インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose   作:笑嘲嗤

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第11話 戦士の矜持

 タッグトーナメントの大戦表が発表された。

 

「これはなかなかだね」

 

 シャルが唸ってる。俺だって唸りたい。

 

「箒とボーデヴィッヒの組み合わせか。あいつまじで女子の井戸端会議に入れてねーのかよ」

 

 まさかの箒とボーデヴィッヒの組み合わせ。しかも一回戦で俺らと当たる。正直に言って作為を感じるがまあいい。

 

「とりあえず作戦通りってことで」

 

「うんわかったよ」

 

 この日のために準備はいっぱいしてきたつもりだ。なお二回戦は鈴とティナ・ハミルトンが上がってくるのはほぼ確定。なんとも言えない。

 

 

 

 

 

 

 そしてアリーナに俺たちは集合した。始まりのブザーを待つ。

 

「ねぇ一夏。ボーデヴィッヒさんの顔色悪くない?」

 

「確かに良くないな。なんだ?」

 

 ボーデヴィッヒの顔色は優れない。だがそれは体調よりもメンタル的な何かに見えた。なにかをぼそぼそと呟いている。でも不調ならこちらとしては構わない。そしてブザーがなった。ボーデヴィッヒが俺に突っ込んできた。

 

「お前を否定し!私は肯定される!!」

 

「他人を評価軸にすると疲れるぞ」

 

 両手のビームサーベルでなんども切りかかられるが、何れも雪片で裁く。ただの刀でいいからもう一本欲しいなぁ。

 

「シャル」

 

「わかってる!」

 

 シャルは箒に迫る。距離を取って、ひたすらマシンガンで撃ち続けた。

 

「ち!弾幕が厚い!」

 

 箒はシャルに翻弄されている。かなり順調だ。そのときだ。ボーデヴィッヒからワイヤーが伸びて箒を掴み、それを振り回して俺に攻撃してきた。

 

「ばかなのか?」

 

「うるさい!必要なのはおまえだけだ!織斑一夏ぁあ!!」

 

「うぁああああ!!」

 

 投げつけられる箒を躱しつつ、俺はボーデヴィッヒとつかず離れずの距離を維持する。

 

「逃げるなぁああああ!!」

 

「逃げちゃいないさ」

 

 そこへシャルがぶん回される箒をひたすらスナイパーライフルで撃ち続ける。あっという間に箒の機体は起動不可能になり沈黙した。

 

「そんな。こんなことで……」

 

 箒の目に涙が浮かんでいる。正直に言って同情はする。だが構ってはいられない。

 

「シャル!」

 

「まかせて!!」

 

 シャルがボーデヴィッヒにアサルトライフルで射撃する。ここではじめてボーデヴィッヒがAICを起動させた。

 

「無駄だ!そんなもの第三世代機には通用しない!」

 

「隙がデカいんだよアホ」

 

 俺はその間にボーデヴィッヒの背後に回り、初めて零落白夜を起動させた。そしてそのまま思い切り振りぬく。

 

「なぁああああ!!」

 

 AICの致命的な弱点。一方向にしか展開できないこと。これはおそらくはエネルギー効率の問題と技術上の仕様の問題なのだろう。盾をつねには展開できない。一対一なら極めて有効な手になるが、集団戦だとただの的だ。今度は俺の方にAICを展開する。俺の動きが止まる。だけど。

 

「本当にがら空きだね。飛べないISなんてただの的だよ」

 

 今度は背後からシャルがアサルトライフルをボーデヴィッヒにぶち込む。シールドががりがり削れていく。さらにそこからがシャルのすごいところだ。アサルトライフルを捨てて、イグニッションブーストで加速する。隠していたパイルバンカーを出して、ボーデヴィッヒに体当たりしながらパイルを至近距離から打ち込む。ボーデヴィッヒはそのまま吹っ飛ばされて壁にめり込む。あとは簡単。

 

「シャル!」

 

「一夏!」

 

 俺たちは同時にボーデヴィッヒをボコりまくる。アリーナに歓声が上がる。ボーデヴィッヒは嫌われものだったし、絶好のショーだ。好感度高いです!このままいけば試合は軽く終る。と思ってた。

 

「ぬああああああああああああ!!!」

 

 ボーデヴィッヒの機体が閃光をはしった。俺たちは危機を感じて後ろに下がった。ボーデヴィッヒがなにか体を震わせている。バチバチ放電もしている。

 

「なんだ?」

 

「わかんない。秘密兵器かな?」

 

 俺たちは警戒するが、特に変化はない。だけどボーデヴィッヒの表情が酷く虚ろになる。彼女の眼帯がいつの間にか落ちていた。金色の目が見える。そしてボーデヴィッヒは刀をコールして構えた。その構えは、昔よく見たものだった。

 

「VTシステムだ?!うそ?!なんでそんなの使うの?!」

 

 シャルが呆れたように驚いている。

 

「なんだVTシステムって?」

 

「IS操作教育用アプリケーションだよ!モンドグロッソ二回制覇の織斑千冬の動きをトレースして体に覚えさせるための訓練ソフト!」

 

「武道の型稽古みたいなもんか?」

 

「うん。その通り。でも実戦で使う?お馬鹿なんだね……」

 

 型稽古は訓練なら有効だろう。とくに強い人間の真似は上達への早道だ。そういう教育システムがあることに何の違和感もない。だけど。

 

「VTシステムはいいソフトなんだよ。だけど実戦で使うのはバカらしい。だって詰みチェスと一緒だ。解法がもう用意されてる。まねっこのままなんだからメタを張ればいいだけ」

 

「補助輪付きの自転車だな。あほらしい」

 

 呆れるばかりだ。ボーデヴィッヒは姉に執着してた。その心理の発露だろう。ばかばかしい感傷だ。まあ気持ちはいいだろうけど、勝負を放棄した。自己満足の世界だ。その時だ。通信が入ってきた。

 

『織斑。ラウラを解放してやってくれ』

 

 なんか姉が変なことを言っている。

 

『あいつは私の幻影を追いかけている。ラウラは私にはなれない。自分を生きなければいけないのだ』

 

 だからなによ。俺にそれは関係ないだろうが。

 

『お前の雪片で私の幻影を斬って欲しい。ラウラに教えてやれ。世界は広いんだと』

 

 バカかな?

 

「シャル。パスしてパス!」

 

「あ、はい」

 

 シャルは俺にアサルトライフルを手渡してきた。俺はそれをボーデヴィッヒに向けて、フルオートで引き金を引いた。

 

「うわああああああああああああああ!!」

 

 そしてボーデヴィッヒは倒れて沈黙した。

 

『勝者!織斑・デュノアペア!!』

 

 あっけない幕切れだった。

 

『織斑。お前……』

 

 知らんわ。俺たちはドッグへと戻った。どうでもいいことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラは保健室のベットで目を覚ました。

 

「織斑教官……」

 

「目を覚ましたか」

 

 ラウラはぼーっと自分の手を見詰める。

 

「私はあなたにはなれませんでした」

 

「そうだ。お前は私にはなれない。私がお前になれないように」

 

「織斑一夏は私に教えてくれました」

 

「ああ。あいつは優しい。お前はお前を生きればいいんだ」

 

「え?」

 

「うん?」

 

「いえ。冷静さを欠いて教育用ソフトなど起動して錯乱した私を織斑一夏は冷静に倒しました。教官がなにか決闘を煽ったようでしたが、それを拒む判断力は素晴らしいの一言です。戦士とは上の命令がゴミでもときに勝利のために自身の判断を信じる力を信じるものだと私は知りました」

 

「ごみ?!私の助言が!?」

 

「織斑一夏。素晴らしい戦士です。……あの豚を見るような冷たい視線にぞくぞくしました。戦士とは麗しいのですね」

 

 千冬は唖然とする。ラウラは新たなる世界に旅立った。

 

「織斑一夏……美しい男……私はいやしいメス豚……」

 

 頬を赤く染めてラウラは外の風景を見ていた。この先に待つ希望の日々に胸を高鳴らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二回戦は順当に負けた。鈴に二人がかりで挑んだのにボコボコにされた。雪片がちっともあたらねぇ。当たらなけばどうということはない!まじで産廃だな。ゴミ箱に投げ捨てたい。

 

「いやぁ。ここまでボコボコにされると悔しささえ感じないんだけど」

 

「ほんとだよ。俺も順当すぎてなんも感想が出ねぇ」

 

 そしてそのまま鈴とハミルトンペアが優勝した。圧倒的な存在感を示した。なおやっぱり鈴は第三世代機兵装を一回も使用しなかった。圧倒的過ぎた。

 

「ふぅ。でも一応やれるだけのことはやった。シャンメリーだけど乾杯しよう」

 

「そうだね。あ、硬いから一緒に開けて」

 

 俺たちは手を重ねて蓋を部屋の中に飛ばす。ベットに当たって跳ねて俺たちの足元に蓋が落ちてきて笑った。ピザを学園の外で買ってきて二人で楽しむ。これくらいの細やかな宴会はいいだろう。だって本当の戦いはこれからなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。朝早く起きて、俺はシャルに言った。

 

「今日から一週間ほど風邪ということにして欲しい」

 

「え?どうして?」

 

「ちょっとしなきゃいけないことがあるんだ」

 

「危ないことじゃないよね?」

 

「大丈夫だよ。まあ信じてくれ」

 

「それならいいけど」

 

 俺はリュックサックだけもって私服に着替えて学園から出た。電車に乗り都内に向かう。そして東京メトロ日比谷線「広尾駅」で降りて少し歩く。目的の場所についた。そして中に入る。受付窓口で係の人にメモを渡す。

 

「織斑一夏が来たと一番偉い人に伝えてください」

 

「え?ええ?!は、はい!!」

 

 俺は受付ロビーのソファーでぐでっと待つ。そしてやってきた一番偉い人。

 

「本日はどのようなご用件でしょうか?我々は歓迎レセプションを用意しています」

 

「そういうのはいいんです。お願いがあります」

 

「どうぞ仰ってください」

 

「お忍びで観光に行きたいんです」

 

「観光ですか……?」

 

 一番偉い人が目を細める。

 

「ええ。観光ですよ。Le Palaisにね」

 

「っ!わかりました。すぐに手配します」

 

 そして俺は観光旅行に旅立った。

 

 




本作のVTシステムはただの教育アプリ。
そりゃみんな織斑千冬の真似はするでしょ。
アスリートなら当たり前という発想。
そして一夏どこかへ観光に行きます!
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