紅と蒼の先輩   作:スナエ

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4話

 次の相手のバッテリーは、広瀬と三馬のライバルらしい。

 鷹村紅緒は、露木リンと目が合った。

 お互いに、会釈をする。

 そして、あざみ野高等学校との試合が始まった。

 あざみ野は、“流れ”を掴むのが異様に上手い。

「流れなんて気にするな! 強気でいけ!」と、流れをオカルトだと思っている阿川監督は言っているが。

 

「鷹村先輩は、流れについてどう思います?」

 

 ベンチで、伊能は尋ねた。

 

「私には、よく分からない」

 

 記録ノートから顔を上げ、鷹村は返事をする。

 

「そうですか」

「でも、私がついてる方が勝つんじゃないかな」

 

 鷹村紅緒は、妖艶に微笑んだ。

 その様は、人間を誑かす悪魔めいている。

 

「それは何か理由が?」

「私が応援するところは勝つ。そういうジンクスがあることにしない?」

「はは。なるほど」

「露木くんの占いは、神秘性のあるものじゃないだろうから、対抗しようもあるよね」

「そうですね」

 

 その後。伊能による“予言の自己成就”の話が部員たちに共有された。

 それから、広瀬が先頭バッターとして出塁。流れをハマソウのものにしようとした。

 

「鷹村先輩、具体的にどんなジンクスにしますか?」

「鷹村紅緒は、幸運の女神である。女神は、便宜上の表現」

「もう少し捻りたいですね」

 

 ふたりは、真剣に話し合っている。

 

「そう。それじゃあ、幸運の女神がついてる鷹村紅緒が応援しているチームは最終的には勝つ、の方がいいかな」

「そうですね」

 

 そんな話をしているうちに、ハマソウはダブルプレイをとられてしまった。

 流れの影響を受けていないのは、伊能商人だけである。

 そうして、ラッキーセブンがやってきた。

 伊能は、球種を見極めようとしたが、三振する。

 ベンチに戻った伊能は、ぶつぶつと何か呟いた。

 

「伊能くん」

「先輩」

「何か掴めた?」

「向こうの球種の記録を見せてもらえます?」

 

「どうぞ」と、鷹村はノートを渡す。

 異様なほどのストレートの応酬。伊能は、確信した。

 

「あざみ野バッテリーの魔球の謎が解けました」

 

 部員たちに考えを述べる伊能。

 草加が投げているのは、ジャイロボールということだった。

 ストレートのジャイロを狙えば打てるが、あざみ野にそれを悟られないよう、ハマソウは点差を詰めていく。

 それでも、いずれはバレてしまう。

 草加は、夢幻ジャイロを投げ続けた。

 

「青春だね」

 

 鷹村は、ぽつりと呟く。

 それから。広瀬のサヨナラホームランにより、ハマソウが勝った。

 

「さすがだね、広瀬くん」

「読み勝ちましたね」

 

 鷹村と伊能は、顔を見合わせて小さく笑う。

 試合終了後の帰り支度中。

 

「ギリギリだったね」

「そうですね。それに、桐山先輩のことがバレます」

「桐山くんのこと、秘密にしていたかったのにね」

 

 ふたりは、静かに話し合った。

 

「これから、みんなが桐山くんを攻略しようとするよ」

「そうなりますよね。波が立ちそうだ」

「うん。ところで、伊納くん。私のこと分かった?」

「まだ情報が足りていません」

「そっか」

 

 鷹村紅緒は、「ふふ」と微笑む。

 

「でも、ひとつ分かりました。鷹村先輩は、本心はともかく、望まれた性別を演じていることがあります」

「……そうだね」

 

 風が薙いだ髪を押さえながら、鷹村は肯定した。

 

「伊納くん、お願い。ゲームを続けて」

「はい。もちろん」

 

 どうか、私を見付けてね。

 鷹村紅緒の願いが、声に出されることはない。

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