インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose 作:笑嘲嗤
箒との生活も慣れてきた頃だった。
「お引越しです」
山田先生が俺たちの部屋にやってきてそう言った。やっとかよ。せいせいする。
「いや!しかし!」
箒が抵抗している。だが山田先生は譲らない。
「駄目です。そもそも学生のみで同棲のようなことを認めるわけがないんですよ。大人としてこれは譲れません」
まあそりゃそうだ。箒ががっくりしてるけど、こちらとしては願ったりかなったりだ。
「ううぅ」
箒は部屋の荷物を纏めて渋々と言った様子で出ていく。
「一夏……」
フォローは入れておくか。
「俺は残念だよ箒。ルームメイトはお前一択だった」
「そ、そうか!」
ぱあっと明るい笑みを浮かべる。
「お前がいなくなると寂しいよ」
「わ、私もだ!」
「だけど仕方がない。だけど同じクラスなんだ。離ればなれになるわけじゃない」
「そうだな。うん。そうだ。うん!」
そして大人しく去ってくれた。ふぅ。やっと落ち着ける……。とくに部屋のトイレとかすごく気をつかってたしな。でもこれでようやく一人に戻れた。
「あ、でも寂しいな。……ねよ」
俺はすぐに布団をかぶって寝ることにした。
夢を見ている。中学校に入ったばかりのことだ。目の前の女の子がボロボロと涙を流している。
「一夏ぁ。あたし。あたし本当は帰りたくないよぅ」
「俺だって。俺だって離れたくない!」
空港のロビーでその子を抱きしめた。だけどすぐに別れの時は来てしまった。
「連絡するから!絶対にだ!俺はお前のことを忘れない!」
「あたしも!あたしも絶対に忘れないからぁ!」
そして彼女は飛行機で母国に帰っていった。その後何度も連絡した。メールもチャットアプリも。だけど連絡が帰ってくることはなかったんだ。
朝からなんか食堂が少し騒がしかった。
「なんだろう?箒知ってるか?」
「いや、知らない」
「セシリアは?」
「わたくしも存じません」
こいつら女子の井戸端会議ネットワークからハブられてるんじゃ?なんか闇を見てしまった気がする。食事を終えて教室に行った。
「みんな知ってる?転校生だって」
「聞いた聞いた!中国からだってね。二組だってね」
「代表候補生だって!」
「でも中国の代表候補生は四月に来てたよね」
「第三世代機が届くの待ってたって聞いたよ」
「専用機持ちかーいいなー」
そんな噂を横耳で聞いた。
「ふ!わたくしの存在に危機感を抱いたようですわね!」
セシリアがドヤってる。最近はずっと俺にひっついてきている。まあ無視するという選択肢が俺にはないので、構っているけども。
「専用機持ちか。強いのだろうか?」
「まあわたくしほどではないでしょうけども!」
みなぎる自信が羨ましい。
「おりむーはどう思う?」
のほほんさんたちが俺たちに話しかけてきた。
「まあ、次のクラス代表戦がやっかいかな。でももうクラス代表は選抜済みか。ならいいか」
「それがねぇ。クラス代表交代になったんだって」
「うん?そうなの?」
「うん。もともと二組の代表さんと転校生が昨日戦って奪われたんだって」
「やんちゃな奴来たな」
まあ隣のクラスならいいか。
「でも代表候補生なのに今まで名前が出てなかったんだよねー」
「そう言えば代表候補生は広報のためにも公開されてるよな」
「なんでも中国最強らしいよ。最高IS適正Sランクだって」
「そりゃすごいな」
「うん。鳳鈴音さんっていうんだって」
「え……?」
俺はその名を聞いて、ひどく動揺した。
「鳳鈴音?」
「そうだよー」
俺はそれを聞いて椅子から立ち上がり、教室を出た。
「どうしたんだ一夏!」
「どうしたんですの!?」
箒とセシリアが追いかけてきた。だけどかまってる余裕がない。俺は二組に入る。クラスの人たちが俺が入ってきたことで驚いている。
「え?織斑君だ!」
「嘘!二組に来てくれたの!?」
「きゃー!」
女子たちが群がってくるが押しのけて、俺は後ろの方に座っている。茶髪のツインテールの子に向かって行く。その子は窓の外をぼーっと見ていた。
「鈴!!鈴なのか?!」
俺はその子の前に立つ。窓に向けていた顔を俺の方に向ける。
「一夏………。久しぶり」
「何が久しぶりだ!!連絡するって言っただろう!なのに三年間も音沙汰なしで転校?!」
「……ごめん。色々あったの」
「いろいろって。連絡くらいできるだろ」
鈴は答えてはくれない。
「一夏!転校生と知り合いなのか!」
「どういうことですの!!?」
うるさいのが来た。鈴の緑色の瞳が俺から箒とセシリアに向かう。鈴は立ち上がって言った。
「あなたが篠ノ之箒さんね?」
「なんだ?!私を知っているのか?!」
「一夏から聞いたことがあるよ。綺麗で凛々しくて素敵な子だって。だから一目でわかっちゃった」
なんだこれ?俺の知ってる鈴じゃない。こんなに社交的なやつじゃなかった。
「なに?!一夏がそんなことを!?一夏ぁ」
箒はご機嫌になった。一瞬で飼い慣らしやがったぞ。
「それにそちらはセシリア・オルコットさんね。英国の代表候補生。あの第三世代機ブルーティアーズの兵器は扱いが難しそうなのに、あんなに華麗に使いこなすなんてすごいわね」
「そうですわね。中国もわたくしに恐れをなしているんですのね。おーほほほ!」
コミュ障二人は一瞬で懐柔された。おかしい。俺の知っている鈴はそんな奴じゃない。
「お前変わったな」
「うんそうだね。背は伸びなかったけど、胸やお尻は大きくなっちゃったかな」
「鈴……」
たしかにそうだ。昔の鈴は細かった。今は凹凸がしっかりしていて、胸も大きい。ぐっと綺麗になった。そう女になった。なってしまった。そう思う。
「でも一夏も変わった。昔はあたしと同じくらいの目線だった。今は見上げるようになったんだね。なんか嬉しいかな」
「鈴。俺は……」
その時予鈴がなった。
「また後で話そう」
鈴は返事をしなかった。にこりと笑っているだけ。それがなにか俺には怖かったんだ。
昼休みになって俺は二組に行った。
「飯に行かないか?」
ざわざわと周りが煩い。
「ごめん。弁当買っちゃったから」
あっさりと躱された。俺と話したくないのか?
「ねぇ後ろに箒さんとセシリアさんがいるけどいいの?」
振り向くと不機嫌そうにドアから俺たちをみている二人が見えた。
「二人で話したいんだが」
「そう?なら放課後でいいかな?」
「わかった。それでいい」
俺はとりあえず引くことにした。二組から出ると二人に捕まる。
「一夏!あの女とどういう関係なんだ!」
「まさかお付き合いを!?」
「三年もあってなかった」
「「え?」」
「三年間会えなかったんだよ。俺たちは友達だったのに」
ただただ戸惑う。変化もよくわからないし、状況もさっぱりだった。ただただ混乱する。なんでこんなことになっている?どうして?ただただ疑問だけが頭を占めていた。
夜になって俺は寮の鈴の部屋まで行った。
「あれ?!例の男子だ!?どうしたの!?」
白人の女の子が出てきた。
「鈴に会いに来た」
「まじで?!鈴って魔性の女?!鈴!!」
部屋からシャワーの音が聞こえる。
「シャワー浴びてるからあとで行くって伝えておいて」
奥から聞こえるのはそんなそっけない声だった。
「ってことみたいだね」
「わかった。部屋で待ってると伝えてくれ」
「夜這い?!夜這いなの!?」
騒いでいる女の子を放っておいて、俺は部屋に戻る。するとドアの前に箒がいた。
「どうした?」
「い、いや。そのだな。忘れ物をしたんだ!だから取りに来た」
嘘臭い。だけど断る理由も見つからない。
「わかった。入ってくれ」
「お邪魔します」
箒は背中を俺に向けないように部屋に入っていく。なにさ?
「あー!竹刀があったー!」
「そうか。よかったな」
今持ち込んだだろ?まあわざわざいうつもりもないが。
「しかし私もこの部屋で生活していたのか。懐かしい」
なんか世間話を始めやがった。これから鈴が来るのに鬱陶しいな。
「そうだな。部屋が広くなってしまったよ」
適当にお茶を濁す。
「そうか。お前も……」
なんかしみじみ言ってる。都合よく勘違いしているみたいだ。
「箒。すまないがこれから鈴が来る」
「な?!なにぃ?!どういうことだ!」
「友人なんだよ。本当に久しぶりに会ったんだ。だから二人で話したい」
「友人?!女の友人だと?!」
それは普通ではないのか?いや。そうでもないか。異性の友達とずっと仲良くやれるなんて妄想の世界だけだ。だけど鈴は俺にとっては特別な人だ。呼び名はともかくとして。
「来たよ」
そしたら鈴が部屋に入ってきた。短パンにタンクトップのラフな姿。昔も鈴の実家に遊びに行ったときに同じような格好で出迎えられた。だけど全然違う。大きな胸の谷間。くびれたウエスト。艶めかしい足から尻の曲線。違う。全然知らない女の子みたいだ。
「どうして一夏の部屋に来るんだ!!ここは!私の部屋だったんだぞ!」
「何を言ってるの?よくわからないんだけど?」
鈴は首を傾げている。
「とぼけるな!」
「いやだからどういうこと?二人は付き合ってるの?それならすぐに部屋に戻るけど」
「いやそうじゃない!鈴!部屋に戻るな!話があるんだ!」
「そう。だけど二人で話したいんじゃなかったの?」
そりゃそうよ。だけど箒が来ちゃったんだから困ってる。
「ふ、二人で何を話す気なんだ!?」
「それはあなたには関係ないことだよ」
それがきっかけだった。鈴の言葉に過剰反応した箒が竹刀を鈴に向かって振り下ろした。
「ばかやめろ!!え?」
「な?!」
「いまのはあたし以外だったら危ないよ」
驚いた。鈴は箒の竹刀を人差し指と中指だけで挟んで止めていた。鈴に格闘技の素養なんてなかった。スポーツは好きだったけど、そんなにそこまで得意でもなかった。
「う、動かない!?」
箒が竹刀を動かそうとするが、ちっとも竹刀は動かなかった。
「危ないから放そうか」
鈴は左手で箒の手首を握った。
「痛?!」
それだけで箒は竹刀を落としてしまった。
「箒。さすがに今のは駄目だよ。すまないけど、部屋から出ていってくれ」
「い、一夏」
「頼むよ。二人にしてくれ」
箒は泣きそうだったけど、すごすごと部屋から出ていった。俺と鈴が部屋に残された。
「とりあえず座ってくれ。茶でも出す」
「別にいいよ。で何を話したいの?」
「全部に決まってるだろ!なんでここにいる!なんで声さえ聞かせてくれなかった!?」
「それは。仕方がなかった。出来なかったの。許してとはいわないけど」
「じゃあどういうことだ!なんでIS学園に来た?!なんで専用機持ちなんだよ!!」
「適性が高かったから。だからなった」
「お前の適正はそんなに高くなかったはずだ!そう言ってたのはお前じゃないか!!」
鈴は小学校の健康診断の時にIS適正の測定を受けている。その時はIS学園には入れるけど、格別高くない程度の適正だったと言っていた。
「あたしにもわからないけど、適性が高くなったの。GMP値だけならあたしは千冬さんと同等レベルにあるよ」
「嘘だろ……」
姉レベルの才能がある?そんなはずない。鈴は普通の女の子だったはずだ。なのになんで。
「GMP値は後天的要素では変動しないはずだ!それが通説だ!」
「例外があったんでしょ。そもそもISの仕様の根本は篠ノ之博士が開示していない以上、どうせわからないのだから」
「なんでそんなに冷静なんだよ!くそ!」
俺は額に手を当てる。わけがわからなくてイライラする。
「あたしは……だけど。だけど。また一夏に会えて嬉しい」
「それは。それは俺だってそうだ」
「……ありがとう」
鈴は優し気に笑ってくれた。とても綺麗な笑みだった。昔みたいな暖かい感覚が胸に広がる。
「でもね。言わなきゃいけないことがあるの」
「なに?なんだよ?」
「一夏。学園から出ていって」
俺はそれを聞いて頭が真っ白になった。
昨日の会話から頭がグルグルしている。鈴がなんであんなことを言い出したのかがまったくわからない。
「どういうことなだよまじでさぁ」
俺は更衣室でただそう呟くほかなかった。そして体育の時間で山田先生と一緒に訓練することになった。今日は迷彩服を着てライフルを抱えて、障害物レース。途中で的があるからそれを撃つ。はっきり言ってかなりしんどい。
「もっと集中してください!狙いが乱れてますよ!!」
迷彩服着た山田先生の叱責がきつい。俺はとりあえず鈴のことを忘れようとした。ライフルの狙いは正確になる。
「そうです!戦うときは余計なことは考えてはいけません!ただ目の前の状況だけを考えるんです!」
俺はIS学園という戦場に放り込まれている。だから鈴のことはノイズなんだ。たとえ大切な人であっても。そう思わなきゃやってられなかった。
セカンド幼馴染は原作と違っておっぱいが大きいです!
そこんとこよろしくぅ!