インフィニット・ストラトス: Reorigin;The World She Chose   作:笑嘲嗤

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第9話 暴かれる涙

 体育の授業はしんどいが一番成長を感じられる瞬間だ。更衣室に入ってすぐに俺は上着を脱ぐ。

 

「一夏。まだロッカー前だよ。ってあれ?」

 

「ん?どうした」

 

「え、だってお腹。それ銃だよね?!」

 

「あーこれ?うん。グロック17」

 

「種類は聞いてないよ?!なんで持ってるのさ!」

 

「だって危ないだろ。ここだって安全は確実じゃないんだから。安心しろ、ちゃんと学園の許可はとってるよ。政府の特例もあるから外でもオッケーだ」

 

「えー」

 

 シャルが若干引いてる。まあ仕方ないだろう。普通は嫌がるもんだ。だけど男子なら少しは関心を持ちそうなもんだけど。まあいいや。そして明細のBDUに着替えて、演習場に向かう。今日は装備を抱えて、射撃しながら障害物競争だった。シャルルは足が遅かった。

 

「一夏。ちょっと待って!げんかい!」

 

「男だろ。我慢しろ」

 

「ううぅ!」

 

 涙目でぜいぜい言いながらシャルルは頑張っていた。

 

「男ってこんなにしんどいのか」

 

「何言ってんだよ。普通だろこれくらい」

 

 ライフルを分解清掃しながら俺は言った。シャルルはへたりこんでいた。そして息が整ってから、M4ライフルを弄りだす。

 

「あー?!M4?!わかんない!!」

 

「軍事教練受けてるって聞いたけど?」

 

「たしかにフランス軍で受けたけど、その時はFAMASだったんだよ!」

 

「ブルバックのやつか。だからさっきの射撃制度が悪かったんだな」

 

 そう言えばISでもブルバックとかPDW系の奴が好きだよねシャルルは。

 

「m4の方が世界標準なので、デュノア君はこれから離れてくださいね」

 

 山田先生の追撃にシャルルがなんか渋そうな顔をしている。

 

「FAMASは悪くないよぅ」

 

 そしてライフルを組み終わった俺から、射撃に移った。命中率はどんどん良くなってる。シャルルも組み終わってうつが、なんか微妙。

 

「M4に慣れないなぁ」

 

 なんかシャルルが不器用な部分を見せている。可愛いと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 更衣室に戻っておれはすぐに全裸になった。全身泥だらけだ。早くシャワーを浴びたい。

 

「お前も早く脱げよ。急がないとホームルームに間に合わなくなる」

 

「ぼ、ボクはいいよ!もう放課後だし!」

 

「その恰好で教室に戻ったら大目玉だぞ。まったく」

 

 俺はシャルルを放っておいてシャワー室に入る。やはり剝けてないんだ。気にしなくてもいいのに。弾なんか一緒に銭湯行くと、「包茎入りまーす」とか言うくらいあけすけなんだけどなぁ。俺も向けてなかった頃は包茎入りまーすが好きだった。弾ももう剝けてしまったから、あの頃には戻れないんだな。

 

 

 

 

 

 教室に戻るとシャルルがいなかった。ホームルームはそのまま始まった。

 

「デュノア君はどうしたんでしょうか?」

 

「わかりません。俺も知らないです」

 

「うーん。お説教ですねぇ」

 

 山田先生もそう言うのは仕方ないだろう。まったく男心もややこしいものだ。そして俺は寮の部屋に戻った。山田先生から新しい銃を貰った。グロック26。これは背中の方にコンシールドする予定だ。俺は部屋に入り、シャワーの音が鳴っているの聞いた。

 

「あー?こっちの風呂に入ってんのか?まったく」

 

 肩を竦めながら、俺は自分のデスクに座り、銃を分解清掃する。いざってときに備えるために必要なのだ。そしてシャワー室の方からドアの開く音がした。

 

「あーすっきりしたぁ!」

 

「おうシャルル。山田先生が……」

 

 俺はシャルルの方に振り向く。シャルルは全裸だった。頭だけタオルを被っている。この際だと思って剥けてないのか確かめようと思った。だが。

 

「剥けてるわけでも剥けてない訳でもない?」

 

「ひゃ?!」

 

 俺の頭がバグる。だってゾウさんがなかった。ないのだ。なんでない?男だろう?あれ?えー?うん?俺は上に視線を持っていく。ぼよよんと大きく膨らむIS学園では見慣れたお山が二つ。ピンク色の山頂。

 

「い、一夏」

 

「なに?ところでゾウさんは何処に落としたんだ?はやくつけろよ。恥ずかしいなら俺が拾ってこようか?」

 

「男の人のあれって取れるの?!」

 

「そんなわけないだろ……男の身体とか見たことないな?」

 

「あ、はい。見たことないです……一夏が初めてでした」

 

「あ、そう」

 

 俺はとりあえず、そっぽを向く。

 

「まあ着替えろよ。そしたらお茶を淹れるからさ」

 

「う、うん」

 

 そしてジャージに着替え終わったシャルが目の前に座っている。

 

「センシティブな質問かも知れないが確認させてくれ」

 

「なにかな?」

 

「いわゆる、そのなんだ。男性を自認しているが、体は女性ということか?それとも、男性だが、女性に性転換手術したとかか?」

 

「どっちでもないです。普通の女でした」

 

「そうか。うん。うーん」

 

 俺は戸惑っていた。センシティブな問題ではないようだ。むしろ意図がよくわからない。

 

「意図を計りかねてる。正直に言えばよくわからなくて少し怖いというのが俺の感想だ」

 

「そうもなるよね。逆の立場だったらボクも怖いよ」

 

「とりあえず話してくれないか?お前個人が悪い奴じゃないことは信じたいんだ」

 

「ありがとう。ごめんね」

 

 シャルはお茶を一口飲んでから語り始めた。

 

「ボクの実家がデュノア社なのは知ってるよね」

 

「ああ。それは知っている。それが関わってるんだな?」

 

「うん。デュノア社はいま経営危機なんだ」

 

「安定していると聞いているけど」

 

「第三世代機の開発がうまく行ってないんだ」

 

「ああ。なるほど」

 

「そう。だから此処に来た。もう察してるだろうけど、ボクの目的はスパイだよ。一夏のデータを盗むことなんだ」

 

「第三世代機の開発の突破口が欲しいのね」

 

「同じ男の振りなら逆に近づきやすいよね。ここには綺麗な子しかいないからさ」

 

「そう言う意味では正しいな」

 

「ISのホログラム機能をうまく使って姿を少しぼかしてるんだ。だから体の線とかがわかりにくくて騙せた」

 

「なるほどね。うん。でもお前の様子だと、強制されたのか?社長の息子なんだろ?」

 

「いわゆる妾の子で立場がよくないんだ。お母さんも亡くなっているから、引き取ってくれた家の方針に逆らえないんだ」

 

 俺にはこの子が憐れに思えた。家族に引っ張られて、不幸に転がる。個人の責任や行動の因果ではない。それはおかしいと思う。

 

「でもなんか楽になったよ。バレちゃったのにね」

 

「だけどこのままだと恐らくはなんか理由をつけられて逮捕だぞ。フランス政府は絶対にお前を庇わない」

 

「うん。だけど仕方ないよ。ボクはもともと自由なんてなかったんだよ。生まれた時からずっと」

 

 自由がないのは男だけだと思ってた。俺は反省しないといけない。自由を失うのは男だけじゃなかったんだな。

 

「慰めになるかわからないが、一応IS学園の特記事項が使える」

 

「特記事項?」

 

「IS学園は児童保護のために生徒たちの身分保障を外交的特権で解決している。ここに在学中は本国政府の逮捕権は働かない。日本の法律だって、男装してきたくらいでお前を罰しやしない。IS学園は一度入った者を三年間は保護するようにできているんだ」

 

「そうだったんだ……」

 

 シャルは茫然としている。

 

「だから一旦は安心しろ。時間は稼げる」

 

「う、うん」

 

「その間になにか手段を考えよう。いざとなったら日本とかアメリカに亡命とかでもいいかもしれない。常任理事国は足の引っ張り合いをしているからな」

 

「すごいね。なんでそんなに冷静に考えられるの?それにボクなんかのために」

 

「同情してる。俺も家族の都合で……」

 

 ふっと涙がこぼれた。あれ?

 

「一夏、泣いてるの?」

 

「あ、すまない。ちょっと感情が乱れた。すぐに止る」

 

「そんな!無理に止めなくていいよ!泣いてもいいんだよ人は!」

 

 そうなのか?泣いてもいいのか?泣いても何も解決しないのはわかり切ってるのに。

 

「男らしくないよ」

 

「そんなの関係ないよ!一夏、なにか悲しませちゃったんでしょ。苦しいなら泣いてもいいよ。ボクは責めないよ」

 

 シャルが俺の手に手を重ねてきた。暖かで柔らかい。安心を覚えてしまう。

 

「すまない」

 

「あやまらないでよ」

 

「俺は勝手に感情移入してるだけだから」

 

「それはいいことだよ!ボクはおかげで寂しくないんだ!一夏がいるから!不安もなくなった!ねぇなにかあるなら話して欲しい。少しでも君の役に立ちたい」

 

 いいんだろうか。傷を曝しても。だけどそれは抗い難い魅力があった。隣にいる。誰にも話さなかったことが俺の口から洩れる。

 

「俺も家族の都合に振り回された」

 

「織斑先生だね。なにかあったの?」

 

「いや。何もしてくれなかった」

 

「仕事で顧みられなかったのが寂しい?」

 

「違う。それは仕方がないことだと理解してた。違うんだシャル。あの人は何もしてくれなかった」

 

「言って。ちゃんと聞くよ」

 

「第二回モンドグロッソ決勝戦」

 

「織斑先生が二回目の優勝をした日だね」

 

「俺は。俺は、あの日誘拐された」

 

「え?誘拐?」

 

『闇の賭博を仕切るヤクザだ。あの人が二連覇すれば儲けがなくなる。だからあの人を脅すために弟の俺を誘拐した。わざと負けるように脅迫をかけた」

 

「そんな?!ひどい……」

 

「いっぱい殴られて痛かった。目隠しも音も遮断されてどこかに縛られた。あれほど怖いことはなかったよ」

 

 いまでも思い出すと震える。怖くて痛くて。その記憶は消えてはくれない。

 

「わかってる。あの人にはどうしようもできないことだった。国の名誉を背負い関係者の生活を背負ってるんだ。強迫に屈して負けるなんてできない」

 

「織斑先生は勝ったよね……」

 

「それも仕方がないことだ。それはいいんだ。俺を助けてくれたのは束さんだった」

 

「篠ノ之博士が?」

 

「うん。俺を助けてくれた」

 

 いまでもあの鮮烈な光景は忘れない。あちらこちらに転がる死体の山。返り血を浴びて泣く束さんの姿。俺はあの時彼女に手を伸ばした。

 

「辛かったんだね」

 

「ああ。だけど一番つらかったのはそれじゃないんだ。あの人は、ううぅ」

 

 俺の涙が止まらない。胸がぐちゃぐちゃで痛い。シャルは優しく俺を抱きしめてきた。女性の柔らかさを感じた。これが心地いいなんて思わなかった。怖さが少し解けるように感じる。

 

「あの人は、あの人は!俺から逃げた!逃げたんだ!傍に居て欲しかった!わかってるんだ!仕方がないことで、あの人にだってどうしようもできないことだったんだ!だからわかってる!俺はあの人を責めるつもりなんてなかった!なのに!あの人は俺から逃げてドイツに行ってしまった!!逃げたんだ!俺から逃げた!傍に居て欲しかった!なんでなんだよ!俺たちは家族なんじゃなかったのか!どうして!どうしてなんだよぉ!!うああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 ただただ情けなく泣き続けていた。シャルは何も言わずに俺の頭を撫でてくれた。俺は女のシャルに甘えた情けない男でしかないんだ。




そりゃ織斑先生、誘拐されて傷ついた子供放置してドイツ行ったらあかんでしょ(;´・ω・)
原作でも屈指のよくわからないイベントを私なりに消化してみました。


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