魔法少女「あなた」   作:何処にでもある

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 只今、情報を収集できるという長所のみで戦っております。




シーン「冒険2×吸血回想」

 

 

 シェフちゃんは殺すのが愛情って感じみたいだけどさ、なんでそう考えてるの?

 

「…驚いた。お前にそれを聞かれるとはな。記憶がないとは随分と変な感じだ」

 

 思い出したシェフちゃんからしたらそうかもね…けど、私は何も知らないから。良ければ教えてくれないかな。

 

「我とお前の仲だし、いいぞ。だが休みの間に話すに長い話だ……掻い摘むが、異論はないな?」

 

 大丈夫。

 

「ならば教えよう! 我が半生で最も輝いていた時を!」

 

 案外本人からしたら悪い記憶ではないのだろう。

 彼女はルンルンと今にも歌い出しそうな振る舞いで、朗々と快くあなたに教えてくれた……。

 

 

吸血→回想「パティシエの娘」

 

 

 最初に、我の産まれはとある上級階流の一家!‭─‬‭─‬の、専属パティシエの娘だった!

 麗しき見た目に産まれ、上の者の近くで育ったからか振る舞いも上流の者らしく振る舞うのが得意でな!

 我が主人の一族…特に奥様に似た容姿だったものだから、よく其方の娘だと勘違いされていたのだ!

 

「…なあ、まさかとは思うが」

「旦那様、何度も言いますが決してそのようなことはあろう筈が御座いません」

「だよな…妻にそのような時間もない。偶然か…先祖を遡らせてくれないか?」

「前に確認したではないですか。偶然ですよ、旦那様」

 

 そのせいで奥様は疑われたりもしたが、我は主人の長男と同日に産まれた女子(おなご)だ。

 双子でも無ければ不可能であるし、立ち合いにも旦那様は参加していた。

 だから完全な杞憂なのだが……旦那様は随分と心配症な奴だったからな。周りは呆れていたが、暇があれば何度も調べていたのだ。

 

「今度は何してあそぶ?」

「でんしゃごっこ!」

「じゃあわたしが先頭ね!」

「え〜!?」

 

 まあ? 我はそのおかげで主人である長男とはよく遊ぶ仲だった。

 今にして思えば専属メイドとして育てられていた気もするな? 思うに、大人共は折角共にする仲なのだから、ついでの感覚だったのだろう。

 我もメイド服はフリフリがいっぱいで好きだったから、稽古もそこまで嫌いでは無かった。

 

 順風満帆。正にそう言うのが正しいだろうな。

 お父様の菓子作りの手伝いも即なく熟せてた才女が我だ。

 恐らくこのままであれば、菓子以外の…それこそ、あやつの夜の世話も任される程度には出世したろうな。我、4歳で既に美少女だったし…何より、我はあやつを愛していた。

 

 おませと言うなよ? 女はいつだって女だ。我は成長が他より早いが故に、その手の理解も早かった。それだけの話よ。

 

 ただ…当時の我はある悩みがあってな…こう、人の首元を見ると噛みたくなる衝動があってな?

 誰にでもでなく、我が好いている者だけにそういう衝動が沸くのだ。

 今に至ってはそれも己と受け入れたが、我も常識というものは知っている。それが他とは変わった情動であると理解していた。

 だから我慢して、我慢して、我慢して…ああ、父母は身内だからな、共に風呂に入った時は遠慮なくがぶがぶしていた物だ。

 噛む度に親からは変な性癖だと直球に言われたりもしたが……我にとっては、その程度で収まる物であったならどれだけ良かったかと思わずにはいられないな。

 

 好きな人の血を気の向くままに飲み干したい…などとな。

 

 しかしまあ、そんな風に始めから気狂いだったのが我だ。

 魔法少女になった経緯も、兎のやつに比べれば気軽なもの。

 

「いてッ」

「わっどうし……あ、血だあ…」

「いてて…つまずいちゃっ…!?」

 

 我慢の限界だったのだ。

 あやつがふとした時に、流した血を見た瞬間。

 愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しいあやつがあやつがあやつがあやつが血を血を血を血を血を血を血を血を血を美味しそうで美味しそうで美味しそうで甘くて甘くて甘くて甘くて甘美で甘美で甘美で甘美で甘美で甘美でもっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬ごくんと、我は飲み干した。

 

 

『逸材みーつけた』

 

 


 

 

「あれは‭─‬‭─‬美味しかったなあ…」

 

 惚悦に浸っているシェフにあなたは思わずドン引きしたが…幸いと言うべきか、シェフは味を思い出すの夢中であなたの方を見ていない。

 その間に気を取り直し考える。今の話をまとめるとこうだ。

 

 限りのない愛情と重度の食人趣味が合わさった結果、こうなっているだけで、本人にもそれが異常側だと自覚している。

 食べたいだけで殺したい訳じゃない…といった所か。

 

 この情報を得られたのは良いことだ。会話できる余地がある。

 そして絶望的なのは、ダメだと分かってるのに抑え切れる理性がないことだろう。

 愛してる。だから食べたい。血を見ればそれが抑えられない。

 

 つまり怪我をしなければ最悪は訪れず……また、甘き血でそれっぽいデコレーションを飾るのもアウトだろう。怪我をするのは全面禁止だ。彼女は食品サンプルも齧る凄みがあるのだから。

 出来ればあなたに対する熱をもう少し冷ましたい所だが…それは難しい話だろう。

 既に気に入られている以上、この底なし沼の愛から抜け出すのは不可能だ。

 

 話してくれてありがとう。シェフちゃんが愛情深いのがよく伝わったよ。

 

「ならばいいが…まあ、なんだ。お前がこれを聞いた理由は理解出来る。我に食われぬ為だとはな。しかし、それで嫌いになりはしないさ。我もお前達には生きていて欲しいと思っている。食べたい気持ちと同じくらいにな」

 

 いや、嫌いになって貰わないと困るんだよ。

 あなたは内心そう叫んだが、どう反応しても更に愛しいと思われるだけなのでやめた。

 間違いなく善人で常識を備えてるのが逆に困ることになるとは。実に相手にするのが大変な人だ。

 

 …にしては、アリスちゃんの時は自分から食べに行ってなかった?

 

「それは…済まん。ちょっと美味しそう過ぎて我慢できなかった。感覚としては……クリスマス当日にな、こう…ケーキが4等分に別の味になった、ホールケーキを見た感じだったのだ。なんかもう食わない選択が無かったのだよ」

 

 ふむ、つまりシチュも料理も豪華さも全部ピッタリの状況だったから食べに行ったと。

 エロかったから食べに行ったと。

 ぶち犯し(お菓子)たる(食る)! になったと。

 

 つまりコイツはあなたより年下な癖に、相当なエロな訳だ。

 やーいコイツエロだぜ。そんなので恥ずかしくないのかよ。

 すけべ! すけべだすけべ!

 

 言ったら恐らく本気の殴り→甘き血反応→血でデコられて興奮→捕食のコンボが待ってそうなので、あなたはお口にチャックした。沈黙は黄金である。

 

「……お前、黙ってると余計にかわいく(美味しく)見えてくるな? 無理やり口を開けたくなってきたぞ。ん? どうだ、キスされてみるか?」

 

 あ、私もう行くね! お話ありがとう! 吸血鬼には私達を攻撃しない様に指示してね! お願いだよー!

 

「あ……あぁ、分かってる! アリスちゃんに言われて我を抑える様に言い含めてある! だが、警戒はどうか緩めないで欲しいぞ! そそるから!」

 

 案外野蛮人って程でも無かったのは安心要素であり不安要素だが、一度惚れた相手には軟派な人になるのも大分アレだと、あなたは先に進む支度をしつつ頭を悩ませるのだった。

 

 

*吸血とのコミュでは、血を流したり甘き血を使うと絆が上がりやすいと分かった!*

*絆が10以上で怪我をした場合、吸血が襲います。眷属が抑えてる内に遠くに逃げましょう*

*絆15以上でコミュをしただけで襲って来ます。程々でやめましょう。ただし力の差を分からせて、しっかり叱ればその限りではありません*

 

吸血 絆7→8

「理屈は理解した/心が二つある〜」

 

 

「みんな準備はいい? 今から3Fに潜るから、暫く休めるとは思わないように!」

 

 そんな訳で冒険再開である。戦闘時に気を付ける事が分かったのは良いが、甘き血に甘えると死にかねないとは面倒な話だ。命綱が回り回って死ぬギミックになっているとはこれいかに。

 

 しかしそれも前に出なければいい話。今まで通り後ろから歌う機会があったら歌う。

 この方針で行けば間違えることはないだろう。

 

『見えるかな‭─‬‭─‬あの星の輝きが』

 

「‬《擬似・救難信号共有(デミ・#SOSシェア)》《擬似・龍の眼(デミ・バレリー)》‭─‬‭─‬久しぶりね、隠者。お望み通りに来たわよ」

 

『君の終わり、その予兆だ』

 

「へぇ‭─‬‭─‬もう私が動くまであなたは魔法が(擬似・龍の眼の効果で)使えないのに?」

 

 実際、それは間違って無かった。

 というより、あなたがここに居る最大の理由は、この律動の知覚と情報共有の合わせ技だ。

 謂わば置物、存在する事に意味があるタイプだ。あなたとしては物足りない感覚もあるが、暇なのは余裕のある証拠。歓迎することこそあれど嫌がるのは以ての外だ。

 

「不発、不発、不発…運命を操る魔法も、使えなきゃ意味ないのね─‬‭─‬殺せ」

 

 1人が3度に渡り首を斬った。それと共に影が両腕を斬った。

 2人が6振り、両足、眼球、肺。其々2回。影が心臓を4つの穴を開ける。

 

 それで終わった。魔法の成否を支配して、所有してない魔法すらも成功させる星の隠者は、一度も魔法を使う事なく討伐された。

 アリスちゃんが怪人に寄って脳を摘出し、隠者と結んだ絆で得た隠れ家に納める。政府に作って貰ったという専用の脳缶に入れて、空気と栄養を補給出来るようにした。

 精神の魔法少女と並ぶ。これで2人目。降りた先が暗い森の中で、早々に隠者に出会ったのには面食らったが……予定通りに単独だったのは幸いだったと言える。

 

「進みましょう。次は人形と双子の筈だから」

 

 先に進むと程なくして、ダンボール製の小道具が並ぶ舞台と、不完全に偏った天秤や飾り付けの景色に変わる。

 ……いや、言われてた2人以外の、特徴的な物も混ざっていた。

 

 思わず後退りしたくなる程の‭─‬‭─‬蟲の群れだ。

 

『勇者は 戦闘を 開始した!』

『お姉ちゃんはどこ…どこに居るの…?』

『……総軍、戦闘準備』

 

 アリスが魔法を‭─‬‭─‬とても難しそうな顔で行使した。

 

「‬《擬似・救難信号共有(デミ・#SOSシェア)》《擬似・龍の眼(デミ・バレリー)》‭」

『《肉体操作(オペレーター) Lv.1》』

「《擬似・健全な悪(デミ・バイアス)》」

『《欠けた黄金(シャイニングノア) Lv.50》』

(*詠唱《擬似・落ちていく卵男爵(デミ・ハンプティ・ダンプティ)》破棄*)

『《双子座の鏡銀星(ミラースター) Lv.0》』

「しゃあっキタァ! 《擬似・とある伴侶の一生(デミ・ドラグーン)》《擬似・血の菓子飾り(デミ・アセットデセール)》《擬似・龍の巫女舞(デミ・ドラゴンダンス)》 これで逆処理でも私の勝ちよ!」

『《血の菓子飾り(アセットデセール) Lv.20》』

 

 ……情報の奔流で意識が飛びそうになるが、先にアリスが喜んだ理由を一言にするとこうだ。

 

 上から魔法が行使されても、下から行使されても、[龍巫女3]は付与されるから勝ち確…ということだ。回文をする魔法とか本当に頭が混乱するな…。

 

 

魔法行使→《肉体操作(オペレーター) Lv.1》

…任意行使可能。存在-10。確定先制、戦場に1人の行動回数1回の上限を生成。同じ能力の集団がいる場合、まとめて1人と看做す。

 

魔法行使→《擬似・健全な悪(デミ・バイアス)

…任意行使可能。近くの判定、ものを暫くない物として扱う。戦闘時では一度だけこの魔法の両隣のどちらかの結果を無かった事にする。

 

魔法行使→《欠けた黄金(シャイニングノア) Lv.50》

…任意行使可能。存在-30。成功確定。

(1)成功時この戦闘での魔法処理順を逆処理か通常か選べるようになる。ただし、行使者が認知している魔法に限る。

(2)失敗時、この戦闘では魔法コストを払わなくてよい。

 

魔法行使→《双子座の鏡銀星(ミラースター) Lv.0》

…任意行使可能。存在-30。精神対抗。

(1)成功時、この場で発動された全ての魔法効果を自身が行った物として獲得する。

(2)失敗時、この場で発動された相手の魔法効果をもう一度発動させる。

(3)相手が同じ動きをした場合、その回数だけ[鏡]を獲得する。

[鏡]…獲得後一度受けた状態異常やダメージを回数分跳ね返し続ける。

 

精神対抗→相手の対抗放棄→成功→ 《擬似・落ちていく卵男爵(デミ・ハンプティ・ダンプティ)》→成否反転効果→失敗

 

魔法行使→《血の菓子飾り(アセットデセール) Lv.20》

…任意行使可能。存在-5。蟲の眷属を20体生成し、任意の数だけ眷属を生贄にし、味方全員の行動回数を其々生贄+20回分増やす。

 

 

 吸血鬼が刀を振り払って血を落とす。

 結局、なぜ勝ったのか終始把握出来なかったものの、私達はこの3体を倒す事が出来た。

 

 …ねえアリスちゃん。これどういう戦いだったの?

 

「処理を変えても結果は変わらない様に魔法を行使出来るかの戦い。情報分からなかったら詰んでた。一緒に来てくれてありがと、鼠」

 

 そっかー…どういたしまして?

 

 どうやらアリスちゃんが頭脳戦を頑張ってくれたらしい。

 そんな感じはするがお互いの情報量と思考過程が分からないと何も判断出来ない。

 

「それじゃあまだまだ進むけど…これで5人集まった以上、此処からは途中で逃げる事も視野に入る。……下から登って来た怪人がいる以上、頭の回転は止めないように!」

 

 まるで囲碁の盤面を見てるみたいだと、あなたはボーッと眺めて思ったのだった。

 ゲームで置物してるキャラってこんな気分なのかなと考えつつ、あなた達は更に進んでいく……。

 

 






 今更ですけどこれって姫プレイですよね。

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