ブルーアーカイブ×アークナイツ 調月リオと星外の予言者 作:バトクロス
ゲヘナとトリニティにUSBとメモを送って数日後、二つの連絡が来た。一つは羽沼マコト、もう一つは桐藤ナギサ、何方もUSBを送った先だった。電話越しでは有ったが何方も多少の疑惑はあれどその声には嘘は無かった……と思う。オラクルとのコミュニケーションで多少は人の感情に意識を向けるようにはしているが如何せんそう上手く行くようなものではない。
『私個人としては其方を信用したいが、色々と情報が不足している。だから何処かで一度会いたい。因みに空崎ヒナも付いてくるつもりらしい。』
『今トリニティは信用がおける人が余り居ません。私ともう一人以外には見せていません。なので私一人になりますが話し合う場を設けて頂けませんか?』
羽沼マコトと桐藤ナギサ。その両名が此方を信用した、それは非常に重要かつ大きな成果だ。
「護衛は如何する?此方から使いを出しても良いけど。」
『いや、ヒナが居るからな。必要は無い。』
万魔殿からはそう返され、
『そうですね……私はお願いします。』
ティーパーティーからはそう言われた。
そして約束の日が来た。
「随分と入り組んでいるな。道案内はしてくれたからまだ良いが、一瞬何かの罠かと思ったぞ。」
まずは通話しながら道案内をした羽沼マコトと空崎ヒナが。
「お連れしました。」
その数分後にトキに連れられて桐藤ナギサがエリドゥを訪れた。
「なっ……お前はトリニティの!?」
「ゲヘナの万魔殿議長と風紀委員長!?」
一瞬で険悪な雰囲気が漂い始めるが、
「集まった様ね……ゲヘナとトリニティの仲が悪いのは知っている、けど今回は一度に説明してしっかりと質疑応答の時間を作りたかったの。それに二組とも時間の空きは余りないでしょう?」
と気まずそうにリオに言われ、渋々一度矛を収める。
「トキ、ありがとう。下がって良いわよ。」
ナギサの護衛兼案内人として来たトキに帰って良いと言うも。
「私はリオ会長からの言づて以外でその『オラクル』と言う人物を知りません。どうせなら一緒に話を聞きたいです。」
そう言われ返事に困る。
「話しかけませんし、決して外にはバラしませんから。」
「……わかった。」
「ありがとうございます。」
仕方なくそう答えると無表情で頭をさげてくる。内心(多分本心からの言葉だろう)と判断し、ひとまずトキは無視してテーブルと椅子がある部屋に三人を案内する。
「護衛の方は?」
「気にしないで。勝手に付いてくるから。」
調月リオに案内された先には一人の女性が居た。痩身で綺麗な……
「貴女が……」
思わずそう呟くと、彼女は笑みを浮かべて口を開いた。
「初めまして。私は
非常に友好的な対応に対し、此方もそれにならって応答する。
「初めまして。トリニティ総合学園のティーパーティー所属、フィリウス派のホスト、桐藤ナギサです。本日は先日頂いた情報についての詳細とそれに付随する疑問を解消すべく来ました。」
本来はもう少し丁寧かつ上品に挨拶をするのだが、楽にして欲しいとの言葉通り挨拶はそこそこにする。
「ゲヘナ学園
「ゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナよ。今回はマコト護衛も兼ねているわ。」
「よろしく。」
ゲヘナの二人も挨拶を終え、用意された席に座る。
「ここから話す内容は他言無用……とまでは行かないが本当に必要だと思う人間のみに伝えてくれ。」
彼女の話は長く、複雑だが憶測は可能な限り排除され、分かりやすい物だった。
「纏めると貴女は宇宙人で、事故でこの都市に不時着、その際調月生徒会長に拾われ援助を受ける。その対価としてミレニアムに有益な事をしていた。所が暫くして暗殺者が差し向けられ、失敗したと見るや今度は連邦生徒会長直々に始末されそうになった。だがその行動を読んだためアンドロイドを代わりに差し向け、彼女を嵌めたと言うことですね。」
余りにも突拍子のない発言だが誰もそこには突っ込みを入れなかった。何故ならミレニアムの生徒会長である調月リオが証人だったからだ。真っ向から否定したヒマリや、一度保留にしたユウカとは違い、異なる学園の内部の事を知りようが無い三人はとりあえず信じる事にした。
「ですが、それにしたって色々と奇妙なものですね。」
連邦生徒会長がミレニアムの急激な変化を嫌ったとでも言うのだろうか……私がミレニアムとゲヘナ、そして我々トリニティのパワーバランスを考えているとふとゲヘナの羽沼議長が手を挙げた。
「その行動の意図は何だと考えている。」
その鋭い眼差しにこ揺るぎもせず、オラクルは答える。
「コントロール出来ない外敵要員の排除と言うのが先程も説明した理由だが、それ以外に考えつく事としては単純に大人が複数居るのが困ると言った所かな。穿った見方をするなら
淀みなく説明をするもその顔は余り明るいものでは無い。と言うかこの会談で明るい顔をしているのは入り口辺りで立っているエージェント位のものだ。無表情の中に喜色が滲んでいる。
「まぁ先生と連邦生徒会長の繋がりについての憶測等はこの後に幾つかの根拠と共に話していくつもりだ。そして、自分は先生とは会っていないがリオがこの前探りを入れてきてくれた。続きは彼女が話してくれる。」そう言って彼女が、視線を向けると調月生徒会長が口を開き
「ここからは私が説明させてもらうわ。もっとも状況証拠や、先生の発言から読み取れる考え方の傾向等を纏めたものに過ぎないから、先程までの事実だけの話とは切り離して考えて欲しい。」
そう言うと調月生徒会長が話し始めた。
彼女の話し方は正直オラクル程は優れてはいなかったが、それでも何とか理解は出来た。
「話を聞くと、基本的には先生は信用できる大人に思われるな。ヒナから聞いた話とも一致する。」
「私も同意見です。連邦生徒会は警戒するべきですが、シャーレについてはそこまで注意を払うべきではないかもしれませんね。」
彼女の発言を聞き、羽沼議長が多少安心したように確認を行い、私もそれに同意する。実際、トリニティの生徒からの評判もそこまで悪くはない。善人過ぎて胡散臭いとは思っている生徒も居るとは思うが。
「いや、そうとも限らない。推測を含むけど……余程のことがない限り、先生は自らのスタンスで連邦生徒会長の立場に立つと思うわ。」
だが調月生徒会長はその発言に否と返した。
「……何故?貴女の発言的には先生は理想主義者の善人にしか思えない。確かに権限は与えられすぎかもしれないけど、それでも運用する人が先生なら間違いは起こらないのでは?」
ゲヘナ風紀委員長が訝しげに問う。
「彼が最初に受けた依頼は此処に来る前に会った連邦生徒会長からの依頼よ。そして基本的に彼は対立する依頼が来たときはあらかじめ受けていた依頼を優先する。会話では初対面の時に受けた説明では大雑把な内容しか分からなかった事を考えると、先生は定期的に連邦生徒会長から連絡を受け取っている可能性が有るわ。まぁ、あくまで可能性だけど。」
その発言に思わず待ったをかける。
「それはあり得ません。
その理論には無視できない欠陥があると指摘する。
「そうね、確かにそれは無視できない点よ。だけどその問題点を回避できる可能性が有ると考えられる物がある。
「仮にそうだとしても、それは憶測に過ぎません。少し偏った視点だと思われます。」
あくまで過程の話とは言え、その発言は先生に対して露悪的過ぎる。そう咎めるとリオは意外にも素直に「……そうね、憶測で話すべきでは無いわ。」と謝罪した。
そんな彼女を見ながら横目で静かに座っているオラクルを見つめる。
(貴女は一体何故黙っているのでしょうか。恐らく貴女なら我々を納得させられるだけの理論と話術があるでしょうに何故
先程の話術やこれまでの事象から推測できる彼女の行動とは異なる現実に何を考えているのか頭を回転させ始めた。
その後ある程度先生には監視をつけつつ、連邦生徒会長が何かしらの行動を起こさないか警戒を続ける事で一致し、お互いの定期連絡の都合も付いた頃。ヒナが火種を放った。
「所で、『たかが一都市の滅亡程度でガタガタ抜かすな』とはどう言う意味?私はその発言も含めて連邦生徒会長よりも貴女が信用できない。」
数瞬の空白、そして私に突き刺さる視線。
(……連邦生徒会長の質問に怒りと皮肉を交じえて答えたあの時の発言、やらかしたか)
そう自覚しながら口を開く。
「……まずはじめに言わせて貰うなら、あの発言は大のために小を犠牲にすることに対し、それが当然の権利であり何も思わないと言った彼女に対する皮肉だ。別に私はこの都市の事はどうでも良いとは言わない。腐っても半年弱、此処に居候しているんだ。出来ればみな幸せになって欲しいとは思っている。」
そこで一息つくと、此方を鋭く見つめているヒナの瞳と視線を合わせ、こう言った。
「だが、同時に一つの星の一つの都市が滅ぶことによる損害は宇宙全体で見た場合、
「何を、そんな傲慢なことを!」
思わず背後の銃に手をかけようとする彼女に「落ち着け、まだ話は終わってない。」そう言って制止させる。
「そもそも君達は私から見れば異星人だが、君達は私達意外にも数多の知的生命体がこの宇宙に居ることを理解しているのかい?」
「……確かに我々の容姿瓜二つで、同じ言葉を話しているため実感しにくいが、おまえは異星人だものな。失念していた。それで何を伝えたい。」
幾ばくか冷静なマコトに内心感謝しつつ、こう告げる。
「我々は幾つもの
自分の意志が伝わって欲しいと思いながら話を終えると、ヒナは難しい顔をしながら銃から手を放し口を開いた。
「……申し訳ないけど、やっぱり私は貴女を信用することは出来ない。傲慢さは知識と経験に裏打ちされたものであり、私達がそれを否定する術を持たないことも理解した。それでも、私は一人一人の生徒に寄り添って共に歩み、時には導いてくれる先生の方が信用できると思う。」
「分かった。別に個人の意志に干渉するつもりは無いよ。キチンとした判断基準を持って私を否定するのは別に問題ない。ただ頭の片隅に入れておいて欲しい。人間は誰しも
「……やりにくいわね。普通はもう少し異なる反応、謝罪か、言い訳が返ってくると思ったのだけど。」
「私は異なる立場にたっている人間の事は尊重したいと思っている。だからこそ、子供扱いはせず、一人の人間として話している……必要なら優しい言葉でも言おうか?」
自分の言葉に思うことが有ったのかヒナは無言になり、「必要ない、そう言うのは貴女以外の人で十分満たされている。」そう言って話を終えた。
(ヒナは彼女の事が嫌いになっただろうが、私個人としては俄然興味が湧いた)
羽沼マコトは帰り際に交換した連絡先に届いたメッセージを開いていた。
『リオの説明が不十分な結果、却って疑念を植え付けるだけになってしまった事は済まない。』
最初のメッセージが調月生徒会長のフォローと言うのに苦笑しつつ
『別に構わない。ヒナはどうであれ私個人としてはトリニティと一時的にとは言え手を結ぶ事を決めた時点で大抵の事は許容できる。だが、何故口を開かなかったのかは聞きたい。』
と返信をする。
『私は、後4か月程でキヴォトスを出る算段がつくと考えている。だからそれまでに調月生徒会長が自分でそこら辺を出来るようにして欲しいと考えていた。彼女は誰かに頼る事を覚えたが、それは
『随分と教師らしい事を言うではないか。』
多少の皮肉を込めてメッセージを送ると少し間が空いてから返信が来た。
『いや、私は先生ではないな。1つの正解を提示する事はするが、それについて最初から最後までサポートする事は無い。その是非はともかく小学生や、中学生としての教育者ならば寧ろ彼、『先生』の方が良い。自分は根っこからの研究者だし、なるなら『教授』だ。』
その言葉に少し眉をひそめながら返答する。
『今、キヴォトスで有名な人間に『ニヤニヤ教授』と呼ばれる生徒が居る。七囚人を解放したのは彼女と噂されていてな。教授と言う言葉は……まぁ使っても良いが、そう言う背景があるとは知っておいてくれ。』
『ありがとう』
それを最後に連絡は途絶えた。
羽沼議長との連絡を終え、後ろを振り向く。
「君がリオが言っていたエージェントだよね。確か……飛鳥馬トキだっけ。」
会談中ずっと気配を消して、入り口から見守っていたメイド服を来た無表情の美人に笑顔を浮かべながら話しかける。
「会談中にずっと話しかけるか迷ったけど、やるべき事を優先させて貰った。すまない。」
そう言うと彼女がポツリと呟く。
「貴女は……人を人として見ると同時に、人を何かしらの役割を背負う者として見ていらっしゃいますか?」
「……何故そう思うのかな?」
「普通の人なら私を完全に無視して会談を進めることなど出来るはずが有りませんから。現に他の人は一度は私をチラ見してました。」
彼女の言う通り、完全に居ないものとして扱ったのは自分だけだった事に気が付き、頭をかく。
「不快にさせたのならすまない。ただ自分は物事に対して集中して取り組むことが出来るというだけだ。合理的だろ?」
「貴女は……リオ会長に悪い影響を及ぼしているように感じられます。」
「そうか……では君は何故リオ会長にそう進言しない?」
「……私が言ったところでどうしようも有りませんから。」
「そうか?一度話しかけて見ては?彼女は君のことを信用していた。あくまでエージェントとしてだが……」
「いいえ、貴女と違ってそんな事は無いでしょう。」
「オラクル。」
呼ばれて振り向くと硬い表情でリオがたたずんでいた。
「ゲーム開発部が先生にコンタクトを取った。」
「今までとは何か違うのか?」
「ええ、先生がミレニアムに長期滞在し、ゲーム開発部のサポートを行うとの事。またそれに付随してミレニアムに対して何かしらの働きかけをする様ね。」
「……それは本当に『先生』がするべきことか?」
「それも業務の内のようね。」
無言で考えを深める中、リオが告げる。
「ここからは、貴女はできる限り私の指示に従ってもらう。不確定要素と接触されては困る。」
頭を上げ、リオの紅い瞳を見つめる。
「抱え込まないで欲しい。」
「……分かっている。」
そして何もかもズレているメインストーリーが始まる。
プロローグ『予言と神秘の接続』終了。
『崩壊時計編』開幕。
羽沼マコト オラクルに強い興味を持つ。今回の説明を通して連邦生徒会よりも彼女の方を信用するように決めた。だが、同時に彼女はミレニアムに肩入れしている立場である事も理解しており、距離感はしっかりととるつもりだ。
空崎ヒナ オラクルを敵性存在と認定する。人としては嫌いではなく、単に苦手なだけだ。だが彼女の思考回路や行動はキヴォトスに相応しくないと考えており、そんな存在よりは地に足ついた先生を信用しようと決めた。しかし、ゲヘナ全体としてはマコトが『連邦生徒会には警戒せよ。先生も含めてだ。』と伝達したため彼女は少数派に落ち着いた。
桐藤ナギサ 先生とオラクルの何方につくかは保留した。現状リオの説明に納得しかねており、先生よりの中立。だが再びシャーレについて調べ上げた結果、特に『お願い』と言う名の徴兵について警戒を抱き、先生と連邦生徒会に探りを入れる。そして、後にリオの仮定が部分的に正しかった事を知り、考え方は変わっていく。