オタクに優しいギャルに、彼女(二次元嫁)ができたと言ったら様子がおかしくなった件   作:真嶋青

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第1話

神崎(かんざき)ってさ、いつからオタクになったの?」

 

 学校の昼休み。

 7月の蒸し暑さを感じる教室で、クラスメイトの雨野(あまの)寧々(ねね)が暇そうな顔で尋ねてきた。

 俺の正面の席で、彼女は椅子の背もたれ側を向いて、大股に腰を掛けている。

 背もたれに大きな胸を預けて座るものだから、むにゅっとその綺麗な形が強調されていた。

 ついでに言うなら、健康的な太ももがスカートから露出して、なんとも目のやり場に困る。

 

 いや、顔を見れば良いんだよ。顔を。

 

 自分にそう言い聞かせるが、周囲の男子はチラチラとだらしない恰好の雨野を見ているのがわかった。

 かく言う俺も、意識しないように気を付けないと、胸やら足やら、色々と凝視してしまいそうだが。

 

 女子なんだから、もう少し姿勢に気を遣った方がいいと思うが、本人に言ってもおそらく笑って流されるだけだろう。

 もしくは、「え? アタシのこと意識してんの?w キモッw」とか言われるに違いない。

 

 いや、雨野は優しいから、キモイとは言わないかな……。

 

「俺がオタクになった理由? そんなの聞いてどうするんだ?」

「いや、暇だから適当に話題を振っただけ」

「そんなことだろうとは思ったけど……まあ、そうだなぁ。あれは、中学1年生の頃だったか。俺が住んでる近所のショッピングモール、その片隅に小さな書店があるんだ。ある日、親の買い物に付き合わされた俺は、早々に退屈な買い物に飽きて、勝手に時間つぶしにその書店へ入ったんだよ。それでな……」

「あ、その話まだ続く感じ?」

「まだまだ序章の冒頭だよ。雨野から聞いたんだろうが」

「いやほら、アタシはもっと軽い感じの返答を期待してたわけでさ。まさか長大な過去回想が始まるとは思ってなかったわけよ」

「マジかよ。3時間くらいの超大作になる予定だったんだぞ」

「ごめん、それなんて懲役刑?」

 

 こんな下らない話をする俺たちだが、ぶっちゃけ特別仲が良い関係じゃない、と思う。

 学外で一緒に遊んだことなんて皆無だし、学校の休み時間以外で話すこともない。

 俺と雨野は、なんとなく席が近いから話をするくらいの関係が続いている――。

 

 俺と雨野は1年の頃も同じクラスだった。

 進級してクラス替えになってから、1年の頃に同じクラスだった友人が互いに居なくなり、俺たちはなんとなく2人で話すことが増えた。

 全然知らない生徒より、ちょっとは話したことがある生徒の方が話しやすい。

 始まりは、そのくらいの感覚。

 席が前後で近かったというのも、大きな理由だ。

 

 最初は雨野から話しかけてきて、俺がそれにオドオド答える感じだった。

 オタク趣味で気の合う友達を作るまでに時間がかかる俺にとって、積極的に話しかけてくれる雨野はありがたい存在。

 雨野は全くオタク趣味を持たない女子で、どちらかと言えば――いや、バリバリにギャルな見た目の陽キャなのだが、そんな彼女は俺に対して優しかった。

 

 いわゆる、オタクに優しいギャルとでもいうべきだろうか。

 そんなものはファンタジーの産物だと思っていたが、現実はラノベよりも奇なり。

 今となっては、彼女は、こんな俺と仲良くしてくれる貴重な話し相手になっている。

 

 まあ、とにかく、そんな感じで、俺と雨野はなんとなく話をするようになり、これまたなんとなく一緒に弁当を食べるようになった。

 

 そうして、今の絶妙な関係がある。

 

「オタクって好きな事に関しては話が長いっていうけど、本当なんだね。神崎といると凄くそう感じるよ」

「悪かったな……オタクで」

「いや、悪いなんて言ってないし。好きな事があるって、むしろ良いことじゃん? 人に迷惑かけてるならダメだけどさ」

 

 ニカッと笑ってそんなことをいう雨野は、とてつもなく可愛い。

 いや本当に、どうして俺なんかと仲良くしてくれているのか不思議なくらいに。

 

「雨野は良いやつだよな。俺みたいなオタクと仲良くしてくれて」

「何それ? 良いやつの判定ガバガバすぎでしょ」

 

 カラカラとおかしそうに笑う。

 そんな彼女が、俺の目には実に眩しく映る。

 

 俺がもっと自分に自信を持てる男で、イケメンで、勉強ができて、運動神経が抜群だったなら。

 そうだったなら、俺から彼女へ告白して、なんかいい感じの青春を送るイフの未来もあっただろうか。

 

 いいや。変な事を考えるもんじゃないな。

 

 俺にとっては、今の関係こそが最善だ。

 オタクな俺と、オタクに優しいギャルな雨野。

 

 俺にとって、大切な友人。

 それが雨野寧々だ。

 

「ああ、そうだ。そういえばさ、俺、彼女ができたんだよね」

 

 そして、俺は昼休みの時間つぶしになると思って、そんな話を切り出した。

 

 ――これが、全ての始まりになると知らずに。

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