私は今、選択を迫られていた。

 名前も知らない一人のアリウス生を犠牲にして敵軍全体を大幅に弱体化させるか、それとも決断を先送りにして現状を悪化させるか。

 

(分かっている。あぁ分かっているさ!正解なんか!)

 前にオラクルが言った言葉を思い出す。

 

(……切り捨てる必要が無い時に全てを切り捨ててしまう人間と、切り捨てるべき時に切り捨てられない人間は何方がより危険か?)

 全てを切り捨てる訳では無い……ただ切り捨てられない事は許容しないだけだ、そう言って自(・)分(・)を(・)納(・)得(・)さ(・)せ(・)通信機に声を乗せた。

 

「……オペレータ一同。各班に砲撃を行う場合に最適な地点を伝えろ。そ(・)こ(・)に(・)は(・)生(・)徒(・)は(・)一(・)人(・)も(・)居(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。(・)そう言って砲撃をしよう。」

 

『!……ですがそれでは』

 

「分かっている。だが、その責任はすべて私が背負うよ。大人だからではなく、総指揮官としての責務だ。仮にその事がバレたとして君達が責められそうになったら私に押し付けなさい。」

 

『そんな……』

 

「頼めるかな。」

 有無を言わせずに頼み込む。

 

「……分かりました。ですがこの秘密は墓場まで持っていきます。」

 

「分かった。準備が出来たらそちらから通信を繋いでくれ。」

 彼女達にそう言わせた事、それを心に刻み通信を切った。

 

 

 

『トキ。今から亡霊の発生源に対して砲撃を行う予定だ。ティタノマキアを後詰めとして向かわせるつもりだ。』

 私達が何とか敵を殲滅して少しして、先生からトキちゃんに対して連絡が来た。何でも先程から何度も苦しめられた敵の発生源を特定したみたい。

 

「凄いじゃん先生!でもそれならトキちゃんだけじゃなくて、私とネルちゃんも一緒について行った方が良いんじゃない?」

 

『それは了承しかねるね。トキはティタノマキアによって飛翔できるけど君達は無理だ。』

 先生がそう通信越しに言うのに対して肩をすくめながら

 

「でもネルちゃんは既にティタノマキアによじ登ってついていく気満々だよ?」

 そう言うと先生はため息をついて

 

『……これから起きる事は必要最低限の生徒達以外には知って欲しくはないんだ。だけど……そうだなミカには話しておこうかな。』

 そう言って先生は事の顛末を話し始めた。

 

 

 

「……恐らくその生徒はその砲撃で死んでしまう可能性が極めて高い。だからその業は私だけで背負う必要があるし、生徒達は知る必要の無い事なんだ。」

 そこまで言ってミカの返答を待つ。

 私は正直怖かった。

 彼女はアリウス生達を救う為に全てを背負おうとした生徒だ。彼女は私達を信じてクーデターを辞めたが、その激情は消えていない。

 罵倒されるだろうか、失望されるだろうか、慰められるだろうか、嘆き悲しむだろうか。

 何れにせよ、何かしらの暴発があると想定していた。

 

『先生って私達には希望を捨てるなと言って、最大限対応してくれるけど……何処か理想と奇跡に対して恐怖を感じているよね?』

 彼女から漏れ出たのは純粋なる疑問だった。

 遅れて通信先から空を飛ぶ音が聞こえる。

 彼女達はティタノマキアにしがみついて飛んだのだ。

 

「君達は何をしているんだ!?」

 

『理想を掴むための努力かな……今回の作戦だってそうだよ。例えば発生源の周辺だけを破壊して敵の数を減らして私達3人で残った敵を掃討してその子を助けてバイバイ!それで上手くいくじゃんね!』

 

「上手く行かないかもしれない。私は君達の命に責任を持つ立場なんだ……生き過ぎた理想は毒になる、ミレニアムでそれを実感したんだ。」

 思わずそう呟く。

 

『でも先生は前私に責任は分割しろって言ったよね?ならそう言った張本人が責任を抱え込むのはどうかと思うな。それに……うん。先生ならきっと、私よりも上手に理想を追うこともできると思う。』

 空を飛ぶ音が小さくなり、やがて消えた。

 

『さっきから黙っていたけどな、先生は結局あたし達の事を信じれないのか?信じるのか?』

 ミカとは入れ替わりにネルが話しかけてきた。

 

「それとこれとは話が別。」

 

『別じゃねえ。どっちなんだ!』

 強い口調に面食らいながらも本音を伝える。

 

「……信(・)じ(・)て(・)い(・)る(・)さ(・)。」

 

『そのひと言で十分だ。トキ、行けるな!』

 

『任せてください。ティタノマキアは……いえ、私(・)達(・)は(・)最(・)強(・)で(・)す(・)。』

 再び風の音が……空を飛ぶ音が大きくなる。

 その風の音は、確かに私を覆っていた何かを取っ払った。

 

『さて先生はどうする?私達はもう腹を括ったぜ。』

 彼女の言葉に頭を掻きむしりながら私も覚悟を決めた。

 

「……命の保証は無い。それでもやるんだね。」

 

『当たり前じゃんね!私は……アリウス生達を助ける為に此処に来た!』

『決まりきった事を言うな、私は約束された勝利の象徴だ!』

『死ぬ事を想定して動くのは馬鹿らしいです。ただ任務を遂行し、生きて帰ります。』

 

「……分かった。ただし一度だけだ。」

 

 

 

 

「……トリニティ4班、指定位置に着きました。」

 あるオペレータが最後の班の移動が完了した事を報告した。

 

「よし、先生の指示を仰ぎましょう。」

 重苦しい空気の中通信を繋げる。

 通信は直ぐに繋がった。

 

『皆、今までありがとう……ユウカ、一つ聞きたいことが有るんだ。』

 

「何ですか?」

 何処か迷いながら口を開く先生に違和感を覚えつつ、続きを促す。

 

『……トキ達がその生徒を救出すると言っているんだ。彼女達は発生源の周辺を砲撃した上で中心部にティタノマキアで強襲を仕掛け、彼女を回収して離脱。その後第二波で今度こそ発生源を絶つと言っている。』

 信じられない話だった。

 

「その程度の砲撃地点の変更なら可能ですが……彼女達が危険すぎます!」

 

『それでもやるとの事だ。勿論一度だけの行動だ。失敗したと判断次第、先(・)程(・)の(・)命(・)令(・)通(・)り(・)二(・)度(・)目(・)の(・)砲(・)撃(・)で(・)殲(・)滅(・)し(・)て(・)欲(・)し(・)い(・)。』

 

「……二度目の砲撃を敢行する事を考慮にいれると『砲撃地点には生徒は誰も居なかった』と言う文言はそのままで良いですか?」

 

『あぁ、それで頼む。彼女達の我(・)儘(・)に(・)近(・)し(・)い(・)理(・)想(・)、一度だけなら叶える努力をしても良いかもなと思った。』

 先生の言葉に何処か覚悟を感じた。

 

「先生は……」

 

『彼女達にも一度だけのチャンスであり、命の保証は無いと伝えた。』

 ならば言う必要は何もない。

 

「分かりました。全班に砲撃を2回に分け、30秒間の間を開けて攻撃する様に伝達します。」

 通信を切り、その旨を全オペレータに通達した。

 

 

 

 

「確実に破壊するために2度の攻撃を行うよう命令が変更された!一度目は指定座標周辺を破壊し、二度目で本丸を破壊する!最初の攻撃は30秒後だ!」

 指定位置まで後退し、砲撃命令を今か今かと待ち構えていた彼女達に対し、作戦の変更が告げられた。

 訝しむ声もなく全ての班が命令を実行した。

 

「5、4、3、2、1、撃て!」

 雷鳴が轟くような音と共に連合軍の全ての高射砲が同時に発射された。

 

 

 

 

 私の掠れた視界に複数の光が映り込んだ数瞬後、地面の揺れと共につんざくような爆音と土煙が巻き起こった。

 連合軍が私ごと複製(ミメシス)を焼き払おうとしていると理解した、理解してしまった。

 

「虚しい……全ては虚しいなぁ。」

 そう言って目を閉じ、運命を受け入れようとした。

 

「……助(・)け(・)に(・)来(・)た(・)ん(・)だ(・)!(・)」

 輝く光と共に誰かが叫びながら飛び込んできた。

 薄っすらと目を開けると、純白の翼が見えた。

 

(天使が……天使が見える。天使が助けに来てくれたんだ。)

「た……すけ…て」

 言葉になったかは分からないが、意思を伝え、私は今度こそ意識を失った。

 

 

 

 第一波が着弾して0秒後。

『二人とも振り落とされないでください。』

「分かったよ!」

「任せろ!」

 着弾地点上空から地表付近まで急降下する。

 

 着弾して5秒後。

『スキャン完了、ビーム砲発射!』

「消し飛んで!」

「吹き飛びな!」

 スキャンにより生体反応を観測し、その反応を避けるようにビーム砲で砲撃しながら突撃。

 ミカとネルの攻撃で追いすがる複製(ミメシス)を殲滅。

 

 着弾して10秒後。

「二人とも!これは生命維持装置?それとも拷問装置?それとも発生源に関するもの!?」

「わかんねぇ……トキ!強引に装置ごと持っていけるか!?」

『恐らく電源装置があります……持って行くのは不可能かと。』

 装置を防衛しながらその中身を判断しようとするも失敗。

 

 着弾して15秒後。

『生命維持装置の様な必要な物である可能性よりも、必要でない装置であると考えた方が得策です。』

「どの道ここらへんは焼き払われるんだ、やるしかない。」

「よし、覚悟を決めて彼女を引き剥がそう!私達は助けに来たんだ!」

 

 着弾して20秒後。

「た……すけ…て」

「……!?分かってる。」

 トキとネルが迫りくる複製(ミメシス)に向けて最大火力を解き放つなかミカが装置を毟り取り、彼女を担いでティタノマキアに近づく。

 

 着弾して25秒後。

「トキちゃん!彼女をその手で抱えて!」

 その言葉に即座に反応してアツコを抱え込みながら飛翔の体勢に入り、その腕にミカとネルがしがみつく。

 

 着弾して27秒後。

 ティタノマキア飛翔開始、2秒後には上空80メートル程まで上昇。

 

 着弾して30秒後。

 第二波が着弾……複製(ミメシス)の量産施設を完全に破壊。

 

 

 

 

『ザザザッザッキコザッナラザッンジッ……聞こえるなら返事をお願いします。此方ティタノマキア。生徒を回収、並びに敵戦力の沈黙を確認。』

 理(・)想(・)は(・)守(・)ら(・)れ(・)た(・)。

 ティタノマキアを駆るトキからの返事を聞くのと同時に多数の班からも連絡が来る。

 

『此方ゲヘナ2班。先程まで居た亡霊達が動きを止めた。一部消滅している個体も存在する模様!』

 

『トリニティ3班、乱戦中に大多数の敵が動きを停止、もしくは大幅に鈍らせている。このまま反転攻勢に出てアリウス生達を捕らえる。』

 

『ゲヘナ1班、道端に倒れているアリウス生を多数発見……どうやら命に別状はない模様。だけど……酷い怪我を負っている生徒も沢山いるわ。』

 

『トリニティ4班、アリウス生達が仲間を抱えて投降して来た。どうやら命(・)に(・)関(・)わ(・)る(・)怪(・)我(・)を(・)負(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)も(・)の(・)が(・)居(・)る(・)ら(・)し(・)い(・)。武装解除と並行して応急処置を行い直ぐにトリニティの救護騎士団に送る。』

 そのどれもが最悪を回避したと言う事を表したものだった。

 

「先生、一度休んでください!残りは掃討戦です。後はオペレータ達だけでも十分です。」

 本陣の片隅で常に働いていた名前も知らない生徒のその言葉で何処か緊張の糸が切れた。

 

「分かったよ。三十分だけ仮眠を取らせてほしい。」

 そう言って目を閉じた。

 

 

 遠くで轟音と共にアツコを拘束し、複製(ミメシス)を量産していた施設が崩壊する。

 それはこの戦争において完全に私の勝ち筋が消えていると言う事だった。

 

「ふむ、どうやら複製(ミメシス)の量産体制が崩れたようだな。それに連動して動きが鈍りつつある。どうやらアツコも彼等が救出したようだ。黒服の見立て通り先生は優秀であり、賞賛に値する人間だと判断して構わないだろう。」

 背後でそう話す彼に青筋を立てて向き直る。

 

「何故何処か嬉しそうなのですか!貴方は私と同じ崇高を目指す身、同僚の作戦が失敗した事について何か思う所は無いのですか!?」

 そう彼を問い詰めると先程までの喜色を含んだ声色から一転した冷たい口調でこう言った。

 

「ベアトリーチェ、貴女は何か勘違いしているようだが私は今回貴女の行動に対して一つも賛同する所は無い。寧ろ失敗して然るべきであり、野望を打ち砕いた先生達に対して強い興味と関心を抱いている。」

 

「何を……何を言っているのですか!?」

 

「一番私が腹に据えかねているのはロイヤル・ブラッド……秤アツコの処遇だ。貴女はユスティナ信徒達の過剰な量産のみを求め、彼女の保有する神秘を食い潰そうとした。それは我々ゲマトリアとしては到底受け入れられない行為である。故に私はあの装置に延命措置の機能を取り付けたが……あの様子だと上手く活用できたようだな。」

 そこまで言って彼は何処かへ去ろうとする。

 

「待ちなさい!マエストロ!」

 そう言って私は手を伸ばし……

 

 軽(・)い(・)音(・)と(・)共(・)に(・)打(・)ち(・)払(・)わ(・)れ(・)た(・)。

 

「私は貴女の奴隷では無い。貴女の様な低俗な存在に力を貸したことを後悔している最中である。二度と近づくな。」

 そう言って彼が影に消え失せる直前

 

「それと貴女が使い潰そうとしたアリウス生達は殆(・)ど(・)生(・)き(・)残(・)る(・)だ(・)ろ(・)う(・)。ユスティナ信徒達の行動原理は侵略者達を排除すること……意識を失い倒れ伏したアリウス生達を殲滅する事よりも優先度が高い事が数多く存在するのである。」

 嘲りながらそう言った。

 

「マダム、ほぼ全てのアリウス生達が敵に捉えられました……私達はこれからどうすれば」

 満身創痍で私に命令を乞う生徒の声を掻き消すように彼方から戦火の匂いと銃撃の音が少しずつ近づいていた。

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