酒と煙草とハンドガン 作:にわかセソセイ
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徹夜なので投稿です。
───カーテンの隙間から差す朝日で目が覚めた。
まだ起きていない脳を無理矢理働かせるように重い身体を起こす。
いつもと違う香りがする室内に違和感を抱きつつ、朝の支度を開始するためにベッドから出る。
カーテンを全開にして窓を開けると、部屋が明るくなって、空気が爽やかになる。
うん、今日は快晴。
まだ寝惚けてる頭をスッキリさせるために洗面所へ行こうと振り返る。
───ソファで人が眠っていた。
咄嗟に銃の置いてあるデスクに駆け出して、手に取った銃を構えようとしたときに思い出した。
「そういえば、デュー泊めたんだった……」
昨日、キヴォトスに迷い込んだばかりで行く宛てのないこの男を自ら部屋に招いたのを忘れていた。
しかもキングスカンパニーの兵士たちから助けてもらい、その後色々な要因で泣いてしまった私を慰めてくれた人を、だ。
いくら寝惚けていてもそれはダメでしょ……
自身の一連の行動を恥じ、反省した。
かなり音を立てたにも関わらず、デューはまだ眠っている。
多分、かなり強く場馴れしているであろう彼が、起きてこないのは肝が太いのか、それとも信用してくれているのか。
いや、こんだけ明るくて風が通ってるのに爆睡しているのもどうなの?
デューが起きないようにそっと近づき、様子を見る。
昨日、彼に抱えられたときに嗅いだ、お酒や煙草の臭いはしなかった。
私が昨日、無理矢理貸したパーカーを素直に着て、ブランケットに身を包んでいる。
上はデューに合うサイズのパーカーがあったから良かったが、下は困った。
裾が長いものはそもそも入らなかったし、短パンは短過ぎて太ももが半分以上露出していた。
結局、履かないよりはマシだろうと短パンを履くことになったのだが、私の目の前で堂々と着替えるものだから、目のやり場に困った。
ただでさえキヴォトスには男の人が少ない上に、デューは顔が良い。
デューから見たら子供なのかもしれないけど、一応私は女子高生で思春期真っ只中である。
男の人ってあんなに筋肉あるんだ、とか思ってしまったりして、少し見惚れてしまっても仕方がないと思う。
そんな足元が寒そうな彼は、後ろで結っていた髪は解いていて、癖毛なのか、結構ボサボサしている。
起きているときは目が死んでいて、言動も荒いから顔が整っているとしか思わなかったが、こうして見るとまだ幼さが残っている。
大人といっても、まだ20代前半くらいだろう。
───寝顔、可愛いな。
私の見た目はよく怖がられたりするから、少し羨ましい。
デューから目を離し、時計を確認するともう9時を回っていた。
朝起きるにしては少し遅いが、仕方がない。
昨日の夜は、私の好きなバンドの曲をデューに紹介したり、デューの好きそうな曲を動画サイトで探したりした。
私はずっと話していたし、デューは興味深そうに聞いてくれていた。
あわよくば、デューがキヴォトスのヘビメタを、私の好きな音楽を気に入ってくれればいいな、と思った。
結局、話が落ち着いて眠りについた時間は朝の4時頃だった。
洗面所へ行き、顔を洗う。
いつもなら朝起きてもしばらくそのままにしている寝癖を直し、結ばないまでも髪型を整える。
デューにだらしない姿を見せるのは、少しイヤだった。
鏡に映る自分を見つめる。
───私は、私がそんなに好きじゃない。
何もしていないのに怖がられたり、不良やガラの悪い生徒に絡まれたりするこの見た目を好きになれるワケがない。
こんなこと思ってもどうしようもないと思いつつも、つい同じことを毎日考えてしまう自分に嫌気がさす。
そんなことを考えていると、昨日のデューの行動がフラッシュバックする。
キヴォトスの情報目的とはいえ、大手企業を相手に大立ち回りをして私を助けてくれた。
私が聞いてほしかったとはいえ、ゲヘナの情報部に対する愚痴や殺されるかもしれなかった恐怖を黙って聞いてくれた。
内心で何を思っていたかは知らないが、私と対面して恐怖や不快感を全く出さずに私を見てくれた。
……うん。多分、いや確実に、私はデューに惚れたまでは行かなくても、かなり好いている。
でも言い訳をさせてほしい。
歳上でイケメンで、ヤンチャで余裕があって、同じ趣味をもっている異性が、あんなに色々してくれたら、誰でもコロッといくと思う。
これでもゲヘナの情報部の一員として、一日やそこらしか関わっていない相手に気を許すつもりはないと思っていた。
元来、それなりに要領が良く、この見た目のおかげで荒事にも多少の心得があった。
諜報活動や情報処理を散々こなしてきたし、成果もあげてきた。
今年度になって、可愛らしいのにもの凄く高い実力を持ち、私を怖がらない後輩も入ってきて、柄にもなく色々教えてあげようと奮起したりもした。
最近は、上が私を使えると判断したのか任務の量や難易度が跳ね上がったし、比例して危険な橋を渡ることもかなり増えてきた。
同期や先輩の中には、見た目から私をよく思わない人や実績に嫉妬してくる人もいた。
だが、そこそこ報酬が良くて、仕事について一年が経って慣れてきたから自信もあって、新しい後輩も出来たしなんとかなるだろうと思っていた。
でも昨日の一件で、情報部の任務に対してのモチベーションが一気に無くなった。
思い出しただけでも、恐怖で少し震える。
デューが助けてくれなかったらどうなっていたかなど、考えたくもない。
そんな中、白馬の王子のようとは口が裂けても言えないが、強くて自由でカッコいい彼が目の前に現れた。
これじゃあ低年齢層向けの恋愛漫画のヒロインをバカに出来ないな。
そしてそんな彼を想い、思ってしまう。
───あぁ、手放したくないな、と。
多分、これは依存だ。多分、これは執着だ。
そうじゃなかったら家になんて泊まらせない。
文字や絵でしか見たことない恋愛感情はこんなに歪んでいないだろう。
でも私も確実に嗜好を歪められた。
リビングに戻り、未だ寝ているデューをジッと見つめる。
───このくらいの重さなんて、デューならぶつけられたって構わないでしょ?
デューの生活必需品を買うために行ったショッピングモールでも私が服を選び、スマホを契約した。
いや服に関してはデューのセンスがダサかったっていうのもあったけど……『長袖』と書かれた半袖のTシャツとか中指立てた赤ちゃんのイラスト入りのとかはちょっとね。
彼の事情に同情したというのもあったが、少しでも私で染めたいという思いもあった。
だからブラックマーケットでの散策中、デューが突然走り出した時はヤバかった。
黒い感情が胸の中心で蠢き、家に戻ったらどうしてくれようかと欲が思考を支配しかけた。
そんな感情を振り切って、デューが暴れた後であろう倒れた不良生徒やマーケットガードの残骸を辿っていたが、彼の余りにも早い速度には追いつけなかった。
デューのスマホにGPSアプリを入れようと決意した時、突如路地裏の空中で爆発が起きた。
「うん。あれは絶対デューだね」
大方、連絡先交換したのも忘れて、彼の世界から持ってきていた手榴弾で自身の位置情報を私に伝えたかったのだろう。
あまりの滅茶苦茶ぶりと、彼が求めてやまなかったモノを前にしても私を忘れなかったことに対して思わず頬が緩む。
爆発地点の真下を推測して向かった先にはデューの着ていたパーカーが結び付いた看板が目に入った。
中に入ろうと扉に手を掛けるが、扉は全く動かない。
鍵が掛かっている様子もないのに、かなり力を入れても開かない。
鍵が掛かっていなくてピッキングも意味ないから、銃で撃ち壊そうとしたとき、急に扉が開いた。
「いやぁ〜、買った買った。お、カヨコちゃんじゃん、置いていっちゃってゴメンね?無事だった?」
大量に袋を持ったデューがホクホク顔で扉から出てきた。
袋の中身は酒か煙草か、はたまた両方か。
デューの顔を見たら、また黒い汚い欲望が湧いてくる。
頭を振ってそれらを振り払い、彼の目をジッと見る。
「え、なに?もしかして怒ってる?ホントにゴメンよ!悪気はなかった!次から急ぐ時はカヨコちゃんも抱えてく!」
デューは勝手に勘違いしてくれたようで、私の都合の良い方に自分で転がってくれた。
でも私の視線の意味は分からなかったようだ。
「ねぇ、デュー」
「な、なにかな?カヨコちゃん」
焦ってるか怯えてるかは分からないが、そんなに身構えなくてもいいのに。
「煙草ってどんな味がする?」
ただ、少しでもデューに近づきたくて、アンタの好きなモノに興味を持っただけだよ。
わりぃ、俺、感情表現するの苦手だわ(絶望)!
それにしても今どきの高校生ってこんなもんですかね?
私は書いてて、カヨコちゃんチョロくね?とか7話にして既にこれ?とか思いましたけど、思春期のガキ+メンタル崩壊気味+イケメンおじさんの色気でやられたと思うことにしてます。
まぁカヨコは湿った空気の中でこそ輝くんですよね。異論もどうぞ。