魔法少女「あなた」   作:何処にでもある

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 手取り早い情報収集は?
 そうだね、あなたの過去の記憶だね。




√23-3「*この回想は無意味です*」

 

 

 21:00

 

「アリスが自殺する!?」×37

 

「あくまで、「そうなるかも」って話。けど、可能性は高いと思ってる」

 

 あなたの言葉に、全員が騒然とする。

 正直な話、その様子に驚きを隠せなかったが……ある意味当たり前の話かも知れない。

 

「そんな……そうなったら、そうなったら私は、どうすれば良いのですか…?」

「泣かないで巫女ちゃん…私だって…私だってそんなの嫌だよ!」

 

 アリスの絆の魔法は仲を深めることで、その人の魔法と似た様なものを手に入れられる。

 

 絆5:友人相当になった時。

 絆10:恋人相当になった時。

 絆15:該当する単語すらない「何か」に至った時。

 

 その上でだが、アリスはこれまで幾つもの魔法を使っていた。

 龍巫女の物らしき物でも3つ/絆15相当、他にも同じ人物から2つ貰ってそうな魔法も幾つかあった。

 本人だって、全員から最低1つは貰っている顔をして魔法を行使していたのだ。

 

 本人が余りにも当然、当たり前、普通、大したことないといったツラをしていたのでこれまでスルーされてきたが、冷静に考えて異常と言うしかない。

 

「‭─‬‭─助けに行くぞ、どんな戦場にだって行ってやる」

「死ぬのは許さぬ。我が恋人が死ぬ様子なぞ、見過ごすのはあり得ないのだよ」

「しかしどうしましょうか、リーダーが敵になるのも厄介な案件ですが、アリスさんを見つけるのも相当骨が折れますよ。あの人、存在証明に面倒な解法を使う必要があるので」

 

「わあ、みんな思ったより積極的だ」

 

 どんな人誑しでも40人と友人以上、恋人以上、人が他者を想える限界点まで高めるなんて不可能だろう。

 ましてや本人はサラッと東京外にも友人を作ってると言うのだ。

 

 一体何人の恋人関係を築いたのか、これまでどんな修羅場が展開されたのか……本人は制御が面倒な連中だと言ったが、こんなに素直に助けに来こうと協力する辺り、面倒なのはアリスの誑しの結果、因果応報なのかも知れない。

 

 何人も恋人以上になった上で肉体関係を持たないなら拗れるに決まってるよ。

 そりゃあそうだと、あなたは納得した。

 

「……ん? そういえば私も《影の石棺(シャドーアークセス)》をアリスが使ってた辺り、記憶喪失前は最低友人以上なのか」

 

 そういえば他人事みたいに扱ってたが、あなたも例外ではない事を思い出した。

 ……なんということだ。既にあなたはアリスの虜だとでも言うのか?

 

「……いや無いか。今の私の方が、アリスのこと好きだもん!」

 

 その通りであった。

 既に恋人2歩手前(絆8/親友以上恋人未満)前まで、あなたはアリスの事を憎からず思っているのだ。

 これは大問題だ。これ以上関係が拗れ無い様に記憶を消し、無かった事にしなくては。

 

 ……と、仮にこの様子を見たアリスなら言うだろう。

 絆の深さで言えば吸血とあなたも同じ数値だが、絆とは相互の思う気持ちの平均値だ。

 吸血の方が深くあなたが低い歪な形より、アリス側も同じくらい思っている関係の方が健全な形なのである。

 

 ……とすれば、アリス側も相当感情が重たいか、異常なのかも知れない。

 貰った分愛を返しただけよと本人は言うだろうが、適切に測って真心込められるのは相当な異常者だ。

 愛の総量が無限大なのも難点なのであった。

 

「‭─‬‭─…と言う事で、アリスの事を調べる班、リーダーを止める班、雑務班に分かれてやりましょう。シールの情報が正しければ後1日ちょっと。徹夜確定なので、各自不眠対策はしておくように!」

 

 そうこうしている内に話も纏まり、3つに分かれてこのゲームをなんとかすることにしたらしい。

 途中からあなたよりも賢い魔法少女が仕切ったので仕方ない話だが……数とは実に強力な武器である。

 

「私は…アリスを探す班だ」

「あ、シールも? 私達はここ数日アリスと一緒に居たからこっちらしいよ。説得要員だ」

「へー…ラビちゃんもなんだ。二人は?」

「案山子は雑務、シェフも吸血鬼の指示役として雑務。吸血鬼は調べるのも得意だから〜だって」

「……武士なのに?」

「種族格差だよ。どっちかと言えば」

 

 お陰で協力して事態に当たれるので文句はないのだが……財団員を完全に任せる事になったのはとても複雑な気分である。

 やはり強敵との決戦は、締めくくりとしてワクワクするものなのだろう。

 命を賭けるよりマジだが……まさかこんな暗殺みたいなやり方になるとは。

 

「結局川次さんには頼まないみたいだね」

「みたいだね。機械開発の魔法持ちが「映像があんなら、精神のと協力すりゃ再現出来らぁ!」って。今は絶賛開発中だよ」

「そっか。みんな頼もしいね」

「そうだね、シールが頑張ったからだ」

「殆どシェフとアリスだけどね」

 

 あなたが隣に立った兎の魔法少女に対し謙遜する。

 2回目の冒険では何もすることがなかった。

 あなたの認識ではそのような物として記憶されているからだ。

 

「元を辿ればシールだよ」

「…言うね」

「えー? 友達の自慢をしたいだけなのに……ダメ?」

 

 あなたは髪で兎の視線から顔を隠し、目を逸らした。

 余り担ぎ上げないで欲しい。あなたはそういうのに余り慣れては居ないのだ。

 どちらかと言えば誰かに合わせる、尊重する、担ぎ上げる方なのだから。

 

「……ダメじゃ無い…けど」

「けど?」

「……いいよ、言ってもさ! けど、思った反応が返って来なくても知らないからね!」

「やったー!」

 

 ぷいっと、あなたは頬を膨らませながら顔を背けた。

 なんだか、気が付けばラビに翻弄されている気がする。

 今は大事な時なのに……悔しい。

 

 あなたはそんな事を考えたが、あなた達にしばらく仕事がないのが現実だ。

 何せこれだけ魔法少女が居て、全員あなたよりもずっとレベルも魔法の練度も上で、あなたよりも向いた魔法を持っている。

 情報だって、言えることは全部言った。猫の魔法は一切反応を示さなかったからだ。

 

 全員助けたが故の余裕ではあるが、どうしても心が逸る気持ちは湧いてくるのだ。

 

「………もしかして」

 

 はたと気付く。

 もしかして、そのフォローとしてラビはあなたに話掛けたのでは?

 

「あちゃー。バレたらしょうがない。けど、私もそうだったから話掛けただけだよ。記憶喪失で、誰かと話すのも気まずいし……邪魔するのも悪かったしね」

「ラビちゃん、戦闘特化だもんね」

「まあね。それも上位互換いっぱい居る面子の添え物に御座います」

「そんなことない! ラビちゃんのお陰で…そうだ、私のお陰って言うけど、それを言ったらラビちゃんが助けてくれたからだよ!」

「ぬおっ飛び火した!」

 

 言ってて気が付いた。

 アリスとシェフの功績が助けた自分のお陰になるなら、元を辿ればナイトとの戦いで助けに来たラビもそうだと。

 

「あはは…私はほら、アリスちゃんに頼まれてたからさ」

「なら、結局アリスちゃんのおかげじゃない?」

「あ…そうなるね……プっ」

「…ふふ!」

 

 釣られてあなたも笑う。

 くすくすと、静かに二人で笑った。

 目の前の喧騒も気にならない。すっかりリラックスしてしまった。

 あー可笑しい。こんな時なのに、笑い合える友がいるなんて。

 

「…アリスちゃん、絶対に助けようね」

「うん。でもあの人の事だし、財団員はなんとかしたって言えば解決しそう」

「言えてる!……言えてるけど、そういえばなんでアリスちゃんは私達を頼らなかったんだろう?」

「………あれ? 言われてみれば…変だね」

 

 ラビの言葉に、はたと気付いた。

 そういえばそうだ。

 

 "友情、恋仲、人脈を武器にする魔法少女が、なんでそれに頼らない?"

 

 アリスは財団も魔法少女も、いろんな事を知っていた。

 今回あなたが知った事も、アリスがナイトに指示を出して得た情報のお溢れだ。

 つまり、アリスはあなたよりも多くの情報を持っている事に他ならない。

 

 それなのに、誰にも頼らずに自殺なんてあり得るのだろうか?

 あなたが考え実行出来る事を、アリスが思いつかないとは到底思えない。

 見落としがある…? そんな、まさか、だって今出来る最善はこれで…。

 

「考えられるのは3つ…」

 

 一つ、アリスからやれない事情があった。

 二つ、誰かに頼るとマズい何かがある。

 三つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……後は、()()()()()()()()()()…?」

 

 どれが正解かだなんて、全く分からない。

 あなたは出来る事をした。万事を尽くした。

 考えられることは最大限考慮してるし、みんなと頭を突き合わせて洗い出しだってした。

 

 なのに、分からない。

 

 頭を抱える。

 足りない。情報が足りない。

 推理する為の点も、ノイズすらもない。

 そうして、あなたは漸く自覚した。

 

「……もしかして私、アリスのこと、何も知らない?……!」

「あっ! どこに行くの!?」

 

 反射的に駆け出した。幸い戦闘要員はここ(SPオフィス)にいる。

 まだ戦闘班が動くには早いからだ。だから聞きたい人が近くにいる。

 1番アリスの情報を持っているだろう、あなたが知る限り1番深い絆を持った魔法少女。

 

「確か巫女ちゃんだったよね!…ちょっといい!?」

「え、あ、はいなんでしょう?」

 

 アリスがよく使っていた魔法、その根源。

 名前を神白巫女、魔法少女としての活動名を「ドラグーン」

 白いメッシュが混ざった髪が特徴の20くらいの女性に、あなたは問いただした。

 

「アリスについて知ってること、全部話して!」

「え…そんな…お恥ずかしい」

「照れてる場合じゃないから! みんなと仲がいいアリスがなんで誰にも頼らずに一人で解決しようとしてるのか! 心当たりは!?」

「ちょ…落ち着いて…あの人、私達の大半から嫌われてると考えますし、だからでは?」

 

 それは本人が言ってたから知ってるが、魔法少女としての活動とは分けて考えるのがアリスだ。

 だからこそ、今回のゲームでの動きが不審なのだと、あなたは言う。

 

「それは確かに…ですが、大抵一人で何とか出来るなら一人で済ましますし……」

「う〜! だったら、何かアリスの過去で知ってることは!」

「リーダーの家であなたと一緒に飼われてたのは知ってます。それ以外は…いつか教えて貰うとは約束しておりますね」

 

 くそっ使えない! あのアマ上手いこと自分のことはぐらかしながら親密になってやがる!

 私でも知ってる範囲しか言わないとか、詐欺師仕草も大概にしろ!

 

 あなたはそんな事を考えつつ、一応お礼を言ってその場を後にした。

 結局振り出しだ。いや、初めから一歩か二歩しか進んでないと言われれば言い返せないのだが。

 

 こうなってくると全部知ってそうなリーダーに聞けそうにないのが痛い。

 主催者を倒した後に聞き出せば全部分かりそうな物だが、それは明日の早朝にならないと分からないのだ。

 機械による魔法の再現開発→リーダーが寝ている間に上の階から脳に居る主催者を床越しに暗殺する計画だとはいえ、決着は今晩の三時頃だ。

 隠蔽も人員配置も、どうしても最短最善でそういう形になる。

 失敗すれば戦闘員と纏めてランダムテレポート→決戦らしいが、先ず成功する算段なのだ。

 

 だがその間に、アリスが全て終わらせる可能性がある。

 

「う〜…! 全然捕まる気配を感じない…!」

 

 時間の問題なのだ、これは。

 財団員は倒せる。しかしそうしているとアリスが死ぬかも知れない。

 アリスを抑えれば、財団員が気付いて逃げるかも知れない。

 逃げられれば…未来から来た連中のことだ。やり直すなんて、容易に出来てしまうだろう。

 

 二者択一を、知らず知らずのうちに選んでしまった感覚。

 後悔と苦渋が押し寄せて、もどかしさに狂いそうになる。

 死なないなら、アリスが無事ならいいのだ。全て杞憂なら、それでいい。

 落ち着いていた不安が、再びあなたに焦りを与え始めた。

 

 23:00

 

 時間が過ぎていく。

 残った手がかりは…一応、ある。

 

 あなたが過去を思い出せばいい。

 

 感覚的に、後3回分。

 それだけあれば、全て思い出せる気がするのだ。

 一応先触れには触れている。キッカケさえあれば戻るのは分かっている。

 だが…自ら思い出すのは恐怖を感じる。自分自身が消えてしまいそうで、薄寒い嫌悪感に足踏みしてしまう。

 

「だけど…これしか無いのなら…」

 

 アリスに戻せるなら、その魔法の持ち主に協力して貰えば復活出来る。

 幸いこの前の時に治し方の手順は既に聞いている。手綱は切れてない。

 

 思い出せ、確かアリスが使ったのは《擬似・孵化機(デミ・マザー)》《擬似・状況復旧(デミ・タイムリカバリー)》《擬似・急速治療(デミ・アプロディーテー)》《擬似・精神修復(デミ・サンソウル)》…確かアリスが言い草的には未成熟、月光、治療、人形……だった筈。

 

 観測した魔法効果的には《状況復旧(タイムリカバリー)》を持ってる筈の月光か、《精神修復(サンソウル)》を持つ人形が適任だろう。

 問題は誰がそうなのかだが……説明している間、それっぽい変身姿の子がいた筈。

 特に人形はゲームっぽい喋り方で記憶に残っている。すぐに見つけられるだろう。

 

 そうして探せば…程なくしてあなたは人形の魔法少女を見つけ出した。

 怪人姿は全身がドット絵みたいなカクカクした姿だったが、魔法少女でも…なんだが、ポリゴンが粗い服装だ。本人は普通な分、余計変な感じになっている。

 

「ごめん、少しいいかな?」

「はい なんでしょう」

 

 眼に光がないものの、茶髪に鉢巻きをしていてレトロな印象を与える魔法少女だ。

 先端の方になる程太くなる剣と青い盾を持っている。

 どうしてそんな魔法になったかは分からないが、魔法少女の中でも特徴的で探し易いのは大変ありがたい。

 お陰であまり時間をかけずに見つけ出せた。

 

「今のうちに記憶を取り戻したくてさ、あなたの魔法で戻せたり出来るかな?」

「クエスト?」

「うん。アリスを助ける為に万全を尽くしたいんだ。出来るならで良いんだけど…どう?」

「はい」

「…それはクエストを受けたって事でいい?」

「はい」

「ありがとう、助かるよ! 《精神修復(サンソウル)》、早速お願いできる?」

「はい 魔法の条件 頭を屈めて眼を閉じる」

「えっと…こうでいい?」

「はい」

 

 すごい、ここまでレトロ勇者な魔法少女って居るんだ。

 あなたは軽いカルチャーショックを受けつつも、人形の魔法少女に感謝を示した。

 ゲーム脳もここまで来れば感心が勝るものである。

 そう思いつつあなたは言われた通りにして。

 

 ぽかっ。

 

「いたっ」

 

 何故かそのまま殴られた。

 眼は閉じたまま、あなたは動揺した。

 

「なんで殴ったの?」

「 《精神修復(サンソウル)》」

「えっ本当にな‭─‬‭─あ、これ攻撃を受けた人にしか使えないんだ!?」

 

 無言で魔法を使われた。律動があなたにどんな魔法か教えてきた。

 

 《精神修復(サンソウル)

 対象攻撃被弾時かつ頭部接触時行使可能。

 接触条件を満たしてない場合、対象の位置まで転移可能とする。CP-1。

 対象の精神に影響する魔法を強制解除し、正常な状態になるまで修復し、HPを瞬時に500回復。

 ただし、対象の重度の精神異常を解除する場合、1時間の間[夢見]が付与される。これは解除できない。

[夢見]…[睡眠]の際、夢を他の人が見れる状態になる。

 

 うん、とても強いが、聞き捨てならない効果が見えた。

 瞼が重くなる中、人形に頼み込む。

 

「出来れば寝てる私を……かくし…て……」

「クエスト?」

「う…ん」

「はい」

「ありが……と…むにゃ……」

 

 そうして、あなたは廊下に倒れて深い深い夢の世界へと落ちていった。

 

 過去を見られるのは…なんか恥ずかしいなあ…。

 

 そんな途方もない事を考えつつ‭─‬‭─。

 

 

 

 

 

「チチチ」

 

 コココン。

 

「あでっ……リス?」

「チチ」

 

 ココココン。

 

「だあ! 僕はくるみ割り人形じゃ…ない……」

 

 気がつけばあなたは床に転がっていて、胡桃を持ったリスに額を占領されていた。

 小気味良く額に胡桃をぶつけられるのに耐え切れず起き上がれば‭─‬‭─‬。

 

「あら、お目覚め?……どう███? 鼠とは仲良くやれそう?」

「チチ」

「そう……それなら良かったわ」

 

 見渡せば全体的に白と桜色で飾られた広々とした…西洋貴族のような部屋が広がって。

 リスがあなたに驚いて逃げた先のバルコニーには、麗らかな日差しの中、本を片手に紅茶を飲むアリスの姿があった。

 

 春の花の香りが、あなたの鼻をくすぐる。

 

「鼠の坊や、ご機嫌いかが? 良ければ紅茶を一杯いかが?」

 

 






 眼を細めて笑う彼女は春の陽射しの様に暖かくて、ゾッとするほど美しかった。

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