インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose   作:笑嘲嗤

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第3話 魅せる戦い

 初っ端からオルコットはビームを撃ってきた。俺はそれを避ける。

 

「「「きゃーーーーー!!」」」

 

 歓声が観客席から上がる。だけどこちらはそのままビームで押される一方だった。

 

「さあ踊りなさい!わたくしの奏でるワルツで!!」

 

「俺は盆踊り派なんだよ」

 

 一応避けられてはいるが、近寄ることもできない。たまにこっちからもマシンガンをぶっ放すがそれは軽く避けられる。

 

「ちょこまかと鬱陶しいですわね!躾てあげますわ!!」

 

 オルコットの背中からビットが四枚飛び出した。それらが俺の周囲を回りビームを放ってくる。

 

「くっ!」

 

「ふふふ。いいですわ。ぶざまで!」

 

 さすがにオールレンジ攻撃に何発か喰らってしまう。ISを装着しているから後ろだって振り向かなくても見えるけど、反応はしづらい。まだまだ訓練が足りないのを痛感する。だけどこの攻撃を俺は知っている。クラスメイト達が教えてくれた。俺はビームを避けながら地面に降りる。

 

「哀れな!這いつくばりなさい!!」

 

「いいや。踊ってやるよ」

 

 俺はマシンガンを捨てて、刀を二本出す。そして地面にしっかり足をつけて、迫るビームたちを刀で弾いていく。

 

「「「「「キャーーーー♥」」」」」

 

 俺の美技に酔いな。なんて漫画の台詞を思い出してしまう。だけど俺の動きは観客たちを魅了していた。

 

「あれは篠ノ之流桜舞?!」

 

「知っているのか篠ノ之さん!?」

 

「ああ。うちの流派の奥義の一つだ。二刀の剣で絶対防御圏を作り出す多人数を想定した技だ。イチカ覚えていたんだな……」

 

 箒たちの声がマイクに拾われた。俺はうっとおしいので音声は切ることにした。とりあえずオールレンジ攻撃はこれで封殺できた。地面に立てば迎撃範囲は自ずと半分なのだ。避けるより捌いた方が楽だ。

 

「くっ!!ISに乗りながら地を這うとは!」

 

 なんとでも言えばいい。知ったこっちゃないのだ。ビームの雨を捌き続ける。オーディエンスは盛り上がる。いいこと尽くしだ。俺の目的は勝ちではない。魅せる戦いをすることで、クラスメイトからの信頼を勝ち取るだけだ。

 

「ところでそのビット。エネルギーは大丈夫か?」

 

 オルコットが焦ったような顔をする。やっぱりだ。エネルギーはおそらく本体から離れている間はチャージできない。そしてビットたちが一斉にオルコットに戻っていく。

 

「だから甘いんだよ!!」

 

「きゃ?!」

 

 捨てたマシンガンを拾ってオルコットに浴びせる。ビットの制御中は他のことが恐らくできないだろうと映像で確認していた。戻すのだって多分オートじゃないんだ。そして俺はシールドが削れることを覚悟でオルコットの懐に飛び込む。

 

「うおおおおおお!!」

 

 大上段に一刀を構えて、振りぬく。

 

「そんな大振り?!きゃっ!!」

 

「二刀流なんだよ」

 

 二刀流が優れているのは、手数の多さだ。同時に筋が読みにくい。一刀目はただのおとり、二刀目が俺の本命。これでけっこうシールドが削れたはずだ。

 

「わたくしにも手数はあるのです!!」

 

 近距離のオルコットが腰のミサイルを俺にぶっ放してきた。それは俺たちの間で爆発し、双方のシールドを削った。

 

「ちっ!捨て身はやめておけよまったくさ!」

 

 俺はすぐにブーストをかけてオルコットの背後に回る。そして相手を掴んだ。

 

「ちょ!なにを!」

 

「このまま墜ちろや!!」

 

 俺は急制動をかけて、地面に向かって飛ぶ。そしてオルコットを地面スレスレで放して、自分は離脱する。

 

「この程度!!」

 

 オルコットはブレーキを思い切りかけた。だからじめんとしょうとつすることはない。だけど。

 

「動き。止まったな」

 

「な?!」

 

 俺は両手にマシンガンを持って、オルコットにぶっ放す。

 

「きゃああぁ!!?」

 

 シールドが面白いように削れていく。あとは。

 

「申し訳ないね。勝っちゃったよ」

 

 俺は刀を一本出す。そして一気に加速して。

 

「ちぇすとーーーーーーーーーーー!!」

 

 思い切り振りぬいてオルコットの横を駆け抜けた。

 

「勝者。織斑一夏!!」

 

 オルコットはシールドエナジーが切れた。

 

「そ、そんなわたくしが。わたくしが負けた?!」

 

 オルコットはISの展開を解除して地面に膝をつく。

 

「「「「「い・ち・か!い・ち・か!い・ち・か!!」」」」」

 

 歓声が響きわたる。そして俺は手を観客席に振った後にドッグに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 箒と山田先生と姉がいた。

 

「よくやったな」

 

 姉が労ってくる。

 

「おめでとうございます!!」

 

「ありがとうございます。山田先生の戦闘訓練の御陰です」

 

 俺は山田先生に頭を下げる。実際にこの人との体育でナイフ技術とか銃の扱いを習ってなかったら勝てなかった。

 

「すごいぞ一夏!!」

 

「ありがとう箒。お前との稽古の御陰だよ」

 

「お前は篠ノ之流を大事にしてくれたんだな。嬉しいよ」

 

 箒は感極まったのか半分涙目だった。しかし勝ってしまった。かっこよく負けるのがベストだったが、思った以上に隙がデカくて何とかなってしまった。ただ次はこううまく行くとも思えない。

 

「これで織斑君がクラス代表ですね」

 

「あー。そうだったね。うん。ふぅ」

 

 俺は全くと言っていい程やる気がない。だが断れる流れでもない。このまま引き受けるしかないんだろうな。だけどその前に。一応フォローをしておかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルコットはアリーナの隅で暗い顔で体育ず座りをしていた。制服に着替えた俺はまだレオタードのままのオルコットに近づく。

 

「なんのようですか?負け犬を嘲笑いに来たのですか?」

 

 俺は上着を脱いで、オルコットの肩にかける。

 

「え?これは……」

 

「寒いだろ。女の子が体を冷やすのはよくない」

 

「なんで?」

 

「お前は強かった。俺はお前の研究を沢山した。だから勝てた。だからお前が凄まじい努力をしているのをわかっているつもりだ」

 

 オルコットは俺を涙目で見詰めている。

 

「でもわたくしは!」

 

「まだ日本に来て調子が出てないんだろ。本当のお前はきっと気高く優雅で強い女の子のはずだ」

 

 俺は手を伸ばす。するとオルコットが俺の手を掴んだ。そして優しく引いた。オルコットが立ち上がる。

 

「さあ行こう」

 

「どこへ」

 

「クラスでパーティーだ。親睦を兼ねてのな。みんなお前を待ってるよ」

 

 実際のとこどうだろう。だけど俺が連れていけば、まあ何とかなると思う。俺はオルコットの手を引いて軽く走る。

 

「あ…。暖かい……」

 

 後ろからそんな言葉が聞こえてきたがスルー。そしてパーティー会場に俺とオルコットは来た。ぱーんとクラッカーが鳴らされる。

 

「二人ともお疲れ様ー!すごかった!」

 

 そして乾杯してピザやらなんやら色々と料理を摘まむ。俺はオルコットを隣に置いておいた。誰も彼女を責めなった。むしろ褒めているくらいだ。オルコットはだんだんと笑顔を浮かべるようになった。ちょろ。まあこれでクラスにしこりは残らないだろう。はあ女の子の調整ってややこしいからいやだな。まじで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北京にある八一大楼の会議室に鳳鈴音はいた。中央軍委員会聯合作戦指揮中心が名指しで呼び出しをかけてきたのだ。

 

「鳳火箭軍少校。わざわざ呼び出してすまないね」

 

「今回はどのような件でしょうか?」

 

 軍服を着た鈴音は敬礼をしてから、休めの姿勢になる。彼女の目の前には長い机があり、そこには人民解放軍の高級参謀たちが座っている。ここにいるのは軍のトップだ。ただならない任務が任される可能性を鈴音は感じた。

 

「単刀直入に言う。IS学園に行ってもらうことになった」

 

「IS学園?私は国防大学で军事学硕士も取ったんですが、いまさら高校に通うなど考えられません」

 

「教育を受けてもらうわけではない。織斑一夏」

 

 その名を聞いて鈴音は眉をピクリと動かす。

 

「君の幼馴染だったね。彼をこの国に招聘したい。その説得を君にはお願いしたいんだ」

 

「ハニトラですか?あいにくそのような経験も訓練も積んでおりません。他の人にやってもらうのがいいと考えます」

 

「くくく」

 

 参謀たちがくすくすと笑っていた。

 

「なにかおかしいのですか?」

 

「ハニトラを本気でやるなら、映画に出てくるような経験豊富な大人の女よりも、君のような初心で清らかな処女を送り込む方がいい。男は一夜を過ごす女と、ともに人生を歩む女を区別する生き物だよ」

 

「そうですか。ですが私はかつては織斑一夏と友人ではありましたが、三年も連絡を取っておりません。いまさらその対象になるとは思えません」

 

「そうかな?彼の過去は調べたよ」

 

 それを聞いて鈴音は体を強張らせる。必死に怒りの感情を表に出さないように努めた。

 

「ならなおさらハニトラが意味をなさないことはご理解いただけるのでは?」

 

「だが君は傍に居ることが許されていただろう?」

 

 鈴音は参謀たちを睨む。

 

「こわいねぇ。だが君の気持は本物だ。だからこそ通じることができる」

 

「織斑一夏を我が国に招聘すれば、いらぬ政治的混乱が生じるリスクがあると考えます。御再考を」

 

「だからだよ。君は賢いからこちらも隠さずに言うがね。我々はいまの党の指導部に苛立ちを持っている」

 

「党の指導に異議を唱えるのですか?問題行動ですよ」

 

「これは軍の総意だよ。指導部を女性が占めるようになって10年ほどか。彼女たちは我々軍部の仕事を蔑んだ。我々の仕事は血と泥に塗れることだ。女が一番嫌うことだろうそれは」

 

 参謀たちはみな厳しい顔をしている。彼らは不満を隠さないようだ。

 

「いま党の上層部で政治闘争が起きている。織斑一夏の登場により、女性優位の社会構造は動揺している。現在の国家主席は女だ。わかるな?」

 

「権威が揺らいでいる。バッククラッシュですね」

 

「その通りだ。我々は現在の首席を引きづり落とすことを決めた。そのために織斑一夏という広告塔は強い武器になる」

 

「私に連れてこれるとは限りませんが?」

 

「いいや。君が学園で彼と年頃の女の子らしく"笑顔"で過ごして絆される姿を曝すだけでもいい。君という我が国最高のISパイロットが男に尻尾を振るだけでも、女性優位は揺らぐのだ」

 

 どこまでも狡猾な大人たちだ。女の陰険な足の引っ張り合いなど男たちの本気の逃走の前には無意味だと鈴音は思った。

 

「私を表に出すのですね?いままでずっと秘匿してきたのに?」

 

「ああ。党には君という最強のISパイロットが第三世代機開発に着手したことを世界にデモンストレーションして国威を発揚すると伝えてある」

 

 参謀たちは本気だ。女性優位の政治体制をひっくり返す覚悟を決めたのだ。

 

「君は賢い。他の愚かな女たちと違ってISがなんなのかよく理解している。あれはおままごとの玩具ではない。君が望んでいるのはごくごく普通の暖かい生活だろう。それが欲しいなら、IS学園に行け。断ることは許さない」

 

「……了解しました。IS学園に向かいます」

 

「ああ。頑張ってくれたまえ」

 

 鈴音の内心は穏やかではなかった。こんな形での再会など望んでいなかった。いや。今の自分を彼に見せることなどできない。ただただ後ろめたさだけが彼女の心を曇らせていた。




セカンド幼馴染を強化したった!
なお鈴は一夏に会いたくない模様。
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