魔法使いの殺し方   作:ミチシルベ

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第三話 一級魔法使い

 

 魔法使いの等級について。

 

 魔法使いの等級は魔力量によって基本的に決められている。そして等級によって献魔の量が定められる。しかし、五級以上になる条件が基礎魔法の全習得であるように、上級の魔法使いになればなるほど魔力量以外の条件が追加される。

 

 ――俺たち魔無しの非魔法使いが殺せる上限は四級までだと考えている。それは魔法の規模、魔力量。色々と考慮してのことだが、一番は詠唱を必要とするか否か。三級以上になる条件にに魔法を使うのに詠唱を必要としない、要するに詠唱破棄ができるかどうかが条件になっている。

 

 たがら俺達が普段使う殺しの手段は使えないし、また何人集まろうと意味がない。だから三級以上とは絶対に戦闘は行わない。もし戦闘になったら……考えたくもないが逃げるしかない。ありとあらゆる策を弄して、持てる全てを使って逃走し、一人でも生き残れば万々歳だ。

 

 そしてそんな化け物共の中でも特に一級というのは群を抜いている。一級が何人国にいるかで国力が決まると言われるほど。その身一つで天変地異が可能とされるそれが一級魔法使い。しかし、この国にいる一級魔法使いは五人。そのうちの一人に会うなんて確率、宝くじに当たるようなものだ。

 

 なんでこんな当たり前の事を考えているのか?――決まってるだろクソってたれ! その宝くじ、否貧乏くじを引き締まったからだよ。

 

「お待ちしておりました……」

 

 年齢は俺とおおよそ同じ、ふわりとした白い髪に印象的な紺碧の瞳の少女が俺の顔を捉えている。

 

 俺はこいつを知っている。いや知らない人間の方が少ないだろう。ルナ•アヴニール•アストレア――この国の第三皇女であり、数少ない一級魔法使いの一人。

 

 おかしい。俺は次のダーゲットの情報を探りに、最南端の町ハーテルに来ており、そして人目を避けるために人気の少ない路地裏を通っていたはずだ。こんな大物に罷り間違っても出会うはずない。

 

 待たれていた。聞き間違いでなければ、彼女はさっき俺を待っていたと言っている。何故だ? いや考えられるのは一つしかない。魔法使い殺しをしている事がバレたに違いない。だが、だからと言って一級、それも王族が直々にが出てくる必要性があるか? いやない。

 

 落ち着け。起きている事から目を逸らすな。心を揺らさずに冷静に状況を分析しろノーマ。

 

 今考えるべきはどう生き残るかじゃない、どうやって死ぬかだ。今後起きることとして、最良なのは彼女が俺を殺して満足してくれる事。最悪は集落全体が魔法使い殺しに関わっている事が既にバレており全滅する事。

 

 そして目の前の彼女は俺の心中を知ってか知らずか、優しく微笑みながら語りかける。

 

「そう警戒しないでください、あなた方を害するつもりはありません」

 

 ふざけるな、最悪だ。あなた方だと? ここに居るのは俺一人だけだ。つまりは俺の背後にある非魔法使いの集落について認知しておることに他ならない。知らぬ存ぜぬでやり通すか? いやそれは不可能だろう。

 

「警戒しないでって、貴方様を相手にそれは些か難しいですね……」

 

「あら、私のことをご存じなのね」

 

 この国であんたの事を知らない人間の方が稀だろうよ。それともあれか、遠回しに非魔法使いである俺を馬鹿にしているのか? いや落ち着け、そうじゃない。今必要なのは口を動かして、彼女の目的と何をどこまで知っているかの把握だ。

 

「ええ、知っているからこそ疑問なのですが……何故こんな辺鄙なところにいらっしゃるので?」

 

「最初に言った通りですよ。 貴方のことを待っていたの」

 

 最初のは聞き間違いではなかったようだ。目的は俺、だが希望はまだある。何故なら俺は今まだ生きており、彼女と会話ができている。殺す事だけが目的なら俺のことなど目視せずに殺せるはずだ。つまり何か他に目的があるはず。

 

「率直にお聞きしますけど、俺なんかに何の用があるのですかね?俺なんかが貴方様の役に立つとは思えませんが……」

 

「そう自分の事を卑下しないでください。他ならぬ貴方――魔法を使わざる魔法使い殺しである貴方の力が必要なのです。……どうかお願いです! 私の事を助けて頂けませんか?」

 

 そう言ってルナ•アヴニール•アストレア第三皇女は深々と頭を下げた。

 

 俺は理解が追いつかなかった。助けて欲しい? こっちの台詞だ! 何を考えてやがるこの女! そう怒鳴らなかった自分を褒めてやりたい。

 

 どうなってる。俺が魔法使い殺しだとバレているのは想定内だ。だが、魔法使い、それも一級魔法使いの王族が俺に頭を下げてお願いするだと? 悪い夢でも見てるようだ。

 

「……頭を上げてください、そんな姿見られたら俺の首が幾つあっても足りませんよ。それに助けてって……何ですかこの国を救えとでも言うつもりで?」

 

 御伽話において、可憐な姫がお願いして勇敢な騎士や勇者が国を救うというのは、ありふれた設定だ。だが俺は勇者でも騎士でも無い。ただの魔法の使えない人殺しだ。役者不足甚だしい。

 

 だがそんな俺の冗談に対して、皇女様はパチクリと目を見開いて驚いたような表情を浮かべている。

 

 何だその反応は? ふざけるな、まさか本当に――

 

「……よく分かりましたね。流石の慧眼でございます。その通りです、私の頼みとは貴方にこの国を救って頂きたく事です」

 

 今度は我慢できなかった。

 

「は? 何考えてるんだこの女」

 

「えっ!?」

 

 言ってしまったその後で、自分が何を言っているのかを遅れて理解した。たが気づいた時には時すでに遅し。不味い、やってしまった……。

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