万能孤高ヤンデレ姫は年下宮廷魔術師の父性に溺れる! 〜姫に懐かれすぎて王からクビ宣告。王の命令で結婚を退職理由にしたら姫の目から光が消えた〜   作:ダイヤモンド鈴木

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感想でもらった意見がもっともだったので展開変えました。
7話から修正しているので、遡る場合はそこまでお願いします。


10話

 

 姫の執務室に詰める数人の黒装束たち。

 

 彼らはみな一様に、一人掛けソファに座らされた僕をじいっと監視している。

 

 その瞳から感情は読み取れず……いや。一人だけ、あからさまに不満そうな目つきの子がいるけど。……まあ彼女は置いておいて。

 

 さて、それじゃあ……――どうやってここを抜け出そうか、と。

 

 そう考える僕へ、掛けられる声。

 

「――アルベルト・トール氏」

 

「……。アルベルトでいいよ?」

 

「では。アルベルト氏」

 

 しっかりした口調に見合わない、幼さの残る少女の声。

 

 影のうちの一人――さっきから感情だだ漏れの瞳で見つめてくるのは、僕より小さい年頃に見える小柄な少女だ。

 

 全身真っ黒で頭に頭巾までかぶる彼女は、ちらりと覗く金色のショートへアを揺らしながら、ずんずん僕に近づいてくる。

 

 と、思ったら。

 

「っあいだ……!」

 

 ――どてっと。少女がつまづいて転ぶ。

 

 影らしい身のこなしでバランスをとる、とかもなく。そのまま思い切り転んじゃった。

 

 僕も、他の影も……なにも言えない気まずい時間。

 

 べちゃっと床で潰れてるけど、助け起こしたほうがいいかな。大丈夫かな?

 

 なんて心配してると。

 

 少女はゆったりとした動きで、何事もなかったかのように立ち上がった。そうして澄ました顔で僕を見る。

 

「失礼、勢い余った」

 

「痛そうだったね……。大丈夫?」

 

「問題ない。小生、えりーとであるからして」

 

 無表情にそう言った彼女だけど、片手で打ったとこさすってる。

 

 心配だなあと見ていると、キッと鋭い視線で睨まれた。

 

「なにか?」

 

 ……うーん。相変わらずだ。

 

 彼女とはちょっと前から顔だけ知ってる中だけど、どうも僕のことよく思われてない節がある。それに、今回主人である姫が危地に向かった原因だし、思うところがないわけない。

 

 とはいえ。今回の件は僕だって大いに後悔してるんだ。

 

 姫がぶっ飛んだ行動を始めちゃったこともそうだし。……そもそも、そんな行動をさせるほど姫を歪めちゃったことを反省してる。

 

 だから。うまくここを抜け出して、決定的なことが起こる前に姫を止めないと。

 

 とはいえ、あの姫の様子だと僕を見た瞬間自傷しちゃってもおかしくない。……だったら、監視の影たちに協力してもらえないかな?

 

 ――影とは、主人の指示をただ愚直に実行する忠誠の徒。その前提を利用して姫と会話の余地を……とは思うんだけど。そもそもそんな存在をどう言いくるめるかって問題が。

 

 妙案も思いつかず、しばし頭を悩ませていると。

 

 目の前で、影の少女が口を開き――

 

 

 

「――この、玉なしの意気地なしめ」

 

 

 

 ……え? なんか今すごいこと言われたんだけども。

 

「ご主人の寵愛を賜るという羨ましい立場におりながら。その無駄にでっかい力、いつ振るおうというのか――?」

 

「!」

 

 ……今の。

 

 まるで、僕が動くことをよしとするみたいな。

 

 影である少女が口にしたとは信じられないセリフだ。でも、他の影たちもそれになにも言わずに僕を見てるし。

 

 じゃあさ、それって。

 

 つまり――()()()()()()、だよね?

 

 

 

 と、いうことで。

 

 僕たちはいま、影の少女を先頭に、回廊を素早く駆けている。

 

 姫が物騒な準備をしてるからかな。いつもより人が少ない気がするし、目にしてもみんな慌ただしい感じ。

 

 ただ、この感じだとまだ本格的な行動は開始してなさそうだ。早く姫のもとへ向かわなくちゃ。

 

 そう思った僕は。徐々に速度を上げ、いまやかなりの速さで走る少女に、頑張って追従していたんだけど。

 

「こやつは魔術師なのに、なぜ小生たちに着いてこられるのだ?」

 

 少女が不思議そうに呟く。

 

 それはもちろん、生身でついていける速度じゃないけども。

 

「――身体強化、使ってるからね。魔力で身体能力底上げすればなんとか」

 

「ふむ。盗み聞きとは相も変わらず無礼。しかし、タネは魔術か。固有魔術ではなさそうであるし、小生もそれを修めればもっとご主人のお役に……?」

 

「多少の魔力さえあれば誰でもできる技術だよ。今度教えてあげよっか。……僕が王宮を追放されてなければ」

 

「その言葉に甘えよう」

 

 いつも通り無表情なんだろうけど、ちょっと声が弾んでる気がする。よっぽど姫の力になりたいんだね。

 

 僕はそんな少女にくすりと笑いながら、ふと疑問に思ったことがあって口を開く。

 

「そういえば。君の名前、教えてもらえないかな。僕たちこれから姫を止めにいく同志なわけだし」

 

「名前か。確かに、この時だけの、しかもアルベルト氏が元凶である問題に対処するためとはいえ、協力者は協力者。あんまり教えたくはないが仕方ない」

 

 教えたくないんだ……。この子、すごい正直だしテンポが独特だよね。

 

「なんか、無理させちゃってたらごめんね?」

 

「構わぬ。――小生は、影の一族のカレン。『静寂の花』の名をもらっておる」

 

「カレンさん、ね。あとのお二人は?」

 

 そう言って、僕の後ろを後ろを走る二人の影にも名を聞いて。

 

 簡単な自己紹介で、総勢四名の結束を多少深めたところで。

 

 ――前方に見えてきた、物々しい人だかり。

 

 この先は、謁見の間や王の執務室がある警備が厳重なエリアだ。そこに突入する前に間に合って良かった。

 

 姫の姿は見えないけど、たぶんこの人だかりの中にいるはず。

 

 じゃあ、あとは。

 

「――手筈通りに。いける?」

 

「うむ、問題ない。小生たちにまかせよ」

 

 頼もしく頷いたカレンさんたち。

 

 そんな彼女たちが人だかりに近づいていくのとは裏腹に、僕だけ途中で離脱して。

 

 この後に備え、入念に魔力を練りあげてと。

 

 ……あ、始まったかな?

 

「――ご主人ご主人。一大事だ」

 

 そう声をあげて突っ込んでいくカレンさんたち。

 

 人だかりの内訳は騎士や魔術師、そして影たちだ。カレンさんの顔を見知ってる人も当然たくさんいるから、手荒に扱われることもない。

 

 そして、人だかりの中心――姫がいる場所に到達したみたい。

 

「ご主人ー。たいそう大変なことがあり、お耳に入れたく」

 

「――あなたは。なぜ、ここに?」

 

 カレンさんのどこか力が抜けた声に対して、凛とした姫の声が響く。僕を監視してるはずの三人を見たからか、真剣な声色だ。

 

 こんな姫の声を聞いたら普通はみんま畏まるものだと思うけど。

 

「ふむ。ご主人の鋭い視線、たまらぬ」

 

 カレンさん大物すぎる。大丈夫?

 

「――この状況でふざけないで、カレン。あなたにはアルベルトを見ておくよう指示したはずよ。それが、なぜここに? 一大事ってなんのことなの」

 

「おお、ご主人、落ち着きなさって……。もちろんここに来たのはそのアルベルト何某のこと。小生らも嫌だと言うたのですが、言うことを聞かず。――挙句には、自らの体に傷をつけることすら厭わない有様で……」

 

「っ! ……まさか、アルベルトが怪我を!? 彼はどこに! うそ、どうしよ……!」

 

 姫の焦る声が聞こえる。

 

 よし。これなら会った瞬間に自傷されることもないだろうし。

 

 そろそろ出て行こうかな。魔力で声を大きくして――。

 

「――姫。僕はここだよ」

 

「ぁ、アルベルトっ……!? そこ、道あけて! はやくッ!」

 

 何事かとざわつく周囲をよそに、姫は開けた人垣の隙間に僕を見つけて声を上げる。

 

「アルベルト、アルベルト! 怪我! だいじょうぶなの!?」

 

 心の底から僕を心配した表情の姫。銀の髪を振り乱し、こっちに駆け出そうとする。

 

 その瞬間だった。

 

 

 

「――ご主人、ご容赦を」

 

 

 

 僕に視線を固定した姫の背後から。

 

 迫るカレンさんが――

 

 

 




カレンちゃんのイメージはクール系(?)ポンコツロリ忍者です。
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