インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose 作:笑嘲嗤
鈴はすぐに敵機に向かって飛んでいく。相手は至近距離でビームを放ったが、それを鈴は華麗に躱して一太刀入れる。
「動きがのろいわね」
そのままひたすらに鈴は相手のシールドを削っていく。俺はただ茫然と見ているだけだった。圧倒的すぎた。さっきまでの戦いですら、俺は手加減されていた。それがわかってしまった。
「でも硬いなぁ……」
苛立ち交じりの声で鈴が呟いているのが聞こえた。その程度なんだ。突然の襲撃も鈴にとっては大したことじゃない。
「鈴……」
変わってしまったんだ。取り返しのつかないくらいに。それが俺にはとても遠く感じられた。そしてすぐに敵機は沈黙した。
「さあ顔を見せて」
鈴は相手のマスクを剥がす。そこには気絶している女性がいた。
「あれこの人……?」
鈴が首を傾げている。
「知り合いか?」
「顔は知ってる。行方不明になってた日本のIS搭乗者だ」
なんでそんな人が?そもそもISに乗って襲撃なんて言うのが考えにくいことだ。だがその思考はすぐに中断した。またも上からビームが降ってきた。それらは俺と鈴をそれぞれ狙っているものだった。俺たちはそれを躱す。二機のISが降ってきたのだ。
「追撃?戦力の逐次投入とかアホなの?」
「なんか狙いがあるんじゃないのか?」
「どっちにしろ片づければいいのだけよね……あれ?この反応?!」
俺の視界にもそれが見えた。もう一機のISがドックに侵入していくのを。
「嘘まずい?!中は無防備よ?!ち!!」
鈴はすぐにその一機を追いかけようとドックに向かった。だが二機のISがその行方を阻んだ。
「こいつらあたし狙いだ!!」
鈴がすぐに回避行動をとる。ビームとミサイルが鈴の機体を狙って飛び散る。
「鈴!俺がドックの方に行く!」
「やめなさい!あたしのそばから離れないで!!危ないから!」
「俺だってISに乗ってんだよ!!危なくなんかない!!」
俺は鈴の制止を振り切ってドックに向かう。
「一夏ぁ!!戻りなさい!!戻って!!」
鈴の声が聞こえるが、俺は無視する。俺は焦っていた。俺にだって何かを守れる。鈴は守れなかったのに?だけど。だけどやるしかないんだ!
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
ドッグに入ってすぐに敵機体を見つけた。俺は刀を振りかぶって切りかかる。相手の盾に阻まれたが、それでいい。このまま侵入させるのは駄目だ。すぐに至近距離での切り合いになる。ドックはISには狭い。だからこそいい。
「ここなら機動性も生かせないよなぁ!!」
もう一本剣をコールして握る。二刀流にスイッチした。床を蹴ってから捻り込み、相手の後ろを取る。そして十字に剣戟をぶち込む。相手が吹っ飛んで壁にめり込んだ。すぐに体制を立て直してきてビームを放ってくる。
「駄目押しなんだよ!!」
俺は何度も放たれるビームを切りながらすり足で近づく。そしてやっと目の前までたどり着いて相手の両手のビーム砲をを破壊した。
「眠ってろ!!」
刃を反対にして峰うちする。すると相手は沈黙した。マスクを剥ぎ取ると、外国人の女性の顔が見えた。
「何者なんだよ……」
そしてすぐにドックに鈴が入ってきた。
「一夏!!」
鈴は俺に近づいてきた。そして詰め寄ってくる。
「何考えてるの!!言ったでしょ!あたしの後ろにいろって!!」
「それを聞く義理なんかない!!俺は自分で自分を守れるんだよ!!」
「そうやって傷つきたいの?!こんど傷ついたらもうあとなんてないでしょぅ!!」
鈴はぼろぼろと涙を流す。
「鈴……」
俺は手を伸ばす。だけどそれは払われてしまった。
「お願いだからやめて。ISなんてただの暴力なんだよ。だからここにいる必要なんて一夏にはないようぅ」
「だけど俺は……」
鈴は教員が駆け付けるまで泣き続けていた。俺にはかける言葉がなかった。鈴が背負っているものがわからない。彼女の俺を思う気持ちも受け止める余裕がない。どうすればいいんだよ。俺は……。
拘束された四人の犯人たちはいずれも薬物と催眠暗示による洗脳が確認されたそうだ。みんな世界各国で行方不明になっていた名のあるIS乗りたちだった。裏側に悪意を持った誰かがいる。
「犯人たちはいずれも哀れな犠牲者たちです。無傷での確保になってよかったと本当に思います。ありがとうございます、織斑君、鳳さん」
山田先生が俺たちに頭を下げて礼を言った。
「いいえ。俺は。俺はなにもできなかった」
「そんなことはありません。織斑君は会場の皆さんを守りました。誇っていいんですよ」
だけど結局のところ活躍したのは鈴だった。俺は一機相手に限定空間に持ち込んでの勝利に過ぎない。もしも広い空間だったら、おそらくは負けていただろう。
「犯人たちの背後はわかったんでしょうか?」
鈴が冷静に山田先生に尋ねる。
「それは……わかりません……ただ一部おぼえていることはあったそうです」
「それはなんですか?」
「織斑君は殺さないこと。鳳さんは必ず殺すこと。この二点だったそうです」
「なんだよそれ……」
俺には言葉がでない。鈴はきびしい目のまま俯く。
「この件に関しては緘口令が敷かれます。他の生徒には内緒でお願いしますね」
「「わかりました」」
そして俺たちは会議室から出て寮に向かった。自然と同じ方向に向かっているのに、会話ができない。だけど話さなきゃいけない。
「鈴。ごめんな」
「何を謝るの?」
「多分俺のせいで襲われたんだたと思う。だから」
「ならあんたが無事ならそれでいいよ」
それきり鈴は黙る。俺との会話を避けようとしている。
「なら」
俺はその場で立ち止まる。鈴も振り向いて止まった。
「ならなに?」
「なら声を聞かせてくれよ。俺は。俺は寂しいよ……」
情けないことに涙が出る。
「鈴がやっと俺の傍に居るのに、遠いんだよ。遠いんだよぉ」
鈴は気まずそうに視線を逸らす。
「関わり合いにならない方がいいよ。あたしたち」
「いやだ!そんなの絶対にいやだ!!やっと昔みたいに戻れたんだろ!なのにどうして!!」
「もう戻れないの」
鈴は悲し気に笑う。
「もう昔には戻れない。ごめんね」
そして鈴は俺を置いて先に行ってしまった。俺は置いていかれることしか出来なかった。
俺は友達の弾の家でゲームしていた。
「鈴が戻ってきたのに暗い顔してるな」
「ああ。ナーバスだよ。変わっちまった。何もかも」
「まあ年頃の男女ならそういうもんじゃないか?」
「俺と鈴は切れないと思ってた」
「一夏……」
「なんでISなんてあるんだろうな……それさえなければ俺たちは……」
「そうだな。ああ、お前はいま泣いてるんだな」
弾が俺の肩を組む。暖かい。もうすぐ夏なのに、なんでこの温さが心地いいんだろう。俺は。俺は、ただの弱いガキなんだ。
タッグトーナメントの告知が行われた。パートナー探しで盛り上がり始めている。まだ正式な申し込みは先なのでみんなそわそわしている。
「一夏さん!わたくしと組むべきですわ!!ともに学園を制しましょう!!」
「一夏、私と組まないか?お前となら、きっと高みに行けると思うんだ」
「わるい。もう少し考えたいことがあるんだ。今はパートナー選びできそうもないよ」
二人はしゅんとしてしまった。申し訳ないが、今はそんなことを考える余裕がない。あの襲撃も鈴のことも。
「はーい。皆さん。今日は転校生を紹介します」
また転校生?俺は机から顔を上げる。そこには金髪に紫色の瞳の美少年がいた。
「シャルル・デュノア君です。皆さん仲良くしてくださいね」
男だと……。
「こちらに僕とおなじ境遇の男子がいると聞いて転校してきました。どうぞよろしくお……」
「「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」」
女子たちが一斉に立ち上がってキャーキャー言いだす。
「ええ?!」
「イケメン!!」「可愛い系男子!!」「受けなの?!」「そこは攻めっしょ?」「シャル一?!」「一シャルだろぉおお!!」
騒がしい。だけど目の前にいるのは間違いなく男だ。まじかよ。天使かな?
鈴とのすれ違いが痛い(;_;)
シャルは天使('Д')