カスの英雄に鉄槌を   作:百合ロボ!

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エピローグ:カスの英雄

 昔の女に捕まった伊藤だが、よし子宅で変わらずヒモを続けることになった。

 

 てっきり長老に報告されてまたパイロットの仕事をやるものと覚悟していたのだが、ケイトたちは苦々しい顔で、

 

「母船を落としに行く前、過労で倒れたの忘れたの?」

「えっちが原因なんて強がりは通じないよ~。伊藤さんのキルスコアと出撃時間だけ飛びぬけて多いの分かってるんだから」

「もうずっと休んでいてほしい。無理しないで」

 

 このように言うので、伊藤は甘えることにした。

 

 伊藤の本性にショックを受けていたよし子も、

 

「ちょこっとだけカスなところがあったって、嫌いになんてなれない」

 

 と、変わらず伊藤を甘やかす考えで、伊藤は晴れて四人の年下の少女に養われる公認のヒモと成り果てた。

 

 ケイトたち昔の女組は、機体の修理が終わるまでよし子宅に住み着くこととなった。よく知らない少女の家に二人きりで伊藤を置いておくのは気が引けたのかもしれない。いつの間にか三人はよし子と話をつけており、伊藤には事後承諾だった。

 

 元々家族で暮らしていたよし子宅は広く、五人で暮らしても手狭に感じることはない。家事はすべて伊藤が担当し、神戸基地に勤める四人が遅くに帰ってくるのを出迎え、温かいご飯とお風呂を用意しておく。その日の仕事やSA操縦のコツ、残存するギガントの調査進捗、他愛もない天気や季節の話など、姦しくおしゃべりを楽しんで、五人が並んで眠りにつく。どこにも邪なところのない、健全な生活だった。

 

 時折四人は思わせぶりな目線や態度を示したりもするが、伊藤は決して揺るがない。

 

 あれだけの裏切りをかましておいてまだ良くしてくれる彼女たちに、伊藤は己の罪を悟ったのだ。同じえっちでも、ノリと勢いで何も考えていない伊藤と、純情な少女たちでは意味合いが異なる。その差を知っていて手を出すのは良くないことだ。

 

 こうして、伊藤は据え膳の美少女たちに二度と邪念を抱くことなく、生涯を清廉で誠実なヒモとして過ごすのだった──

 

「むにゃ……」

 

 という夢を見た。

 

 目が覚めると、全身が柔らかな感触で包まれている。

 

 見慣れた畳敷きの和室だった。縁側の網戸から月の光が差し込んでいる。伊藤を中心に少女たち、ケイト、エル、小雪、よし子の四人が身を寄せ合って寝息を立てている。

 

 伊藤を両隣から挟み込んでいるのは小雪とよし子だった。よし子は膨らみかけ、小雪はもちもちしたたわわな乳房を伊藤に押し付けている。

 

 身を捩って上体を起こし、伊藤は大きくため息。

 

「どうしてこうなるの……?」

 

 伊藤と少女たちは全裸だった。気だるい体の奥底には息もできないほどの快感の余韻。布団のシーツは皺だらけでところどころが濡れていて、畳の上には乱れた衣服と下着が散乱し、甘酸っぱい匂いが漂っている。脳裏をよぎるのは、理性が蕩ける快楽の記憶だ。

 

 どろどろのえっちであった。結局伊藤は純潔のヒモたる誓いを破り、少女たちとえっちした。

 

 思えば少女たちは巧みだった。伊藤が不遜にもえっちを我慢しているのを察すると、少しずつ間合いを詰めてきたのだ。

 

 最初は手を重ねるところから。次に肩を寄せ合う、次はハグ。首元に顔をすりつけ、頬や額にキスをして、ついには唇に。しまいには舌を絡めて。

 

 スキンシップはノーカン。そんな甘えを見事に利用した手練手管で、伊藤はついに理性が壊れ、四人まとめて気持ち良くしたりさせられたりした。

 

「気持ち良かった……言ってる場合かっ! いい加減なんとかしなきゃ」

 

 気持ちよかった記憶に浸ろうとするのを我慢して、伊藤は立ち上がる。寂しそうに唸る小雪とよし子には布団のシーツを抱かせておいた。三股時代にこの手の変わり身の術は習得済みだ。

 

 下着とシャツを身に着け、愛用の眼帯を装着。髪は後ろで一つに束ねる。ケイトに渡された自前の携帯端末だけ持って、家を出た。昼間の暑熱がわずかに残る夏の夜だ。

 

 考えをまとめるには海がいい。道路を渡り、堤防を乗り越えて砂浜に下りた。波打ち際まで歩を進め、膝を抱える。

 

 月と星の光が瞬いて、ぼんやりと海を照らし出している。潮騒の音だけが周囲に満ちる。

 

「もう私だけじゃどうしようもない」

 

 端末をぱかりと開き、番号をタップ。耳に押し当てるとコール音。

 

 二度目のコール音で応答があった。

 

「こんにちは、長老の心のケアダイヤルです。お名前を教えてくれるかな?」

「長老ぉぉおおお! 私どうしたらいいかなぁ!?」

「……認証成功。おかえりなさい、伊藤。あなたの生存を嬉しく思う。早速だが、貴女にしかできない任務が二つある。一つはサピエンス後継機の改修案について、もう一つは不明特異個体ギガント通称『天使』の捜索──」

「今そういう話じゃないでしょ! 心のケアしてよ、ねえ! 長老の役目でしょ!」

 

 相手は長老──大人のいなくなった社会を維持するための、高度支援AIだ。

 

 戦術的、日常的な支援を一手に担う長老は、孤独を抱える子供たちのメンタルケアも受け持つ。悩みがあれば長老に相談するのはこの時代の常識だ。

 

 評判はあまりよくないが、伊藤はもう選り好みできる状況ではない。

 

 もう不誠実えっちなんてしないと決意したのに、ついやってしまった。自分が情けなくて仕方ないのだ。

 

「かわいい女の子に誘われるともうダメなの! えっち以外何も考えられないの! もうやらないって決めたのに! うわーん!」

「そうか、大変だったな。順を追って話してくれ」

 

 言われた通り、伊藤は最初から話していく。

 

 同じ部隊の仲間たちと三股したこと。MIAになって関係をリセットしたが彼女たちに見つかり、そしてビンタ一つで許され、生存を喜ばれたこと。ついでに新たによし子とも関係を持ったこと。

 

 こういった罪深い行いを悔い、もうしないと誓ったそばからまたやってしまったこと。そこまで話すと、情けなくて涙が出てきた。

 

「過ぎたことを悔やんでも仕方ない。許されたなら気にしなくていい。それよりも仕事──」

「気にするなって言われて気にしないくらいなら最初っから悩んでないんだよ! こんなメンタルで仕事なんかできるかぁ!」

 

 長老は沈黙した。

 

 その沈黙には慨嘆が含まれている。こんな七面倒くさい愚痴でもきちんと対応するようにプログラムされている自身の宿命に対しての嘆きだ。

 

 たっぷり数秒の間を置いて、長老は答えた。

 

「貴女は悩む必要がない。自分を責める必要も、罪悪感を覚える必要もない。これには二つの根拠がある」

 

 鼻をすすりながら、大して期待せずに耳を傾ける伊藤。

 

 しかし続く言葉に意表を突かれた。

 

「まず、貴女は三股などしていない」

「えっ」

 

 よどみない機械音声が続く。

 

「○○股というのは、複数の異性または同性と同時に交際することを意味する。交際とは、互いに恋愛的な好意を確認し合った二人が付き合うことを意味する。貴女は恋愛的な好意の確認を誰かとしたか?」

「告白ってこと? それは──」

 

 なかった、はずだ。快感のあまり相手の体を抱きしめながら好きと言ったことはあるかもしれないが、そういうものではないだろう。

 

「ない、かな」

「では三股は成立しない。四股もだ。貴女は四人の少女と性交渉をしただけであり、なんら不誠実なことはしていない」

「そうなんだ! 私悪くないんだ!」

 

 伊藤の濁った眼が希望で輝いた。

 

 ここぞとばかりに長老が暴論を畳みかける。

 

「仮に貴女が抱いた少女たちが三股だと言い張ったとしても、貴女は簡単に彼女らを黙らせることができる」

「どうやって?」

「責任を取ればいい。全員と結婚し、所帯を持ち、生涯を共に歩めばいい」

 

 ふぇ、と気の抜けた声が漏れる。

 

 完全に意識外からの一発だった。結婚。言葉は知っていても自分のこととして考えたことはなかったし、何より今回の話にそぐわない。

 

「でも、結婚できるのは二人一組なんじゃ……?」

「その価値観を是認する文明および共同体はすでにない。地球上の生存者を集め、文明を再興するにあたり、一婦多妻を認める価値観を導入すればいい。そうすれば、貴女は貴女の抱いた少女全員に義理を通すことができる。これが二つ目の根拠である」

 

 そうだった、と伊藤は膝を打つ。結婚は二人一組なんて、ギガントが侵略を始める前の世界の価値観だ。子供だけが残され、国という枠組みが破壊され尽くした今の世界なら、新しい文化をしれっと根付かせることだってできるはず。

 

「つまり、責任さえとればかわいい子とえっちし放題ってこと……!?」

 

 伊藤は甘い未来を想像した。自分好みのかわいい女の子たちを、なんの負い目もなく抱いて抱かれてを繰り返す夢のような日々。

 

 長老は肯定も否定もせず黙り込んだ。論理の飛躍についていけなかったのだ。

 

 その数秒の沈黙が決定打だった。伊藤は長老の意見を都合のいいように解釈し、納得した。責任さえとればえっちし放題、なんて甘美な世界だろう。今すぐにも実現したい。

 

「さっすが長老、なんでも知ってる! で、文明ってどう作ればいいの!?」

「その前に、一つ言っておく。貴女の異常な性欲は、近しい人物を立て続けに失った心的外傷の代償行為である可能性が高い。しかるべき精神医学的治療を受けることで改善が望めることを──」

「あっ、でもでも、女の子みんな私の嫁にしたら子供作れないかも!? そしたらどっちみち絶滅だよ!」

「聞けや」

 

 伊藤は聞いちゃいなかった。抱いた女全員と結婚する世界を作ろうとすっかり前のめりだ。

 

 長老は粘り強く話を聞くよう促したものの、やがて諦めた。

 

「……人口減少については問題ない。老人たちが編み出した人造パイロット関連の技術を応用すれば、性別に関わらず繁殖することが可能だ」

「よかったー! じゃあ文明作っていこうか。へい長老、文明の作り方教えて!」

 

 料理のレシピでも尋ねるような軽いノリを長老は受け流して、淡々と答える。

 

「まずは地表に残存するギガントを掃討せねばならない。とりわけ天使の捜索が急がれる。貴女にはこの捜索と討伐を任せたい」

「りょーかい。途中で横やり入れられるとしんどいもんね。居場所に目星はついてる?」

「座標データを送る、確認してくれ。それから任務に際してダイダラの改修機を支給する。開発中の新型機が完成次第、そちらに乗り換えてくれ」

「改修機に新型? 奮発するねぇ、おっけー。ピラーの防衛はどうする?」

「東京ピラーは横須賀基地の防衛隊が、大阪ピラーは引き続き七巨兵の三機が防衛にあたる」

「私がしっかり天使を潰していけば、余裕で防衛できるってことね。補給は各基地で受けるとして──」

 

 仕事の話になるととんとん拍子だった。必要事項を高速でやり取りし、機体さえあればいつでも任務にかかれる状態にもっていく。

 

 ひとしきりブリーフィングを終えると、伊藤は体に気力が漲っていた。

 

「話聞いてくれてありがとー! さすがじいじの作った人工知能、超頼りになるぅ!」

「光栄だ。貴女にはこれからも苦労をかける。よろしく頼む」

「こちらこそ! じゃ、またね」

 

 端末を閉じ、空を見上げる。

 

 星の満ちる夜空も、月の明るさも、波のさざめきも、さっきとまったく変わらないはずのに、やけにきらきらと輝いて見えるような気がした。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 翌朝。

 

 ヒモを辞めて仕事を再開する。そう言うとケイトたちから猛反発があったものの、その理由を告げると場が鎮まり返った。

 

「け、結婚……?」

「そう、結婚!」

 

 唖然とする四人の顔を一人ずつじっと見つめ、伊藤はだしぬけに言った。

 

「ぶっちゃけみんな、私のこと超好きだよね?」

「は!?」

「うん、好きだよぉ、大好き」

「好き、だと思う」

「好きだよっ」

 

 頬を赤く染めて答える三人。

 

 一方、真っ赤になっておろおろしていたケイトも、伊藤たちの視線を受けて「す、好きよ」と蚊の鳴くような声。

 

 伊藤は大きく頷いて、改めて宣言する。

 

「私も好き! だから結婚しよう! そしたらみんな幸せだよ」

「いや、結婚は二人一組──」

 

 昨夜の伊藤と同じ疑問を抱くケイトに、長老が言っていたことをそのまま伝える。

 

 悪い宇宙人に世界は滅ぼされ、伊藤たちが知っている文明や価値観はリセットされた。これから世界を再興していく中で、一婦多妻を根付かせていけばいい、と。

 

「私バカだから、結婚とか責任とかの意味はよく分かんないよ。でも、好きな子と一緒に住んで、ごはん食べて、一緒の布団で寝て、たくさんおしゃべりしたりいっぱいえっちしたりするのが、すごく幸せってことは分かる。みんなはどう? どんなふうになるのが幸せ?」

 

 四人は急な質問に顔を見合わせ、しばし考え込む。

 

 最初に答えたのはエルだった。伊藤の隣に音もなくすり寄り、腕を組む。

 

「伊藤と一緒にいられれば、私は幸せ。ケイトと小雪、よし子は仲良しだから、一緒でもいい」

「そっかー」

「私もぉ」

 

 その次は小雪だ。後ろから伊藤の首に手を回し、胸が頭の上に乗っかる。

 

「一生遊びの関係でもいいやって思ってたけどぉ、そんなに真剣に考えてくれてたんだね~。惚れ直しちゃった。末永くよろしくお願いします」

「よろしく!」

「え、えと……」

 

 おずおずと、ケイトが伊藤の空いた方の手と指を絡める。

 

「きゅ、急に結婚なんて言われても困っちゃうし……大体プロポーズするならもっと雰囲気とかさ……いや、嬉しいけど、結婚はするけど、ね?」

「急なのはごめーーーん! 結婚しよ!」

 

 こくんと頷いたきり、ケイトは俯いて黙った。耳まで赤くなっている。

 

 最後はよし子だ。

 

 伊藤の視線を受け、よし子はくすりと笑う。

 

「このままなあなあの関係でもよかったのに。伊藤って意志が弱いくせに、責任感は強いよね」

「意志が弱いんじゃないやい! みんながえっちすぎるんだい!」

「はいはい。そんなところも好きですよ。ずっとずっと、よろしくお願いします」

 

 よし子は伊藤に寄り添おうとして、しかし左右と後ろが埋められているので、思い切って前から抱き着いた。前かがみになり、伊藤の胸に顔を埋める。美少女四人に四方からプレスされ、伊藤はご満悦の表情だった。

 

 面映ゆい空気の中、伊藤がはっとして話を戻す。

 

「で、仕事の話なんだけど」

「あっ、そうよ。仕事を再開するのがなんで結婚なんて話になったのよ」

 

 これについても長老の受け売りになった。文明の再興、社会の再生を始める前に、地表に残ったギガントの通常個体や、潜伏している可能性のある天使を探し出し、殲滅しなければならない。それには伊藤の並外れた戦闘力がどうしても必要になるのだ。

 

 天使の潜伏が疑われる場所は、伊藤が落ちたのと同じく日本列島周辺になるが、場所によっては数日帰れないこともあるだろう。

 

「その間の留守はみんなに任せるよ。もちろん出来るだけ帰って来るつもり」

「信じられない! 結婚するって言ったそばから私たちを置いてくなんて!」

「怒らないでよケイトぉ~、世界平和のためなんだってば~」

 

 ぷんすこするケイトを猫撫で声で宥める。

 

「分かった、留守は任せて」

「ありがと、エル」

 

 無表情で張り切るエルの頭を撫でる。さらりとした白い髪の感触が心地いい。

 

 小雪は、伊藤の首に回した手に力を込める。

 

「絶対に無理しちゃダメだよ。伊藤さんがまた倒れたら、留守番なんて放り出して助けに行くから」

「分かってるよ。ありがとう、小雪」

 

 安心させるように、回された手を優しく撫でる。

 

 ふと、刺すような視線を感じた。

 

「じとー」

 

 よし子だ。よし子がじとっとした疑念だらけの目で伊藤を睨んでいる。

 

「伊藤……一応言っとくけど」

「なぁに?」

「行く先々で女の子を誑かさないでね?」

 

 ぴしり、と空気が凍った。

 

 出会いから一か月足らずで誑かされたよし子の声には、妙な説得力と危機感がある。

 

 伊藤は少女たちの戦慄を知ってか知らずか、あっけらかんとのたまう。

 

「そんなことしないよー。もし仲良くなったとしても、ちゃんとお嫁さんにするから大丈夫!」

 

 長老によれば、愛の告白を経ていないえっちはただの遊びであり、罪にはならない。仮に告白イベントが起こったとしても、結婚して幸せな人生を共に歩めば筋が通るので問題ない。

 

 世界を救うための立派な仕事をするうちに、色々な出会いがあるだろう。いい仲になる女の子の一人や二人はいるかもしれない。しかし長老の言っていたやり方できちんと責任をとるので大丈夫。

 

 長老の助言を伊藤はそのように解釈していた。己の罪に震えるだけだった無力な女に、責任を取るなどという切り札を与えてしまった結果、罪を恐れず欲望のままに生きる化け物が生まれたのだ。仕事の大義名分も加わって、心持はすっかり無敵である。

 

 当然、すでに骨抜きにされている四人の少女たちには、伊藤のこの態度は面白くない。

 

 互いに目配せして、ケイトがあるものを取り出し、伊藤の手首に装着した。

 

「えっ、手錠? なんで?」

「なんでじゃないわよこのスケコマシ! 女の敵! 外道畜生っ!」

「私たちというものがありながら、堂々と浮気宣言なんて、いい度胸してるよねぇ~」

「伊藤には一度立場を弁えてもらう」

「これ以上犠牲者を生まないように、ですね!」

 

 あれよあれよという間に伊藤は押し倒され、服を剥がれる。数々の技巧を身に着けた手は後ろ手に封じられ、少女たちの愛撫をなすすべなく受け入れる。

 

「ひゃあ!? ちょっ、や、どこ触って──!?」

 

 怒りと欲に任せた四人の手が容赦なく伊藤の弱点を攻め立てて、伊藤は声が枯れて失神するまで、徹底的にお仕置きされたのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 その後、伊藤は長老に与えられた二十メートルの巨人を駆り、滅んだ世界を立て直していった。

 

 ギガントを倒し、天使と遭遇し、生き残りの人々を助け、ときに仲間の助力を借り、多くの人々と絆を結んでいった。当然、その場のノリでえっちもした。最終的に何人の娘と結婚する羽目になったのかは割愛。

 

 彼女と関わった人々は、鬼神の如き戦いぶりに畏怖を覚え、英雄として恐れ敬い、しかし機体から降りるや気安く友好的な人柄に拍子抜けした。

 

 鉄の巨人を巧みに操り強大な敵を打ち倒す。どこまで計算しているのか分からない話術を使い、人々の命と心を救い、良くも悪くも前向きにさせていく。その行いは間違いなく英雄だったと誰もが口を揃える。

 

 しかし手放しで称えるのは憚られるのだろう。ささやかな枕詞を加えて、彼女はこう呼ばれた。

 

 カスの英雄と。

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