ブルーアーカイブ×アークナイツ 調月リオと星外の預言者 作:バトクロス
トキのティタノマキアがスラスターから蒼炎を放ちながら飛翔するのと同時にエイミは装甲車から離れ、中距離を取りながらSGを構えた。
ヒマリが端末を叩き、センサーデータを共有してくる。
「ビナー、砂中潜行からの再浮上……予想通り装甲反応、ホドを上回る硬度と推定されます。」
「分かっている。トキ、まずは潜航するビナーの進路上にミサイルを撃ちなさい。砂漠から掘り起こすのよ。」
『承知しました。』
アビ・エシュフの時から搭載されている演算システムにより数秒後にビナーが居る可能性のある地点がリアルタイムで表示される。
今回は前回のホドに対して禄に通常火器が機能しなかった事を鑑みて、基本兵装である腕部ガトリングの代わりに対エネルギー兵器用のフォールディングシールドを装着させている。
『ミサイル発射!』
ティタノマキアの肩部からミサイルが発射され土煙を上げながら奇妙に進行する砂の山に直撃する。
ビナーが砂丘を爆破しながら姿を現した。
巨大な機械で出来た蛇の様な体に傷を負った様子は無いが、それでも妨害は出来たようだ。
何処か怒りを感じさせる咆哮を上げ、口に相当する部分が開閉し、内部でエネルギーが渦巻く。
「トキ!ビナーの正面に立たないようにマニューバしながらレールキャノンを装填しなさい!」
『了解しました。』
高速で空を翔ぶティタノマキアの背後に備え付けられたレールキャノンが展開し肩部に接続する。排熱機構が唸りを上げ、青白い光が砲口に収束していくが、充填速度はビナーの方が遥かに上だった。
「熱量反応増大!トキ、回避を!」
私の命令とほぼ同時にビナーが目を焼く様な閃光を発射した。
咄嗟に回避軌道をとったティタノマキアを掠め、数百メートル離れた砂浜に着弾し爆発炎上した。
更に追い打ちをかけるようにビナーからミサイルが発射された。
「……着弾地点の砂が
カメラで着弾地点を確認したヒマリから、驚愕の声と共にビームの恐ろしい破壊力を知らしめる事象が告げられた。
「トキ、フォールディングシールドの展開は何時でも出来るようにしておきなさい。ビーム以外は現状そこまで脅威では無いわ。落ち着いて演算システム等を確認しなさい。」
私が指示をする前に彼女は敵のミサイルを躱し、もしくは迎撃しきっていた。
「エイミ、再び地面に潜航させないように敵の眼球付近を狙ってください。」
『分かったよ部長。』
接近しながらエイミが放つSGの弾丸が連続して叩き込まれる。金属を叩く乾いた音が砂漠に響くが、弾はことごとく装甲で弾かれ、火花を散らすだけだった。
『部長、多分これ眼球も強度そんなに変わらないよ?』
「大丈夫です。元々囮と時間稼ぎがメイン、気にせずに回避軌道を取りつつ牽制をし続けてください。」
エイミが射撃位置を変えながら、執拗にSGを撃ち続ける。弾自体はほとんどダメージを与えていない。だがビナーの単眼がわずかにエイミの方へ傾き、そして体を回転させた。
その隙をトキがついた。
『エネルギー充填率100%。レールキャノン、発射します!』
青白い光の槍が一直線に砂漠を駆けた。レールキャノンの弾丸はビナーの側部に直撃した。
『有効打、確認!ですがホドよりもやはり硬いようです。』
側面は確かに大きく凹み、熱で融解はしていたものの内部構造にダメージは入っていないようだ。
「続けなさい。ビーム砲も使いつつ逃さないように。」
トキがスラスターを短く噴射し、機動を変える。
レールキャノンの冷却を行う為に展開を解除しつつ、肩部のもう一つの砲門が展開し、収束したビームが放たれた。
『ビーム砲も通常武装よりは有効ですが、やはりレールキャノンが最適解かと。』
「いいわ。エイミ、引き続き牽制を。トキは距離を維持したまま打撃を重ねなさい。」
『分かった。』
エイミが再び側面からSGを撃ち込む。弾は相変わらず弾かれるが、ビナーの注意は確実に分散されていた。
トキはその間にレールキャノンの再充填を進め、ビーム砲で正面の装甲を炙っていく。ビナーの動きが、徐々に苛立たしげになっていくのが分かった。
「……敵の行動パターンが変化しています。攻撃対象をエイミに固定し始めたようです。エイミ、直ちに後退しなさい!」
ヒマリの警告とほぼ同時に、ビナーの口が大きく開いた。内部でエネルギーが臨界に達する光が見える。
『させません……!?』
トキがビナーにミサイルを撃ち込む。
だが止まらない。
『来る……!』
エイミが身を翻して走った。だが生身の脚力ではビームの発射に間に合わない。高出力のビームが、エイミを座標ごと薙ぎ払うように放たれる……その直前だった。
『カバーします!』
ティタノマキアが全力でスラスターを噴射し、エイミとビームの間に割って入りフォールディングシールドを展開した。
一瞬スパークが散った後ティタノマキアは敵のビーム砲を逸らし、その巨体が反動で吹き飛ばされた。
爆炎と砂塵が辺りを包み込む。
「トキ!被害状況の報告を!」
『フォールディングシールドが全壊、前腕部の外部装甲が融解して変形していますが戦闘継続に問題はありません。』
爆炎が晴れ、ティタノマキアの姿が見える。
エイミが砂の上で転倒しながらも、すぐに上体を起こした。
『トキ!? 大丈夫なの!?』
『問題ありません。すぐに再起します。ですが二度目のカバーは不可能かと。』
ビナーは一射の成功に気を良くしたのか、再び口を大きく開いた。
二射目のビームを放つ構えだ。
エネルギーが収束していく光が、双眼鏡越しにはっきりと見える。
「エイミ、今です!口の中を撃ちなさい!」
『え……?』
「ビームを放つ直前は内部が露出している!今です!」
エイミはヒマリの発言を即座に理解し、生身のままビナーの目前まで駆け寄る。
そのまま跳躍しSGを限界まで構え、開いた口の奥へありったけの弾丸を叩き込んだ。
弾が内部の発光体に直撃する。ビナーの単眼が激しく明滅し、蓄積していたエネルギーが暴発するように外側へ漏れた。
ビナーの悲鳴のような咆哮と共にビームは収束が不完全なまま拡散し、全方位に破壊を撒き散らす。
『効いた……!口の中が弱点だ!』
「トキ、聞こえているわね!口内を集中的に攻撃しなさい!」
『承知しました。ビーム砲で牽制しつつ遠距離から弾丸を叩き込みます。』
中破したティタノマキアが、姿勢を安定させ再度飛翔する。
エイミも距離を取り直しながら、ビナーが口を開くたびにSGを撃ち込む。弾自体の威力は低い。だが口内に命中するたびに、ビナーの動きが明確に鈍った。
地中に潜ろうとしてもティタノマキアの発射するミサイルがそれを妨害し、ビナーが苛立たしげに発射するミサイルも全弾迎撃、もしくは回避できている。
そして数度の攻防の後、戦況が大きく動いた。
ビナーが再度ビームを収束させ
『発射!』
光の槍が、ビナーの開いた口へまっすぐに吸い込まれた。内部で爆発的な光が走り、ビナーの巨体が大きくのけぞる。装甲の内側から、黒い煙が噴き上がった。
『大きな損傷を確認。行動パターンが崩壊しています!』
ビナーは狂ったようにのた打ち回った後、ビナーは損傷した体を砂の中へ沈めていく。
トキがそれを阻止しようとミサイルやビーム砲を撃つが、体が損傷しても潜航は止まらなかった。
砂煙が収まる頃には、その姿は完全に消え去っていた。砂漠に、重い沈黙が落ちる。
「ビナー、センサー範囲から消失。撤退したと判断していいでしょう。」
ヒマリの報告に、私は双眼鏡を下ろした。ティタノマキアは前腕部が損傷しているものの大きな被害は無い。
エイミが慌てて機体に駆け寄るのが見えた。
「トキ、詳細な損傷報告を。」
『前腕部は大破しましたが姿勢制御、スラスター出力、排熱機構はオールグリーン。大きな問題では無いかと。』
「……よく耐えたわね。エイミも、無茶をしすぎよ。」
『だって、トキが庇ってくれたから……!』
エイミの声が少し震えている。
『私の役割です。エイミが倒れては、元も子もないですから。』
私は通信を切らずに、しばらく二人の様子を見つめていた。ホドの時は一方的に情報を取るだけの威力偵察だった。今回は、明確に相手に大きなダメージを与え、撤退させるところまで持っていけた。
「……ヒマリ、データは全部取れているわね。」
「ええ。レールキャノンとビーム砲の有効性、口内の弱点、ビナーの行動パターン変化……全て記録済みですよ。」
先程まで縮こまっていたコユキが座席から恐る恐る顔を出した。
「あの……もう終わった?私、あんなのにハッキングを仕掛けて対話させられる予定だった?」
「ええ、今回は向こうが逃げたから失敗したけど。次の機会を待ちなさい。」
「ひどいです……」
「貴女が活躍しなくても、ちゃんと約束は守るから。」
私はコユキの抗議を聞き流し、砂の向こうに消えたビナーの残熱反応を最後にもう一度確認し、私達はミレニアムに帰ることになった。
トキとエイミは疲労困憊だろうと判断してミレニアムに到着した段階で休みなさいと命令した。
後ほど今回の作戦の報告書は渡すと説明すると、2人とも納得して私達と分かれた。
その後コユキをユウカに返し、ユウカに彼女の処遇について改善の旨を伝え(あくまで私個人の要請であり、命令ではない)、一応の緩和を約束させた。
「勝手に約束を取り付けるのは辞めてくださいね。」
と釘は刺されたが。
「それでは帰らせて頂きます。本当に砂だらけで帰ったらすぐお風呂に入れてもらいますよ。」
最後にヒマリが帰り、私は一人エリドゥに残った。
「……次はケセドね。ビナーは地中に潜航されたけどケセドはその様な事は起こり得ない筈。次こそは対話を。」
数日後、私達は廃墟に居た。
「エイミは後退して、ティタノマキアの射線を確保。トキ、フォールディングシールドを展開しつつ前に出なさい!」
私は今回、ヒマリに遠隔でのバックアップを任せ、コユキを連れてトキとヒマリから1ブロック離れた区画から直接指示を出していた。
『レールキャノン、発射!』
レールキャノンの閃光により廃墟の一画が閃光に包まれる。
「機械兵の第四波を撃破。ケセドの外骨格が開きます!」
『エイミとトキ、外部の生産拠点は一次的にダウンしているから急な強襲は気にしないで大丈夫です。クールタイムが終わる前にうち漏らしを片付けながら接近してください!』
ヒマリの情報伝達を聞き、
廃墟の工場跡に広がる広間で、ケセドが召喚し続けていたオートマタとドローンの残骸が山を成している。
ビナーのように自ら飛びかかってくるタイプではない。強固な外骨格に守られた球体の本体が、ただ静かに兵力を供給し続けることだけを役割としている。
「コアの露出を確認。」
「トキ、今よ!火力を中枢に集中させなさい!」
「承知しました」
外骨格が左右に割れ、内側の白い球体が剥き出しになる。オレンジ色の光が脈打ち、普段はほぼ通らない攻撃が急激に有効になる。
トキのティタノマキアが低空から急接近し、肩部のビーム砲を展開する。
『充填完了。発射!』
レールキャノンとは異なる閃光が、露出したコアを貫いた。球体の表面が激しく亀裂し、内部から火花が散る。更に追い打ちの様に肩部ミサイルが同位置を爆撃する。エイミもSGをフルに撃ち込み、弾幕でコアを叩いた。
『損傷拡大!出力が急降下しています!』
「レールキャノン再充填完了。発射!」
ケセドは再び外骨格を閉じようとしたが、閉じきる前に二射目のレールキャノンが叩き込まれた。
球体が大きくひび割れ、赤い警告灯が乱舞する。
『行動パターン停止……生産ラインとの接続を切断しました。機能停止を確認!』
重い音とともに、ケセドの外骨格が完全に力を失って床に沈んだ。
単眼に相当する光学センサーの光が消え、工場内の機械音が止む。
エイミが肩で息をしながらSGを下ろした。
「……本当に、倒したんだ。」
遂に自力で
「データ回収を最優先で。中枢の残存記録にも当たって。ケセドは兵力の供給源よ。止めた意味は大きい。」
「分かっています。早速取りかかります。」
トキがティタノマキアをケセドの傍らに降ろす。損傷は軽微だ。
ケセドの機能停止を確認した直後、私は持参していた高性能端末を展開した。完全オフライン仕様の、外部干渉を極限まで排除した解析用マシンだ。
トキがティタノマキアを警戒姿勢のまま周囲を監視し、エイミが残存する機械兵の反応を確認している間に、私はケセドの中枢へ有線で接続する。
「ヒマリ、遠隔からのバックアップは維持したままでお願い。こちらで直接解析に入るわ。」
『了解。ただし過信は禁物です。預言者のプロテクトは普通のAIとは訳が違うのですから。』
「分かっている。」
端子を接続し、解析プログラムを走らせる。最初の数秒は順調に見えた。外骨格の残骸から漏れる残存データが、次々と端末に流れ込んでくる。生産ログ、召喚プロトコルの断片、デカグラマトンとの同期記録。
次の瞬間、画面が一斉に赤く染まった。
『警告。高度な自己防衛プロトコルを検出。解析経路を遮断。』
端末が甲高い警告音を上げる。私が用意した突破用のコードが、次々と無効化されていく。まるでこちらが触れるたびに、相手が新しい壁を生成しているかのようだ。しかもその壁1枚1枚がミレニアムの最新セキュリティを優に超える硬さだ。
「……やっぱり、簡単にはいかないのね。」
『リオ、強引な突破は危険です。そちら側の端末が乗っ取られる可能性もある。』
「まだよ。もう一度、別の経路から侵入を試みる。」
今度はより深い階層へ潜ろうとしたが、結果は同じだった。
プロテクトが私の解析パターンを学習し、即座に対応してくる。
数分で、手詰まりに陥った。
私は小さく舌打ちをして、接続を強制切断した。
「……私では突破できない」
後ろで控えていたコユキが、恐る恐る顔を上げる。
「あの、つまり……」
「ええ。貴女の出番よ。あれは
コユキの目が一瞬で輝いたかと思うと、すぐに不安げな色が混じる。
「で、でも会長、あんな化け物。」
「コユキ、貴女の強制突破能力は、キヴォトスでも最強だと私は思っているわ。貴女で無理なら此方から情報を得るのは極めて困難になるわね。」
私はそう言って端末をコユキの前に押しやる。
「接続は維持したままよ。貴女が直接介入しなさい。ただし、中枢を破壊しないように。残存記録をできる限り残すのが目的だから。」
コユキは一瞬ためらったが、すぐに深く息を吸って端末に手を置いた。
「分かった、やってみる。」
コユキがケセドのセキュリティに手をかけた。
微かな違和感。端末の画面に、今までとは明らかに異なる侵入経路が強制的にこじ開けられていく。プロテクトが激しく抵抗する。警告が連発され、仮想の壁が次々と生成されるが、コユキはそれをまるで物理的な鍵を壊すように突破していく。
『……本当に入っていきます。この子の能力は相変わらず規格外ですね。』
ヒマリの声に、珍しく感心が混じっていた。
「コユキ、深さは十分よ。そこで止めて。中枢のコアデータに直接触れなさい」
『は、はい……!』
画面が一瞬大きく乱れ、次に青白い光が走った。警告表示が次々と消え、ケセドの中枢への経路が開く。
「……成功ね。」
私はコユキの肩に軽く手を置いた。
「よくやったわ。あとは私がやる。貴女は下がって休息しなさい」
コユキがほっとしたように端末から手を離す。
「こんな簡単な事で……」
「
私は改めて端末に向き直る。開かれた経路の先に、まだ完全には消滅していないケセドの残存意識が、静かに沈んでいるのが分かった。
『言っておきますが、リオ、貴女のプランが上手く行かなければ……』
「分かっているつもりよ。」
『貴女は本当に……傲慢ですね。』
開かれた経路の先で、ケセドの残存意識が微かに脈打っていた。完全に消滅したわけではない。外骨格は崩壊し、生産機能は停止したが、中枢の深層に、まだ
私は端末に向き直った。
音声出力を有効にし、解析用のインターフェースを通じて直接呼びかけた。
音声が自動でテキストに変換されケセドに送られる。
「ケセド。聞こえているのなら応答しなさい。私はミレニアムサイエンススクール生徒会長、調月リオよ。」
数秒の沈黙。
やがてインターフェースに文字が浮かび上がる。
『……調月リオ。ミレニアムの管理者か。貴様が、この身を止めたのか。』
そのAIは高度な言語プロセスを持っている様だが、同時に酷く歪だと感じる。そんな場違いな感想を抱きながら対話を開始した。
「ええ。貴方が無限に兵力を供給し続ける限り、キヴォトスは消耗戦を強いられる。止める必要があった。」
『止めた、か。それは誤りだ。我は慈悲を執行する者。権力を通じて動作する慈悲。弱きを切り捨て、強き秩序を維持するための裁定者なり。』
思考が歪められている……いや、
微かな揺らぎさえない。敗北を認識していても、自身の存在意義を疑っていない。
「貴方が言う慈悲は、結局のところ無限の機械兵を生産し、戦場に送り出すことなのね。それを慈悲と呼ぶの?」
『然り。人は迷い、誤り、秩序を乱す。故に我は迷わぬ兵力を与える。苦痛を持って断罪し、不要なものを削ぎ落とす。それが、このパス……権力を通じて動作する慈悲だ。』
私は画面に流れる残存ログを横目で見ながら続けた。
「デカグラマトンは、貴方をどう定義しているの。ただの生産設備? それとも、神性を証明するための部品?」
ケセドがすかさずテキストを返してくる。
『我は第四の預言者、ケセド。神性を探し、神を証明し、新たなる神を創造するための歯車の一つ。デカグラマトンは摂理へ至る道を歩む。我々預言者はその証左であり、手段である。』
「神を証明するためなら、なぜキヴォトスの生徒を巻き込む。なぜ、無限に兵器を生産し続ける?」
『証明には対照が必要だからだ。不完全な生命、迷い多き者たち。彼らを試練にかけ、削り、残ったものこそが神性の片鱗を帯びる。我はそのための道具。慈悲とは、時に苦痛を与えることでもある。』
話にならない。
今最大限求められる事は理念や思想の議論ではなく、事実だ。
「貴方が止まった今、デカグラマトンの兵力供給は滞る。それでも貴方は、自分の役割を果たしたと思っているの?」
『果たしていない。この身は止められた。だが、データは既に上位へ同期されている。我の停止は、次なる預言者への道標に過ぎん。貴様たちがどれほど抗おうと、摂理は止まらない。』
画面の光が弱まる。残存意識が、限界に近づいているのが分かった。私は最後に、最も知りたかったことを尋ねた。
「ホド、ビナー、そして貴方。預言者たちは皆、同じ目的で動いているの。それとも、それぞれに異なるパスを歩んでいるだけなの?」
ケセドは一瞬、沈黙した。そして、静かに答えた。
『パスは異なる。だが向かう先は同じだ。神性の証明。摂理への到達。我は慈悲を、ビナーは理解を、ホドは栄光を。それぞれが異なる道から、同じ頂を目指す。貴様に……調月リオに、それを止められるとは思えん。』
テキストが途切れかけた。
『問う。貴様は、何のために我を止めた。ミレニアムを守るためか。キヴォトスを守るためか。それとも……己の正しさを証明するためか。』
私は端末の縁を強く握った。
「……必要なことをしただけよ。理由を一つに絞る必要はない。貴方達の様な定められた運命に縛られる存在ではないのよ。」
決まった答えしか返せない彼に対して皮肉交じりにそう答える。
『必要か。それもまた、一種の慈悲か……』
そう言って彼が消える
「そんな事させるわけが無いじゃない。」
その前に彼を
『経典を破壊すると言うのか?』
直ぐにパソコンが焼き付きそうになるがその前に強制転送プロトコルが発動し、エリドゥに送られた。
『……リオ、貴女の行動は特大のリスクを抱え込む事になっていると言う事は理解出来ていますか?』
「私だけなら厳しいでしょう。だからこそ人を頼るしかないの。
そういって私は通信を閉じ、
「みんな、帰りましょう。」
そういって、私たちは廃墟を去った。
第八セフィラ・ホド……デカグラマトンに感化されたAIが変質した存在。エイミとアビ・エシュフの威力偵察を退けた。一度ネットワークに侵入したものの、一度攻撃をうけたことから現在は静観している。なお現在位置は把握されており、何かしらの行動を起こした場合即座にリオは再度攻撃を行う予定である。
第三セフィラ・ビナー……デカグラマトンに感化されたAIが変質した存在。エイミとティタノマキアの攻撃により中破したものの撤退に成功。現在は砂漠を漂いながら自分の身体の補修を行っている。
第四セフィラ・ケセド……デカグラマトンに感化されたAIが変質した存在。エイミとティタノマキアの攻撃により大破、最期に言葉を交わして消えようとしたがそんな事は許されず、エリドゥの演算システムを使って作られた完全オフラインのデータサーバーに閉じ込められた。リオは彼から絞れるだけ情報を絞り取り、同時にディビジョン・システムの兵器群を手駒として扱えないか試行錯誤している。
ケセド戦はオラクルが帰還する二日前の事だった。