紅と蒼の先輩   作:スナエ

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2話

 鷹村紅緖は、装いによって入るトイレを変えている。

 というのが、ゲーム開始から2日目で分かったことだった。

 それから、部活中に小堀に訊いてみたところによると。

 

「鷹村さんの性別? 好きに受け取ってほしいって言われたから、鷹村さんって呼ばせてもらってるよ」

 

 小堀は、鷹村紅緖を中性的に捉えているらしい。

 彼女(今回はそう仮定する)は、運動着で日陰に座っている。

 白磁のような肢体を焼かないようにしているようだ。

 

「伊能くん」

「はい」

「どう? 何か分かった?」

 

 鷹村は、首を傾げながら問う。

 

「そうですね。鷹村先輩は、服装に合わせてわずかに性別規範への従い方を変えています」

「ふふ。そうだよ」

 

 鷹村は、口元を押さえて笑った。

 

「先輩の性別は、まるで固定されていない。ジェンダーフルイド的です」

「そうかもね」

 

 先ほどは肯定したのに、今度は「かも」か。

 伊能は、鷹村を観察しながら話を続ける。

 

「私は逃げないから、部活に戻りなよ」

「はい。また後で」

 

 伊能は、マネージャーの前から去った。

 野球を真剣に攻略し、部活が終わるまではゲームのことは頭の片隅に留めるだけにする。

 マネージャーは、きちんと自分の役割をこなしているようだった。

 部活を終え、着替えてからは、鷹村を探す。

 特に約束はしていないが、一緒に帰りたい。

 

「伊能くん」

 

 あちらの方からやって来てくれて、伊能は口角を引き上げる。

 

「途中まで一緒に行こう」

「はい」

 

 彼女が隣に並ぶと、シトラスの香りがした。

 

「鷹村先輩は、他の人ともゲームをしたことが?」

「ないよ。君が初めて」

「どうしてですか?」

「退屈だから。大抵の男子は、私に“女”を押し付けてくるし。あ、小堀くんは違うよ。彼は、さん付けを汎用性で選んでるだけ」

 

 鷹村は、スカートをなびかせて進む。

 

「伊能くんは、ちゃんと私と勝負をしてくれそうだと思ったの。だって、暇潰しで野球してるんでしょう?」

「はい。野球も、先輩とのゲームも、いい暇潰しです」

「それなら、よかった。私も楽しいよ」

 

 彼女は、美しく微笑んだ。日射しに透けて、消えてしまいそうに見える。

 幽霊だと言われたら、信じてしまう人も少なくないだろう。

 

「伊能くん、コンビニ寄らない? アイス食べようよ」

「アイスとか食べるんですね」

「そうだよ」

 

 ふたりは、コンビニでアイスを買った。

 コンビニ前の日陰で、ソーダバニラのアイスを齧る。

 鷹村が人形のような見た目で、ものを食べているのが、なんだか面白かった。

 伊能商人は、そんな彼女の肌を伝う汗を見て、人間なんだなぁと思う。

 当たりを引いた鷹村は、2本目のアイスも食べ始めた。

 先輩女子と買い食いをしている自分は、彼女を好きに見えるのだろうか?

 ふと、自分を客観視した伊能は、疑問に思った。

 だが、全てはゲームに勝つためにしていることである。

 伊能は、冷静に鷹村紅緖を見続けた。

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