インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose   作:笑嘲嗤

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第8話 汚点

 アホがまた一人増えた。げんなりブルー。放課後の自室にてシャルと飲む茶が唯一の癒しである。

 

「あのドイツの人となんかあったの?」

 

「知らん。けど多分姉絡みだと思う」

 

「織斑先生のことだね。ねぇもしかして一夏は織斑先生と仲良くないの?」

 

「そうだな。まあ色々な」

 

「そっか。……家族は難しいよね……」

 

 シャルもなんかありそうだな。家族の問題は難しい。俺の家ははっきり言って破綻家庭だ。金に問題はなかったが、両親は蒸発して行方不明。まあ調べようと思えば調べられるが、興味はない。姉が親代わりだった。そこらへんには借りがある。もっとも今やそれを返す気もないのだが。

 

「まあ辛気臭い話はやめようぜ。ちょっと相談なんだけどさ」

 

「なにかな?」

 

「今度の学年別トーナメントはタッグマッチの知ってるだろ?」

 

「うん。組んでくれるってこと?」

 

「すまん。そうじゃないんだ。鈴と組みたいんだ」

 

「二組の中国の代表候補生だね?すごく強いんだよね。優勝狙ってるの?賞金も出るし」

 

「いや。……お恥ずかしい話なんだけどな。鈴とは幼馴染なんだが、再開してからぎくしゃくしている。これを機に少しでも仲の修復が出来たらなと思ってるんだ」

 

「好きなの?」

 

「……大切な人だよ」

 

「そっか。うん。それでだめだったときにボクと組みたいって感じかな?」

 

「話が早くて助かるよ。すまんな保険みたいな感じで」

 

「ううん。いいよ別に。ボクも女子よりは一夏と組みたいからね」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ」

 

 シャルはいいやつだ。本当に嬉しい。俺はこいつがかなり好きになってる。今度何か困っていたら助けてやりたい。そう思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山田先生が俺にとても申し訳なさそうな顔をしている。逆に姉はお澄まし顔でドヤァって感じだ。

 

「今度のタッグトーナメントなんですが、織斑君は百式ででるように国連から圧力が来ました」

 

「えぇ……」

 

「ごめんなさい。反論したんですが、だめでした」

 

「織斑。百式は使いこなせれば最強の機体だ。戸惑う理由などない」

 

 理由しかねぇよ。もちろん何度か訓練した。だけどやっぱりなれない。あの機体は危ない。頭を抱える他ない。

 

「剣を持つ者ならばその極意を発揮できる機体こそ相応しい。百式はお前を高みへと導くだろう」

 

 知るかんなもん。どうしたもんか。全くいやになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タッグトーナメントの申請がはじまった。

 

「さぁイチカさん提出に行きましょう!」

 

「一夏!私とだろう!」

 

「あはは。大変だな一夏は」

 

 そういうシャルも女子たちに群がられていて大変そうだが。お互いに組むのが一番良さそう。だけど俺はもう決めているわけで。

 

「俺はもう組む相手決めてるから」

 

「だ、誰ですの?!」

 

「誰なんだ一夏!」

 

 俺はスルーして食堂に向かう。鈴が二組の人たちと食事しながらおしゃべりしてた。俺は意を決してそこに割って入る。

 

「鈴。ちょっといいか」

 

「一夏……なに?」

 

「铃音,要是你愿意的话……我想和你一组。」

 

「え?」

 

 鈴が驚いている。

 

「「「え?」」」

 

 シャルとセシリアと箒もだ。だけど知ったことじゃない。

 

「铃音……能不能快点回答我?」

 

 鈴が俯く。少し頬が赤く見えたのは気のせいだろうか。

 

「我在等你。」

 

 俺は急かしてしまう。だけど早く返事が欲しい。

 

「我很开心……但是,对不起。我要跟我的室友蒂娜一起组队。」

 

 そんなぁ?!

 

「这样啊……真可惜……」

 

 俺はなんとか絞り出して答えた。

 

「ちょ……ちょっと待ってくださいまし!一夏さん!今の会話はなんですの?!」

 

「我就是邀请铃音当我的搭档。很普通的事吧?」

 

 俺はセシリアに返事をする。断られたのが思ってたよりもダメージでかい。

 

「それ中国語ですわよね?!わからないんですけども!!」

 

「啊?我只是问铃音要不要——……え?……ああ!ごめん!鈴をタッグ戦に誘ったって話!」

 

「中国語ができるんですの?!鈴音さんから習ったんですか?」

 

 セシリアたちがあたふたしている。まあ驚かれるか。

 

「昔中国語を鈴から習ったんだ」

 

「あたしは教えてないでしょ。くだらない嘘つくのやめなさい」

 

 鈴に注意された。

 

「自分で覚えた?!どういうことなんだ一夏!!?」

 

 箒がなんとも言えない顔をしている。いちいち説明するのも面倒くさいな。

 

「鈴が中国から日本に来て転校してきたばかりの頃は日本語が出来なかったんだよ。だから勉強した。それだけだ」

 

 シャルの視線がなんか感心したような感じに見える。

 

「そ、それならわたくしも英語を教えて差し上げましょうか?!キングスイングリッシュをきっちり仕込んであげますわ!」

 

「Nah, it’s okay.I’ve been studying with DUO 3.0, Instant English Composition Training,and English Hannon, so I’m fine.」

 

「American English, you say?Surely, you would prefer to adopt the King’s English, would you not?It is, after all, the most proper and elegant form of the language.」

 

「Nah, I’ll pass.British English is kinda hard to catch.Honestly, it’s tougher to understand than Indian English.」

 

「I—I beg your pardon……?M–more difficult… than Indian English…?Heavens above…!」

 

「eah, like… the accent’s super thick.I just can’t get what people are saying half the time.」

 

「Good heavens…!」

 

 箒はぽかーんと聞いていたけど、鈴は生暖かい目で、シャルは爆笑していた。二人は英語がわかるんだな。シャルがなんかにやりと笑って言った。

 

「Oh là là… Cécilia, mon ange…cet accent royal est si compliqué que même Ichika n’y comprend rien, tu sais〜?」

 

「デュノアさん?!いまわたくしのこと煽りましたわね!?しかもわざわざ女言葉で!?」

 

「え?……あっ。う、うんそうだよーあはは!!ブリティッシュジョーク!!」

 

「キー!!!」

 

 シャルも人のこと煽るんだな。しかも女言葉までわざわざ使うとは真の男だな!!

 

「一夏たちが何を言ってるのかさっぱりわからない。一夏。古語なら教えられるんだが」

 

「いやそれ俺もできるんだけど」

 

「私には何もできないのか?!」

 

 なんか箒が打ちひしがれてる。

 

「はぁ。シャル。タッグは俺と組んでくれ」

 

「うん。わかった」

 

 仕方がないから事前の約束通りシャルと組むことになった。世の中はままならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とシャルが放課後のアリーナでISの訓練をしていた時だ。いきなり砲撃を喰らった。ボーデヴィッヒがISを装着して宙に浮いていた。

 

「何考えてるのかな?!いきなりすぎるんじゃないの?!」

 

「第三世代機も創れない国は黙っていろ。織斑一夏。お前はこの学園から今すぐに去れ!」

 

 去りたいのはやまやまなんだけどね。

 

「お前の言うことを聞く義理はないな」

 

「お前は教官の汚点だ」

 

 ああ。なんだ強火の姉のファンなのね。なるほどなぁ。ドイツって言ってたし、姉がドイツ行ったときの教え子の一人だな。

 

「あの人はこのようなISをファッションか何かだと勘違いしているメスガキどものおままごとに付き合うようなお方ではないのだ!我がドイツに来ていただければ最強の軍隊が作れる!!」

 

 どうぞどうぜ持って行ってくれ。とめるきなんてありましぇん。

 

「あーまあ気持ちは多少わかるかなぁ……ISはファッションじゃないよね。これはどうしようもないくらい兵器だもの。うん」

 

 シャルも納得してる。わりとボーデヴィッヒの正論には賛同したいところだな。

 

「お前のような弱者が弟だから!あの方は危うくモンドグロッソの二回目の優勝を逃しかけることになったのだ!完璧なあの人を揺らがせるお前はいてはいけない存在なのだ!!」

 

 それを聞いてカチンときた。第二回モンドグロッソ決勝戦。あれほど不愉快なこともなかった。あの日からだ。俺と姉が決定的に別れてしまったのは。俺はすぐにISを解除した。

 

「ちょっと一夏?!危ないよ!!」

 

「付き合ってらんないな。今日はもう上がるよ」

 

 俺はアリーナから出ていく。

 

「腰抜けが!逃げるのか!!やはり汚点なんだな!!」

 

 俺は答えない。スルー一択に限る。くだらない。くだらないんだよ。そして更衣室に戻る。俺はロッカーに背中を預けて座り込む。

 

「どうしたの一夏。大丈夫?!」

 

 シャルが俺のおでこに触る。心地いい感触だ。

 

「シャル。悪いけど。そのまま触れててくれないか」

 

「一夏。手が、手が震えてるよ?」

 

 シャルが心配そうに俺を見詰めている。

 

「大丈夫。大丈夫だから。だからお願いだ。傍に居てくれ……」

 

「……うん。ボクはいつでも傍に居るからね。大丈夫だよ、一夏」

 

 俺はそのまま満足して目を瞑る。震えが止まるまでシャルは一緒にいてくれたんだ。




シャルは天使!
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