きっとジャンル違いだとしても   作:ふなぐち又兵衛

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ご本家様の本スレを眺めていて、
「そーいや転生者の女性と現地民の男性のカップルの話って珍しいかも」
と思ったので、初投稿です。


おれの彼女は転生者(あたしの彼は現地民)

それは高校1年の時の、GW明けの頃だった。

 

4月は休みがちだったクラスメイトの(くろ)(かわ)さんが、休まず登校してくるようになった。

「あたしの身長、小学4年生並みだってさ」と苦笑しながらのたまう小柄な肢体を、

すれ違うたびにほのかに香る、腰まで届く長さの、つややかな黒髪を。

黒縁眼鏡に半ば隠された垂れ気味の大きな目と、左の目元の泣きぼくろや、

ぷっくりした可愛らしい唇が目をひく、幼い顔立ちを。

裾丈が短めのプリーツスカートから伸びた、スラリとした華奢な白い脚を、

その頃のおれは、ついつい目で追いかける日々を送っていた。

 

「黒川をよく見てるみたいだけどさ、(あり)()ってロリコンなん?」

 

ある日の昼休み、高校に入ってからつるむようになった、()(とう)にそう笑われた。

その隣では、先日の連休から伊東の恋人になったという葛城(かつらぎ)さんが、

うちの母さんがゲジゲジを見つけちまった時のような目でおれを見ていた。

 

どちらもややあどけなさを残してはいるものの、整った容貌がそれぞれ浮かべた、

伊東のからかうような人懐こい笑顔と、潔癖さを湛えた、葛城さんの視線に挟まれて。

まるで後者に穿(うが)たれたかのように、おれはドキリと胸を高鳴らせた。

 

いや、胸を高鳴らせたと言いはしたものの。

葛城さんは背が高く脚も長く、日本人離れした、砂時計めいた体型だったとしても。

当時はクラスの男子どもが、夜な夜な欲望の対象にしていたものと思われるが、

正直おれは、彼女には、そこまでそそられるものはなかった。

そもそも葛城さんは伊東のカノジョになっちまったわけだし、

人の女をそういう目で見るのは、なんだか気が引けたんだ、当時も、今も。

 

「そんなことないよ、ただ、何か気になるんだよ、

 黒川さん、人よりかなり小さいし、休みがちだったし」

 

だからか、伊東の問いかけに、おれはそう応えた覚えがある。

「そういうことにしといてやんよ」と笑みを深める伊東の隣で、

葛城さんの視線が、少しだけやわらかくなったのが嬉しかった。

 

 

 

 

さて、その日の放課後、おれの姿は、図書室にあった。

宿題をマジメにやろうなんて殊勝な気持ちがあったわけではない、

試験勉強に勤しむには、まだ1月ばかり間があった、なら何故か。

それは、その……恥ずかしながら、黒川さんの後ろ姿を見かけて、

その小さな背中を追っているうちに、つい、というやつだった。

葛城さんに聞かせたら、目つきが冷たく尖りそうな、

どこに出しても恥ずかしいストーカーというヤツである。

今にして思えば、よくバレずに済んだもんだ……いや、

バレていたのか、伊東だけではなく、彼女にも。

 

「おーちょうどいいところに。

 ねー有田くん、右上の端から3冊目の本、取ってくれない?」

 

ほんのりカビだか埃だかのニオイがする、林立する大きな本棚の狭間で、

おれに高い位置にある本を取るよう頼んで来た、どこか飄々としたソプラノ。

泣きぼくろの黒川さんが黒縁眼鏡越しに、たじろぐおれを見上げて、笑いかけてきた。

おれはぎくしゃくと動いて、言われたとおりの本を回収して、彼女に手渡してやる。

 

「ありがとー」

 

気の抜けたゆっるーい声でお礼を言われて、反射的に「どういたしまして」と返すおれ。

けれど、その声はどうにもぎこちなかったものだったと思う。

だって勘違いしそうなくらい距離が近いんだもん、黒川さん。

だからかめっちゃくちゃいいにおいがする。

あとなんかこえをきくだけでむねがいたい。

 

……痛いのは胸だけじゃなかったし、痛いだけじゃなかったけれど。

それはどこかって? 恥ずかしいから訊かないでほしい。

そんなおれの内心の動揺をよそに、黒川さんがポツリとつぶやくのが聞こえた。

 

「……やっぱりいいなあ、背ぇ高い人」

 

──あたしチビだからさー、有田くんがうらやましいよ。

──おとーさんは有田くんと同じくらいおっきいんだけど。

──おかーさんはあたしそっくりのちんちくりんでさあ。

 

「そうなんだ、うちは両親ともに中背だけど」

 

黒川さんの話を聞いた途端、おれの口は、自分の家族のことを勝手にしゃべりだした。

今にして思えば、相槌を打つだけで良かったのかもしれない。

でもその時は、口に出さずにはいられなかったんだ、黒川さんと話せたから。

 

「おれと兄貴は、180cmくらいあるんだよ」

「うらやましい! って、お兄さんいるの?」

「いる、去年大学に入るからってひとり暮らし始めた、

 ってえか入学早々彼女できたって自慢してきてうぜえ」

「うわひっど」

 

いや、黒川さんの笑顔が深くなるのを見られたんだから、

話すべきだったんだ、話して良かったんだ、おれは。

黒川さんの黒曜石みたいな瞳が、期待という名の光を孕んで、

おれを見つめてくるのには勝てなかった、ともいう。

 

「ね、お兄さんと彼女さんのツーショットとかない?」

「ん……はい、これ」

「わー美男美女ー」

 

黒川さんに促されるままに、おれが操作した携帯端末の画面には、

野暮ったさが抜けないものの、目鼻立ちの整った長身の青年が、

ややケバめながらも人懐こさと元気の良さを全面に押し出した、

波打つ茶髪を背の中程まで伸ばした八重歯の美人に肩を組まれて、

どちらも楽しげに笑っている写真が映っていた。

 

これから数年後に男女のふたごを授かり、おれたちの両親を狂喜乱舞させてくれた、

おれに姪と甥と出会わせてくれた、親愛なる我が義姉(あね)と、おまけの兄である。

 

つーかちゃんと避妊はしろやエロ兄貴。

おかげで義姉さんは目立ってきたおなかを抱えたまんま、

大学の卒業式にも結婚式にも出るハメになったじゃねーか。

そりゃ向こうの親父さんもうちの親父も殴るわ。

 

ただ、義姉さんも義姉さんで、「わたしが(りょう)さんを襲ったんだもん!」なんて、

両頬を腫らした兄貴を庇いながら、互いの家族に面と向かって言うのはどうなんスか。

義姉さんのお母さんもお姉さんも妹さんも3人揃って、柳眉を逆立てる肉親を前に、

『やっぱりな』と言いたげな目をしていたのが忘れらんねえんスけど。

なんだろう、義姉さんといい、葛城さんといい、

おれのまわりの彼氏持ちの女の人は、そういう強引なひとばっかりな気がする。

 

……話を戻そう。

 

 

 

 

「図書室ではお静かに」

「「はい、すみません」」

 

互いの家族の話で盛り上がり過ぎたおれたちは、

司書さんに怒られて仲良…揃って頭を下げていた。

それから2時間ほど、図書室の片隅の大きな机で肩を並べながら、

おれたちは宿題を片付けたり、それに必要な資料を漁ったりして過ごした。

 

距離が近いんだってば、シャンプーと混ざった、女の子のいい匂いがするんだってば。

そんな風に胸と、とある箇所を高鳴らせながら、後片付けを済ませたおれに、

表情をほころばせた黒川さんが、こう声をかけてきた。

 

「次もいっしょにやろ」

 

黒川さんの言葉に、おれが快諾したのは言うまでもない。

たぶん、その時のおれには、ブンブン振られるふさふさの尻尾と、

撫でられ待ちに寝かされた、犬のヒコーキ耳が生えていたと思う。

 

おれの返答に「ありがと」と返してくれた黒川さんが、

しばしおれの顔を見つめて、にへらと笑いながらこう口にした。

 

「有田くんって、なんかマラミュートみたいだね、

 ハスキーに似た、それよりおっきな犬なんだけど」

 

近い距離でそんなことを言わないでほしい、好きになってしまうから。

もし兄貴や伊東に聞かせたら、「好きになってたんだろ」って、大爆笑されたと思う。

 

 

 

 

その日以来、おれたちは放課後になると、図書室で宿題を片付けるようになった。

 

葛城さんには頑張っている弟妹を応援するような目で見られた、黒川さんごと。

伊東には「ちゃんと着けてシろよ」と笑われた、そして葛城さんにケツをつねられてた。

あまつさえ当時の担任の先生──どこか鋭く冷たく整った顔立ちと、

葛城さん同様に、メリハリの利いた砂時計みたいな体型だった──にまで、

 

「葛城と伊東だけでおなかいっぱいなんだから、有田も黒川もハメをハズすなよ?」

 

と言われる始末だった。

 

…………だった、んだ。

 

 

 

 

──すみません(ひら)()先生、葛城さん、おれ、ハメをハズしました。

──ハメをハズしましたと言いますか、ハメました。

──ごめん伊東、着けなかったよ、着けさせても、もらえなかったよ。

 

「ふぇ? ハメさせられたの間違いでしょ、だぁりん」

 

──まー、ハジメテでこんなんなっちゃうというか、

──こんなにされちゃうなんて、思ってなかったけど、ね。

 

そううそぶいて、仰向けの黒川さんは、行為の最中でもハズさなかった眼鏡越しに。

涙目なのにニンマリと笑って、覆いかぶさるおれの胴体に腕を、腰に脚を絡め直した。

 

「ゴメン、重いでしょ黒川さん、どくからさ」

「重くない、幸せ、だから、このままでいて。

 さっきまでみたいにカナって呼んでよ、だぁりん」

「いいけど、なんで、だぁりん?」

 

──いや、せきにんは、とるけどさ。

 

そうたどたどしくおれが口にした途端、

涙をぬぐった黒川さん……カナの口許が、ネコのそれのように形を変えた。

それに連動するように、拘束が強まったせいで、おれは情けなく(あえ)いじまって、カナに笑われた。

ころころと笑いながら、カナのネコ口が、歌うようにおれの耳元でささやいた。

 

「ありた・だんじろー、あり・だん、だん・あり、

 だあ・りん、だからだよお、だぁりん♪」

 

──責任を取るー、なんていってくれるなら、あたしが(あり)()()()になるんじゃなくてさ。

──だぁりんが(くろ)(かわ)暖次郎(だんじろう)になってほしいな、ウチ、あたししか子どもいないもん。

 

春の土曜日の昼下がり、2階建て一軒家の一室に満ちる、少女の甘い生活臭(残り香)

安心しきった声、熱いくらいの子供体温──のちに、姪や甥を抱きあげた時と、

同じくらいのあったかさだった──、互いの汗が混ざりあった、なんともいえないニオイ。

 

お互いのぬくもりというか、熱とニオイに包まれて、

おれたちはきっと、どちらも浮かれていたんだと思う。

伸ばされたカナの左手が、おれの前髪をそっと掻き上げて、

うつむいたおれと、()()り気味のカナの唇が触れ合って、

今に至るまで飽きることのない、互いの粘膜と唾液の味を堪能する。

 

「ぁ……ところでさ、だぁりん」

 

喘ぎと舌なめずりを挟んで、唇を離したカナが、仔猫のように首をかしげて訊ねてきた。

 

──このコ、みえる?

 

その声に反応して、おれが彼女の右手親指が指し示す先を見てみると。

 

5月末の室温にはややキツそうな、生地の分厚いズボンと長袖のシャツの上から、

ところどころキズやヘコみに彩られた、西欧風の簡素な胴鎧と籠手を身に着けて。

おまけに腰のベルトからは、幅が広く短めの、どことなく鉈じみた剣を納めた鞘と、

鈍い光沢を帯びた、とても丈夫そうな、これまたキズだらけの円形の盾をぶらさげた。

 

表情を形作るものがひと欠片もありゃしないのに、明らかに仏頂面なのが見てとれる、

等身大の骸骨が、ベッドの上で重なり合ったおれとカナに、四角い眼窩を向けていた。

 

おれは視線をカナに戻した。

彼女は眼鏡越しに満面の笑顔を浮かべていた。

愛くるしさと小憎らしさが同居した、いたずらっ子の顔だった。

 

おれは再び、顔を左にそむけた。

全身骨格が器用に肩をすくめた。

 

顔を戻す。

笑うカナ。

左を見る。

ガイコツ。

顔を戻す。

にひひ声。

左を見る。

仁王立ち。

 

「んー、まだ元気! えろい! じゃなかった、えらい!」

「ッ……いや、えろいじゃないが」

 

急に力を込めないでほしい。

そんな抗議の視線は、再度のにひひ笑いによって粉砕された。

 

『ところでアルジ、ワッパ、いつまでそうしているつもりだ?』

「え、おかーさんもおとーさんの取材旅行に着いてっちゃったし、明日の夕方まで」

『やめておけ、アルジのフボに、アルジがワッパとマグワったとシられたらどうする。

 さっさとフロにハイれ』

「えーこのまま寝たーい」

『ダマれ、オレにニオいのヨしアしはワからんが、

 ゲンジョウがフエイセイなのはニンシキしている。

 ワッパ、おマエもさっさとアルジをフロへとツれてイけ』

 

──ヘヤのカンキとカンタンなソウジくらいはしといてやる。

 

頭の中にじかに響く、どこか片言めいた、厳格なバリトン。

不承不承な色をハッキリと湛えた、カナの承諾の返事。

そそくさとおれたちが身体を離したことで溢れ出す、紅交じりの白。

 

おれたち3人……3人? は、それを目にして。

カナはおれの顔を覗き込んで、「気持ちよかった?」と笑った。

骸骨は肩をすくめて、『ハマがヒツヨウだな』とぼやいた。

おれは誰にともなく謝った、「ごめん」と。

それを聞いて、骸骨がみたび肩をすくめた。

 

『アルジ、【ハマ】をツカってくれ……って、そんなモノをナめるんじゃあない』

「えー、だってあたしとだぁりんの……アレじゃん、

 むしろ味わっとかなきゃもったいないじゃん」

『アホウめ、ドクにもクスリにもなりゃしないだろ』

「……ちなみに、味は?」

「んー、うっすらしょっぱい、ほんのり苦い、喉越しがめっちゃエグい、

 思ったより生臭くもチーズ臭くもない、代わりにちょっとだけ鉄臭い?」

『カタるなよ、ワッパもキくな』

「すみません、ところで、あなたはどちらさま?」

『アルジ……クロカワ・カナのナカマ(仲魔)、アガシオン・スパルトイモデルの、ヒコザだ』

 

──セツメイならアトでアルジといくらでもしてやる。

──だからまずはフロにハイってコい、1カイのオクだ。

 

武装ガイコツが発したであろう、頭の中にじかに響く言葉と、

手の甲の部分に薄い鉄片が縫いつけられた厚手の革手袋が紡ぐ、

追い払うような仕草に追われて、おれはカナを連れて、階段を降りていた。

ちなみにカナの強ーい要望もあって、着替えごと彼女を姫抱きにした状態である。

狭いし、全身だるいし、階段はわりと急勾配だしで、かなり不安なのだが。

 

「えー? まだヒリヒリするから動きたくなーい、離れたくなーい、連れてってー♪」

 

などとニヨニヨ笑いでおねだりされたら、その、なあ。

ちなみにふたりとも腰なり胴なりにバスタオルを1枚巻いただけの裸体である。

用意してくれたヒコザ…さん? ごめんなさい、ありがとうございました。

床のフローリングがひんやりしていて、なんともいえない感触の道行きだった。

 

 

 

 

で。

 

『……2ジカンもかけるな、オソいわ、アホウめ』

「ごめんなさい」

「ふひひ」

 

仁王立ちで腕を組むヒコザさん、私服姿で直角お辞儀のおれ、

そしておれにじゃれついてくる、パーカーにミニスカート姿のカナ。

ふたりでシャワーを浴びてたら、その、ハイ、すみません。

でも、延長戦は片手分で済ませたことを誰か褒めてほしい。

 

「だぁりんぜつりーん♪ 愛してるー♪」

『チガう、そうじゃない』

「えーと、何から訊けばいいのかな、おれは」

「んーとね」

 

そして、カナによるしばしの説明と、たびたび挟まれたヒコザさんの注釈を受けて。

 

「つまり何か?

 アメリカのキチガ◯宗教団体が、敗戦直後から色々と好き勝手したせいで?

 今の日本は透明な人食い熊がいつ人里を襲うかわからない、無法地帯、だって?」

「そそ。

 おまけに、そのキチ◯イ宗教団体が、透明な人食い熊を視える人を誘拐して、

 男の人は洗脳して使い捨ての鉄砲玉、女の人はえっち奴隷にし放題、でもあるね」

『ダメオしに、そのトウメイなヒトクいグマは、

 ミえるニンゲンでないと、クジョするどころか、キズつけることもできんぞ』

「で、だぁりんはあたしとえっちしたおかげで、

 透明な人食い熊が視えるしさわれるようになりましたー、ってわけ。

 褒めて?」

「ありがとうカナ、

 おかげでそいつらを見かけたら、カナを連れて一目散に逃げ出せるよ」

 

そう言っておれはカナを抱きしめた。

途端にひんやりした小さな手のひらで左右から頬を抑えられて、ディープキスされた。

ヒコザさんがまた肩をすくめて言葉を継いだ……カナとそういう仲になったおかげで、

おれも彼……彼? の、声が聞こえるようになった、ということなのだろう。

 

『おれがカナをマモるよ、くらいはイってほしかったが、まあイい。

 ミのホドをワキマえているともイえるしな……まあ、そんなジタイになったら、

 オレがナンとしてでもニがしてやるから、ハシりコみでもしておけ』

 

アルジといっしょに、と結んだヒコザさんの言葉に、

「中学の時の体操着どこに仕舞ったかなー、おかーさん持ち出してそうだなー」

などと、黒曜石が(ひび)()れたような色の目でのたまうカナ。

……って、持ち出してそうって、どういう意味なんだ。

おれの独り言への返答は、唇の前で右手の人差し指を立てたカナと、

革手袋でのサムズダウンを、頚椎の前でスライドさせるヒコザさんだった。

 

『ハハコソロって……いや、センないことか。

 で、ごソウゾウドオり、オレも【トウメイなヒトクいグマ】のイッシュだからな、

 アルジからツタわってくるヨジョウブンのマグネタイトだけでスむから、

 わざわざニンゲンをオソって、クいコロすヒツヨウはないが』

「……え、食べられるんですか? 人間を」

『チをノみニクをクらうのはムリだ、オレにショウカキカンはナいからな。

 マグネタイトはニンゲンのキドアイラクのカンジョウのチカラで、

 オレたちアクマはそれらをトりコまんとキえウせるようにできている』

「ちなみにー、あたしの初体験の感情はどんな味だったー?」

『ハきケがするくらいアマったるかった。

 イブクロもナいのにイもたれというフカイカンをリカイすることになったぞ』

 

カナのブーイングに再度のサムズダウンを返して、ヒコザさんがおれに眼窩を向けた。

なんだろう、ヒコザさんのそれは空っぽのはずなのに、

『オレうんざりしてます』って、油性ペンの太字で書いてあるようだと思った。

 

『ワッパ…じゃなかった、ダンジロー、

 アルジはおマエのオンナになったんだろ、

 アタマがモモイロスぎてかなわん、なんとかしろ』

「え、どうしろと?」

『……クソっタれ、オモいウかばん。

 どーせおマエがナニをイおうとナニをしようと、

 アルジはヨロこぶか、サカりがつくだけだろうしな。

 そしておマエをオカすんだ、サキュバスみたいに、ヨメシキガミみたいに』

「サキュバス? ヨメシキガミ?」

 

おれが疑問の声をあげた途端、また顔をカナの手で包まれてディープキスされた。

そういえば、カナの手のひらには、伊東や葛城さん、

あと平城先生のと同じタコがあるようだ……カナも剣道の経験者なんだろうか。

 

「だぁりんは知らなくていいことだからね?

 害獣の一種と……番犬の親戚ってだけ覚えてればいいから」

『オトコのドウルイのマエでは、そんなことをクチにするなよ、アルジ?』

「悪魔もシキガミも見境ナシな『俺たち』なんて知らないもん、真面目で強い人ならともかく」

 

──神主さんや霊視さんみたいに。

 

そう吐き捨ててふくれっ面で立ち上がり、シャドーボクシング……いや、

シャドーキックボクシング? を始めるカナ。

というかミニスカートでハイキックなんてしなさんな、見えるから。

 

たった今目にした桃色の残影と、数時間前にベッドの上で目にしたペールブルーの上下姿が、

かわりばんこに脳裏に廻るおれの声に、

デニム生地のテントを慈しむような目で見ながら、カナは鼻で笑った。

 

「中身まで見たでしょ? それどころかシ…味わった、でしょ?」

 

別腹だ、とも、他の男に見せたくない、とも言えなかった。

言う前に飛びつかれて口を塞がれたから、ネコ口で。

 

『やっぱり、ダンジローがナニをイってもナニをしても、アルジはサカりやがるか』

 

ああウットウしい、と結ばれた、脳内にじかに響くバリトンに、

おれはただ、内心でごめんなさいと返すことしかできなかった。

なにせ、首にぶら下がってきたカナに、唇も舌も絡め取られていたわけだったので。




これR-15でいいんでしょうか、ダメだったなら、ごめんなさい。
続きは……できれば、近いうちに、たぶん、きっと、めいびー。
そして、血涙鬼・彼岸さんの作品より、アガシオン・スパルトイモデルをお借りしました。
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