オタクに優しいギャルに、彼女(二次元嫁)ができたと言ったら様子がおかしくなった件   作:真嶋青

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第6話

 こんなことってあるか?

 

 俺たちが立っているのは住宅街のど真ん中。

 もっと言うなら、雨野の家の目の前である。

 そして、俺の家の裏手に位置する一軒家こそが彼女の家だという。

 

 あまり近所付き合いというものがない昨今では、近所の住民が誰々だとかいう情報を知らないのも珍しからぬこと。

 そう思うのだが、それにしたって同じ高校に通っている美少女が、これだけ近くにいたら気付くものではなかろうか。

 

 今日の今日まで気づかなかったのは、ただの偶然……だよな?

 

「えぇぇ! すっごい偶然! 神崎の家って、ウチの裏だったんだぁ」

 

 俺には、どうしても雨野の驚愕の声が空々しく聞こえて仕方ない。

 わかりやすく両手で口元を抑え、目をまん丸にしている雨野。

 いかにも今初めて知りましたと言いたげだ。

 

「なあ、雨野。いつからここに住んでるんだ?」

「う〜んと、確か4年くらい前かな。中1の途中に、お父さんの仕事で引っ越してきたんだよね」

「そっか、そっか。ちなみに、中学はどこ?」

「中学? 春中(はるちゅう)、だよ」

 

 雨野は、俺の目を見てゆっくりと答えた。

 

「スゥ……そっかぁ、春中かぁ」

 

 息を呑む。

 春中というのは、俺が通っていた三春中学校の略称だ。

 

 あれれぇ、おかしいぞ〜。

 俺、雨野と同じ中学に通ってたらしい!

 しかも、ほとんど3年間ずっと。

 

 ヤベェよ……全然覚えてないぞ。

 春中って一学年の生徒数100人とかだよな?

 同級生で雨野みたいな美少女ギャルを見た覚えはないんだが⁇

 

 100人の中に紛れていても、雨野くらい目立つ子がいたら普通は目に付く。

 なのに、中学時代の記憶に雨野寧々という存在は残っていない。

 

 怪談話を聞かされた気分だ。

 同窓会に行った時、ある特定の同級生の話題で、人によって意見が食い違う展開のやつ。

 最後はその子が事故に遭って亡くなっていることが発覚して、みんなで青褪(あおざ)めて帰る的なタイプの怖い話ですやん。

 

 いや、雨野はバリバリ目の前で生きておりますけども!

 

 7月の真夏日だというのに、俺の背筋にヒヤリとした冷たい汗が伝っていく。

 

「偶然、だな。実は俺も、春中だったんだよ……」

 

 どうしてか息が詰まる。

 俺は喘ぐようにして、やっとの思いで声を出した。

 

「ヘぇ〜、こんなこともあるんだね♪」

 

 三日月のようにニンマリと両頬が釣り上げられた雨野の微笑み。

 愛らしい姿なはずなのに、俺の全身に鳥肌が立っていた。

 

 おかしいだろ!

 流石におかしいだろ!

 絶対におかしいだろ!

 

 俺だけが歴史の異なるパラレルワールドに来てしまったような気分だ。

 ドッと精神的な疲れがやってきた。

 

「こんなこともあるんだな。ホント、びっくりだ。まあ、あれだな。今日はこれで解散ってことで」

 

 もう、なんでも良いから一度家に帰ってゆっくりしたい。

 

「いやいや、何言ってるの? せっかく送ってもらったんだから。お礼くらいさせてよ」

「お礼? 送ったって言っても、ここ俺の家の真裏だし。全然そんな気を使わなくていいぞ。ていうか、もう帰りたいなぁなんて……」

 

 だが、そんな俺を雨野は許してくれなかった。

 

「家が近いんだから、ウチでゆっくりして行っても問題ないよね? お茶くらい飲んでいきなよ」

「うん? なんでそんな話になった?」

「良いから上がっていきなよ。ね?」

 

 まただ。

 またハイライトの消えた雨野の目が俺を、じっとりと見ている。

 そんなわけないのに、俺にはそう見えてしまう。

 

「いや、でも……」

「まあまあ、遠慮しないで。おいでよ、カ・ン・ザ・キ♡」

 

 頷くな!

 頷くんじゃねぇぞ俺!

 

「……はぃ」

 

 ぬああああああああああああ!

 このコミュ障野郎があああああああ!

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